ワインを飲む時、グラスをくるくると回す仕草をよく見ますよね。この動作をスワリングといいます。
「スワリングを上手にやってみたい」
「何度かやってみたけど、ちっともうまくできない」
「なんとなくかっこいいけど、あれは何のため?」
そんなワインビギナーのお悩みや疑問に、しっかりお答えしたいと思います。実は、スワリングはやればいいってもんじゃない動作。スワリングの意味を理解するところから、まずは始めましょう。
この記事の目次
スワリングとは?その意味について
スワリング(swirling)=渦を巻くこと。英語のswirlという動詞から来ている言葉です。つまりスワリングとは、ワインの液体が渦を巻くようにグラスを回す動作で、ワインと空気を触れ合わせるために行います。
ワインを空気(酸素)に触れ合わせることに、どんな効果があるのか。それはワインの香りを引き出すことに他なりません。ソムリエがボトルから別の容器(デキャンタ)にワインを移し替えるのを見たことがありませんか?あれはデキャンタージュと呼ばれるものなのですが、空気(酸素)に触れさせることで、香りを引き出す(開かせる)という目的は同じなのです。
スワリングの効果と注意点の詳しい話は後にして、まずはワイン初心者のみなさんが一番気になっているであろうスワリングのマナー&やり方について学びましょう。
スワリングのマナー&グラスを上手に回す方法
まずは、ビギナー向けで簡単だけれど、むしろとてもエレガントで素敵に見えるという作法から始めましょう。
■STEP1
手をテーブルにそのまま置く感じで、テーブルに置かれたワイングラスのステム(脚)とプレート(土台)の繋ぎ目あたりを人差し指と中指で軽く挟みます。そのままグラスを持ち上げたりしないように。
■STEP2
手のひらでテーブルに円を描くようなイメージで、ゆっくり、そっとグラスを回します。回す方向は・・・
右利きの人→反時計回り
左利きの人→時計回り
勢い余って、万が一ワインが遠心力で飛び出てしまっても、この回転方向(内回り)であれば対面する人にかかってしまう確率が低くなるというのが、この回転方向の理由。相手にかけてしまうよりは、自分にかかる方がマシ。この配慮がスワリングの大事なマナーなのです。
■STEP3
ワインの液面が、グラスの内側を滑るようにそっと渦を巻く感じになればOK。跳ねたりさせないように、初めはゆっくりと円を手のひらで描くようにし、慣れてきたら、円の大きさや回すスピードを変えて調整します。
このテーブル置きスタイルを繰り返し、スワリングの感覚が掴めるようになったら、宙に浮かせた状態でのスワリングに挑戦しましょう。
持つ部分は、ワイングラスのステム(脚)。親指と人差し指でステムをつまむように持ち、中指や薬指も使ってグラスが安定するように持てたら、焦らずゆっくりと…。手首はリラックス!回転方向や回す感覚は“テーブル置きスタイル”と同じです。手首に力が入りやすく、初めはこぼしやすいので、ワインではなく水で練習するといいでしょう。
Practice makes prefect! 子どもの頃の自転車の練習と同じで、「あ、これか!」というコツを掴む瞬間があなたにも必ず訪れます。
スワリングは何回くらい回すもの?
スワリングができるようになると、なんだかクセになって延々とくるくる回してしまう人がいますが、これもワイン通なら避けたい行為。スワリングをする目的をここでおさらいしておきましょう。
スワリングは、ワインを空気(酸素)に触れ合わせることでワインの香りを引き出すために行うもの。なので、基本的には3回ほど回せば十分です。
一般的には、品種由来のフルーツなどの第1アロマが立ち上っている中、スワリングの効果で、醸造由来の第2アロマ(ヨーグルトやキャンディなど)や熟成由来の第3アロマ(土やきのこなど)がワインから感じられるようになります。
ただし、中にはスワリングしない方がいいワインもあれば、何度も回した方がいい場合もありますので、次にワインの特性に沿ったスワリングのポイントをお伝えしていきます。
スワリング注意その1【すでに香り豊かなワイン】
スワリングをすることでワインに閉じこもっていた香りが解き放たれ、ワインをさらにおいしく楽しめるようになるわけですが、グラスに注いだだけで十分に香り豊かであれば、わざわざスワリングをする必要はありません。
むしろ、アロマティックなリースリングやソーヴィニヨン・ブランなどのワインは、空気に触れさせる(酸化させる)ことで失われてしまう香り成分があったり、キリッとした酸味がぼやけてしまうものもあります。
また、抜栓してからある程度時間が経っているワインは、すでに空気と触れ合っているので、スワリング不要。飲みかけの家飲みワインや飲食店で注文するグラスワインのほとんどは、グラスをくるくる回す必要はないはずです。
スワリング注意その2【スパークリングワイン】
シュワシュワとした泡が抜けてしまうので、スパークリングワインは基本的にスワリングNGというのは当然ですね。
ただし、熟成感のあるシャンパンなどは、グラスに注いですぐだと第3アロマが感じられず、本領発揮といかないこともあります。そんな時は、そのまま少し待つか、ワイングラスを斜めに少し傾けてそのままゆっくり回し、ワインをグラスの内側に滑らす程度にして香りを引き出すという方法も。
スパークリングワインに限らず、熟練のソムリエやワイン通の方は、くるくると回すスワリングをせずにこの“そっと滑らす手法”をよく使います。
スワリング注意その3【繊細な熟成ワイン】
酒質が強く長期熟成を経たワインは、スワリングすることでいろいろな香りが開いていくことが多く、ワイン通にとっても大きな楽しみの一つと言えるでしょう。ただし、例えばブルゴーニュの繊細なピノ・ノワールで何十年も熟成をしたものは、本当にデリケート。スワリング一つで、香りも味わいもかえって衰えてしまうことがあります。
こうしたワインは見極めも難しいもの。飲み手によるスワリングではなく、プロのソムリエによるデキャンタージュにまずはお任せしましょう。
それでも、香りを自分でもう少し開いてみたいという時は、熟成シャンパンと同様に、“そっと滑らす手法”で様子を少しずつ伺いながら味わうのがおすすめです。
スワリング注意その4【還元臭のあるワイン】
「あれ、ちょっとゆで卵の黄身みたいな、硫黄系のにおいがするな」というワインに遭遇したことはありませんか? おそらく、その原因は還元臭。ワインのアルコール発酵中に生成されるもので、酸欠になったことで発生する硫化水素によるものです。
酸欠から生じる還元臭ですから、酸化とは反対の現象によるもの。つまり、スワリングで酸素と触れ合わせることで、硫黄っぽいにおいが薄まっていくことがよくあります。この場合は、2〜3回ではなく、においの状態を確認しながら何回もスワリング。10回くらいで還元臭が薄まることもあれば、100回くらい回してやっと…なんていうこともあります。
酸化防止剤を使わず、無農薬・有機栽培のブドウから造られた自然派(ビオ)ワインに、この還元臭がでることが多かったことから、「ビオ臭(ビオ香)」と呼ばれることも。還元臭があると、ワイン本来の香りや味わいが妨げられてしまうので、知っておいて損はないと思います。
グラスもポイント!上手にスワリングを活用しよう。
今回は、スワリングの基本から、ワインの特性に沿ったスワリングのポイントまで、しっかりと学びました。
エアレーション(液体に空気を含ませること)の効果で言えば、使うワイングラスも大きく影響してきます。ハンドメイドの繊細なワイングラスは、顕微鏡でその表面を見ると実は不規則な凸凹になっています。つまり、表面積が広く、スワリングをするとエアレーションの効果が高くなるということになります。
機械で大量に造られる分厚いワイングラスは、つるりとした表面なので、ハンドメイドのものと比べると香りは広がりにくいのですが、スワリングの基本&ポイントを理解していることがまずは大事。むしろ、洗ったり拭いたりする取り扱いも簡単ですし、家飲みのカジュアルなワインを楽しむには十分です。
ワインは人と同じで、一本一本に個性があります。その個性を最大限に引き出すには、スワリングをどうしたらよいか。ワインと向き合いつつ、グラスも併せてコントロールできるようになったら、かなりのワイン通と言えるでしょう。