「今度BYOで楽しんでみたい焼肉店があるんだけど…」という編集会議でのメンバーの発言が今回の発端。「肉質のすごさはもちろん、他にはないメニューもあって、“焼肉×ワイン”の可能性を追求したくなる店だから!」
よくよく話を聞くとその店は、あの有名な精肉卸「ヤザワミート」が手がける目黒の焼肉店。肉汁溢れるハンバーグが代名詞の世界中にもファンがいる五反田「ミート矢澤」に、グルメバーガーファン垂涎の恵比寿「BLACOWS」、そして食通にはおなじみの白金「今福」…当然、黒毛和牛の名手が手がける焼肉の店「焼肉稲田」にも期待が膨らみました。
「特にワインとのペアリングを試してみたい3品があるから」ということで、そのメニューに合いそうな3本のワインを厳選。店にBYOで楽しむことを伝えつつ、予約も完了。編集部メンバーで、“焼肉×ワイン”の探求へ向かいました。
BYO(ワインの持ち込み)の基本については、こちらをぜひ参照してください。
本記事で記されているBYO体験は、緊急事態宣言が解除されていた2021年4月に十分な感染防止対策のもと、行われました。本記事は、心ゆくまでBYOを楽しめる機会に備え、参考にしていただければ幸いです。
この記事の目次
目黒駅から徒歩2分。“大人カジュアル”な焼肉店へ
目黒駅東口のロータリーを越え、一本細い通りを入ると、その先に看板を発見!有名なラーメン店がある建物の2Fに「焼肉稲田」はありました。
「あれ?ここ前にも来たことがある…。あ、“ホルモン稲田”だった店だ!」と編集長。そう、ここは以前、大衆的な雰囲気の中で上質なホルモン&焼肉が楽しめる店でしたが、2014年に店名もスタイルも刷新。ワインも似合う焼肉店になったのでした。
階段を上り店内に入ると、アーバンシックな内装。カジュアルさはあるものの、落ち着いた大人の雰囲気が漂っています。
仕切りが動かせる個室タイプのスペースもあり、少人数でゆったりワイン会をやるにも、ビジネスの商談や接待をするにも良さそう。「“ワイガヤ” な雰囲気も楽しかったけれど、これは素敵だね」と“ホルモン稲田”時代を知る編集長。おしゃれだけれど肩の力は入らない雰囲気なので、デートにも向いている印象です。
個室スペースの壁には、それぞれにタイプの異なるアートが掛かっていて、ちょっとフレンチビストロのような雰囲気も。
店内のインテリアも楽しみつつ、着席。事前に決めていた3品をオーダーし、ワインも準備万端。ここからは、3種のペアリングを順に紹介していきましょう。
【正真正銘のユッケ】からスタート!
今ではなかなか食べられなくなった貴重なユッケから、スタート!
社会問題にもなった食中毒の問題から、2011年10月以降「生食用食肉(牛肉)の規格基準」を満たした店以外ではユッケが食べられなくなったというのは、広く知られているところ。当然「焼肉稲田」は、認定生食用食肉取扱者等設置施設として認められています。
食の安心安全のために、徹底。“ユッケのためだけ”に造られた専用の区画が厨房の奥にあり、手洗いシンク、火口などもきっちり分けられ、新人のアルバイトでも一目して「あ、ここは別区画なんだ」と分かる工夫がされているのだそう。
専任の調理人がよく冷えた器に盛り、ホールスタッフが丁寧な説明とともに提供。取り分け用の箸を使うことや、温度が上がらないうちに食べるように案内するなど、細心の注意が払われていました。
「正真正銘のユッケ」は、黒毛和牛のモモ肉を叩いて秘伝のタレで和えたものに、青ネギ、卵黄を合わせた一品。
箸で割ってとろ〜りと流れ出す卵をよく混ぜ合わせてから、メンバーに取り分けて、まず一口…。ゴマ油の香りとタレの甘み、肉の旨みや卵のコクが渾然一体となって、なんとも言えない幸福感に包まれます。
清涼感ある赤ワインを、やや冷やしめで
「正真正銘のユッケ」に合わせたのは、フランス・ロワール地方のカベルネ・フランから造られる赤ワインの代表格、シノン。
「え?前菜的なユッケに赤?」と思う人がいるかもしれませんが、お相手は、新鮮さが命!の冷たいユッケ。シノンも少し冷たいかなと感じる温度で合わせるのが、ポイントです。
ほのかに鉄っぽいニュアンスがフレッシュな赤身のモモ肉と同調し、清涼感があってタンニン(渋み)は控えめな味わいが、ネギの青いフレーバーや甘めのタレとよく合います。
【厚切り極上タン】1頭から7〜8枚しか取れない!
2品目は、食べ応えある「厚切り極上タン」。タン元(舌の根元の部分)を厚切りにし、塩胡椒、ゴマ油、ニンニクと少しのショウガで下味をつけたもの。タン元は1頭の牛のタンから7〜8枚しか取れないという、これまた貴重なメニューです。
ベストな焼き方やポイントは、スタッフが丁寧に説明してくれますが、お願いすれば焼いてもらうこともできるそう。
一緒に出される「塩ポン酢」に加え、一見するとワサビのようにも見える「レモン塩」がオリジナリティ満載。国産レモンの皮も使用した自家製の調味料で、柑橘の爽やかな味わいが、脂しっかりの極上タンのおいしさをグンと引き上げてくれます。
柑橘とペッパー、凝縮感のある白ワインが見事に共鳴
「厚切り極上タン」に合わせたのは、世界的評価を受けるオーストラリア・タスマニアのオーガニックな白ワイン。品種は、ヨーロッパのオーストリアで有名なグリューナー・ヴェルトリーナーです。
引き締まった酸味がある一方で、果実味が凝縮してボディもあり。絶妙な焼き加減のタンを味わいながらワインを口に含むと、柑橘や白胡椒の香りがタンの旨みや味付けの胡椒とも重なります。
自家製の「レモン塩」を少しのせれば、さらにおいしさが口の中で共鳴しながら増幅!“焼肉×ワイン”の化学反応、まさにマリアージュを感じるペアリングとなりました。
【極上牛のミルフィーユ焼き】3枚仕立てのスペシャリテ
3つ目は「焼肉稲田」のスペシャリテである「極上牛のミルフィーユ焼き」です。
口溶け豊かなサシがしっかり入った極薄切りの「リブ芯(リブロースの芯部分)」2枚の間に、肉の旨みが凝縮した赤身のモモ肉「ナカニク」を挟んだ3枚仕立て。この重ね肉がスペシャリテであるということからも、肉のプロとしての本気度と繊細さがひしひしと伝わってきます。
すき焼き風の割り下で味付けされた三層肉は、焼き方も繊細。「極上牛のミルフィーユ焼き」に関しては、スタッフが必ず焼いてくれるそうです。
この日は、ソムリエ資格も持つ小柴店長自らが焼いてくれました。
この焼きは、まさに“秒の世界”。アメリカ、ギリシャ、ウルグアイなど世界各地のワインを飲むけれど、フランスワインが特に好きという小柴店長。ワイン好きな私たちのために、ベストな焼き加減を逃さないよう、全集中(!?)です。
「さぁどうぞ!」とやってきた肉を、卵の中へ。割り下の味付けなので、卵を合わせて食べるのは理にかなっています。まさに、すき焼き!
甘辛い“すき焼き風”には、しっかりした果実味とタンニンを
甘辛な割り下、上品に広がる肉の脂と旨み、溶き卵の濃醇な舌触りとコク…しっかりとした味わいがある「極上牛のミルフィーユ焼き」には、その“しっかり度合い”を合わせるのが一つのポイント。
ペアリングワインは、ボルドーのメルロー。5つ星ホテルの元オーナーと天才醸造家による、濃密だけれど決して重たくはない赤ワインです。
メルロー由来のしっかりした果実味や円みのあるタンニンが、肉と溶き卵のなめらかさを包み込み、重層的なおいしさが膨らんでいきます。
精肉卸としてのこだわり
三種三様のペアリングに満足しながら、ふとテーブルにあったメニューをチェック。そこで、肉の部位ごとに牛の銘柄や産地が違うことに気づきました。
焼き終わった小柴店長に話を伺うと「そうなんです。ヤザワミートには熟練した肉の目利き職人がいて、日本全国から最高品質の黒毛和牛を部位ごとに毎日吟味して仕入れているので、店ではメニューシートも毎日内容をアップデートして作っているんです」と、驚きの情報。
食べ方を想定しての、目利きと仕入れ。
つまり、「焼肉稲田」のミルフィーユ焼きのためのリブ芯とモモ肉はこれ、「ミート矢澤」のハンバーグにはこれ、「今福」のしゃぶしゃぶにはこれ、といった具合に直営店すべてのメニューごとにベストな肉を目利きして、一括仕入れしているというのです。
精肉卸が手がける店の強さ、そのおいしさの秘密を垣間見ることができました。
焼肉×ワインでBYOしよう!
「他のメニューも食べてみたい」ということで、ミルフィーユ焼きとはタレが違う肉も何種類かチェック。焼肉×ワインのペアリングのイメージがさらに膨らみました。
「タレものは、クラインのジンファンデルが相性良さそう!」
「なるほど。タンニンがやわらかく、ジンファンデルの中では上品な甘味があるから、まろやかな味わいが同調して、肉本来のおいしさをさらに引き出してくれそうだね。」
クラインは、カリフォルニアのサステナブルワインの造り手の代表格。ローダイエリアで造られる古木のジンファンデルのワインは、こだわりとリーズナブルさの両方を兼ね備えているワインです。
「あと、レバーならブルゴーニュも良さそうだよね。」
「いいね。今日は白ワイン用のグラスとボルドーグラスをお借りしたけど、ブルゴーニュグラスも借りられるって!」
…と、話が尽きない編集部メンバーたち。次の機会はピノ・ノワールのワインも携えて、BYOをすることになりそうです。“焼肉×ワイン”のペアリング探求、今回はこの辺で!
焼肉稲田 公式Twitter
@yakiniku_inada
本記事で記されているBYO体験は、緊急事態宣言が解除されていた2021年4月に十分な感染防止対策のもと、行われました。本記事は、心ゆくまでBYOを楽しめる機会に備え、参考にしていただければ幸いです。