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【ソーヴィニヨン・ブラン】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴

ワインの原料となるのはブドウ。品種ごとに様々な特徴があり、ワインの香りや味わいを生む大事な要素となります。

そして、ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌や気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインにもその影響が及びます。

様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、同じブドウ品種のワインでも産地ごとにどんな特徴があるかを大まかに知っておくことは、自分好みのワインを選ぶためにとても役に立ちます。

今回のテーマ品種は、ソーヴィニヨン・ブラン。白ワイン好きには欠かせないこの品種の主要産地ごとに、ワインの香りや味わいの特徴をお伝えします。

まずは、品種自体が持つ主な特徴から確認していきましょう。

ソーヴィニヨン・ブランの主な特徴

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表でもあるソーヴィニヨン・ブラン。爽やかな青空のもと、視界一面の草原の中を元気に走る…そんなイメージを抱かせる品種と言えるでしょう。

品種そのものについての情報を、まずは整理しておきましょう。

ソーヴィニヨン・ブランのルーツと歴史

ブドウ品種は交配によって新たなものが生まれますが、ソーヴィニヨン・ブランの片親は「サヴァニャン」というフランス東部の品種であることが、最近のDNA解析で判明。以前はフランスのボルドー地方が原産地と考えられていましたが、DNA解析に基づく研究では、ロワール地方が原産という説が有力のようです。

また、ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランの交配で、国際品種の黒ブドウとして最も有名なカベルネ・ソーヴィニヨンが生まれました。

ソーヴィニヨン・ブラン由来の風味

産地によって異なる風味については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。

香り ハーブ、青草、グレープフルーツやレモンなどの柑橘類
味わい 爽やかでキレのある酸味、心地よいレベルでの苦み

ミントや青草などをイメージさせる香りは、メトキシピラジン(2-イソブチル-3-メトキシピラジン)という化合物に由来するもの。冷涼な気候の地域で作られたものや、未熟なうちに収穫されたブドウから醸されたワインに、よく現れるとされています。また、使用される酵母の働きによっても、風味は大きく変わってきます。

国際品種の白ブドウでソーヴィニヨン・ブランとともに人気を誇るシャルドネは、品種そのものに由来する風味というものはあまりなく、気候風土や造り手の製法によって変幻自在。「染まりやすい無個性」が個性と言えるシャルドネについては、何が違うの!?フランスの「シャルドネ」とカリフォルニアの「シャルドネ」をチェック!

それでは、ソーヴィニヨン・ブランの3つの主要産地別に主な特徴を紹介しましょう。

フランス・ロワール地方

ソーヴィニヨン・ブランの原産地と言われるのが、古城が建ち並ぶフランスのロワール地方。中央山塊から大西洋へと流れるロワール河の中流から上流にかけてのエリアで多く栽培されています。

AOCワイン「サンセール」や「プイィ・フュメ」などを造り出すこのロワール地方は比較的冷涼な地域で、熟した南国フルーツのニュアンスはほとんどなく、ハーブやレモン、青リンゴなどの爽快な香りが主体です。

2018 サンセール・ラ・ムシエール/アルフォンス・メロ
産地
フランス・ロワール地方
品種
ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

また、石灰岩やシレックスと呼ばれる土壌があり、味わいはシャープな酸味に加え、舌をキュッと締めつけるようなミネラル感やスモーキーなニュアンスを感じるものも多くあります。

2015 ブラン・フュメ・ド・プイィ/ディディエ・ダグノー
産地
フランス・ロワール地方
品種
ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
フルボディ辛口 白

フランス・ボルドー地方

以前は原産地と言われていたフランス・ボルドー地方では、セミヨンやミュスカデルとのブレンドで造られることが多く、骨格がしっかりとした味わいのものが多くあります。

ハーブやグレープフルーツの香りとともに、熟成が進むと茹でたアスパラガスのような香りが出てくるものも。また、樽で熟成させているタイプが主流で、酸味や果実味にも丸みがあるので、飲みごたえがあるソーヴィニヨン・ブランのワインを飲みたいという方は、ボルドーがおすすめです。

ブラン・ド・シャス・スプリーン 2018
産地
フランス / ボルドー地方
品種
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

ニュージーランド

ニュージーランドではソーヴィニヨン・ブランが最重要品種と位置付けられるほど栽培が盛んです。ブドウ畑のおよそ2/3を占めるとも言われていて、南島のマールボロがその中心地となっています。

清涼感に満ちた香りが最大の特徴で、刈りたての青草やフレッシュハーブをイメージさせるワインが基本。グレープフルーツやパッションフルーツのような果実味も豊かで、いきいきとした酸味とフルーティーさを感じることができるものが主流です。

2020 プライベート・ビン・ソーヴィニヨン・ブラン/ヴィラ・マリア
産地
ニュージーランド
品種
ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

ただし、個性を求めたものや高級ラインのワインには、樽熟成や自然酵母などで複雑な風味を加えたタイプもあります。

グリーン・ソングス / ファンキー ソーヴィニヨン・ブラン 2018
産地
ニュージーランド / ネルソン地方
品種
ソーヴィニヨン・ブラン100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムライト

カリフォルニア、チリ、オーストラリア、南アフリカでも人気!

ソーヴィニヨン・ブランは、様々な気候風土でも割と栽培がしやすく”懐の広い品種”と言えるかもしれません。あまりに気温が高い産地だとブドウの糖度が早くに上がりすぎてしまうため質の高いワインはできませんが、3つの主要産地以外にも、カリフォルニア、チリ、オーストラリア、南アフリカといった地域では人気の高い品種となっています。

チリ、オーストラリア、南アフリカは、海からの冷たい風を受ける畑や、ボルドーと同様の海洋性気候と呼べる地域があり、ソーヴィニヨン・ブランの栽培、そしてワイン造りが近年広まっています。

2017 ソーヴィニヨン・ブラン・セミヨン/ヴァス・フェリックス
産地
オーストラリア
品種
ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

カリフォルニアでは樽熟成させたものも多く、ソーヴィニヨン・ブランはフュメ・ブラン(香ばしさのある白)とも呼ばれ、料理とも相性の良いワインとして愛されています。名付けたのは、“カリフォルニアワインの育ての親”と呼ばれるほど有名な生産者、ロバート・モンダヴィだとか。そのマーケティング手腕はさすがです。

2017 ソーヴィニヨン・ブラン/ジョセフ・フェルプス・ヴィンヤード
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
フルボディ辛口 白

ソーヴィニヨン・ブランのワインは、シーフードや野菜の料理との相性が抜群。和食に合う白ワインでもありますので、色々と産地別で飲み比べながら、自分好みのものを見つけてみましょう。

 

「ヴィンテージ」って、結局どういうこと?今さら聞けないワインの常識を学ぼう。

ワインの話では「ヴィンテージ」という言葉がよく出てきます。ワイン以外でも、車や楽器、また洋服などで「ヴィンテージもの」という言葉が使われるため「高級な年代物」といったイメージがあると思いますが、あなたは「ヴィンテージ」の意味をちゃんと説明できますか?

そもそも「ヴィンテージ」とは何のことなのか。まずは言葉の意味を理解し、ワインにとって「ヴィンテージ」がどうして重要なのかということを、今回は一つひとつ学んでいきましょう。

「ヴィンテージ」という言葉の意味は?

ヴィンテージという言葉は、「ブドウを収穫する」という意味のラテン語に始まり、フランス語の「ヴァンダンジュ(vendange)」を経て、英語の「ヴィンテージ(vintage)」という言葉になったと言われています。

つまり「ヴィンテージ」とは、ブドウの収穫年のこと。もちろん、収穫したら基本的にはそのまま醸造へと進みますので、実際に意味するのは、原料となるブドウを収穫し、ワインを醸造した年を指します。

ちなみに、フランス語では「ミレジム(millesime)」、イタリア語では「ヴェンデミア(vendemmia)」、スペイン語では「コセチャ(cosecha)」と言います。

当たり前のことですが、原料となるブドウは農作物。その年の天候によって出来不出来が左右されますから、ワインにとってヴィンテージはとても重要な意味を持つのです。

ヴィンテージがワインの価値のすべて!? 

前述の通り、ブドウの出来不出来がワインそのものの品質に大きな影響を与えますので、まったく同じ銘柄のワインであっても良いブドウが獲れた年のワインを、ヴィンテージ・ワインと呼ぶことがありますし、長期熟成を経て香りや味わいが複雑で豊かになる(であろう)ワインを、オールド・ヴィンテージ・ワインと呼びます。

オールド・ヴィンテージ・ワインが年代物で価値があり、高価格となることに擬えて、車や楽器、また洋服などでも“ヴィンテージ”という言葉が定着したのだと思われます。

でも「良いヴィンテージのワイン=おいしいワイン」とは限りません。原料の質はとても重要ではありますが、そこまで単純じゃないところが、ワインの難しいところであり、面白いところ。造り手の技術によっても大きく変わります。あまり好ましくなかった収穫年のものを、いかにおいしいワインに仕立てるかということも、生産者の腕の見せ所だったりするのです。

また、良年のワインは飲み頃を迎えるまでに時間がかかる(熟成を待つ)ものもあるため、ワイン初心者にはかえって難しい場合があるかもしれません。

ラベルにヴィンテージが書いていないものもある

ワインを選ぶ時に価格とともに必ずチェックしたいのが、ラベル(エチケット)。ワイン通になると、そこに書かれている情報をもとに「これは自分好みのものか、今買うべきワインか」などを“プロファイリング”するようになりますが、ヴィンテージが書かれていないものも、中にはあります。

ワインのラベルには、流通するにあたって絶対に表示しなければならない義務表示と、生産者の判断で表示してもしなくてもよい任意表示があります。

ワインの種別、原産地呼称(AOP、DOC、IGPなど)、原産地、アルコール度数、瓶詰め業者、スパークリング・ワインの場合の残糖量などが義務表示なのですが、ブドウ品種やヴィンテージは任意表示となっているのです。

NV(ノン・ヴィンテージ)って、どういうこと? 

なぜ、ブドウ品種やヴィンテージは任意表示なのでしょうか。それは、ワインには収穫したブドウをそのまま醸造して瓶詰めするものだけでなく、ブレンドして仕上げるものもあるということが理由の一つと言えるでしょう。

「シャンパン」を例に挙げて、考えてみましょう。

産地であるフランス北部のシャンパーニュ地方は、寒い地域であるため、ブドウがしっかりと熟さない年もあります。しかし、安定した味わいと供給が、シャンパンのブランディングとしては必須。世界で愛飲されるシャンパンのメゾンは、信頼と実績がなければ成り立ちません。

そこで、安定した味わいと供給を実現させるために、その年のブドウで造ったワインに、過去の複数年のワインをブレンドした「リザーブワイン」をブレンド(アッサンブラージュ)して安定した味わいに。その後、瓶内二次発酵を行い、最低15カ月の熟成を経て、NV(ノン・ヴィンテージ)のシャンパンとして市場に送り出すのです。

シャンパンの約8割は、収穫年が表示されていないNVなのですが、良年で100%その年のブドウで造られることもあり、そのシャンパンは最低3年の熟成を経て、ヴィンテージ・シャンパン(ミレジメ)として世に送り出されることになります。

スペインのカバでも、ノン・ヴィンテージとヴィンテージの区分は規定されていますし(詳しくは「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのcavaを徹底解説を参照)、スティルワイン(非発泡性のワイン)でも、その年のブドウの特性以上に、安定した味わいの追求やクリエイティヴな試みを重視して、ブレンドが行われることがあります。

当たり年と熟成の関係

ワインのスタイルやブドウ品種にもよりますが、ヴィンテージ・ワインまたはオールド・ヴィンテージ・ワインは、原料ブドウの熟度(糖度)が高いことに加え、ワインに仕立てた時の酸度や、タンニン(渋みのもと)の量や質がしっかりしているといった酒質の強さがカギとなり、熟成の向き不向きにつながっていきます。

熟成のどのタイミングで飲んだらいいのかという判断は一筋縄ではいきません。そこで、参考になるのが「ヴィンテージチャート」と呼ばれる指標です。

ヴィンテージチャートとは?作成者によって変わる評価に注意

「ヴィンテージチャート」とは、生産地域ごとにヴィンテージ(収穫年)の評価と飲み頃の目安などを示した一覧表です。評価が高い年を、当たり年(グレート・ヴィンテージ)といい、あまり良くない年をはずれ年(オフ・ヴィンテージ)と表現します。

ヴィンテージチャートは、ワイン評論家やワイン専門誌、ワイン輸入会社、各地のワイン協会などが作成していますが、その作成者によって評価は異なってきます。参考までに、例を挙げると以下のようなものがあります。

ワイン専門誌『ワイン・スペクテイター』
ワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト』
ボルドーワイン委員会
スペイン大使館経済商務部(スペインワイン)
輸入会社「ファインズ(FWINES)」

一時期は、著名なワイン評論家であるロバート・パーカーJr.が手掛けたワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト』のヴィンテージチャートが、ワインごとに評価を付けた「パーカーポイント」とともに強い影響力を持ち、世界中のワイン販売における一つの指標となっていたこともありました。しかしながら、ロバート・パーカーJr.が高く評価する“果実の凝縮感や樽香のしっかりしたパワフルなワイン”の人気が下火になり、2019年に自身が引退したこともあって、今では以前ほどの大きな影響力はなくなってきました。

このように、ヴィンテージチャートは絶対的なものではありません。大きく括った地域だけでは見えてこないことも多く、当然ながら生産者の技術がワイン造りにおいて重要な要素であることを忘れてはいけません。

ただし、あくまでも一つの参考情報として捉えれば、ヴィンテージチャートは便利な指標とも言えるのです。

ヴィンテージ・ワインを堪能するために

「当たり年」とも呼ばれる良いヴィンテージのワインは、熟成管理も重要。せっかくのヴィンテージ・ワインも、ワインセラーなどの環境を整えずに、高温多湿の日本の家でそのまま放置してしまっては、台無しになりかねません。経験もまだ浅いワイン初心者は、ソムリエやワインに精通した人がいる飲食店で楽しむのがおすすめです。

それぞれのワインにはおいしく味わえる“ピーク”というものもあります。オールド・ヴィンテージ・ワインの場合、一般的に白ワインなら20年前後、赤ワインなら20〜30年ほどとも言われたりしますが、収穫年のみならず、品種の特性やテロワール、また、先ほどお伝えしたように、造り手の技術や個性も合わせて判断しないといけないのですから、知識と経験が豊かなソムリエでも“ピーク”を見極めるのは、至難の業。一筋縄ではいきません。

また、管理や味わいの視点とは異なりますが、年号が明記されているヴィンテージ・ワインは、ギフトアイテムや祝席でのワインとしても活躍してくれます。生まれ年や大切な記念ヴィンテージのワインは、お祝いのストーリーを演出してくれるはず。

まずはヴィンテージチャートをチェックして、さらに造り手の情報とともにお祝いにぴったりのワインが手配できれば、あなたも立派なワイン通の仲間入りです!

 

そもそも「熟成」って何?熟成に向くワインとは?

ワイン通が使うキーワード。「ワインは好きだし、興味はあるんだけど…」という初心者のみなさんをちょっと遠ざけてしまう言葉がたくさんあります。

ワインのみならず、ほかのことでも使われる言葉で、なんとなく分かっているけれど自分で説明しようと思うとイマイチ…そんなキーワードを改めて解説します。

今回のキーワードは熟成

そもそも「熟成」って何?熟成に向くワインとは?…さて、あなたはちゃんと説明できますか?

「発酵」と「熟成」はどう違う?

ワインはもちろん、チーズや漬物、そして、おなじみの味噌や醤油など、世界中の食文化は、たくさんの発酵と熟成の力を借りて成り立っています。

発酵は、微生物の力によって物質が変化すること。ワインのアルコール発酵の場合で言えば、酵母の力によって、アルコールと二酸化炭素が生み出されていくことを指します。

発酵と熟成はつながっているので、その境界線を明確に引くことはできませんが、熟成は、そこからさらに微生物や酵素の働き、酸素、そして外的環境(温度、湿度、時間)の総合作用によって、アミノ酸などの物質が変化し、それまでにない風味や特徴がつくられていく現象をいいます。

「酸化」や「腐敗」も同じこと!?

「酸化」は、酸素の影響を受けて物質が変化していくことなので、実は熟成の一部。「腐敗」や「劣化」も、現象としては同様のことなのです。

つまり、いずれも同じような現象で物質が変化することを指すのですが、それが人間にとって有益なものであれば発酵や熟成と呼び、有害なものであれば酸化、劣化、腐敗と呼んでいるのです。

微生物や酵素、酸素、さらに温度、湿度、時間…とたくさんの環境要素が絶妙に組み合わさって起きる世界…そこには未だ解明されていないこともあるため、熟成はまさにミラクルワールドと呼ぶにふさわしいものなのです。

ワインの熟成とは?色、香り、味わい、すべてに影響あり!

熟成は、ワイン愛好家にとって大きな醍醐味、楽しみの一つと言えるでしょう。外観、香り、味わい…すべてにおいて、熟成は変化をもたらします。ワインの熟成に必要な要素は、ワインに含まれている有機酸、ポリフェノール、タンニン、アルコールや残糖分などがあり、それらの量が多ければ多いほど、時間をかけて熟成されていくことになります。

外観で言えば、鮮やかな色が落ち着いたトーンの色に変化。白ワインなら緑っぽさ、赤ワインなら紫っぽさがなくなり、徐々に茶色っぽい色になっていきます。

香りでは、フレッシュな果実のニュアンスがなくなっていく代わりに、ナッツやスパイス、きのこやなめし革などの独特な香りが加わり、複雑なものになっていきます。

味わいは、全般的にマイルドな傾向に。酸味や渋味が和らぎ、まろやかで口当たりがよくなっていくのが特徴です。

ただし、おいしいかどうかは、それらのバランス次第。未開封の状態でそれを見極めることは難しいので、知識と経験をもとに“飲み頃”を判断するのが、ソムリエの腕の見せどころとも言えるでしょう。

熟成に向くワインのポイントを、タイプ別に解説!

“熟成に向くワイン”は、どんなワインなのでしょうか。赤・ロゼ・白のタイプ別にポイントを整理してみましょう。

赤ワイン

赤ワインは果皮と種子を一緒に果汁と醸すため、アントシアニン(ポリフェノールの一種で赤黒い色のもと)やタンニン(渋味のもと)が多く含まれています。そのため熟成に向いたワインが多く、カベルネ・ソーヴィニョンやメルロといった品種のボルドーワインは、その代表選手と言えるでしょう。

おいしさのバランスには、酸も重要。繊細なバランスで熟成していくピノ・ノワールは、アントシアニンやタンニンは少なめの品種ですが、カベルネ系とはまた違う熟成変化の魅力を秘めています。

ロゼワイン

赤ワインほどアントシアニンやタンニンなどの成分が多くない、ロゼワイン。ピンクからオレンジ系のきれいな色合いと、フレッシュ&フルーティーな味わいを目指して造られているものがほとんどなので、熟成させることを想定したものはあまり多くありません。

白ワイン

白ワインの場合は、スキンコンタクトや樽熟成といった製法によって得られる成分が、熟成に向くかどうかの鍵を握ってきます。そして、果皮と種子と一緒に醸される“オレンジワイン”は、アントシアニンやタンニンなどもプラスされるので、熟成に向くものが多いということになります。また、そもそも持っている酸や、酸化熟成からくるフレーバーのバランスが、白ワイン熟成のポイントになります。

また、糖分が多く含まれている甘口ワインは、全般的に長熟に向いているワインです。これもおいしい熟成ワインという視点から、白ワイン同様、酸も重要な要素となります。

「熟成向き?早飲み向き?」をプロファイリング

熟成に向くかどうか。つまり、酸化で「劣化」するのではなく、「熟成」を促す成分の量や要素のバランスが実際どうなのかは、ワインのタイプや造り手の手法はもちろん、ブドウの品種や産地、そして生産年(ヴィンテージ)によっても左右されます。

今回の記事が、まずは「このワインは熟成に向くかな?早飲みした方がいいかな?」と考えるためのヒント、その第一歩になればと思います。その先は、知識と経験の積み重ね…まずは、生産者やテロワールの情報、ヴィンテージがわからなくても、ワインのタイプ別と味わいのマトリックスを入り口にして、探求していくのも一つの手法です。

まずは、いろいろなワインの情報をチェックしながら、ゲーム感覚で“プロファイリング”してみましょう。ある時「あ、これは熟成向きだろうな」とイメージできる瞬間がやってくるはずです!

味わいのマトリックスからワインを探す!

白・赤・ロゼ・スパークリングとワインのタイプ別のマトリックスがあり、酸味フルーティ感(果実味)、渋味や苦味などのポイントから、より具体的なワインを探せるようになっています。

■ワインのマトリックスは こちら

ワインマトリックスでは、「甘口ワイン」に該当する要素を説明していませんが、ハッシュタグの「#やや甘」「#デザートワイン等」は、「甘口ワイン」のカテゴリに属するワインです。
「#やや甘」とされるのは、1リットル当たりの糖分量が12〜45グラム、「#デザートワイン等」は1リットルあたり45グラム以上のワインで、甘口ワインのカテゴリに入ります。一般的に、辛口と言われるワインは、1リットル当たりの糖分が12グラム未満となっています。

お月見の夜長に!自然派ワイン【ビオディナミ】を徹底解説

2021年の十五夜は、9月21日。お月見は、秋の夜長に満月を愛でるという日本の風物詩ですが、稲の収穫が始まる時期でもあることから、十五夜は「秋の収穫を喜び、感謝する」という意味合いもあるのだとか。

ワインを造るブドウも秋が収穫期。月の不思議な力と密接な関係を見出したワイン造りが今回のテーマ「ビオディナミ」です。

「“自然派ワイン”のイメージはあるけれど、オーガニックや無添加のワインとどう違うのかよく分からない」という方のために、基本から徹底解説。最後に、秋の夜長にぴったりなビオディナミのワインもご紹介します。

ビオディナミとは?バイオダイナミクスは同じこと?

「ビオディナミ(Biodynamie)」は、フランス語。英語では「パイオグイナミクス(Biodynamics)」となり、2つは同じことを意味しています。

オーストリアの人智学者であるルドルフ・シュタイナーによる講義に端を発した農法で、月や惑星の動きと植物の成長を調和させることを重視した農事の暦(カレンダー)を一つの指標として、植物がもつ生命力を活性化し、安定した農業生産を目指すというものです。

つまりビオディナミ(パイオグイナミクス)は、有機(オーガニック)農法の一種ではありますが、月などの天体の動きや哲学的なことを取り込み、播種(種まき)や土壌などに独特な規定があるという、一歩踏み込んだ自然派の農法と言えます。

オーガニック、ビオロジック、減農薬…他の自然派ワインとどう違うの?

醸造段階でも添加物や補助物質を制限したり、亜硫酸の値に細かな規定があったりしますが、大まかに言えば、ビオディナミの農法で育まれたブドウから造られるワインが、ビオディナミワインということになります。

ビオディナミ以外にも自然派ワイン(ナチュラルワイン)には、特徴や決まりごとが異なるものがいくつかあります。まずは簡単に、区別するポイントを整理しておきましょう。

ビオロジック(オーガニック、有機)

殺虫剤、害菌防止剤、除草剤などの農薬や化学肥料を使用しない農法で、EUやその他の国などには、それぞれ専門の認証機関があり、規定も設けられている。

リュット・レゾネ(減農薬)

無農薬ではなく、化学的に合成された物質をできるだけ使わないようにした農法。

また、こうした規定や区分に属さず、生産効率性を大切に考えながら造られるワインの中にも、自然環境に配慮したサステナブル(持続可能)なワインが存在します。

「ナチュラルワインの基本をもっと知りたい!」という方は、以下の記事もおすすめです。
【自然派ワイン】って何?今さら聞けないナチュラルワインの基本とおすすめ店5選

ちょっとスピリチュアル!? ビオディナミ農法の4つのポイント

ビオディナミ(バイオダイナミクス)は、天体の動きと植物の生育を調和させることを重視した農事暦を用いているということはお伝えしましたが、その農法には主に4つのポイントがあります。

(1) 化学肥料、除草剤、農業、殺虫剤の使用不可
(2) 亜硫酸塩添加の制限(EUのオーガニック規定よりも厳格)
(3) 天体の動きと連動した農事暦の使用
(4) 天然由来のプレパラシオン(調合材)の使用

規定レベルは違えど、上記の(1)と(2)は、ビオロジック(オーガニック、有機)と共通の視点がありますが、(3)農事暦の使用と(4)天然由来のプレパラシオン(調合材)の使用は、ビオディナミの大きな特徴となります。

ビオディナミワインのための農事暦は、惑星や星座の位置とともに、ブドウの種蒔きや収穫、ワインの瓶詰などを行うスケジュールが細かく記されていて、月の満ち欠けは特に重要なこととされています。

ブドウ畑全体を一つの生命体系と見なし、宇宙のリズム(波動)という大きな枠組みのなかで位置付けて、ブドウのみならず、病原体や畑に生息する生命体すべてのバランスを整えていく…といった具合ですから、ちょっとスピリチュアルな世界観も伴っています。

「化学的な薬剤を使用せずに自然の力を引き出す」という点では、漢方などの東洋医学に通じるものがありますが、ここでもう一つのビオディナミならではのポイント、「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤についても、少し説明していきましょう。

牛の糞やタンポポなどを牛の角や腸に詰め、土の中で一定期間寝かせたものが「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤で、自然素材由来の肥料として利用されます。

ビオディナミでは、この肥料が栄養豊富な土壌を作り、自然な味わいを楽しめるブドウを育むと考えられています。

そして、ビオディナミ農法で栽培されたブドウ、またそのブドウで造られたワインには、厳格な規定が欠かせないため、認証のシステム(制度)も重要なものとなります。

ビオディナミの認証団体【Demeter】

ビオディナミのワインは、ハードルの高い規定をクリアしなければ、名乗ることができません。ワインに限らず、ビオディナミ(バイオダイナミクス)農法の指導や、それによって生産される食品の認証を行っているのが、「Demeter(デメター、デメテール)」というドイツに拠点を持つ国際認証団体になります。

Demeterは、穀物の栽培を人間に教えたとされるギリシャの豊穣の女神の名前に由来。1924年に始まり、その商標は1928年に登録されました。

現在はアメリカにも組織があり、昨今の自然派志向やサステナブル消費の世界的な隆盛とともに、Demeter の認証マークは50か国以上で使用され、ヨーロッパ以外でも重要な役割を担っています。

編集部おすすめのビオディナミワイン

ビオディナミ(バイオダイナミクス)の理解が深まったところで、「秋の夜長に飲むのにおすすめ!」というビオディナミワインを編集部で厳選しましたので、ご紹介します。

家ごはんにも合わせやすい!北イタリアのビオディナミ

リンゴや桃のようなやさしく包まれるような香りがするピノ・グリージョ種の白ワインです。スッキリとしたキレの良さもあるので、日本の食卓でも重宝する1本です。

2017 ピノ・グリージョ/アロイス・ラゲデール
産地
イタリア・トレンティーノ アルト アディジェ州
品種
ピノ・グリ-ジョ
タイプ
ミディアムライト辛口 白

タスマニア島の骨太なビオディナミ

オーストリアの有名品種、グリューナー・ヴェルトリーナーですが、タスマニアの冷涼な気候の影響もあってか、凝縮感が増し、骨格もしっかりした白ワインになっています。

2014 バイオダイナミック・グリューナー・ヴェルトリーナー/ステファノ・ルビアナ
産地
オーストラリア・タスマニア
品種
グリューナー・ヴェルトリーナー
タイプ
ミディアムフル辛口 白

月を見ながら、秋の夜長にナチュラルなワインを

今では、伝統産地であるブルゴーニュやボルドーの生産者も取り組んでいるビオディナミ(バイオダイナミック)ワインですが、その発祥は1980年代のフランス・ロワール地方。「ビオディナミの伝道師」とも呼ばれるニコラ・ジョリーが、その第一人者と言われています。

目に見えない自然の偉大な力のことを考えると、ちょっと不思議な気分になりますが、科学的にも証明されている“月と連動した潮の満ち引き”と同じように、ビオディナミワインの不思議な魅力や効果も、今後さらに詳らかになっていくことでしょう。

自然をリスペクトし、環境に配慮したサステナブルなワインを造るという点では、現代社会の中で疑いようのない価値を持っているビオディナミワイン。「月を見ながら、乾杯!」といきましょう。

 

自然派の微発泡【ペットナット】他のスパークリングワインとどう違う?

衰え知らずの人気を誇る、スパークリングワイン。そのシュワっとした口当たりはワイン愛好家でなくても、世界の人々を魅了しています。

一方、“食の安心と安全”や健康志向、さらにエコでサステナブルなものを求める傾向も相まって、“自然派”と呼ばれるワインも人気です。

■自然派ワインについては【自然派ワイン】って何?今さら聞けないナチュラルワインの基本とおすすめ店5選 を参照ください。

“スパークリング”と“自然派”。その2つの要素を兼ね備えたワインとして、世界中で人気が高まっているのが、今回のテーマとなるペットナット(Pét-Nat)です。

「初めて聞いた」また「聞いたことあるけどよく分からない」という人は必読!今さら聞けない超基本の話から味わいや製法の特徴、さらに、混乱しがちなスパークリングワインの分類も徹底解説します。

気になる名称「ペットナット(Pét-Nat)」って何? 

まずは「ペットナット」というちょっとユニークな呼び名の話から。フルネームは「ペティヤン・ナチュレル(Pétillant Naturel)」といい、「ペットナット(Pét-Nat)」は略称というわけです。

ペティヤン=弱発泡のワイン
ナチュレル=自然の

という意味があり、その製法や分類については後半で詳しく解説しますが、1990年代にフランス・ロワールの自然派ワインの生産者が、南仏のリムー地域で16世紀に考案された田舎方式の製法(メトード・リュラル Méthode rurale)で造った微発泡のワインを「ペットナット」と呼んだのがはじまり、というのが有力な説です。

ロワールのみならず、ジュラやブルゴーニュなどのフランスの他の地域でも、ペットナットは人気。今ではヨーロッパ各国やアメリカ、オーストラリア、さらに日本でも造られるようになっています。

ペットナット(Pét-Nat)の特徴と魅力

まずはワインボトルに注目。すべてのペットナットがそうではありませんが、王冠で栓をしているものが多いのが特徴です。しっかりと栓がされていることが製法上でとても大事なのですが、カジュアルな雰囲気の演出にも一役買っていると言えるでしょう。

品種は多様で、ロワールの特産であるシュナン・ブランやソーヴィニヨン・ブランはもちろん、シャルドネ、ガメイ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどがあり、白だけでなく、果皮などと一緒に醸したオレンジ(アンバー)もあれば、赤やロゼもあります。

アルコール度は10%前後と低めで軽やか。味わいとしては、ほんのり甘いのものからキリッとドライなものまでありますが、フレッシュな果実味とじんわり広がるうま味が特徴と言えるでしょう。

できるだけ自然のままに仕上げるということで澱引きをしないため、うすにごりの状態のものが多いのもポイント。自然派ワインの愛好家はよく「にごり(澱)=うま味」と言ったりしますが、これにはちょっとご注意を。

澱は活動を終えた酵母の死骸であり、たしかにアミノ酸を多く含んでいますが、必ずしも多ければ多いほどおいしいということではありません。

また、残念ながら硫黄のような還元臭が強いものに当たることも。家飲みで当たってしまった場合は、シュワシュワ感をあきらめて、スワリングで還元臭を飛ばしてみるというのも一つの方法です。

■スワリングについては、グラスをくるくる・・・ワインの【スワリング】の意味とNG、すべて教えます! で詳しく説明しています。

「田舎方式の製法」ってどういう造り方?

ペットナットの特徴が分かったところで、それを生み出す製法の話に移りましょう。先ほどもちらっと出てきた「田舎方式の製法」の解説です。

田舎方式の製法は、瓶内二次発酵を行うシャンパンやカバなどの製法(メトード・トラディッショネル)や大きなタンク内で二次発酵させるシャルマ方式とは異なり、

メトード・リュラル(Méthode rurale/田舎方式)
メトード・アンセストラル(Méthode ancestrale/古代方式)
メトード・ディオワーズ(Méthode dioise/ディーという生産地の方式)

などと呼ばれます。

■シャンパンやカバなどの製法(メトード・トラディッショネル)については、何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ を参照してください。

この田舎方式の製法は、アルコール発酵の途中で残糖がある状態で瓶詰めをしてしまいます。瓶内ではそのままアルコール発酵が続くので、炭酸ガスも発生。王冠などで密閉することによって、炭酸ガスはそのまま閉じ込められるという仕組みです。

シャンパンやカバのように、二次発酵中の動瓶、澱引き、ドサージュ…といった手間は掛からなくなりますが、シンプルであるがゆえに、安定したものを造るのはかえって難しい!

瓶詰め後にも良いバランスで発酵させないと、瓶が破裂したり、逆にガス圧が弱すぎたり…季節で温度が変われば、再発酵が起こることも。また、瓶内で発酵した後の糖分がどれだけ残るかによって、味わいの甘辛度も変わってくるというわけです。

この製法に加えて、“自然な造りであること”も重要なポイントとなるのが「ペットナット」。その製法の特徴は、主に3つあると言えるでしょう。

(1)培養酵母ではなく野生酵母で発酵させること
(2)ドサージュなどの糖類の添加はなし
(3)途中までタンクでアルコール発酵させたら、ろ過・清澄はほぼせずに瓶詰めして継続発酵させること

スパークリングワインと一口に言っても、いろいろなものが存在。ちょっと混乱してくる方もいると思うので、次に分類&整理しておきましょう。

世界のスパークリングワイン、分類&整理しておこう!

EUの基準では3気圧以上のものを「スパークリングワイン」と定めていますが、ここでは「スパークリングワイン=発泡性のあるワイン」ということで進めていきたいと思います。

泡の強さ(ガス圧)や製法、また国によってスパークリングワインは呼び名がたくさん!そこで、主なものを一覧に整理したので、見てみましょう。

すべて覚える必要はありませんが、有名なスパークリングワインは知っておいていて損なし!ぜひ以下の記事も併せてチェックしてみてください。

何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのスパークリング「cava」を極める

ペットナットは、楽しみ方も自由に!

シュワッとした自然派ワイン。ペットナットは、気取らず気張らず、日常のものとして自由に楽しみたいスパークリングワインと言えるでしょう。

まずは、しっかり冷蔵庫で冷やして、軽やかな泡を舌と喉で楽しむ。だんだんと温度が上がってきたら、フルーツや酵母由来の香りをしっかりと鼻で感じる。泡が立ち消えたら、じっくりと口内でうま味を味わう…少しずつ表情を変えるペットナットを、ぜひ堪能してみてください。

家飲み用にワインショップで購入するもよし!ですが、自然派を謳うワインバルやオーガニックな食材にこだわった飲食店では、ペットナットを常備していることが増えてきました。

そこで、最後にペットナットをグラスでも提供してくれるおすすめ店をご紹介。世界中のチーズを使ったオリジナル料理も注目の一軒です。

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。

ペットナット&チーズ料理【バール ア フロマージュ スーヴォワル】

グラスでも10種~14種が楽しめるワインは、自然派が目白押し。しかも、ペットナットが基本的にはラインナップにも加わっています。

店名にある「スーヴォワル」は、産膜酵母の「膜の下」という意味。ワイン通なら、シェリー酒やヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)といったワインの製法とともに知っているキーワードですが、もうこの店名からしてマニアック。

チーズ料理のバラエティも都内随一。チーズプロフェッショナルとソムリエのW資格をもったスタッフが複数いるので、分からないことはなんでも聞いてみましょう!連日満席の人気店なので、事前予約がおすすめです。

バール ア フロマージュ スーヴォワル
  • 住所:〒158-0094 東京都世田谷区玉川4-5-6 1F
  • TEL:03-6805-6399

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】土着品種って知ってる?限られたエリアで作られるレア品種

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】ブドウ品種の栽培面積ランキングTOP5をご紹介!で、栽培面積の広いTOP5の品種をご紹介しましたが、では逆に、栽培面積が小さい(狭い)ブドウの品種が気になるのが人の常(ですよね?)。

栽培面積が小さい(狭い)と言っても、その品種から造られるワインが市場に出回らないほどの超マイナー品種ではなく、お目にかかる頻度は少ないかもしれないけど日本にいても味わうことができるレベルの、栽培面積が小さい品種のランキングをご紹介します。

これまでの記事での人気品種を制覇してみるも良し、今回のレア品種の魅力を探求するも良し、様々なワインを味わうきっかけになればと思います。

栽培面積1,000ha未満!その①【フラッパート】

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには でもご紹介した、渋みも少なくやさしい果実味を楽しめるフラッパートは、シチリア島のごく一部のエリアで栽培される黒ブドウ。わずか750haしかありません。舞浜の“ねずみの国”一帯の3.5倍ぐらいの大きさで、東京23区で一番小さい台東区よりも狭い面積です。

フラッパートからは、ラズベリーやクランベリーを思わせる、赤いキュートな果実の香りで、“ボディ”で言えばライトボディの軽やかなワインが造られます。

ピノ・ノワールのように酸味をやや感じるワインになりますが、ピノ・ノワールよりも明るい、陽気な印象。まさに、シチリアの風土を思わせる味わいで、トマトソースのパスタやカポナータなど、トマトを使った料理が食べたくなるワインです。

ただし、フラッパート100%のワインはレア。こだわりのイタリアンレストランやワイン専門店では時々見かけますが、実は、補助品種としての立ち位置の方が多い品種です。

例えば、シチリア州(島)で唯一となるDOCG(イタリア最上位の原産地呼称)ワインであるチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアで使われています。同じくシチリアならではの品種であるネロ・ダヴォラが主体で、フラッパートは30~50%ブレンドされています。

栽培面積1,000ha未満!その②【モスホフィレロ】

超が付くほどのワイン好きや、長年ソムリエをやっている人でもなかなか存じ上げない(笑)品種がモスホフィレロ。しかし、改めてソムリエ教本をめくってみると、ちゃんと載っています。

初めに「日本にいても味わうことができるレベルの…」とお伝えしてしまいましたが、このモスホフィレロは例外。滅多にお目にかかれない品種のワインです。

ギリシャのペロポネソス半島や地中海の島々の、比較的標高のある地域で栽培される白ブドウで、その面積は930ha。できるワインは、甘やかなフローラル系の香りと爽やかでしっかりした酸が特徴です。「ミュスカとソーヴィニヨン・ブランを足して2で割ったような雰囲気」と表現する人もいるような味わいです。

栽培面積1,000ha未満!その③【サグランティーノ】

長靴の形をしたイタリア半島で、唯一の海なし州であるウンブリア州。半島部分のちょうど中心に位置しています。このウンブリア州がメイン産地であるサグランティーノも、栽培面積990haという限られたエリアで栽培されるレア品種ですが、モンテファルコ・サグランティーノというイタリア最上位の原産地呼称(DOCG)ワインが造られる黒ブドウ品種です。

サグランティーノは、とても個性的な品種。ポリフェノール含有量がとても豊富で、ワインの色みも味わいもとにかく濃厚。桑の実やプルーンにスパイスのニュアンスも感じる香りで、しっかりしたタンニンを有するワインになります。

モンテファルコ・サグランティーノは長い間、陰干ししたブドウを使って造る甘口ワインが主流でしたが、1993年に辛口ワインもDOCGに認定されました。ちょうどこの頃、日本でもこのワインが注目を集めたのですが、それは、元日本代表のサッカー選手が“ペルージャ”に在籍していたからかもしれません。「モンテファルコ」は、ウンブリア州のペルージャ県にある1つの村の名前です。

栽培面積2,000ha未満!その①【フィアーノ】

風光明媚な地中海沿岸の街、ナポリが州都のカンパーニア州や、そこから南方にある島、シチリア島で古くから栽培されてきた白ブドウ。どれくらい古いかと言うと、古代ローマ時代にも栽培されていたとか、もしかしたら古代ギリシャ人も栽培していたかもしれないと言われる品種です。

古代ローマ時代に「ミツバチに愛された」と言う意味の“アピアーヌム”と呼ばれていたワインは、このフィアーノから造られたワインだと言われており、糖度の高い果実にはミツバチが群がってきます。

オレンジピールやアカシアなどの花の香り、さらにヘーゼルナッツのニュアンスも感じられ、香り豊かな華やかな印象のワイン。温暖な地域のブドウは酸度が下がりやすくなりますが、フィアーノは、イタリア南部で造られるにもかかわらず酸もしっかりあるワインになります。ミネラルとコクを併せ持つ厚みのある味わいで、フィアーノ・ディ・アヴェッリーノというDOCGワインが造られています。

栽培面積1,370ha。生産性の低さから一時絶滅が危惧された品種ですが、カンパーニアの老舗ワイナリーの活躍もあり見事に復活。わずかですが、オーストラリアでも栽培されています。

栽培面積2,000ha未満!その②【ブラケット】

ブラケットは、イタリア北部のピエモンテ州がメイン産地の黒ブドウブラケット・ダックイという微発泡の甘口赤ワインが造られる品種です。赤のスパークリングワインと言えば、同じイタリアのランブルスコが有名ですが、実はブラケット・ダックイの方が格が上のDOCGワインです。

栽培面積1,460haと小さく、生産量も限られているので、地元消費が多いゆえに知名度ではランブルスコに引けを取っている感じですね。ただ、ブラケット・ダックイの歴史は古く、ジュリアス・シーザーがクレオパトラへの献上品にしたという逸話もあるくらいです。

バラやスミレと言ったアロマティックな香りが特徴で、ポリフェノールが豊富なワイン。軽やかな甘さと酸味のバランスが絶妙で、アルコール度数も低めなので、アペリティフにもってこいのワインです。

栽培面積2,000ha未満!その③【ピクプール】

ちょっとかわいらしい名前の品種、ピクプールは、フランス・ラングドック地方の海の近くで栽培される白ブドウ。「舌を刺す」という意味を持つ品種名の通り、しっかりとした酸とミネラルが特徴のワインが造られます。

オレンジやグレープフルーツと言った柑橘系やハーブの爽やかな香りがしっかりあり、味わいも、温暖な地域らしい果実味に加えて、温暖な地域らしからぬしっかりした酸とミネラルを感じます。

ピネ村周辺の地域で、ピクプールから造られるワイン、ピクプール・ド・ピネは牡蠣をはじめ魚介との相性が抜群。それもそのはず、このピネ村近くにあるトー湖は、牡蠣の名産地なんです。牡蠣のみならず、お寿司との相性もいい。イカのフリットとも好相性。

栽培面積1,490ha。日本でもよく見かけるワインなので、この面積の小ささは意外でしたが、日本人の口に合う味わいだから、積極的に輸入されているのかもしれませんね。

栽培面積2,000ha未満!その④【アシルティコ】

ワイン大国・フランスよりも、ワイン造りでは長い歴史を持つギリシャ。ギリシャから、イタリア、さらにフランスにブドウが広がったとされていますが、そのギリシャを代表する白ブドウのひとつにアシルティコがあります。

サントリーニ島などエーゲ海の島々が主な産地。海風がとても、とても強く吹く産地で、その強い風からブドウの育成を守るために樹を低く仕立て、枝をらせん状に巻きバスケットのような形の樹に白ブドウがなります。ブドウの樹も、栽培する環境によっていろんな形に仕立てられるんですね。

柑橘系のフレッシュな香りと豊かな果実味、しっかりした酸に加え、岩塩のような塩味も感じるワインが造られます。アルコール度数も高めで、白ワインにしてはしっかりパワフルな味わい。ブドウ樹の仕立てだけでなく、ブドウそのものもなかなか個性的です。

栽培面積1,700ha。ほぼギリシャで造られますが、近年様々な品種栽培にチャレンジしているオーストラリアでも一部栽培されています。

栽培面積2,000ha未満!その⑤【クシノマヴロ】

同じくギリシャを代表する、黒ブドウで有名なのがクシノマヴロ。Xino(クシノ)が酸、Mavro(マヴロ)が黒い、つまり「酸のある黒ブドウ」と言う意味の品種名の通り、しっかりした酸とタンニンが特徴。その含有量は、イタリアのバローロを造るネッビオーロに匹敵します。ですので、クシノマヴロから造られるワインの中でも、長期熟成させた上質なものは、バローロに肩を並べる品質と言われます。

クシノマヴロから造られるワインは、大きく分けて2つのタイプがあり、ほのかに酸化熟成香が漂う、エレガントタイプのワインと、豊かな果実味を活かした肉厚タイプのワイン。どちらのタイプも、クシノマヴロの個性がはっきりと映し出されたワインとして評価が高いです。

栽培面積1,970ha。これはもう、ギリシャでしか栽培されていないと言っても過言ではない品種でしょう。

レアな土着品種の良さを知る

敢えて産地を限定してピックアップしたわけではないのですが、今回ご紹介した品種8種類のうち7種類がイタリア、ギリシャの土着品種。ピクプールもフランスではありますが、地中海に面したラングドック地方の土着品種です。

これは原産地の品種を、また原産ではないけれども昔から地元で作られてきた品種を、大事に大事に守り育ててきている、ということにほかなりません。そして、そこの地域“だから”できる個性を、ブドウのマイノリティとして価値を認めている、とも言えるでしょう。

ワインを生産する国は、何ヶ国あるのかわからないくらい、たくさんあります。古代や中世からブドウ栽培やワイン醸造が行われてきたヨーロッパの国々では、その土地ならではの品種、まだまだ知られていない多くの品種から、ワインが生まれています。

特にイタリアやギリシャは、こういった土着品種の種類が多いことで有名な生産国です。日本でもこれらの品種のワインを目にする機会があったら、是非味わってみてください。きっと、ワインの奥深さに触れることができるでしょう。

 

何が違うの!?フランスの「シャルドネ」とカリフォルニアの「シャルドネ」

好みのワインを知るには「品種」を知る。

よく言われるハナシですね。「とりあえず赤ワイン用3種類、白ワイン用3種類の計6種類の品種は押さえましょう!」なんて言う人もいます。

もちろん品種だけでワインの味が“確定”するわけではないのですが、大まかな味の「方向性」は決まってくるので、この説を否定するつもりはありません。ですが、この6種類の中で、それだけでは好みのワインにたどり着けない可能性が大きい品種が一つあります。

それは「シャルドネ」。おそらく日本人が一番知っているブドウ品種で、おそらく日本人に一番人気のある品種かと思います。「ほかの品種は知らないけど、シャルドネだけは知っている!」という人も多いのではないでしょうか。

そんな人気と知名度を誇るシャルドネ。そのブドウが、品種の特徴を知っているだけでは好きな味にたどり着けないなんて…厄介ですね。

今回は、品種の特徴以外に押さえておきたいポイントをお伝えします。これがわかれば、今後のあなたのワインライフがもっともっと充実したものになること、間違いなし!です。

シャルドネのワインってどんな味わい?

「シャルドネ」は、白ブドウの王様とも称されるくらいメジャーなブドウ品種です。では「シャルドネから造られるワインってどんな風味?」と聞かれたら、どのように答えるでしょうか?

「すっきりしていて飲みやすい!」という人もいれば「コクがあってまろやかでおいしい!」と答える人もいます。

ん?待て待て!この2つの味わいって、相反しませんか?フルーツで言ったら、レモンとマンゴーぐらい違う。豚肉で言ったらポン酢でいただく豚しゃぶと、とろとろの角煮ぐらい違う。

人の味覚は十人十色ではあるけれど、ここまで180度印象が違うことって…あり得ませんよね。その理由を探る前に、「シャルドネ」というブドウにはどんな特徴があるでしょうか。

冒頭の「まずはこの6品種を押さえておけ!」のような話の中で、品種の特徴を説明している本やサイトをよく見かけますが、某有名経済紙のサイトでは、品種の説明を「女の子」でされていました。その方の「シャルドネちゃん」は、「何にでもすぐ染まってしまう無個性女子」というキャラクターでした。めちゃめちゃ納得です。

シャルドネという品種はよく「特徴がないのが特徴だよね」と言われます。

「特徴がないのが特徴」。音で聞いたときは、普通に「特徴」という漢字をあてはめましたが、もしかしたら後の方のトクチョウは「特長」かもしれません。無個性というとネガティブなイメージになるかと思いますが、誰にでもなじめるキャラクターって、人でも貴重な存在だと思います。

栽培環境で大きく異なる「ブドウの樹」

ワインの原料であるブドウは農作物です。農作物である以上、気候や土壌が、実る作物に大いに影響を与えます。作物の種類にもよりますが、多くの作物は、程よい気温と程よい降雨量があり、そして有機物が豊富な肥沃な土壌でよく育ちます。

例えば、現在は品種改良のおかげで北海道でも稲作は行われていますが、それまでは気温が低すぎて稲が育たず、かわりに広大なジャガイモ畑が広がっていました。沖縄では、有機物の乏しい粘土質の土壌がほとんどなので稲作に適していないと言われ、暑い気候を生かしてサトウキビ畑が広がっています。逆に本州は、多量な降雨にもかかわらず国土の7割近い山岳地帯が降雨をせき止め、恵まれた肥沃な土壌の平地には程よい水分を与えて、昔から稲作が盛んな地域です。

同じ「ブドウ」という作物の同じ「シャルドネ」という品種でも、ジャガイモとサトウキビくらい異なる作物になる、ということです(いや、ここまで違うことはないか…)。

「テロワール」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。厳密な日本語に訳すことが難しいフランス語ですが、ブドウの樹を取り巻くすべての環境を意味しています。気候風土から土壌まで。

先述の通り、農作物は栽培環境に影響されますが、ワインにおいて殊さら「テロワール」という言葉が出てくるのは、ブドウという植物は特に栽培環境に影響されやすく、ひいてはワインのキャラクターにも影響するからです。男爵とメークインは味も形も異なりますが、北海道の男爵と長崎の男爵の味はそれほど違いがありません。しかし「シャルドネ」は産地によって雰囲気が異なるのです。

「すっきり系シャルドネ」の代表は、この品種の生まれ故郷のワイン

「すっきりしていて飲みやすい!」というシャルドネは、冷涼な地域で造られたワインでしょう。例えば「シャブリ」。これは、フランスのブルゴーニュ地方シャブリ地区で造られる超ド級に有名な、シャルドネから造られる白ワインです。

シャブリ地区はどこにあるかというと、パリからおよそ南東に180km、パリ市内を流れる優雅なセーヌ川の上流地域にあります。北緯47度。北海道の稚内が北緯45度、ブドウの栽培地域の北限が北緯50度と言われているので、かなり冷涼な地域であることが想像できるかと思います(緯度の高さと気温の低さは比例せず、稚内よりもシャブリ地区の方が年間平均気温は5度ほど高いですが)。

「シャブリ」について興味がある方は、この記事もどうぞ!
「シャブリ」という名前のワインがいっぱいあるワケ

冷涼な気候で育つブドウは、シャルドネに限らず、酸度が高くなり、逆に糖度が上がりにくい傾向になります。

加えて「シャブリ」は、かなり特徴的な土壌が広がる地域で、石灰岩質の中でもまた特異なキンメリジャンと呼ばれる土壌で、豊富なミネラルを含みます。この土壌のミネラルがブドウの生育にも何かしらの影響を与えていると言われています。

ミネラル…どういう風味になるのか、ということは議論され続けて久しいですが、ここでは厳密な「ミネラル」の定義は脇に置いておいて、「すっきり」と「まろやか」の相反する2つの味わいを説明するためにあえてわかりやすく例えます。

硬水と軟水です。ミネラルを多く含むワインは、コントレックスのような硬水をイメージするとわかりやすいでしょう。硬水は文字の通り、硬さを感じます。硬さは、温度でいえば冷たいイメージにもなります。そして、しゅっと引き締まったイメージになります。

つまり「シャブリ」は、冷涼かつ特殊な土壌から造られるワインなので、酸がきれいに効き、引き締まった味わいのワインになる、ということなのです。

2018 シャブリ/ドメーヌ・ド・ラ・コルナス
産地
フランス・ブルゴーニュ地方(シャブリ地区)
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 白

「まろやか系シャルドネ」の代表は、この品種の生産量世界第2位の国のワイン

一方、「コクがあってまろやかで美味しい!」というシャルドネは、比較的温暖な地域で造られたワインでしょう。例えば、カリフォルニアのシャルドネのワイン。カリフォルニアもシャルドネの栽培が盛んな地域で、今現在フランスに次いで世界第2位の生産量を誇る地域です。

カリフォルニアワインの基本については、こちら!
【カリフォルニアワイン】基本からトレンドまで。編集部おすすめの10本も紹介!

一日を通して過ごしやすい穏やかな気候の地域で育つブドウは、冷涼な気候のそれとは真逆で、酸度が上がりにくく糖度が上がりやすくなります。カリフォルニアでは、海岸沿いのエリアは割と冷涼なので、産地が内陸に行けば行くほど、豊満でパワフルなシャルドネワインになります。「シャブリ」とは真逆のキャラクターですよね。

カリフォルニアと言えば、有名な産地として「ナパ・ヴァレー」があります。南北に細長いカリフォルニア州の真ん中よりやや上(北)寄りにあるサンフランシスコから、北に約50kmの位置にあるナパ・ヴァレー。海寄りのエリアなので比較的冷涼な地域であり、夏の平均気温は最高28℃、最低13℃ほどになります。

それほど温暖とは言えないナパ・ヴァレーですが、ブドウの収穫時期(8月~9月)に雨がほとんど降らないので、しっかりブドウが熟しきるのを待って収穫できます。しっかり熟す=糖度が上がるので、パワフルなワインを造ることができます。

ジョエル・ゴット / シャルドネ サンタ・バーバラ・カウンティ 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / セントラル・コースト / サンタ・バーバラ
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

「染まりやすい無個性」は、いろんなキャラクターに変身できる

シャルドネ以外のブドウ品種でも、産地による違いは同様にあります。しかし、シャルドネがその違いを感じやすいのは、先述した通り「何にでもすぐ染まってしまう無個性女子」というキャラクターゆえ。産地の違いによるブドウの個性に造り手の思惑が掛け合わされて、世界中で様々な雰囲気のシャルドネワインが造られています。

「シャブリ」はその土地ならではの特徴を表現すべく、樽熟成はしても古樽でほんの少し。透き通るような素肌を持った女の子に過剰なお化粧は不要、というスタンスなのかもしれません。

カリフォルニアのシャルドネが、すべて厚みのある味わいのパワフルなワインではありませんが、そういったワインは、ジューシーさあふれるブドウに「樽熟成」のお化粧をプラスすることで、複雑な味わいのワインを表現しています。インド系の目鼻立ちの整った美女が、バッチリメイクしたような感じでしょうか。

これであなたも「シャルドネマスター」!

ワインはよく「ウンチクがウザい」と言われます。ですが、「飲むワインを外したくない」「おいしいワインに出合いたい」と思えば、品種に加えて産地の特徴も知っていた方が、その可能性がぐっと高くなることは間違いありません。すっきり系が好きならフランスのシャルドネ、まろやか系や好きならカリフォルニアのシャルドネ、これを知っているだけで、ワイン選びのハードルは少し下がるはずです。

今回はわかりやすく、国というレベルでの比較を紹介しましたが、もちろん、同じ国の産地違いでも異なる雰囲気を感じます。例えば、シャブリとムルソー。ムルソーは、シャブリと同じブルゴーニュ地方を代表するような有名白ワインです。国違いのシャルドネのワインを飲み比べの後は、同じ国の産地違いの飲み比べもぜひ試していただけたらと思います!

2018 シャブリ/ドメーヌ・ド・ラ・コルナス
産地
フランス・ブルゴーニュ地方(シャブリ地区)
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 白
ファビアン・コシュ / ムルソー レ・シュヴァリエール 2013
産地
フランス / ブルゴーニュ地方 / コート・ド・ボーヌ / ムルソー
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

レストランで、ワインショップで、本当に自分好みの「シャルドネ」を選べるようになれたら、ますます楽しいワインライフになるはずです!

 

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】栽培面積ランキングTOP5に注目

photo: Chateau Cos D’Estournel, Bordeaux Region, France

「自分好みのワインを知るための品種のハナシ」では過去5回、渋味酸味、さらにボディと言う軸で、味わいから好みのワインを選べるように品種をご紹介してきました。今回は“番外編”として、全世界での栽培面積ランキングTOP5の品種をご紹介します。

あなたのお好きな品種が、世界中でどれくらい栽培されているのか、また、よく知る国以外でどんなところで作られているのかなど、今回はちょっと違った角度から“ワイン”を眺めてみてください。もしかしたら意外な気づきや発見があるかもしれません。

栽培面積、世界第1位!【カベルネ・ソーヴィニヨン】

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはでもご紹介した、超有名品種のカベルネ・ソーヴィニヨン。堂々の世界一の栽培面積を誇ります。その面積288,770ha。その広さがどれくらいなものなのか見当つかない…ですよね。東京ドーム61,440個分です。…うーん、やっぱり見当つかない(汗)。

日本の都道府県で近しいサイズを調べてみました。神奈川県が241,600haなので、神奈川県が全部カベルネ・ソーヴィニヨンの畑だったとしても、それよりもさらに広い、ということになります。

上記の円グラフを見ていただいてもわかるように、北半球・南半球問わず、現在の主要なワイン生産国のほとんどで栽培されている品種です。この品種は、いろんな産地のワインを飲み比べてみるのも、面白いかもしれません。

杉など針葉樹のような、青っぽい清涼感を感じる香りが特徴的なカベルネ・ソーヴィニヨンですが、この香りの強さが産地によって異なるのがおもしろいところ。タンニンも比較的しっかりある品種ですが、渋みよりも果実味の印象を強く感じるのは、アメリカやチリのワインが多いかもしれません。

アメリカの「カルトワイン」やイタリアの「スーパータスカン」と呼ばれる、ちょっと特別なワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしたワインです。言わずもがな、フランスの「五大シャトー」のワインもそうです。世界中で作られているメジャーな品種ですが、各国の高級かつ高名なワインを生み出す品種。栽培環境をそれほど選ばないけれども、こだわりぬいた気候土壌で丁寧に作れば、愛好家垂涎の高級ワインも造られるという、非常に興味深い品種がカベルネ・ソーヴィニヨンです。

栽培面積、世界第2位!【メルロー】

世界のワイン首都・ボルドー原産で、第1位のカベルネ・ソーヴィニヨンとは兄弟と言うより双子のような存在のメルロー。ボルドーの赤ワインのほとんどが、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが主体で造られるブレンドワインです。

ブレンドされていつも一緒、だから“仲良し兄弟”とも言えますが、実は、メルローのお母さん(お父さん?)とカベルネ・ソーヴィニヨンのお母さん(お父さん?)は同じカベルネ・フラン。だから正真正銘の“兄弟”なんですね。

世界中で267,210haものメルロー種のブドウ畑が広がりますが、カベルネ・ソーヴィニヨンと違い、約半分がフランス。しかもほとんどボルドーの畑になります。

ふくよかで口当たりのよいワインになる品種。カベルネ・ソーヴィニヨンを「逆三角形の水泳選手」と例えました(【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには)が、メルローは「女性アスリート」のような品種。やや丸みを帯びたしなやかさを感じる骨格が印象的。

ボルドーワインの多くがカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインですが、一部の地域ではメルロー主体のワインも造られます。また、アメリカなどでは、メルロー100%のワインも造られます。メルローの味わいを感じてみたいと思ったら、これらのワインを一度飲んでみるのもいいかもしれません。「女性アスリート」が頭の中に浮かんでくることでしょう(笑)

栽培面積、世界第3位!【アイレン】

ここでいきなり、あまりなじみのない品種が登場します。252,300haという広大な面積で栽培される品種にもかかわらず、それがほぼ1ヶ国で栽培されているアイレンです。1つの国どころか、ほぼ、首都マドリッドの南東側を取り囲むように位置するカスティーリャ・ラ・マンチャ州で栽培されている品種です。

カスティーリャ・ラ・マンチャ州をはじめスペインの中央部は、とにかく暑く極度に乾燥した気候。そんな気候にも適した品種で、生産性の高い品種。アルコール度数と酸が高くなりがちな白ワインが造られます。

当然、スペイン国内で一番栽培されている白ブドウ。日本にも多く輸入されていますが、そのほとんどは、リーズナブルでカジュアルな白ワインです。

広大な栽培面積を誇るのに、生産されるワインがあまりメジャーではないのは、作られたブドウがすべて“白ワイン”になるわけではなく、ブランデーの原料にもなっているからです。スペインのブランデーとしてヘレス産が有名ですが、これはシェリーを造る際に添加される蒸留酒として昔から造られていました。シェリーにも、実はアイレンが使用されているんですね。

余談ですが、フランス国内で最も栽培面積が広い品種はユニ・ブランという白ブドウになります。このユニ・ブランも、コニャックやアルマニャックと言った世界的にも有名なブランデーの主要品種。ブランデーは蒸留するので、たくさんのブドウが必要なんですね。

栽培面積、世界第4位!【テンプラニーリョ】

引き続き、スペインを代表する品種。第4位は黒ブドウテンプラニーリョです。232,530haの内訳は、やはりほとんどがスペイン。スペインの高級ワインからカジュアルなワインまで幅広いワインを造る品種です。

スペインを代表するトップワイナリーであるベガ・シシリアが造る「ウニコ」というワインをご存じでしょうか?高級ワイン産地として名高いリベラ・デル・ドゥエロで造られる、スペインの高級ワインです。このワインは、数パーセントだけカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしますが、9割以上がテンプラニーリョです。

イチゴやプラムの香りが華やかで、程よい果実味、程よい渋味、程よい酸をもつワインになります。何事もほどほど、ということは、バランスがいい反面、これと言った特徴に欠ける品種かもしれません。ただ、長期熟成させたワインになると、ドライイチジクのような芳醇な香りをまとい、得も言われぬしとやかで滑らかな味わいにうっとりすることでしょう。

ただコノヒト、スペイン国内でも産地によって品種名が変わるという、ソムリエ試験受験者泣かせな品種。ティント・フィノ、センシベル、ティンタ・デ・トロ、ウル・デ・リェブレ、アラゴネス(ポルトガルでの呼び名)…これらすべて、テンプラニーリョのことです。

栽培面積、世界第5位!【シャルドネ】

ようやく登場!白ブドウの王様、シャルドネ【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶにはでもご紹介しているので、この品種の特徴はそちらでもご覧ください。

世界の栽培面積196,110haは、東京都の面積(219,100ha)よりもやや小さい広さ。ですが、上記の円グラフのとおり、様々な国で栽培されています。そのバラエティの豊かさは、カベルネ・ソーヴィニヨンの産地のバラエティに匹敵します。

また、カベルネ・ソーヴィニヨン同様、産地によって風味も異なります。シャンパーニュやブルゴーニュの北部などの冷涼な地域のワインは、リンゴのような香りが特徴的ですが、アメリカやオーストラリアのような、比較的温暖な地域のワインは、白桃やパッションフルーツのような、やや濃厚な香りが楽しめます。

世界のメジャー品種は大体作っているチリにおいて、シャルドネの栽培面積シェアが意外にも小さいことに驚かれる方もいらっしゃるでしょう。その理由は、チリが本格的にワイン造りを始めた当初は「ボルドー品種」と呼ばれるブドウがメインでした。赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨンと白ワイン用のソーヴィニョン・ブランです。

ブルゴーニュの品種であるシャルドネは、当初チリでは重要視されていなかったのですが、世界がシャルドネに注目をし始めてから、チリでもシャルドネの畑が徐々に増えてきているのが現状です。

栽培面積に注目すると、ワインがもっと楽しくなる!

栽培面積のTOP5はいかがでしたでしょうか?ワインは工業製品と違って、人気があるから簡単に生産量を増やせるわけではなく、むしろ逆のことの方が多い印象です。原料であるブドウも、大量に収穫しやすい品種が単純に優れているということではなく、1本の樹から収穫できるブドウの房を減らすことによって、凝縮した複雑な味わいのワインができるとされています。

ですので、ブドウの収穫量ランキングではなく、栽培面積ランキングをご紹介しました。収穫量の多いブドウからは、デイリー利用のカジュアルなワインが生み出されることが多いからです。

ワインの楽しさのひとつは、その多様性にあると思います。1杯のワインの複雑な香りや味わい。1つの品種でも産地や造り手による個性の違い。1本のワインのヴィンテージによるキャラクターの差異。

温暖な地域で、手をかけなくてもわんさかとブドウが実り、大規模なメーカーで大量生産されるような、マスに受け入れられる味わいのデイリーワインでは、この「ワインの楽しさ」は共有しきれません。ですので、“収穫量”ではなく“栽培面積” に今回はフォーカスをあてて、ご紹介しました。

カベルネ・ソーヴィニヨンが世界一の栽培面積を誇るのは、比較的どこでも栽培しやすい品種ということだけでなく、多様性を持ちながら、その味わいが世界中の人に受け入れられたからですが、それを仕掛けた人の話はまた別の機会にお伝えしたいと思います。

 

何が違うの!?食べるブドウとワインになるブドウ

そもそも、食べるブドウとワインになるブドウは違うのか、という話ですが、大雑把に結論を言うと、植物学的には分類が違うということになります。

ブドウは、ブドウ科ブドウ属の植物。ブドウ属の下位区分としていくつかの分類がありますが、この食べるブドウとワインになるブドウは違う分類に属します。

分類が違うとブドウそのものは何が違うのか、というところにフォーカスしてそれぞれの特徴を簡単に示しながら、「食べるブドウでワインは造れないの?」「ワインになるブドウは食べられないの?」といった疑問にも答えていきたいと思います。

食べるブドウは瑞々しくておいしい!

私たちが普段食べているおいしいブドウは、どんなフルーツでしょうか?

上の画像は巨峰とシャインマスカットの写真ですが、見た目は、直径2~3cmくらいの球状の粒がいっぱい付いた房、ですね。

黒っぽい紫色や黄緑色、最近は赤っぽい皮のブドウも多くなりましたが、その皮の中に、白っぽい果肉とジュワッと湧き出す果汁があり、その味は、比較的酸味は控えめで、フルーツらしいやさしい甘さがあります。中には、濃厚な甘さの品種もあります。

様々な品種改良のおかげで、食べやすくおいしいブドウが増えました。最近のトレンドは「大粒・高糖度・種なし・皮ごと」のようです。皮ごと食べても、酸っぱさや渋さを感じない、口の中にモソモソ感が残らない、皮の薄い品種が人気のようです。

ワインになるブドウはおいしくない!?

ワイン…特に赤ワインの味を想像すると、ワインになるブドウって、甘さに乏しくて、酸っぱくて、渋かったり苦かったりして、何だかおいしくなさそう、と思われたりします。

でも実は、ワインを造るブドウってかなり甘いんです。品種にもよりますが、「食べるブドウ」よりも糖度が高いこともあります。この高い糖度は、ワインになる際に絶対に必要なモノなのです。

なぜならアルコール発酵は、糖が分解されてアルコールになるからです。糖がないとアルコールは生まれません。15度近いような高いアルコール度数のワインを造ろうと思って、あえて陰干しして水分を飛ばし、糖度を高めたブドウを使って醸造する造り方もあるくらいです。

なので、ワインになるブドウを生で食べても普通においしい。ただ、ワインの味はしません(笑)。きっと、想像通りの“ブドウの味”です。甘くておいしいので、ワイナリーのブドウ畑には、鳥や小動物の“お客様”が度々訪れます。動物の方が、畑の美味しいものをよく知っているのですね。

ただヒトにとっては、おいしいけれど皮が厚くて小粒なので、食べにくいのは否めません。この、食べるのには不都合な特徴が、ワインを造るブドウとしては必要な要素になるのです。

赤ワイン造りに必要なのは糖分、そして分厚い皮と種

植物学的に、ワインになるブドウの種類を、ヴィティス・ヴィニフェラと言います。ヨーロッパ原産のブドウで、やせた土地や乾燥した気候でも育ちますが、逆に肥沃な土壌や雨の多い地域は栽培に向かない品種群になります。ワインでよく見るカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、シャルドネやソービニヨン・ブランなどがこのカテゴリーになります。

特に黒ブドウは比較的小粒で、直径およそ1.5~2cm程度。皮が薄紫色で、昔から馴染みのある「デラウェア」の粒の大きさを想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。皮も厚みがあり、もちろん種もしっかりあります。色素成分のアントシアニンも豊富なものが多い。成熟して糖度が上がっても、酸度が下がりにくい、という特徴があります。

果汁に占める水分量が比較的少ないのも、特筆すべき点です。なぜなら、食べるブドウ並の水分量があると、できたワインが水っぽくなってしまうからです。

小粒で皮も厚い、ということは、一房当たりの果肉・果汁に対する果皮の割合は、食べるブドウよりも高くなります。水分量が少ないうえに果皮の割合も高いことが、ワイン向きのブドウと言われる所以です。なぜなら赤ワインは、果汁果肉に、果皮や種を漬け込んで色素や味の様々な成分を抽出させるから。

この辺のハナシは、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編でもご紹介しているので、ぜひご一読ください。

ブドウのカベルネ・ソーヴィニヨンは、ワインの香りがするのか

ワインは、品種によって味わいや香りに特徴がありますが、それは“ブドウの時代”からあるものではなく、多くは醸造の過程で出るもの。

カベルネ・ソーヴィニヨンで造られたワインが持つ風味の特徴は、「ブラックチェリーやカシス、西洋杉のような香り」とよく言われますが、そのような香りはブドウ品種のカベルネ・ソーヴィニヨンにはありません。ワインになる過程、熟成の過程の化学変化によって、特徴的な風味が生まれるのです。

なので、目をつぶってブドウを食べても、おそらく品種を当てるのは難しいでしょう(笑)。ただ、カベルネ・ソーヴィニヨンの種に含まれるタンニン量は比較的多い方なので、ワインにも渋みが備わりますが、ブドウを食べた時に誤って種をガリっと噛んでしまうと、文字通り“渋い顔”になりますので要注意です。

「食べるブドウ」からもワインが造られる

ワインになるブドウは、食べにくいけど甘くておいしい。では逆に、普段フルーツとして生で食べるブドウはワインにできるのでしょうか。

とその前に、ワインになるブドウの種類は植物学的に「ヴィティス・ヴィニフェラ」と言いましたが、食べるブドウは主に、ヴィティス・ラブルスカと言います。北米原産のブドウで、果皮が薄く、粒が大きくなりやすい品種群です。糖度が上がりやすく、糖度が上がると酸度は下がる…食べるブドウにもってこいの特徴を兼ね備えていると言えます。

“主に”と言ったのは、現在市場によくある食べるブドウ・・・たとえば巨峰シャインマスカットなどは、ヴィニフェラ種とラブルスカ種の交配品種がほとんどです。

ヴィティス・ラブルスカは、湿度が高い環境でも栽培が可能で、病気への耐性も高く、まさに日本の環境下でも栽培しやすい品種です。この特徴を継承しつつ、よりおいしいブドウを探し求めて品種交配が行われ、新しいブドウが次々と生まれています。

純血のラブルスカ種で言うと、ぶどうジュースでよく使われるコンコードナイアガラ、昔からなじみのあるデラウェアなどがあります。日本ワインをよく飲む方はお気づきでしょうが、これらの品種、日本ではよくワインが造られています。

ラブルスカ種のブドウからワインを造ると、フォクシー・フレーヴァーと呼ばれる、甘ったるいような、独特な香りが発生します。ワイン生産の伝統国であるヨーロッパでは、この香りが嫌われて、ラブルスカ種からワインが造られることはほぼありません。

ですが、日本人はもともとこれらのブドウを食べていた、もしくはジュースとして飲んでいたからそれほど違和感なく、ワインとしても受け入れられたのかな、と思っています。

もともとブドウが自生していて、のちに人間が加工した

日本最古のブドウの1つである「甲州」。日本ワインの代名詞的品種でもあり、日本の固有品種です。長らくその出自が不明であった「甲州」ですが、実は、ヨーロッパブドウと呼ばれるヴィニフェラ種の一種だと言われています。

しかし日本では、ワインを造る習慣がなかったため「甲州」の栽培が始まって以降「食べるブドウ」という存在でした。

そもそも、加工の目的別に種別が存在するわけではなく、そこにブドウがあって、同じ場所にいた人が、ワインを造ったのか、そのまま食べたのか、はたまたレーズンとして非常食にしたのかジュースにして飲んだのか、というだけのことです。

ヨーロッパでは、ブドウはワインを造る原料という認識なので、ワインづくりに向かない種別のブドウは次第に淘汰されていきました。逆に、ワインを造る文化のなかった日本では、ヴィニフェラ種であっても生で食べていたということです。

植物学的に種類が違えば、それぞれに最適な活用の仕方や栽培環境があるというだけのこと。ワイン造りは8,000年の歴史があると言われていますが、今から8,000年ののちにはどうなるのか。醸造技術の発展で、今よりもっと多様なブドウからワインが造られているかもしれません。

 

「シャブリ」という名前のワインがいっぱいあるワケ

ワインがややこしいところは、そのカタカナ語が何を意味するものか分からないというのに加えて、それが「商品名」だとわかっても、同じ商品名の違うワインがたくさんあるところかな、と思います。

例えば「シャブリ」。有名な白ワインなので、これがワインの名前だということはご存じという方が多いと思います。実は「シャブリ」というワインはいろんな造り手(メーカー)がいるので、何種類もの「シャブリ」があるんですね。

ビールだったら、「商品名」と「メーカー」が1対1で結びつくのに。逆に「一番搾り」という商品名のビールを、キリンのみならずアサヒでもサントリーでも造っていたら大問題ですよね。なぜなら「商標登録」という制度で守られているから。

日本のビールのような単純なものではなさそうな「ワイン名」。今回は、「ワイン名」って何?というところを掘り下げたいと思います。

伝統産地のワイン名は、ほぼ産地名!

みなさんがよく耳にし、知っている「ワイン名」って何でしょうか?冒頭の「シャブリ」のほかに「キャンティ」や「バローロ」、「ロマネ・コンティ」なども聞いたことはあるでしょうか。

これらすべて、「ワイン名」であると同時に「産地名」なんです。シャブリは、フランス・ブルゴーニュ地方の一番北にある地域の名前。日本でいうと、関東地方にある栃木県の那須町とかそんなレベル感でしょうか(那須は関東の最北にある町!)。

キャンティはイタリア・トスカーナ州のフィレンツェとシエナの間に広がる地方名。〇〇キャンティ村、というのがいくつも集まってキャンティ地方と呼ばれています。

キャンティ・クラシコやその他のキャンティ地方のワインについては こちら

バローロはイタリアの北部・ピエモンテ州にある村の名前。ワインの「バローロ」は、このバローロ村を含む周辺のいくつかの村で生産されています。

ロマネ・コンティに至っては、なんと「畑名」です!このワインを造るドメーヌ(醸造所)の名前でもありますが、ドメーヌ名も畑の名前から付けているということです。東京都渋谷区の〇〇さん家の畑、みたいな感じです。

「オールドワールド(旧世界)」という言葉がワインではよく出てきますが、これは「ニューワールド(新世界)」の対義語で、昔からワイン産地であったヨーロッパの国々を指します。大航海時代にヨーロッパの国々が自国から世界に飛び出し、たどり着いた地域でワインづくりを始めました。それらの国や、その時代の後からワインづくりを始めた国を「ニューワールド」と呼びます。

ワインとブランド和牛の共通点

地域名が商品名だなんて不思議な感覚になるかもしれませんが、私たち日本人にもなじみのあるネーミングかと思います。

よくあるのが「和牛」です。お笑いじゃないです(笑)。肉の方です。神戸牛や松阪牛、近江牛、米沢牛など有名なブランド牛たち。この「牛」の前についているのは、産地、ですね。ブランド名になっている産地で一定期間育てられた、条件を満たす牛だけが「ブランド牛」となるわけです。

この和牛とヨーロッパのワインは同じ概念かなと思います。「その土地で育つ」ということに意味がり、その地名が付いた牛肉にしろワインにしろ、品質が優れているから有名になるわけです。有名になると産地偽装が起こるのは、牛肉もワインも一緒です、残念ながら。

産地偽装から本物を守るために、その地名を名乗る牛肉もしくはワインには「規定」が存在します。牛肉の場合は、牛の種別とか出産を経験していないメス牛とか、もしかしたら餌にもルールがあるのかもしれません。

ワインの場合はもっと細かく厳しくて、ブドウの栽培産地や品種はもちろん、収穫量や醸造方法などまで規定されている場合がほとんどです。その規定を満たしていないワインは「シャブリ」にしろ「キャンティ」にしろ、その名を付けて販売できないのです。

そのようにして、産地偽装を防ぎ、本物の品質を担保しているんですね。

ちなみに「シャブリ」は、シャルドネを使った白ワインしか造れません。「キャンティ」はサンジョベーゼという黒ブドウ(皮が赤紫のブドウ)主体なので、赤ワインしかありません。赤ワインの「シャブリ」や白ワインの「キャンティ」はこの世の中に存在しないのです。なぜなら、その名を名乗るには、ワインを造るブドウ品種が決められているからです。

産地名がワイン名である理由

多くのワインがワインの生産地域=ブドウの栽培地域となるわけですが、地域名を掲げるワインのブドウ品種を限定している理由は、昔からそこでその品種が作られてきたから、というのもありますが、その地域の気候風土がその品種の特徴を表現し、その土地ならではのワインの味わいを造るから、と言われています。

「魚沼産」と言ったら何を思い浮かべるでしょうか?おそらく「お米」、もっと言うと「コシヒカリ」を想像するかと思います。新潟県の魚沼市(南魚沼市)がコシヒカリの産地として有名になったのは、(関係者のブランディング努力もあるとは思いますが…)おいしいコシヒカリができる産地だから、ではないでしょうか。

JAみなみ魚沼のwebサイトには、「清らかで豊富な雪解け水、滋味豊かな土壌、昼夜の寒暖差の大きい気候は、南魚沼産コシヒカリの栽培に最適な条件が揃っています。」と書かれています。

ワインは本当に単純な飲み物で、ブドウを潰して酵母を入れて発酵させただけでできてしまうお酒です。それゆえ、ブドウの出来がワインの出来に直結するといっても過言ではありません。その土地に適したブドウ品種を育ててワインを造る…魚沼で小麦じゃなくて米を作る理由と同じではないでしょうか。

その産地がおいしいお米、おいしいブドウやワインを造ることで有名になり、それがブランドになる。だからワイン(特にヨーロッパの)は、地域名が商品名なんですね。

「ここにしかないワイン」というご当地自慢

ワインラベルの一番大きい文字が「商品名」だとするならば、ニューワールドのそれは、造り手の名前がメインになっていたり、品種名がメインになっていたり、はたまた自分の娘の名前を付けたりと、産地名以外のものをよく目にします。造り手のこだわりや大事なものを商品名にする、消費者に分かりやすいネーミングにする…新しい造り手が、新しい考え方で名前を付けるのはいいことだと思います。

しかし伝統的には産地名がワイン名になっていることが多い。これは、地域の特産品を地域名とともにアピール、ブランディングしていることになるのかなと思います。その地域に住む人が、みんなで「シャブリ」を造る。「おいらの地元にはいいシャルドネができるんだ。それで造ったワインはおいしいよ!」と、ご当地自慢に近いのかなと。

日本でも「B級グルメ」というのが流行りました。その地域で昔から食べられている庶民フードが、実はほかの地域では食べられていなくて「なんでこんなにおいしいものが他の地域にはないんだ!」と自慢し合うイベントが引き金になって全国に知れ渡るようになりました。

ご当地自慢的にその地域でブドウを栽培しワインを醸造する。お隣さんもお向いさんも。だから、同じ商品名なのに違うラベルのワインが幾種類も存在するんですね。冒頭の例を再び出すと、「一番搾り」は商品ブランディング。一方「シャブリ」は地域ブランディングになるのかなと思います。

「シャブリ」という名前のワインはどれくらいあるのか

ちなみに「シャブリ」を造る生産者は347軒のドメーヌと1軒の協同組合があります(2013~2017年の5年間の平均数字。出典:http://www.chablis.jp/)。1軒で畑違いのシャブリを造っていることもあるので、347種類以上の「シャブリ」があるということです。

一口に「シャブリ」と言っても、畑のランクから生産者のこだわりまで様々あり、味わいも価格もピンキリ。それが、ワインの難しさでもあり面白さでもあるのかなと思います。ぜひいろんな「シャブリ」を味わってみて、ワインの面白さにどっぷりハマってみてください。

「シャブリ」を例にずっと語ってきましたが、「キャンティ」でも「バローロ」でも一緒です。ただ、「ロマネ・コンティ」だけは1社でしか生産していませんし、飲み比べどころか一口でも味わうことができたら…うらやましい限りです!