photo:©︎ D.O. CAVA
「1,000円台から買えて、しかもシュワシュワ感も心地良くて、最高!」
コストパフォーマンス(カリテ・プリ)の点からも、また最近ではスーパーやコンビニでも買えるとあって、日本でもすっかりおなじみとなったスペインのcava。まさに「コスパ最高!」ということもあり、家飲みの強い味方となっているワインと言えるでしょう。
でも「コスパが良いことは知っているけど、どんなワインなのかはよく分かっていない」という人も多いはず。そこでcavaの基本をおさらいしつつ、味わいや熟成による種別、さらに最新トピックスと、その魅力にグイグイ迫ってみましょう。安価ということ以外の価値を見つけられたら、次に飲む時はひと味もふた味も違ってくるはず!今回はcavaを極めてみましょう。
■スパークリングワインの基本については「何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ」を参照
この記事の目次
スペイン語の発音に従えば「cava=カバ」が正解!
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よく「カヴァ」と表記されることがありますが、スペイン語では“B”も“V”も同じ「バビブベボ」という発音になりますので、スペイン語の発音に従えば「カバ」が正解。このWebメディアでは「カバ」でいきたいと思います!でも、動物の“カバ”を想起させてしまうのが難点なので「カヴァ」と表記している人も多いのだと思います。
「cava」の語源は、洞窟。ワインを熟成させる場所を示す言葉であり、フランス語では「カーヴ」、英語の「ケイヴ」と呼ばれる言葉と同じです。
スペインの輸出ワインの60%以上がカバで、スペインのD.O.(原産地呼称)に認定されている生産地域別でみれば、伝統的な産地であるリオハを凌いで、第1位!フランスのシャンパン、イタリアのプロセッコとともに、 “世界3大スパークリングワイン”の一つと呼ばれるのも納得です。
スペイン各地で造られていて、シャンパンとも深い関係あり!
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時は、19世紀初頭。フランス軍がスペインに侵攻した際に、国境近くのカタルーニャ州にもシャンパンと同じ瓶内二次発酵で造るスパークリングワインの製法が伝来。その後、シャンパーニュ地方で学んだカタルーニャの“とある生産者(後で登場します!)”が、郷土の伝統品種を用いてスパークリングワインを生み出すことに成功し、1872年に初のカバが誕生したと言われています。
1880年代にはカタルーニャ州もフィロキセラ禍に見舞われ、赤ワイン用の黒ブドウ栽培は大ダメージ。これをきっかけに、カバ用のブドウが植えられるようになり、生産と輸出も大きな発展を遂げていくことになります。
カタルーニャ以外にも広まる一方で、製法や品質のばらつきが問題に。徐々に法整備が整い、1972年には「Consejo Regulador del Cava(カバ規制評議会)」が設立。その後、EUレベルでの原産地呼称制度にも則り、1986年の初めには、詳細に区切られた生産地域の指定も行われ、「D.O.カバ」が発足しました。
カバの約99%はカタルーニャ州(約95%がペネデス地域で、約75%がカバワイン発祥の地であるサン・サドゥルニ・ダノイア村)で生産されていますが、テロワール以上に製法の規制を定めていった経緯もあり、アラゴン州、エストレマドゥーラ州、ナバーラ州、ラ・リオハ州、バレンシア州と、スペインの広域にわたる一部の指定地域でも造られています。
「D.O.カバ」では、2020年に4つの主な生産地域やサブゾーンなどの規定なども行っており、今後の動向にも注目です。
■詳しくは D.O. Cava(英語)
シャンパンと、製法は基本的に同じ
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伝来の歴史でもお伝えしたように、カバはシャンパンと同じ瓶内二次発酵(トラディショナル)製法で造られています。「5,000円以上も当たり前!」というシャンパンに対するカバのコスパの良さは、この同じ製法による品質も起因していると言えるでしょう。
醸造タンクの中でまとめて二次発酵させる方法(シャルマ方式)や炭酸を直接注入する方法であれば、手間もコストも省けるのですが、瓶詰めしてからゆっくりと二次発酵させることでしか生まれないきめ細やかな泡は、ワイン好きにはとても大事なものです。
シャンパーニュ地方よりも温暖なため、ブドウの熟度が高く、補糖を行わないorごくわずかだけ行うものが多いということも、シャンパンとカバの違いとして挙げておきましょう。
また、カバであろうと、シャンパンであろうと、中小規模の生産者は日々、瓶を少しずつ“手で回しながら”二次発酵を進めていきますが、ジャイロパレットと呼ばれる機械を使って、効率よく作業を進めていく大手カバメーカーもあります。
ジャイロパレットが動く様子は、映画「トランスフォーマー」さながら!私たち日本人を含む世界市場に向けて、コスパの良いカバを生産するには、これがなくては成立しません。瓶内二次発酵のトラディショナル製法と生産効率性を兼ね備えた設備は、見応えも十分です。
カバ特有の品種のほか、国際的にメジャーな品種もあり
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マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…
マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…
マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…
呪文のように唱えていると、カバの基本となるこの3品種の名前がいつの間にか脳に刻まれます(笑)いずれもカタルーニャの白ブドウの品種で、マカベオはワインに果実味を与え、チャレッロはワインの骨格を作り、パレリャーダは香りに華やかさを与えるとされています。
ほかには、国際品種としてもおなじみのシャルドネやスビラ・パレン(マルヴァジア)、ブレンド用の補助やロゼのカバに使われる黒ブドウでは、ピノ・ノワール、ガルナッチャ・ネグラ(グルナッシュ)、モナストレル、トレパットの4品種があります。
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シャンパンと共通の品種ではシャルドネとピノ・ノワールがありますが、ロゼのカバはシャンパンと違い、ベースワインをブレンドする製法が禁止されていて、赤ワインのようにブドウの果皮等を漬け込んでから抽出して造る「セニエ法」が多く、白ワインと同様の製法である「直接圧搾法」で造られるものもあります。
実は“ロゼカバ”には、いろいろなバリエーションがあるのです。
極辛口から甘口まで、7段階!
カバは残糖分量による区分があり、ラベルにもそれが表記されます。その区分は、全7段階。極辛口から順にご紹介しましょう。
■Brut Nature(ブリュット・ナチュレ)※糖分無添加
3g未満/リットル
■Extra Brut(エクストラ・ブリュット)
3〜6g未満/リットル
■Brut(ブリュット)
6〜12g未満/リットル
■Extra Seco(エクストラ・セコ)
12~17g未満/リットル
■Seco(セコ)
17~32g未満/リットル
■Semi Seco(セミ・セコ)
32~50g未満/リットル
■Dulce(ドゥルセ)
50g以上/リットル
最初の3段階までの、Brutが付く辛口のキリッとした味わいのものが人気で、日本でも多く販売されています。Brutは、もともとは「荒々しい、粗野な」という意味があり、転じて「極辛口の」という意味に。シャンパンでも使われる言葉ですね。Secoは「乾燥した」という意味から「ドライな、辛口の」。フランス語のSec(セック)と同じです。
熟成などによる種類
カバはその熟成期間によっても、分類が定められています。長熟に値する高い品質のものほど高価になるのは、他のワインと同様です。
2020年7月15日、カバ規制評議会は、D.O.カバの新しい規定を全会一致で承認。以下のように、9か月以上のカバはCava de Guarda(カバ・デ・グアルダ)、18か月以上のカバはCava de Guarda Superior(カバ・デ・グアルダ・スペリオール)と呼ばれるようになりました。
Cava de Guarda(カバ・デ・グアルダ)
■Non Vintage(ノン・ヴィンテージ)
最低9ヶ月のスタンダード。
■Vintage(ヴィンテージ)
最低9ヶ月で、単一年のブドウで造られたもの。
Cava de Guarda Superior(カバ・デ・グアルダ・スペリオール)
■Reserva(レセルバ)
最低18ヶ月。
■Gran Reserva(グラン・レセルバ)
最低30ヶ月。ブリュット以下の残糖分のもののみ。
■Cava de Paraje Calificado(カバ・デ・パラヘ・カリフィカード)
最低36ヶ月で、グラン・クリュに相当する単一畑のもの。ブリュット以下の残糖分のもののみで、その他にも厳しい規定をクリアした、わずか12の畑が名乗ることを認められています。
プレミアムな造り手の動向にも注目!
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2020年7月の新たな決定からも見え隠れしてきますが、D.O.カバは今、大きな転換期の最中にあると言えそうです。
広い世界で親しまれるスパークリングワインとしてさらに成長していこうとするカバ規制評議会(D.O.カバ)の取り組みの一方で、「大量生産をしているコスパワイン」というイメージを嫌い、高品質なワインとしてのブランドを高めていこうとする生産者の間で溝が生まれています。
カバ発祥の地、ペネデス地域を流れるアノイア川流域のテロワールを追究しながら、卓越したスパークリングワインを造っていこうと、2012年に「ラべントス・イ・ブラン」が、D.O.を脱退。この記事の初めの方で登場したシャンパーニュ地方で学び、初のカバを生産したカタルーニャの“とある生産者”というのが、現在の「ラべントス・イ・ブラン」の代表を務めるペペ・ラベントスの祖父にあたります。
また、ペネデス地域のテロワールとともに、伝統品種や自社畑のブドウなどの限定的な条件を設けて高品質なカバを造っていこうとする生産者が、新しい組織AVEC(Corpinnat コルピナット)を立ち上げ、2017年にカタルーニャ政府やEUで承認を受けました。
D.O.カバでは同年にグラン・クリュに相当するCava de Paraje Calificado(カバ・デ・パラヘ・カリフィカード)という規定を新たに制定しましたが、AVECの9軒の生産者たちは、2019年にD.O.カバを脱退し、Corpinnat(コルピナット)という表示のスパークリングワインを販売する道を選択。AVECの生産者たちがパラヘ・カリフィカード対象の単一畑の約半分を所有していたため、D.O.カバにとっても大きな出来事となりました。
クオリティ、イメージ、そして産業としての成長。伝統と革新のなかで、カバが今後どうなっていくのか…飲食店や販売店で今度カバを選ぶときには、そんな動向も是非少し思い出してみてください。