自然派ワインの人気とともに、オレンジワインと呼ばれるワインが日本でも広まってきました。ワイン好きの間では、クヴェヴリやアンフォラといった耳慣れない言葉もキーワードとなっています。
「オレンジワインって聞いたことあるけれど、詳しくは知らない」という方のために、今回はその基本をレクチャー。紐解いていくとワインそのもののルーツと繋がっていきます。
また「どれを、どこで買ったらいいか分からない」という方のために、wine@のワインのプロフェッショナルがおすすめするオレンジワインもご紹介します。
この記事の目次
オレンジワインって、そもそも何?
“オレンジワイン”と聞くと、果物のオレンジで造る果実酒かと勘違いする人もいると思いますが、さにあらず。白、赤、ロゼと同様に、ワインの“色”による区分になります。
英語では「amber wine(アンバーワイン、琥珀のワイン)」と呼ばれるように、実際にはオレンジ色というよりは琥珀色に近い、くすんだオレンジ色をしているものが多くあります。
ワインの色は、ブドウの果皮などによって生じます。簡単に言ってしまえば、オレンジワインは、白ブドウで赤ワインのような造り方をしたワインのこと。
通常白ワインを造る時は、白ブドウを搾った果汁をもとに醸造していくのですが、オレンジワインでは、赤ワインと同様に、果皮や種などを一緒に漬け込む「醸し」が行われます。それによって色がつき、ちょっとくすんだオレンジ色のワインができるのです。
オレンジワインの造り方や味わいの特徴について詳しく知りたい方は、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編 をチェック!
オレンジワインは、実は長い歴史を持つワインで、野生酵母による発酵を基軸とし、添加物は加えないという自然な造りもその大きな特徴。伝統的な製法のことを、次に少し掘り下げてみましょう。
伝統的な造り方が魅力。クヴェヴリとは?アンフォラとどう違う?
オレンジ色の秘密はその造り方にあるわけですが、伝統的なオレンジワインの製法に欠かせないものに「クヴェヴリ(qvevri)」というものがあります。
クヴェヴリとは、素焼きした粘土で作られた、ワインの醸造や熟成に使われる甕(かめ)のこと。底先が尖った卵のような形状で、地中に埋めて使われます。100~3,500Lと大小様々なものがあり、特に大型のものは保存用としても使用されます。
つまり、現代的なワイン醸造における発酵や醸しでは、ステンレスタンクや樽が使われますが、その役目を担っているのが、このクヴェヴリというわけです。地中に埋めることで低い温度が保たれ、卵型の形状のおかげで、果汁と果皮や果梗等の循環が促されると言われています。
ちなみに、このクヴェヴリを使ったワイン造りは、2013年にユネスコ世界文化遺産に登録されています。
また、オレンジワイン以外でも使われる「アンフォラ(amphora)」が陶器製で似ているのでクヴェヴリと混同されることがありますが、アンフォラは主に保管や輸送のために使われる容器になります。
ワイン発祥の地「ジョージア=グルジア」
ユネスコ世界文化遺産にも登録されたクヴェヴリのワイン造りは、ジョージア発祥のもの。ジョージアと言っても、アメリカのジョージア州ではなく、以前「グルジア」と呼ばれていた東欧の国で、北はロシアと接し、南にはトルコとアルメニア、東にはアゼルバイジャンがあるという位置関係。いにしえより、東西の文明が交錯する場所にあります。
ヨーロッパとアジアを繋ぎ、多くの文化が育まれたエリアにあるわけですが、ワインも然り。クヴェヴリを使った伝統的かつ自然なワイン造りが生まれた国で、ワインのルーツがこのジョージアにあるというわけです。
大きな国ではありませんが、東部は乾燥した大陸性気候で、西部は湿潤な亜熱帯気候。西部は黒海の東岸に位置し、山脈に囲まれていることから、湿度も高く、雨量も多めです。
現在のジョージアでは、クヴェヴリを使った伝統的な手法のほか、現代的なヨーロッパ式の醸造や、タンクを使って果皮や種ごと発酵させるというモダン式でのワイン造りが多く行われています。
また、クヴェヴリで果汁と共に果皮、茎、種などを漬け込んだワイン(dedaze デダゼ)だけでなく、果汁のみをクヴェヴリに入れて造るワイン(udedo ウデド)もあり、黒ブドウから赤ワインも造られています。
ジョージアのオレンジワインは、土着品種もポイント
ジョージアにはなんと500を超える土着品種があると言われ、世界各国で栽培されているワイン醸造用のブドウ(ヴィティス・ヴィニフェラ種)の起源もジョージアにあるというのですから、まさにジョージアはワインのルーツがたくさん詰まった国であると言えるでしょう。
土着品種の中でもジョージアのオレンジワインに欠かせない特に有名なものが、白ブドウ品種のルカツィテリ(Rkatsteli)とムツヴァネ(Mtsvane)です。
ルカツィテリは、ジョージアの最大産地である東部のカヘティ地方を中心に最も広く栽培されているブドウ品種で、しっかりとした骨格のあるオレンジワインができます。
対して、ムツヴァネは酸もあるアロマティックなブドウ。ルカツィテリとのブレンドにもよく使われる品種です。
ルカツィテリ種のおすすめワイン
綺麗なアンバー色を呈し、アプリコットやビワ、ダージリンの茶葉やジンジャーなど多重層な香り。洗練された上品な味わいで、なめらかな質感とほのかな渋みがアクセントになっているワインです。
要素が多彩なので、和食、中華、エスニック…と幅広い料理に合わせることができ、一度飲んだらリピート必至!家ごはんにも最適なオレンジワインです。
ムツヴァネ種のおすすめワイン
クリアで綺麗な味わい。ムツヴァネにはハーブのニュアンスもあるので、良い意味で料理を選ぶワインでもあります。
タンニンもあるので、脂質やタンパク質と相性が良い。肉料理、穴子寿司、うなぎ、ジビエ(イノシシ・鴨)に、ツルムラサキやほうれん草など、ちょっとクセのある土っぽい野菜を添えたものなどがおすすめです。
自然派人気とともに広まったオレンジワインとその他の名産地
野生酵母の力を借り、亜硫酸などの添加をしない伝統的な製法ゆえ、ジョージアのオレンジワインは、ナチュラルワインの生産者の心を捉え、世界各国にその自然な造りが広まっていきました。
そのきっかけは色々あり、ワイン消費の一大市場であるアメリカで最新のワイントレンドとして取り上げられたこともありますが、イタリア北部のフリウリで造られるようになり、そのワインが評価を受けて世界中で有名になったことも大きな要因です。
最後に、wine@のプロフェッショナル厳選の世界のオレンジワインを3本ご紹介します。
出汁のうま味が効いた和食との相性が良いこともあり、日本でも今後ますますオレンジワインには注目が集まることでしょう。
イタリア最高峰の透き通ったオレンジワイン
フリウリのオレンジワインに欠かせない、リボッラ・ジャッラ種。世界的に人気を博すリボッラ・ジャッラワインの造り手が他にもいますが、プリモシッチはその代表格の一人です。
野菜や魚介の繊細な味に寄り添うオーストラリアの1本
オレンジワイン特有のほのかな渋みを伴いながらも、すだちや柚子などの和柑橘を思わせるアロマと酸味が魅力。野菜や白身魚の料理とぜひペアリングを。
万人受けするポルトガルのオレンジワイン
ワイン通でも知らない人が多い「アンタンヴァズ」という品種から造られる1本。風味もボディも程よく、嫌いな人はいないかも!? 具材豊富なおでんなど出汁の味によく合います。
参考:2021日本ソムリエ協会教本