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世界が注目!【中国ワイン】の知っておくべき歴史と産地

2021.4.5

イタリア、フランス、スペイン、アメリカ、オーストラリア、アルゼンチンに次いで、世界第7位のワイン生産量を誇る中国。日本が最も多くワインを輸入している国、チリよりも多くのワインを生産しているって、ご存じでしょうか?

生産量のみならず、世界的に競争力をもつワイン産地を目指して品質の向上も目覚ましく、高級ワインも数多く生産しています。生産量も品質も年々向上しており、今後も伸び続けるだろうと注目されている産地です。

毎年上海で開催される「ProWine Shanghai」は、2019年の実績で、来場者20,640人、うち海外からは11,351人訪れているという、世界からも注目されている国際的なワイン博覧会です。

様々な観点から、今、最も“ワインに熱い”国である中国。日本ではまだなじみのない産地ですが、今後、中国ワインも多く市場に出回るかもしれません。「えっ!?中国でワイン!?」とビックリされている方に、中国ワインについて基本的なことをお伝えます!

司馬遷の『史記』にも「葡萄酒」が登場!? 中国ワインの歴史

ワインに関わる話で「ニューワールド(新世界)」という言葉を耳にするかと思います。明確な定義はあいまいですが一般的には、大航海時代以前から産業としてワインを造っていた国(=オールドワールド、旧世界)の対義語として使われます。

実は中国は、この旧世界と新世界の中間に位置するような、ワイン造りの歴史があります。司馬遷の『史記』にも「葡萄酒」が登場し、前漢時代からブドウの栽培と醸造が行われていたとされ、唐代の政治家、王翰の「葡萄美酒夜光杯」は有名な漢詩です。

唐の時代はワイン造りが大いに盛んだったようですが、明代になって紹興酒造りがメインになったこともありワイン醸造は下火に。その後数百年、ワイン造りは影を潜めていました。

1892年、山東省の煙台(エンタイ)に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」が設立されたことが、近代のワイン造りの出発点になります。

その後、鄧小平の改革開放政策(1978-1992)以降、現在の中国の経済発展と同様にワインの生産と消費も飛躍的に発展します。1980年代から現在まで、およそ10年ごとに中国ワイン事情が変化していきます。

1980年代は規制がほぼない時代で、ブドウ果汁に水や香料などを加えて生産することが一般的でした。1990年代は規制強化の時代。1994年に制定された商標法で、地理的表示保護の商標登録が可能になり、1999年には原産地保護の規定が制定されます。

2000年代には消費者の要求が厳しくなります。同時に、国際基準を意識するようになり、2003年には“半汁葡萄酒”の生産は正式に終了します。それまで、ブドウ果汁原液は50%以上にすること、という緩い規制のもとワイン造りが行われていました。それを、ブドウ果汁100%で造る、ということになったということです。

世界第5位のワイン消費量!ワイン大好き中国人が好きなワインは何?

冒頭で、中国は2020年時点で世界第7位のワイン生産量を誇ることをご紹介しましたが、その生産量は11,636hl。第1位のイタリアの生産量の1/4強、第2位のフランスの1/3弱の量を中国でも造っています。

さらに、中国国内でのワイン消費量も年々増加しており、今や世界第5位で、年間1,930万hl消費されています。1リットルのペットボトルに換算すると19億3000万本分です。ちなみに日本の消費量は年間340万hlなので、中国がどれだけワインを飲む国かわかるでしょう。

ちなみに、中国国内でよく飲まれるのは、ボルドーの赤ワイン。一時期、中国人がボルドーワインを買い占めるので価格が高騰した、なんて事態にもなりました。

そう、世界第7位のワイン生産量を誇りながらも、未だ輸入ワインの消費量が多いのが現状の中国ですが、品質向上が目覚しい中国ワインですので、今後は中国国内でも国産ワインの評価が高まりそうです。

ではなぜ今中国で、ワイン生産の熱が高まっているのか。歴史の部分でも少し触れた通り、国や地方行政が積極的にワイン生産に力を入れているというのも大きいですが、実は中国は、ブドウ栽培にとても適した気候と土壌を持っているのです。

ブドウ栽培に最適な、中国ワインの主要産地

ワインの有名産地と言って思い浮かぶのは、フランスのボルドーや、アメリカ・カリフォルニアのナパ・ヴァレーなどかと思いますが、これらの地域と近しい緯度にあるのが、中国のワイン産地。

ボルドーは北緯44度、ナパ・ヴァレーは北緯38度。近代ワイン生産が始まった山東省煙台は北緯37度。中国二大産地の一角を担う寧夏省は北緯42度。42度は、スペインの高級ワイン産地として名高いリオハと同じ緯度になります。

つまり、ワイン産地の黄金ベルトに位置しつつ、代表的な産地は、日照量が豊富で降雨量が少なく、水はけの良い砂質土壌が多いのです。

【山東省煙台】近代ワインの出発地。ラフィットもワインを造る場所。

日本でいえば山梨県の勝沼に近しい存在の山東省煙台(エンタイ)。ワイン造りの歴史もあり生産量も国内トップです。山東省と言えば青島(チンタオ/セイトウ)が有名かもしれませんが、煙台は青島から北東に200kmほど行った山東半島にある港湾都市で、アジアで唯一「国際葡萄・ワイン都市」としてOIV(葡萄・ワイン国際機構)から認定されています。

海に面しているので、内陸よりは湿度もありますが、それでも年間降水量は500~900mm程度。冬の気温は、内陸ほど下がらないので、冬のブドウ樹の手入れも、そこまで手がかからないというのが特徴です。

ここ煙台には、歴史の項でも触れたとおり張裕ワイナリー(シャトー・チャンユー・カステル)の他、ボルドー5大シャトーの筆頭、シャトー・ラフィット・ロートシルトが造るロン・ダイ(Long Dai)もワイナリーを構えます。

中国唯一のワイン学部がある山東農業大学の研究機関でもある君頂(クンチョウ)シャトー(chateau junding)は、アジア最大級の地下カーヴを持つワイナリーです。

【寧夏回族自治区】近年、メキメキ知名度向上!

1980年代以降、ワイン産地として知名度が上昇中なのが寧夏回族(ネイカカイゾク)自治区。ちょうど中国のど真ん中に近いところ、黄河の上流に位置する内陸の産地です。

豊富な日照量は、なんと年間3000時間。ボルドーの平均が2000時間ほどなので、その恵まれた環境をご理解いただけるでしょう。降雨量も年間200~600mmとかなりの少なさですが、近くに流れる黄河から灌漑もできる立地。加えて昼夜の寒暖差も大きく、まさにブドウ栽培にとって絶好の環境なのです。

賀蘭山(ガランサン)東麓が特に銘醸地として名高く、“中国のボルドー”とも“中国のナパ・ヴァレー”とも称されています。この恵まれた産地に、国内外の資本家が集まってきており、ワイナリーの数は、建設中も含めると優に200を超えそうです。

煙台の張裕ワイナリーも、ボルドーかと見まがうほどの立派なシャトーをもち、その名の通りまさにお城のような堂々としたたたずまい。ここで寧夏産のブドウからワインを造っています。

雲南省】世界的に有名なワインメーカーも進出する高級ワイン産地

中国の南部、ミャンマーとの国境沿いにある雲南(ウンナン)省。20世紀初めごろ、フランス人宣教師が入植し、省内のやや西寄りに位置する弥勒(ミロク)でブドウ栽培を始めたのが最初だと言われています。

この宣教師がここで偶然見つけたのが“ローズ・ハニー”という品種。フランス原産の品種のようですが、フランスでは絶滅。今は主に中国でしか栽培されていない品種です。その名の通り、バラのような芳しい香りが特徴の黒ブドウです。

雲南省の北東に位置し、伝説の理想郷シャングリ・ラからほど遠からぬ、梅里雪山(バイリセツザン)の麓では、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のアオ・ユン(Ao Yun)が造られています。畑の標高は2,200~2,600m。昼夜の温度差があり、ブドウはゆっくり、しっかり熟していきます。

【新疆ウイグル自治区】西国文化の融合産地

中国の最西端に位置し、大部分をゴビ砂漠に覆われた地域。新疆(シンキョウ)も、標高が高く昼夜の寒暖差があり、降水量は少ない、ブドウ栽培に適した地域です。

この地に住む人はもともとブドウを生で食べたり干しブドウを食べる習慣があったため、古くからブドウ栽培は盛んな地域でした。

2025年にはワイナリーは150ヶ所以上、ワイン生産は年間30万klになる見込みとの産業発展の計画を立てています。さらに、ワイン文化と観光産業を組み合わせて300億元以上の産業を形成し、ワイン造りは、地域の雇用創出、所得拡大に貢献しています。

ティエンサイ(天塞)ヴィンヤードが造る、マセランという品種を100%使ったフルボディの赤ワインは、サクラワインアワード2020でゴールドを受賞しています。

【河北省沙城地区】明・清代には皇帝にブドウを献上。良質なブドウを作る。

首都北京のすぐ隣にある河北(カホク)省の中でも、もっともブドウ栽培に適し、生産量も多いのが沙城(サジョウ)地区です。河北省の北部に位置し、内蒙古との境に近いところにある盆地で、やはり、日照時間の長さと昼夜の寒暖差のある土地。

沙城地区のブドウ栽培は800年以上の歴史があり、明・清代には、ここで栽培された「白牛ナイ」「竜眼」などの品種が、毎年宮廷への貢物となっていたようです。

1983年に中国長城葡萄酒有限公司(長城ワイナリー)が設立され、この地域のブドウ農家の試行錯誤もあって、欧州系のワイン用品種の栽培が始まります。中国で生産されるワインの90%は赤ワイン。ですが、沙城地区の主要品種は「竜眼」というインド原産の白ブドウで、実は、中国で初めて白ワインを造ったのはこの沙城地区なのです。

知られざる銘醸地、中国。今後ますます世界が注目!

ボルドーワインが大好きな中国は、上記で紹介したどこの産地でもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン(=ボルドーの主要3品種)は栽培しており、これが、中国ワインの主要品種と言っても過言ではありません。

中国ならではの品種としては、先述した“ローズ・ハニー”の他に、“カベルネ・ガーニッシュ(蛇龍珠、シャオロンジュ)”という、マルベック?と思われていたり、カベルネ・フランの親戚?とも言われる、固有品種も栽培されています。

白ブドウでは、シャルドネ、リースリングなど王道品種から、ヴィダルというカナダでアイスワインを造る品種なども栽培されています。

とにかく中国は、気候や土壌的にも恵まれたブドウ栽培地であり、広大な土地があり、さらにワイン大好きな国民が多く、生産量も消費量も伸び続けているだけでなく今後もしばらく右肩上がりになることが予想されている国なのです。

この事実は、旧世界生産国(伝統的にワイン造りを行ってきたヨーロッパの国々)も無視できない産地ということで、フランスなどの有名生産者が中国でもワイン生産を行っています。

中国の高級ワインは、1本2万円~3万円もするようなものもあり、比較的価格が高めなものが多い印象もありますが、そのあたりの理由は、また別の機会に、もう少し突っ込んだ“中国ワイン事情”とともにお伝えしたいと思います。

■意外な事実が続々!?知っておきたい中国のワイン事情<前編>は こちら

2015 梅楽(メルロー)/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
メルロー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2015 カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルバ/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
タイプ
フルボディ辛口 赤
2013 シャーロンジュウ・レゼルバ/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
シャーロンジュ
タイプ
ミディアムフル辛口 赤
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塚原佐季子
ひょんなことから資格を取得し、そこからワイン業界に足を踏み入れたのが2016年。よくある家庭料理やコンビニ総菜と、どんなワインが合うのか妄想し実験するのが趣味。理屈っぽいのか、なんで合うのか合わないのかを考えて広く浅く知識を得ていくうちに、いつの間にかワインの魔王に取り付かれた憑かれたアラフィフ女子。こうなったらとことんワインバカになってやろうか、と思っている今日この頃。JSA認定ワインエキスパート 、CPA認定チーズプロフェッショナル。
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