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お月見の夜長に!自然派ワイン【ビオディナミ】を徹底解説

2021.9.9

2021年の十五夜は、9月21日。お月見は、秋の夜長に満月を愛でるという日本の風物詩ですが、稲の収穫が始まる時期でもあることから、十五夜は「秋の収穫を喜び、感謝する」という意味合いもあるのだとか。

ワインを造るブドウも秋が収穫期。月の不思議な力と密接な関係を見出したワイン造りが今回のテーマ「ビオディナミ」です。

「“自然派ワイン”のイメージはあるけれど、オーガニックや無添加のワインとどう違うのかよく分からない」という方のために、基本から徹底解説。最後に、秋の夜長にぴったりなビオディナミのワインもご紹介します。

ビオディナミとは?バイオダイナミクスは同じこと?

「ビオディナミ(Biodynamie)」は、フランス語。英語では「パイオグイナミクス(Biodynamics)」となり、2つは同じことを意味しています。

オーストリアの人智学者であるルドルフ・シュタイナーによる講義に端を発した農法で、月や惑星の動きと植物の成長を調和させることを重視した農事の暦(カレンダー)を一つの指標として、植物がもつ生命力を活性化し、安定した農業生産を目指すというものです。

つまりビオディナミ(パイオグイナミクス)は、有機(オーガニック)農法の一種ではありますが、月などの天体の動きや哲学的なことを取り込み、播種(種まき)や土壌などに独特な規定があるという、一歩踏み込んだ自然派の農法と言えます。

オーガニック、ビオロジック、減農薬…他の自然派ワインとどう違うの?

醸造段階でも添加物や補助物質を制限したり、亜硫酸の値に細かな規定があったりしますが、大まかに言えば、ビオディナミの農法で育まれたブドウから造られるワインが、ビオディナミワインということになります。

ビオディナミ以外にも自然派ワイン(ナチュラルワイン)には、特徴や決まりごとが異なるものがいくつかあります。まずは簡単に、区別するポイントを整理しておきましょう。

ビオロジック(オーガニック、有機)

殺虫剤、害菌防止剤、除草剤などの農薬や化学肥料を使用しない農法で、EUやその他の国などには、それぞれ専門の認証機関があり、規定も設けられている。

リュット・レゾネ(減農薬)

無農薬ではなく、化学的に合成された物質をできるだけ使わないようにした農法。

また、こうした規定や区分に属さず、生産効率性を大切に考えながら造られるワインの中にも、自然環境に配慮したサステナブル(持続可能)なワインが存在します。

「ナチュラルワインの基本をもっと知りたい!」という方は、以下の記事もおすすめです。
【自然派ワイン】って何?今さら聞けないナチュラルワインの基本とおすすめ店5選

ちょっとスピリチュアル!? ビオディナミ農法の4つのポイント

ビオディナミ(バイオダイナミクス)は、天体の動きと植物の生育を調和させることを重視した農事暦を用いているということはお伝えしましたが、その農法には主に4つのポイントがあります。

(1) 化学肥料、除草剤、農業、殺虫剤の使用不可
(2) 亜硫酸塩添加の制限(EUのオーガニック規定よりも厳格)
(3) 天体の動きと連動した農事暦の使用
(4) 天然由来のプレパラシオン(調合材)の使用

規定レベルは違えど、上記の(1)と(2)は、ビオロジック(オーガニック、有機)と共通の視点がありますが、(3)農事暦の使用と(4)天然由来のプレパラシオン(調合材)の使用は、ビオディナミの大きな特徴となります。

ビオディナミワインのための農事暦は、惑星や星座の位置とともに、ブドウの種蒔きや収穫、ワインの瓶詰などを行うスケジュールが細かく記されていて、月の満ち欠けは特に重要なこととされています。

ブドウ畑全体を一つの生命体系と見なし、宇宙のリズム(波動)という大きな枠組みのなかで位置付けて、ブドウのみならず、病原体や畑に生息する生命体すべてのバランスを整えていく…といった具合ですから、ちょっとスピリチュアルな世界観も伴っています。

「化学的な薬剤を使用せずに自然の力を引き出す」という点では、漢方などの東洋医学に通じるものがありますが、ここでもう一つのビオディナミならではのポイント、「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤についても、少し説明していきましょう。

牛の糞やタンポポなどを牛の角や腸に詰め、土の中で一定期間寝かせたものが「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤で、自然素材由来の肥料として利用されます。

ビオディナミでは、この肥料が栄養豊富な土壌を作り、自然な味わいを楽しめるブドウを育むと考えられています。

そして、ビオディナミ農法で栽培されたブドウ、またそのブドウで造られたワインには、厳格な規定が欠かせないため、認証のシステム(制度)も重要なものとなります。

ビオディナミの認証団体【Demeter】

ビオディナミのワインは、ハードルの高い規定をクリアしなければ、名乗ることができません。ワインに限らず、ビオディナミ(バイオダイナミクス)農法の指導や、それによって生産される食品の認証を行っているのが、「Demeter(デメター、デメテール)」というドイツに拠点を持つ国際認証団体になります。

Demeterは、穀物の栽培を人間に教えたとされるギリシャの豊穣の女神の名前に由来。1924年に始まり、その商標は1928年に登録されました。

現在はアメリカにも組織があり、昨今の自然派志向やサステナブル消費の世界的な隆盛とともに、Demeter の認証マークは50か国以上で使用され、ヨーロッパ以外でも重要な役割を担っています。

編集部おすすめのビオディナミワイン

ビオディナミ(バイオダイナミクス)の理解が深まったところで、「秋の夜長に飲むのにおすすめ!」というビオディナミワインを編集部で厳選しましたので、ご紹介します。

家ごはんにも合わせやすい!北イタリアのビオディナミ

リンゴや桃のようなやさしく包まれるような香りがするピノ・グリージョ種の白ワインです。スッキリとしたキレの良さもあるので、日本の食卓でも重宝する1本です。

2017 ピノ・グリージョ/アロイス・ラゲデール
産地
イタリア・トレンティーノ アルト アディジェ州
品種
ピノ・グリ-ジョ
タイプ
ミディアムライト辛口 白

タスマニア島の骨太なビオディナミ

オーストリアの有名品種、グリューナー・ヴェルトリーナーですが、タスマニアの冷涼な気候の影響もあってか、凝縮感が増し、骨格もしっかりした白ワインになっています。

2014 バイオダイナミック・グリューナー・ヴェルトリーナー/ステファノ・ルビアナ
産地
オーストラリア・タスマニア
品種
グリューナー・ヴェルトリーナー
タイプ
ミディアムフル辛口 白

月を見ながら、秋の夜長にナチュラルなワインを

今では、伝統産地であるブルゴーニュやボルドーの生産者も取り組んでいるビオディナミ(バイオダイナミック)ワインですが、その発祥は1980年代のフランス・ロワール地方。「ビオディナミの伝道師」とも呼ばれるニコラ・ジョリーが、その第一人者と言われています。

目に見えない自然の偉大な力のことを考えると、ちょっと不思議な気分になりますが、科学的にも証明されている“月と連動した潮の満ち引き”と同じように、ビオディナミワインの不思議な魅力や効果も、今後さらに詳らかになっていくことでしょう。

自然をリスペクトし、環境に配慮したサステナブルなワインを造るという点では、現代社会の中で疑いようのない価値を持っているビオディナミワイン。「月を見ながら、乾杯!」といきましょう。

 

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WINE@MAGAZINE編集部
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