突然ですが、クイズです。
赤ワインと白ワインの違いは何でしょう?
―――色でしょ?赤と白。
では、その色の違いができるのはなぜ?
―――原料となるブドウの色の違い。巨峰のような皮の黒い(濃い紫色)ブドウから造られるのが赤ワイン、シャインマスカットのようなグリーンっぽい色のブドウから造られるのが白ワイン。
確かにそうなんですが、では、皮の黒い(濃い紫色)ブドウから造られる白ワインはないのでしょうか?
―――・・・。
ワインには様々な「色」があります。その色の違いによって、味わいもそれぞれですよね。「赤ワインは渋い、白ワインは酸っぱい、ロゼワインは赤ワインの薄いバージョン?オレンジワインは…飲んだことないかも。」そんなイメージを持っている方、意外と多いのではないでしょうか。
そこでこの度、「ワインの色」から、そのワインの特徴を2回に分けてお伝えします。今回は「赤」と「白」。次回は「ピンク(ロゼ)」と「オレンジ」。色の違い、風味の違いがどこから来るのか、「ワイン造り」という観点から掘り下げてみたいと思います。
この記事の目次
ワインの分類
一般的に「ワイン」と呼ばれるお酒には、大きく分けて4種類あります。発泡性の「スパークリングワイン」、発泡のない「スティルワイン」、酒精強化した「フォーティファイドワイン」、薬草や果実、甘味料などで風味付けした「フレーヴァードワイン」の4つ。これらはそれぞれ、醸造方法が違うので4種類に分類されています。
そのうち「スティルワイン」は、色ごとに「赤ワイン」「白ワイン」と呼ばれています。ピンク色をした「ロゼワイン」や、最近流行している「オレンジワイン」などもありますね。
ワインは、数あるお酒の中で最も単純に造られるお酒ですが、スティルワインは上記4種類の中でも一番ベーシックな造りのワインです。語弊を恐れずに一言で言うと、ブドウを潰して発酵させるだけ。
けれども「潰す」工程、「発酵」させる工程が微妙に違うだけで、「赤ワイン」になったり「白ワイン」になったり、「ロゼワイン」になったり「オレンジワイン」になったりするんです!
ワインの色は、原材料の違い(だけ)ではなかった!
ブドウには果皮の色の違いで「黒ブドウ」と「白ブドウ」があります(※)。基本的には、黒ブドウから赤ワインが、白ブドウから白ワインが造られますが、中には稀に、黒ブドウから白ワインが造られることもあります。
スティルの白ワインは、お目にかかる機会が少ないかもしれませんが、でも実は、おそらく多くの人がこの「黒ブドウから造る白ワイン」を飲んだことがあると思います。
それは「シャンパン」です。
シャンパンの中でも「ブラン・ド・ノワール」と呼ばれるものは、黒ブドウから白ワインを造り、それを瓶内二次発酵させてスパークリングワイン(シャンパン)にしたものです。「ブラン」は「白」、「ノワール」は「黒」という意味のフランス語。黒(ブドウ)の白(ワイン)という意味です。
つまり「赤ワイン」と「白ワイン」の違いは、原材料であるブドウの果皮の色の違いだけではない、ということです。
※厳密には、黒でも白でもない「グレー」というブドウも存在します。グレーの意味そのまま「グリ系品種」といい、代表的なものにアルザス地方で造られる「ピノ・グリ」(イタリアではピノ・グリージョ、ドイツではグラウブルグンダー)や日本の「甲州」などがあります。グレーというより藤色の果皮で、白ワインが造られます。
ワイン造りの違いを「ザックリ」図解!
では、赤ワインと白ワインを分けるものは何かというと、醸造方法の違いになります。それぞれの造り方をざっくりと図解します。
赤ワインの造り方
白ワインの造り方
「醸し」工程の有無の違いが赤ワインと白ワインを分ける
赤ワインと白ワインは、発酵と圧搾(プレス)の順番が違うということがお分かりでしょうか。なぜ順番が違うのか、それは「醸し」の有無があるからです。「醸し」とは、果汁の中に果皮、果肉、種を漬け込んでおくこと。赤ワインではなぜ「醸し」があるのかというと、「赤」ワインにするためです。
黒ブドウでも白ブドウでも、果汁・果肉は「白い」のです。なので、果皮を果汁に漬け込む(醸す)ことによって色が付き、種を漬け込む(醸す)ことによって、ワインに渋みがもたらされます。
つまり、果汁のみを発酵させるのか、果汁と果皮、果肉、種を一緒に発酵させるのかの違いによって、赤ワインになるのか、白ワインになるのかが決まる、ということです。
もしかしたら、黒ブドウから造られる白ワインがあるなら、白ブドウで「醸し」をするワインはないの?という疑問が生まれるかもしれません。
あります。
それが、「オレンジワイン」です。
オレンジワインに関してはワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編をご覧ください。
造り方の微妙な違いによって、見た目の色も味わいも全く違うワインになる不思議。今回はざっくりとした醸造工程をお話ししましたが、もっと細かい、各工程の「やる、やらない」によって、さらに微妙な味わいの変化が楽しめるのが、ワインの奥深いところではないでしょうか。
そんな奥深さにズブズブとハマりゆく人が、今も絶えず存在するのが、ワインの世界です。