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「アロマ」「ブーケ」「フレーバー」3つの違い、あなたは説明できる?

ワインを楽しむには、香りがとても大事。嗅覚(一部、味覚も関連)は、テイスティングでも、とても重要なポイントとなります。

 “香り”を意味する言葉として、「アロマ」「ブーケ」「フレーバー」という3つの単語は、ワイン通でなくとも聞いたことがあるかと思いますが、この3つの違い、あなたは説明できますか?

それぞれが意味することを明確に理解できれば、テイスティングはもっと楽しくなります。違いをサラリと説明できたら、あなたもワイン通の仲間入り! そんなに難しい話ではないので、ぜひ最後までお読みください。

【アロマ】とは、一般的にどういう意味?

「アロマ(aroma)」は一般的に“香り”や“芳香”と訳されるもので、対象物から立ち上ってきて鼻で吸って感じるもの、つまり嗅覚で感知するものを指します。またの名を「上立ち香(うわだちか)」と言います。

ちょっと脱線しますが、人の嗅覚は、環境適応能力に長けていて、わりとすぐに慣れてしまいます。ワインのアロマを感知しようとして何度も嗅いでしまい、“鼻がバカになってしまった”時は、“自分のにおい(体臭)”を嗅ぐことで嗅覚をリセットすることが可能。「ワインテイスティングをしていてアロマが感知できなくなってしまった…」という時は、手首や脇の近くなどのにおいを、さりげなく(ここ大事!)嗅いで、スマートに“鼻をリセット”しましょう。

「上立ち香(うわだちか)」を意味するアロマですが、ワインテイスティングにおいては、さらに3つの分類があります。次に、一つひとつの違いを明らかにしていきましょう。

ワインの【第1のアロマ】は、ブドウ由来の香り

ワインにおける「第1のアロマ」とは、原料となるブドウ由来の香りを指します。レモンやライム、ベリーやカシスなどといったフルーツの香りは、ワインのアロマでも基本中の基本。「フレッシュなイチゴの香りがするから、熟成の若いピノ・ノワールかも?」なんていうセリフは、ワイン好きなら定番のものですよね。

フルーツ以外にも、バラやスミレなどの花ラベンダーやピーマンといったハーブや野菜などの植物の香りも、この第1アロマ。さらに、胡椒やシナモンといったスパイスの香りも同様です。

白ワインではよく、アロマティック品種ということで、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブランなどのワインが挙げられますが、この“アロマティック(アロマがしっかりとある)”というのは、この第1アロマが豊かなことを意味しています。

ワインの【第2のアロマ】は、発酵・醸造由来の香り

「第2のアロマ」は、原料のブドウからワインへと変化していく工程の中で生まれてくる香りです。つまり、酵母や乳酸菌が発酵の工程で生み出す香りで、アルコール発酵はもちろん、ワインの勉強した人ならきっと聞いたことがある「マロラクティック発酵(MLF)」や「低温発酵」、「マセラシオン・カルボニック」といった変化や工程が関係しています。

具体的に少しご紹介しましょう。酸味がまろやかな白ワインで感じられる、杏仁豆腐やカスタードクリームのような香りは、マロラクティック発酵(MLF)という工程によるもの。

若い赤ワインで感じられることがあるキャンディやメロンのようなフルーティな香りは、低温発酵由来。おなじみのボージョレ・ヌーヴォーには、バナナのような香りがありますが、こればマセラシオン・カルボニックという工程から生まれてくるアロマになります。

ワインの【第3のアロマ】の別名が【ブーケ】!

「第3のアロマ」は、ワインの熟成中に生まれてくる香りを意味します。木樽のなかで育まれる間にワインに溶け込んでいくものもあれば、瓶内でじっくり熟成していくなかで生成されるものもあります。

ヴァニラやローストしたナッツなどに例えられる香りの多くは、樽由来のもの。また、なめし革や腐葉土、紅茶、ドライフルーツ、トリュフなどの香りは、熟成のなかで徐々に生まれてくるもので、そのものズバリで、熟成香と呼ばれることもあります。

これらの「第3のアロマ」の別名が、ブーケ(bouquet)。ブーケとは、本来は「花束」を意味する言葉です。熟成したワインの中で、複雑に混ざり合った繊細な香りは、確かに花束のように感じられるかもしれません。

よく聞く【フレーバー】は、アロマとどう違うの?

ワイン以外でも、一般的に使われる「フレーバー(flavor)」という言葉。これは 風味香味と訳されることが多いもので、嗅覚のみならず、味覚も含めた口の中での総合的な感覚によって感じられるものを意味します。

例えば、香水の香りについて話をする時は「アロマ」という言葉を使いますが、「フレーバー」とは絶対に言わないですよね。

フレーバーは、対象物を食べたり飲んだりした後に、舌(味蕾)を通じて感じる味に加えて、口の中から呼吸とともに鼻腔に達して感知されるにおいも併せて表す言葉。後者は「含み香(ふくみこう)」とも呼ばれ、本格的なテイスティングにおいては、アロマ=「上立ち香(うわだちか)」と区別されます。

ワインテイスティングにおいては、飲んだ後に感じられる“含み香”=フレーバーと呼ぶことが一般的。原料ブドウ由来、発酵や熟成に由来するものなどの区分はされません。

ワインの香りを堪能するために

ワインを楽しむには、とても大事な“香り”。それを十分に堪能するには、温度も密接に関わってきます。

また「このワイン、アロマが弱いな」と感じた時は、空気(酸素)に触れ合わせることで引き立ってくることがあります。その方法や効果、注意点を知りたいという方はぜひ、「グラスをくるくる・・・ワインの【スワリング】の意味とNG、すべて教えます!の記事もお読みください。

「アロマ」「ブーケ」「フレーバー」の違い、お分かりいただけましたでしょうか。一度それぞれの意味を知ってしまえば、きっと使い分けを間違えることはないはずです。

「ブーケ」はちょっと特殊ですが、「アロマ」と「フレーバー」の違いは、ワイン以外の飲み物や食べ物のテイスティングでも同じですので、いろいろなシーンでも活用できます。日本酒やビール、チーズやオリーブオイル、また多種多様な料理でも同じこと。知っておいて、決して損はありません!

 

【キャンティ・クラシコ】10のQ&Aで理解する基本とトレンド

ワイン好きでなくても「キャンティ」という名前は聞いたことがあるかもしれません。1990年代に起こった“イタ飯ブーム”を知っている方なら、間違いなし!イタリアンの流行とともに、キャンティと呼ばれる赤ワインも一気に日本に広まりました。

それまで「ワインと言えばちょっと敷居が高いフランス料理」というイメージがあった中、陽気なイメージを伴う本格イタリアンの登場は、ワインシーンにおいても大きな出来事だったわけです。

一方「キャンティ=安いワイン」のイメージがついてしまったのも事実。実は、世界でも長い歴史の中で似たようなことが起き、1932年に呼称として登場したのが「キャンティ・クラシコ」なのです。

そこで今回は、初心者にも知ってほしい“基本のキ”からトレンドにまつわる最新情報まで、10のQ&Aを通じて紹介。これを読めば、あなたもキャンティ・クラシコ通になれるはず!

キャンティ・クラシコ(Chianti Classico)は、イタリア語の発音に近い表記をすると「キアンティ・クラッシコ」となり、この表記を採用することが増えてきました。この記事では、一般的な認知度の高さから、基本的に「キャンティ・クラシコ」と表記しています。

Q:キャンティ・クラシコは、どこで造られているの? 

イタリア中部にあるトスカーナ州。その中心にあるフィレンツェとシエナの間に広がるエリアが、キャンティ・クラシコの生産地になります。

最近の市町村合併により現在の村数は8つで、総面積はおよそ7万ヘクタール。東京23区と同じくらいの広さがあるこの指定地域は「コムーネ・キャンティ・クラシコ」と呼ばれ、キャンティ・クラシコを生産するワイナリーは515軒あります(2021年3月現在)。

キャンティ・クラシコは、ブドウ栽培からワインのボトリング(瓶詰め)まで、すべての工程を、指定地域内で行わなければなりません。

Q:テロワールの特徴は?どんな土地なの? 

7万ヘクタールのうち、ブドウ畑が占める割合は実は7分の1だけ。しかも、キャンティ・クラシコの指定畑となると、わずか7,200ヘクタールと10分の1程度に限られます。

他のワイン銘醸地は、エリアのほとんどがブドウ畑ですが、このコムーネ・キャンティ・クラシコは森林が多く、糸杉並木やオリーブ畑が広がる絵葉書のような丘陵地帯。ここは上質なオリーブオイルが作られる名産地でもあり、キャンティ・クラシコはオリーブオイルの原産地呼称(D.O.P.)でもあります。

まさにこの多様性が、類まれなワインの特性を生んでいると言えそうです。

エリアの東側を貫くキアンティ山脈、そして、西側の山脈とその中央の山脈でHの文字のような状態になっているのがポイント。ただし、標高は500~650mとさほど高くなく、まさに“丘陵地帯”と言った感じです。

土壌は、太古の海から隆起した層が基本となっていて、これまた多種多様。代表的な土壌としては、以下のようなものがあります。

アルべレーゼ(Alberese)
泥灰土の岩石土壌。エレガントさやミネラル感をワインにもたらす。

ガレストロ(Galestro)
石灰のある粘土と泥土の土壌で、水はけはよい。

マシーニョ・トスカーノ(Macigno Toscano del Chianti)
砂岩の土壌で、石灰分は含まない。

アルジッレ(Argille)
粘土質土壌で、パワフルでタンニンがしっかりしたワインをもたらす。

Chianti Classico 公式YouTube(英語)

 

Q:原料はどんなブドウ?

キャンティ・クラシコに使われるブドウといえば、サンジョヴェーゼイタリアのブドウ生産量No.1の品種で、中部イタリアを代表する黒ブドウです。

80%以上はサンジョヴェーゼを使うことが鉄則。補助品種として20%までなら他の黒ブドウを使うことができますが、白ブドウを混ぜることは2006年以降NGとなっています。

補助品種の黒ブドウは、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーといった世界的に主流な品種も対象です。

イタリアならではの品種では、トスカーナ州原産で円みのある果実味が特徴のカナイオーロ・ネーロの他、チリエジオーロ、コロリーノ、フォリアトンダ、マルヴァジア・ネーラ、マンモロ、プニテッロといったものがあります。

Q:香りや味わいの特徴は?相性の良い料理も知りたい。

キャンティ・クラシコと一口に言っても、実はバラエティがあるのですが、大まかな特徴としては以下のようなものが挙げられるでしょう。

色:それほど濃くないルビー色
香り:スミレやチェリーのアロマ
味わい:豊かな酸としっかりめのタンニン(渋み)

果実味とともに渋みがあるけれど、酸があるので、色々な料理との相性がよく、食べ物と合わせやすい“フードフレンドリー”なワインと呼ばれます。

相性の良い料理で言えば、同郷フィレンツェの名物である骨付き肉の炭火焼、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが代表的ではありますが、酸があるおかげで、肉じゃがや煮物など、醤油ベースの和食にも意外とよく合います。

■ワインと料理の相性について詳しく知りたい方は、みんなが言う【マリアージュ】って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介!をぜひ参照してください。

少し余談となりますが、キャンティ・クラシコの指定地域内では、昔ながらのキャンティ・クラシコとはまた別の個性をもった味わいのワインも造られています。

スーパータスカンと呼ばれるワイン、聞いたことありますか?

“イタリアワイン・ルネッサンス”と呼ばれる1970年代から始まったモダンなワイン造りで、キャンティ・クラシコ地区の生産者が、規定にとらわれない自由な発想で生み出したボルドースタイルのワインのことです。

濃醇で飲みごたえのある赤ワインで、“スーパータスカン”(トスカーナの超越したワイン)と呼ばれ、世界的にも人気となりました。

Q:黒い雄鶏のマークが意味するものは?

キャンティ・クラシコのワインのボトルの首部分またはバックラベルには、必ず黒い雄鶏のイラストが描かれています。

ガッロ・ネーロ(黒い雄鶏)は、キャンティ・クラシコ独自のシンボルマーク。1924年にイタリア最古の原産地呼称として元来のキャンティが誕生した時に決定されたシンボルマークで、現在ではキャンティ・クラシコD.O.C.G.(保証付原産地統制名称ワイン)のワインの目印となっています。

Q:なぜキャンティ・クラシコに「黒い雄鶏」が描かれているの?

photo: Sailko, CC BY 3.0 < https://creativecommons.org/licenses/by/3.0 >, via Wikimedia Commons

ミケランジェロの弟子でもあった画家、ジョルジョ・ヴァザーリの絵画に「Allegoria del Chianti(キアンティの寓話)」というものがあります。絵をよく見ると、左下にガッロ・ネーロ(黒い雄鶏)が描かれています。キャンティのシンボルとして、黒い雄鶏が描かれているわけですが、それはこんな伝説に由来しています。

時は、中世。フィレンツェ共和国とシエナ共和国は長い期間、中間にあるキャンティの領土を巡って争いが絶えませんでした。

そこで争いに終止符を打つべく、ある試みを採用。それは、早朝に雄鶏が鳴いたら双方の騎士がそれぞれの拠点から出発し、出会ったところを境界線として定めるというものでした。

Chianti Classico公式 YouTube(英語)

フィレンツェ軍は黒い雄鶏を選び、わざとエサをやらずに暗い小屋に閉じ込め、夜中に小屋から放ちました。するとストレスからか、黒い雄鶏はまだ夜中なのに大きな声で鳴き、騎士は早々にシエナに向かって出発。

一方、シエナ軍は白い雄鶏を選び、重要な役割を担うその鶏をきらびやかに飾り立て、のんびりと夜を過ごさせました。白い雄鶏はいつも通り夜明けに鳴き、それに合わせてシエナの騎士は出発しましたが、なんとわずか12kmほど進んだところで、フィレンツェ軍の騎士と遭遇。

そこが境界線となり、キャンティのほぼすべてが当時、フィレンツェ共和国の支配下となった…という逸話です。

Q:キャンティとキャンティ・クラシコはどう違うの?

キャンティのワイン人気が広まるにつれ、本来のキャンティ地区以外でも「キャンティ」を名乗るワインが造られるようになり、品質が異なるワインが出回る事態となったことを受けて「キャンティ・クラシコ」が誕生したという経緯は、冒頭でもお伝えしましたが、「キャンティ=低品質、キャンティ・クラシコ=高品質」という認識は間違いです。

いずれも現在はそれぞれに原産地呼称制度の最高位であるD.O.C.G.を冠し、キャンティもキャンティ・クラシコとは異なる特徴を掲げ、上質で個性あるワインがたくさん造られています。主な違いとしては、次のような特徴が挙げられます。

キャンティD.O.C.G.の主な特徴

・サンジョヴェーゼを70%以上使用。10%以下ならば、白ブドウのブレンドも可能。
・トスカーナ全州が対象地域で、キャンティ地方以外で造られるものもある。
・軽い飲み口のものが多い。

Q:キャンティ・クラシコの中にも3つの階級があるってホント?

キャンティ・クラシコも他の銘醸ワインと同様に、熟成やアルコール度数などを基準とした3種の区分があります。“キャンティD.O.C.G.との違い”でも述べたように、この区分も単純な優劣を示すものでもないということをまず理解した上で、3種の区分とそれぞれの違いを学びましょう。

アンナータ(Annata)

・最低熟成期間:12カ月
・アルコール度数:12%以上
・1年で飲める軽やかな魅力があり、日々の食卓で気軽に楽しめる

リゼルヴァ(Riserva)

・最低熟成期間:24カ月(瓶内熟成3カ月を含む)
・アルコール度数:12.5%以上
・熟成感のある香りと味わい

グラン・セレツィオーネ(Gran Selezione)

・自社畑のブドウのみを使用(フランスワインで言う“ドメーヌもの”)
・単一畑または厳選された極上のブドウを使用
・最低熟成期間:30カ月(瓶内熟成3カ月を含む)
・アルコール度数:13%以上
・2014年に誕生した区分
・それぞれのワイナリーのテロワールの個性を最大限に表現
・ワイナリー数:144(全生産者の6%程度)

醸造技術の進歩や地球温暖化の影響、また現代人の嗜好の変化もあり、熟成年数やアルコール度数だけがワインの価値を決めるわけではありません。

「いつ、誰と、どんな場所で飲むのか」が重要なカギ。気の置けない仲間とワイワイ楽しくテーブルを囲むなら、長期熟成のグラン・セレツィオーネよりも1年ほどで飲み頃を迎えるアンナータの方がおすすめ!といった具合です。

Q:同じ階級区分のワインなら、味わいも均一なの?

熟成年数やアルコール度数だけで、ワインの味わいが決まるわけではありませんし、同じ階級区分であっても、もちろん味わいにはそれぞれに個性があります

また、コムーネ・キャンティ・クラシコには多様性に富んだテロワールがあるということは、初めの方でお伝えした通り。

世界のワイン銘醸地の微細な地図を制作することで、それぞれのテロワールがもたらすワインの魅力を伝え続けている“マップマン”こと、アレッサンドロ・マズナゲッティさんは「同じキャンティ・クラシコでも、地形などのテロワールを紐解けば、村や畑ごとに異なる特徴が見出せる」と語ります。

また、イタリアワインに詳しい人は「“パンツァーノ産”のキャンティ・クラシコが素晴らしい」という話をしたりします。コンカ・ドーロ(金の貝殻)と呼ばれる円形劇場のような形状をしたパンツァーノ(Panzano)の盆地は、暖かく乾燥した特別なミクロクリマ(微気候)があるとのことで、生産者やインポーターは、パンツァーノを独立した一つのエリアのように扱うことがあるのですが、行政区としては「グレーヴェ・イン・キアンティ(Greve in Chianti)」という村の一番南に位置しています。

参考までに、コムーネ・キャンティ・クラシコの8つの村の地図もここで紹介しておきましょう。

■東側のキアンティ山脈に沿った3つの村

  1. グレーヴェ・イン・キアンティ(Greve in Chianti)
  2. ラッダ・イン・キアンティ(Radda in Chianti)
  3. ガイオーレ・イン・キアンティ(Gaiole in Chianti)

■西側の山脈がある村

  1. カステリーナ・イン・キアンティ(Castelina in Chianti)

■H字型の山脈の南側にある村

  1. カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ(Castelnuovo Berardenga)

■H字型の山脈の北側にある3つの村

  1. サン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザ(San Casciano in Val di Pesa)
  2. バルベリーノ・タヴァルネッレ(Barberino Tavarnelle)
  3. ポッジボンシ(Poggibonsi)

※村名に「in Chianti」がつく4つの村は、“Chianti of Chianti(元来からあるキアンティ)”と呼ばれます。

キャンティ・クラシコは、指定地域内でもテロワールの多様性があり、それぞれに特徴あるワインが造られるため、例えば、フランスのボルドーのような村名での原産地呼称の道を拓くことも、今後ありえそう。

伝統を重んじながら、進化も遂げようとしているキャンティ・クラシコは、やはりワイン好きなら要注目の生産地と言えるでしょう。

Q:サステナブルなどの動向は、キャンティ・クラシコにもあるの?

森林が65%を占め、ブドウ畑だけでなく、上質なオイルを生み出すオリーブの畑などもあり、単一耕作の方がめずらしいというキャンティ・クラシコの指定地域は、そもそも生物多様性(biodiversity)に富んでいます。

キアンティ・クラッシコ協会の情報によると、ブドウ畑の70%は何かしらのサステナビリティに取り組んでいて、40%以上はビオ(有機栽培)とのこと。元来の生産環境に加えて、エシカルな視点でもさらにサステナブルなワイン造りのトレンドは進行しているようです。

最新情報もお伝えしましょう。2020年のヴィンテージ状況については、キアンティ・クラッシコ協会会長のジョヴァンニ・マネッティさんが次のように語っています。

「2020年はワインの展示会や海外出張がなかった分、生産者の多くがブドウ畑で充実した時間を過ごしました。また、その収穫は概ね満足できるものでした。

気候は、かなり涼しい春の後、長く暑い夏を迎えました。昼夜の気温変化は良く(7〜8月の最低気温は適度)、完璧なブドウの成熟が可能な環境だったと言えます。

もうひとつ大切なことは6月と9月の雨により、水不足に陥らなかったことです。これらの気候条件は、素晴らしいストラクチャーとバランスを備える、キャンティ・クラシコD.O.C.G.のワイン造りにとって欠かせないものです。

生産量に関しては、現段階の試算では2019年と比較して10%程度の減少が見込まれますが、その要因は主に4月初旬に夜間の気温が低かったためにブドウのつぼみの生育に影響したことによる自然減少と考えられます。」

広く長く愛されるキャンティ・クラシコ。編集部おすすめの1本!

キャンティ・クラシコの“基本のキ”から最新トレンド情報に至るまで、10のQ&Aを通じてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、編集部メンバーがおすすめするキャンティ・クラシコを1本ご紹介します。

1986年に最初の畑を購入して創業した「トラッチャ・ディ・プレズーラ」。現在は35ヘクタールの自社畑を所有しています。当たり年の2008年のキャンティ・クラシコ・リゼルヴァは、長期熟成によるなめらかなタンニンと、オーク樽由来のバニラのような香りも感じられ、余韻も長く心地良い後味が魅力です。

2008 キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・イル・タロッコ
産地
イタリア・トスカーナ州
品種
サンジョヴェーゼ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

情報・画像協力:
Consorzio Vino Chianti Classico
キアンティ・クラッシコ協会(イタリア語サイト)

Consorzio Vino Chianti Classico(キアンティ・クラッシコ協会)は1924年に設立された最初の共同事業体です。現在515の生産者が加盟しており、そのうち354が自らのブランドでワインをリリースしていて、ボトルには見紛うことなき「ガッロ・ネーロ」のトレードマークが付けられています。黒い雄鶏に象徴されるキアンティ・クラッシコ・ブランドの保護とプロモーションが同団体の使命です。

 

世界が注目!【中国ワイン】の知っておくべき歴史と産地

イタリア、フランス、スペイン、アメリカ、オーストラリア、アルゼンチンに次いで、世界第7位のワイン生産量を誇る中国。日本が最も多くワインを輸入している国、チリよりも多くのワインを生産しているって、ご存じでしょうか?

生産量のみならず、世界的に競争力をもつワイン産地を目指して品質の向上も目覚ましく、高級ワインも数多く生産しています。生産量も品質も年々向上しており、今後も伸び続けるだろうと注目されている産地です。

毎年上海で開催される「ProWine Shanghai」は、2019年の実績で、来場者20,640人、うち海外からは11,351人訪れているという、世界からも注目されている国際的なワイン博覧会です。

様々な観点から、今、最も“ワインに熱い”国である中国。日本ではまだなじみのない産地ですが、今後、中国ワインも多く市場に出回るかもしれません。「えっ!?中国でワイン!?」とビックリされている方に、中国ワインについて基本的なことをお伝えます!

司馬遷の『史記』にも「葡萄酒」が登場!? 中国ワインの歴史

ワインに関わる話で「ニューワールド(新世界)」という言葉を耳にするかと思います。明確な定義はあいまいですが一般的には、大航海時代以前から産業としてワインを造っていた国(=オールドワールド、旧世界)の対義語として使われます。

実は中国は、この旧世界と新世界の中間に位置するような、ワイン造りの歴史があります。司馬遷の『史記』にも「葡萄酒」が登場し、前漢時代からブドウの栽培と醸造が行われていたとされ、唐代の政治家、王翰の「葡萄美酒夜光杯」は有名な漢詩です。

唐の時代はワイン造りが大いに盛んだったようですが、明代になって紹興酒造りがメインになったこともありワイン醸造は下火に。その後数百年、ワイン造りは影を潜めていました。

1892年、山東省の煙台(エンタイ)に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」が設立されたことが、近代のワイン造りの出発点になります。

その後、鄧小平の改革開放政策(1978-1992)以降、現在の中国の経済発展と同様にワインの生産と消費も飛躍的に発展します。1980年代から現在まで、およそ10年ごとに中国ワイン事情が変化していきます。

1980年代は規制がほぼない時代で、ブドウ果汁に水や香料などを加えて生産することが一般的でした。1990年代は規制強化の時代。1994年に制定された商標法で、地理的表示保護の商標登録が可能になり、1999年には原産地保護の規定が制定されます。

2000年代には消費者の要求が厳しくなります。同時に、国際基準を意識するようになり、2003年には“半汁葡萄酒”の生産は正式に終了します。それまで、ブドウ果汁原液は50%以上にすること、という緩い規制のもとワイン造りが行われていました。それを、ブドウ果汁100%で造る、ということになったということです。

世界第5位のワイン消費量!ワイン大好き中国人が好きなワインは何?

冒頭で、中国は2020年時点で世界第7位のワイン生産量を誇ることをご紹介しましたが、その生産量は11,636hl。第1位のイタリアの生産量の1/4強、第2位のフランスの1/3弱の量を中国でも造っています。

さらに、中国国内でのワイン消費量も年々増加しており、今や世界第5位で、年間1,930万hl消費されています。1リットルのペットボトルに換算すると19億3000万本分です。ちなみに日本の消費量は年間340万hlなので、中国がどれだけワインを飲む国かわかるでしょう。

ちなみに、中国国内でよく飲まれるのは、ボルドーの赤ワイン。一時期、中国人がボルドーワインを買い占めるので価格が高騰した、なんて事態にもなりました。

そう、世界第7位のワイン生産量を誇りながらも、未だ輸入ワインの消費量が多いのが現状の中国ですが、品質向上が目覚しい中国ワインですので、今後は中国国内でも国産ワインの評価が高まりそうです。

ではなぜ今中国で、ワイン生産の熱が高まっているのか。歴史の部分でも少し触れた通り、国や地方行政が積極的にワイン生産に力を入れているというのも大きいですが、実は中国は、ブドウ栽培にとても適した気候と土壌を持っているのです。

ブドウ栽培に最適な、中国ワインの主要産地

ワインの有名産地と言って思い浮かぶのは、フランスのボルドーや、アメリカ・カリフォルニアのナパ・ヴァレーなどかと思いますが、これらの地域と近しい緯度にあるのが、中国のワイン産地。

ボルドーは北緯44度、ナパ・ヴァレーは北緯38度。近代ワイン生産が始まった山東省煙台は北緯37度。中国二大産地の一角を担う寧夏省は北緯42度。42度は、スペインの高級ワイン産地として名高いリオハと同じ緯度になります。

つまり、ワイン産地の黄金ベルトに位置しつつ、代表的な産地は、日照量が豊富で降雨量が少なく、水はけの良い砂質土壌が多いのです。

【山東省煙台】近代ワインの出発地。ラフィットもワインを造る場所。

日本でいえば山梨県の勝沼に近しい存在の山東省煙台(エンタイ)。ワイン造りの歴史もあり生産量も国内トップです。山東省と言えば青島(チンタオ/セイトウ)が有名かもしれませんが、煙台は青島から北東に200kmほど行った山東半島にある港湾都市で、アジアで唯一「国際葡萄・ワイン都市」としてOIV(葡萄・ワイン国際機構)から認定されています。

海に面しているので、内陸よりは湿度もありますが、それでも年間降水量は500~900mm程度。冬の気温は、内陸ほど下がらないので、冬のブドウ樹の手入れも、そこまで手がかからないというのが特徴です。

ここ煙台には、歴史の項でも触れたとおり張裕ワイナリー(シャトー・チャンユー・カステル)の他、ボルドー5大シャトーの筆頭、シャトー・ラフィット・ロートシルトが造るロン・ダイ(Long Dai)もワイナリーを構えます。

中国唯一のワイン学部がある山東農業大学の研究機関でもある君頂(クンチョウ)シャトー(chateau junding)は、アジア最大級の地下カーヴを持つワイナリーです。

【寧夏回族自治区】近年、メキメキ知名度向上!

1980年代以降、ワイン産地として知名度が上昇中なのが寧夏回族(ネイカカイゾク)自治区。ちょうど中国のど真ん中に近いところ、黄河の上流に位置する内陸の産地です。

豊富な日照量は、なんと年間3000時間。ボルドーの平均が2000時間ほどなので、その恵まれた環境をご理解いただけるでしょう。降雨量も年間200~600mmとかなりの少なさですが、近くに流れる黄河から灌漑もできる立地。加えて昼夜の寒暖差も大きく、まさにブドウ栽培にとって絶好の環境なのです。

賀蘭山(ガランサン)東麓が特に銘醸地として名高く、“中国のボルドー”とも“中国のナパ・ヴァレー”とも称されています。この恵まれた産地に、国内外の資本家が集まってきており、ワイナリーの数は、建設中も含めると優に200を超えそうです。

煙台の張裕ワイナリーも、ボルドーかと見まがうほどの立派なシャトーをもち、その名の通りまさにお城のような堂々としたたたずまい。ここで寧夏産のブドウからワインを造っています。

雲南省】世界的に有名なワインメーカーも進出する高級ワイン産地

中国の南部、ミャンマーとの国境沿いにある雲南(ウンナン)省。20世紀初めごろ、フランス人宣教師が入植し、省内のやや西寄りに位置する弥勒(ミロク)でブドウ栽培を始めたのが最初だと言われています。

この宣教師がここで偶然見つけたのが“ローズ・ハニー”という品種。フランス原産の品種のようですが、フランスでは絶滅。今は主に中国でしか栽培されていない品種です。その名の通り、バラのような芳しい香りが特徴の黒ブドウです。

雲南省の北東に位置し、伝説の理想郷シャングリ・ラからほど遠からぬ、梅里雪山(バイリセツザン)の麓では、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のアオ・ユン(Ao Yun)が造られています。畑の標高は2,200~2,600m。昼夜の温度差があり、ブドウはゆっくり、しっかり熟していきます。

【新疆ウイグル自治区】西国文化の融合産地

中国の最西端に位置し、大部分をゴビ砂漠に覆われた地域。新疆(シンキョウ)も、標高が高く昼夜の寒暖差があり、降水量は少ない、ブドウ栽培に適した地域です。

この地に住む人はもともとブドウを生で食べたり干しブドウを食べる習慣があったため、古くからブドウ栽培は盛んな地域でした。

2025年にはワイナリーは150ヶ所以上、ワイン生産は年間30万klになる見込みとの産業発展の計画を立てています。さらに、ワイン文化と観光産業を組み合わせて300億元以上の産業を形成し、ワイン造りは、地域の雇用創出、所得拡大に貢献しています。

ティエンサイ(天塞)ヴィンヤードが造る、マセランという品種を100%使ったフルボディの赤ワインは、サクラワインアワード2020でゴールドを受賞しています。

【河北省沙城地区】明・清代には皇帝にブドウを献上。良質なブドウを作る。

首都北京のすぐ隣にある河北(カホク)省の中でも、もっともブドウ栽培に適し、生産量も多いのが沙城(サジョウ)地区です。河北省の北部に位置し、内蒙古との境に近いところにある盆地で、やはり、日照時間の長さと昼夜の寒暖差のある土地。

沙城地区のブドウ栽培は800年以上の歴史があり、明・清代には、ここで栽培された「白牛ナイ」「竜眼」などの品種が、毎年宮廷への貢物となっていたようです。

1983年に中国長城葡萄酒有限公司(長城ワイナリー)が設立され、この地域のブドウ農家の試行錯誤もあって、欧州系のワイン用品種の栽培が始まります。中国で生産されるワインの90%は赤ワイン。ですが、沙城地区の主要品種は「竜眼」というインド原産の白ブドウで、実は、中国で初めて白ワインを造ったのはこの沙城地区なのです。

知られざる銘醸地、中国。今後ますます世界が注目!

ボルドーワインが大好きな中国は、上記で紹介したどこの産地でもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン(=ボルドーの主要3品種)は栽培しており、これが、中国ワインの主要品種と言っても過言ではありません。

中国ならではの品種としては、先述した“ローズ・ハニー”の他に、“カベルネ・ガーニッシュ(蛇龍珠、シャオロンジュ)”という、マルベック?と思われていたり、カベルネ・フランの親戚?とも言われる、固有品種も栽培されています。

白ブドウでは、シャルドネ、リースリングなど王道品種から、ヴィダルというカナダでアイスワインを造る品種なども栽培されています。

とにかく中国は、気候や土壌的にも恵まれたブドウ栽培地であり、広大な土地があり、さらにワイン大好きな国民が多く、生産量も消費量も伸び続けているだけでなく今後もしばらく右肩上がりになることが予想されている国なのです。

この事実は、旧世界生産国(伝統的にワイン造りを行ってきたヨーロッパの国々)も無視できない産地ということで、フランスなどの有名生産者が中国でもワイン生産を行っています。

中国の高級ワインは、1本2万円~3万円もするようなものもあり、比較的価格が高めなものが多い印象もありますが、そのあたりの理由は、また別の機会に、もう少し突っ込んだ“中国ワイン事情”とともにお伝えしたいと思います。

■意外な事実が続々!?知っておきたい中国のワイン事情<前編>は こちら

2015 梅楽(メルロー)/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
メルロー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2015 カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルバ/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
タイプ
フルボディ辛口 赤
2013 シャーロンジュウ・レゼルバ/寧夏陽々国際ワイナリー
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
シャーロンジュ
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

【カリフォルニアワイン】基本からトレンドまで。編集部おすすめの10本も紹介!

カリフォルニアのワインというと、どんなイメージがありますか?

ワイン初心者の方はあまり意識したことがないかもしれませんが、普段ワインをよく飲む人は「果実味が濃いワイン」「樽の香ばしさがしっかりあるワイン」「アルコール度数が高いワイン」…といったイメージを持っている人が多いかもしれません。

でも「カルフォルニア」と一口に言っても、実は色々な品種や気候風土があって、価格帯もかなり多岐にわたっています。

そこで今回は、初心者にも知ってほしい“基本のキ”から始めて、トレンドや最新トピックスもお伝えしつつ、編集部おすすめのワイナリーやワインの紹介、さらに“知っ得情報”までお届けします。

カリフォルニアってどんなところ?ワイン産地としての特徴は?

「カリフォルニア」と聞くと、あなたはどんな風景が浮かびますか?

LAのビーチ、ハリウッドやディズニーランド、坂の多いサンフランシスコの街…といった感じでしょうか?それも確かにカリフォルニアの顔ではありますが、実はカリフォルニア州はとても広大。北はオレゴン州との州境から南はメキシコとの国境まで続き、全長は約1,500km。車で移動すると単純計算でも15時間はかかります。日本の本州やイタリアが全長1,300km程度ですから、カリフォルニア州の広さは相当なものです。

地中海性気候と呼ばれる温暖で比較的雨が少ない気候エリアですが、それだけ広いわけですから土壌も様々。山も川もあり、海流と地形の特性から発生する霧などの影響もあり、多様な微気候(マイクロ・クライメット)が存在するのです。

そんな微細なテロワールから生まれるのですから、ワインにも多様性があって当然。

アメリカのワイン年間生産量は世界第4位ですが、その約8割がカリフォルニア州産。人口が多く消費量では世界No.1を誇るアメリカでは、確かに「果実味豊かで、樽香やアルコールもしっかりあるワイン」が多く造れられていますが、それだけではないということを、まず理解しておきましょう。

初心者にもわかりやすい!カリフォルニアワインのラベル

ワインビギナーの皆さんにカリフォルニアワインをおすすめしたいポイントの一つが、分かりやすさです。

カリフォルニアワインのラベルを実際に見てみると、その多くにはブドウの品種名が表示されています。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】は、このWINE@MAGAZINEでもシリーズで展開していますが、初心者にも味わいが想像しやすいわけです。

「ブルゴーニュの赤=ピノ・ノワール」のように、フランスやイタリアなどワインの伝統産国では、長い歴史と習慣から“常識”としてラベルには品種表記がないことが多く、それがワインビギナーにとっては、大きなハードルに…。カリフォルニアのワインであれば、ほとんどその心配がないわけです。

ちなみに、代表的なブドウ品種としては、白ワインではシャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、赤ワインではカベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワール、ジンファンデルなどが挙げられます。

「ニュー・カリフォルニア」とは? サステナブル&豊かな食文化とともに

昨今の健康志向や素材重視のナチュラル志向による食のライト化の中で、未来を見据えたサステナブル(持続可能)でエシカル(倫理的)なワイン造りを、飲み手も求めるようになってきました。そうしたトレンドを受け止め、リッチでパワフルなワインだけではなく、よりエレガントな味わいを追求したワインが、カリフォルニアでも造られるようになったわけです。

ニュー・カリフォルニアと呼ばれるそうしたワインの多くは、酸が効いていて、アルコール度数もあまり高くなく、じんわりとしたうま味を感じるワイン。テロワールの多様性のもと、「サードウェーブ」とも呼ばれる造り手の醸造技術や哲学も大きく影響しています。

この新たな潮流は、ワインジャーナリスト、ジョン・ボネの著書『The New California Wine』が大きく影響していると言われますが、それだけでなく クラフトマンシップ溢れる食文化原点回帰の志向がカリフォルニアの都市部やその郊外を中心に、多面的に広まっていたことに根ざしていると言えるでしょう。

ワインのみならず、ビール、チョコレート、パン、チーズ…と、多くの食文化の中でこの新たな潮流は共通して見受けられます。

また、こうしたニュー・カリフォルニアの礎にあり、ワイン好きの皆さんにも知っておいてほしいのが、地産地消やサステナブルな農業と流通、そして食育を40年以上も前から提唱し続けている料理家、アリス・ウォータースの存在です。

彼女がサンフランシスコ郊外のバークレーに開いたレストラン「シェ・パニース」はオーガニック食材による“シンプル・フード”のメッカとなり、アメリカのみならず、世界中の食文化に影響を与えてきました。ニュー・カリフォルニアのトレンドをより深く理解いただくために、そのエッセンスを集約したものを、参考までに紹介しておきます。

■アリス・ウォータースの9つの原則

Eat locally and sustainably.
地産地消、そして、持続可能な食に努めよう

Eat seasonally.
旬のものを食べよう

Shop at farmers’ market.
ファーマーズマーケットで買おう

Plant a garden.
庭に食べられるものを植えよう

Conserve compost and recycle.
堆肥を作って、リサイクルを心がけよう

Cook simply.
シンプルに料理しよう

Cook Together.
誰かと一緒に料理しよう

Eat together.
誰かと一緒に食べよう

Remember food is precious.
食物は尊いということを忘れないようにしよう

2020年ヴィンテージの特徴と最新トピックス

最新ヴィンテージの2020 年、新型コロナウイルスと山火事という 2つの難局に見舞われたカリフォルニアですが、州内各地のワイン生産者たちは、このヴィンテージの卓越した品質に胸を躍らせているとのこと。

涼しくて穏やかな生育期間の後に、ひとしきり続いた 8 月 の暑さで成熟が促進。収穫量自体は平均より低いと見られています。

サンフランシスコ湾の北側と南側で発生した2つの複合的な火災の影響については、ワイン産業全体でみれば、被害は軽度なものだったようで、カリフォルニア州にある 4,200 のワイナリーのうち、深刻な損害を被ったワイナリーは 20 に満たなかった模様。山火事に直面した地域では、ブドウ栽培家とワインメーカーが協力し、ブドウが煙にさらされる問題を見極め、軽減するよう努めているそうです。

編集部おすすめのワイナリー5軒&ワイン10本

基本から始まり、トレンドや最新のトピックスも理解したところで、「じゃあ、実際にどんなワインを買ったらいいの?」というワインビギナーの方もいるはず。そこで、5軒の造り手のストーリーとともに、個性的なものから王道のものに至るまで、WINE@MAGAZINE編集部で厳選したワイン10本をご紹介します。

クロニック・セラーズ(Chronic Cellars)

編集部内にもファンが多い、個性派「クロニック・セラーズ」から始めましょう!カリフォルニア・セントラルコーストの南部、パソ・ロブレスにあるこのワイナリーは、ジェイクとジョシュのベケット兄弟が経営。彼らはワインビジネスを10 年間学んだ後、生まれ育ったこの地でワインづくりをスタートしました。

“スカル(ドクロ)”などをモチーフとしたラベルは、一度見たら忘れられないインパクトがありますが、まずは“完成度の高い味わい”ありき。どんなワインかをイメージしてワインの名前を決め、その後兄弟の友人の木版画家が独創的なスケッチを描き、そのファンキーなデザインが生まれます。

テイスティングルームには、地元のサーファーやバイカーが集い、にぎやかで楽しい雰囲気なのだそう。現地で飲んだらさらにおいしい体験ができそうです。

協力・輸入元:株式会社TYクリエイション

2017 ピンク・ペダルズ
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
グルナッシュ
タイプ
ミディアムライト辛口 ロゼ
2016 スイート・プティ
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
プティ・シラー、シラー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

ジョエル・ゴット(Joel Gott)

「え?マグロのハンバーガー!?」と驚きながらも、現地でそのおいしさにびっくりしたというWINE@MAGAZINE編集長の佐野。かの有名なワイン評論家ロバート・パーカーに至っては、その「アヒバーガー(マグロのバーガー)」を世界一のハンバーガーと絶賛したとか。

これは、ナパで大人気のカジュアルレストラン「Gott’s Roadside(旧名Taylor’s Refresher)」の話ですが、実はこの店をはじめ、カリフォルニアで数軒のレストランを展開するオーナーのジョエル・ゴットと敏腕ワインメーカーのサラ・ゴットが、夫婦でコストパフォーマンス抜群のワインを手掛けています。

単一畑や生産エリアにこだわる風潮がある中で、あえてエリアをまたぐ畑のブドウでワイン造り。レベルの高いブレンドと醸造の技術によって、満足度の高いワインが生まれています。

協力・輸入元:布袋ワインズ株式会社

ジョエル・ゴット / シャルドネ サンタ・バーバラ・カウンティ 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / セントラル・コースト / サンタ・バーバラ
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル
ジョエル・ゴット / メルロー カリフォルニア 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州
品種
メルロー
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル

クライン(CLINE)

ジンファンデルをはじめとした伝統的な品種のカリフォルニアワインを飲んでみたいという人に、まずおすすめしたいのが、セントラルコースト北部、コントラ・コスタの古樹の畑を守り続ける「クライン」のワインです。

オーナー夫妻のナンシー&フレッド・クラインは、フレッドの祖父のヴァレリアーノ・ジャクジー(“ジャクジー風呂”を発明した人!)が残した畑を守りながら、ナチュラル・ファーミングを積極的に取り入れ、100%太陽電池で運営される環境保全型ワイナリーを展開。

ノースコーストのエリアにあるソノマ・コーストとカーネロスにも畑があり、定番のカベルネやシャルドネも含め、ワイン造りはチャーリー・セガレトスが担っています。

協力・輸入元:布袋ワインズ株式会社

クライン / オールド・ヴァイン ジンファンデル ロダイ 2019
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / セントラル・ヴァレー / ロダイ
品種
ジンファンデル
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル
2016 ムールヴェードル・エンシェント・ヴァインズ
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
ムールヴェードル
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

カレラ・ワイン・カンパニー(CALERA)

「カリフォルニアはよく分からないけど、ブルゴーニュのワインが好き」という方に一度飲んでほしいのが、「カレラ・ワイン・カンパニー」のワインです。

創業者のジョシュ・ジェンセンは、DRC(ロマネ・コンティのワイナリー)でセラー責任者だったアンドレ・ノブレの元で働き、ブドウにほとんど手をかけない自然なワイン造りに魅せられ、「アメリカで最高のピノ・ノワールを造る」という目標を掲げたという人物。

石灰質を豊富に含んだ理想の土壌を求め、セントラルコースト中部にあるマウントハーランで、ワイン造りを開始。今では“カリフォルニアのロマネ・コンティ”とも称されています。

協力・輸入元:株式会社JALUX

2015 カレラ・マウント・ハーラン・ヴィオニエ
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
ヴィオニエ
タイプ
フルボディ辛口 白
2010 カレラ・マウント・ハーラン・ミルズ・ピノ・ノワール
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

シャトー・モンテレーナ(Chateau Montelena)

ワイン通なら知っておきたい、1976年の「伝説のパリ・テイスティング」。フランスvsカリフォルニアのワインの、言わば“ガチンコ勝負”がブラインドテイスティングで行われたのですが、シャルドネ部門で優勝したのが、何とこの「シャトー・モンテレーナ」のワインでした。これによりワイナリーのみならず、ナパ全体の名を世界に広める転機となったとも言われています。

ナパ北部のカリストガに1800年代に建設された瀟洒な石造りの館、見事な庭園、灌漑設備のない古樹が連なる風景は、ワイン通の心を捉えて離さない魅力でいっぱい。

醸造家のボー・バレットは、カルトワインメーカーとして名を馳せるハイジ・バレットの夫でもあり、現在は彼が手がけたカベルネ・ソーヴィニヨンもまた、世界の愛好家から高い評価を受けています。

協力・輸入元:布袋ワインズ株式会社

シャトー・モンテレーナ / シャルドネ ナパ・ヴァレー 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / ノース・コースト / ナパ
品種
シャルドネ
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル
2013 カベルネ・ソーヴィニヨン・エステート
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

「まずはグラスで気軽に楽しみたい!」という方は…

最後に「カリフォルニアワインをもっと気軽に色々と飲んでみたい!」という方に、耳寄りな情報を。「カリフォルニアワイン・バイザグラス・プロモーション 2021 」なる企画が、本日4月1日(木)〜6月20日(日)の期間で実施されています。
※2021.4.30.更新:当初は5月31日(月)までの予定でしたが、4都府県に発出された緊急事態宣言における酒類提供飲食店への休業要請の影響から、期間延長されました。

また、抽選で合計100名様にワインが当たる「カリフォルニアワイン・インスタグラムキャンペーン」も実施中!

このプロモーションに参加している店舗では、複数のカリフォルニアワインをボトルだけでなくグラスで(by the glass)楽しめるというもので、多種多様なカリフォルニアワインの魅力を体験することができます。

WINE@の掲載店にもこのプロモーションに参加している店舗がありますので、ご紹介します。

代々木ビストリア
  • 住所:〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-43-2 メトロビル 1F、B1F
  • TEL:03-6276-4311
代官山食堂 Q'z
  • 住所:〒150-0034 東京都渋谷区代官山11-12 日進ヒルズ代官山2F
  • TEL:03-5422-3654
Wolfgang's Steakhouse Marunouchi
  • 住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2丁目1-1 MYPLAZA 明治生命館B1F
  • TEL:03-5224-6151

カリフォルニアを旅するように、ワインを飲もう!

多様性に富んだカリフォルニアワインの世界。今回は“基本のキ”から、最新のトピックスやトレンド、そしておすすめ情報と、盛りだくさんでお伝えしました。

燦々と輝く太陽の恵みを受けて完熟したブドウから造られ、世界的にも高い評価を得ているカリフォルニアワイン。リッチな味わいのものからエレガントなものまで、そのスタイルは多様です。

気軽に旅するのはまだ難しい日々。ワインを通じて、あなたもカリフォルニアの豊かな恵みを感じ、味わってみませんか?

情報・画像協力:
California Wine Institute
カリフォルニアワイン協会

抽選で合計100名様にカリフォルニアワインが当たるインスタグラムの投稿キャンペーンも実施!「カリフォルニアワイン・バイザグラス・プロモーション 2021」の参加店舗のリストなど詳細は、特設サイトに掲載されています。

 

イタリアの3種のスプマンテ【プロセッコ、アスティ、ランブルスコ】がコスパで世界を席巻中!

家飲みでもシュワシュワっとしたスパークリングワインを楽しむ人が増えてきました。パーティーやお祝いといった特別な場ではシャンパン!となるかもしれませんが、普段の家飲みならリーズナブルなものを選びたい…という需要を捉えて、スーパーやコンビニでも売られているスペインの「カバ」が一般的になりました。

でも、ちょっと待って。お手頃なスパークリングはカバだけじゃありません。ワイン好きなら他の選択肢も知っておいてほしいということで、今回はイタリアの3種のスプマンテに注目

プロセッコ、アスティ・スプマンテ、ランブルスコという3種それぞれの“基本のキ”を学びつつ、製法の特徴や他のスパークリングワインとの違いもレクチャーします。

これまでに紹介してきたスパークリングワインのことを知りたい方は、以下の記事も併せてお楽しみください。

■何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

■「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのスパークリング「cava」を極める

世界売上No.1のスパークリングが【プロセッコ】だって知ってた?

シャンパンと同じ製法で造られる「フランチャコルタ」をはじめ、イタリアにはいろいろなスパークリングワインがありますが、イタリアで、いや世界で一番楽しまれているのがプロセッコ(Prosecco)。すでにシャンパンやカバを超え、世界No.1の売上を誇るスパークリングワインとなっています。(2021年:プロセッコDOC保護協会報告)

1本1,000~2,000円で買えるものが多く、生産量では、日本ですでにメジャーとなっているカバの約2倍というのですから、コストパフォーマンスの点からも、カバに匹敵するスパークリングワインとして、これからもっと日本で広まる可能性大です。

11度ほどというアルコール度数で、リンゴや白桃、白い花などを思わせる香りがあり、味わいはほのかな甘みも感じられますが、酸が効いたフレッシュな辛口。微発泡のもの(フリッツァンテ)もありますが、泡はしっかりめのスプマンテが多く、シュワシュワ感とともに、後味に感じるかすかな苦味がアクセントとなって、「もう一口、もう一口」と飲み進むうえ、どんな食事とも相性抜群です。

生まれ故郷は、水の都“ヴェネツィア”があるヴェネト州からフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州にかけてのエリア。かつて「プロセッコ」という名前で呼ばれていたグレーラ種というブドウが主要品種(85%以上使用)で、計3種の原産地呼称があります。

ヴィーニャ・ドガリーナ / プロセッコ ミレジマート 2019
産地
イタリア / ヴェネト州
品種
グレラ100%
タイプ
スパークリングワイン - 辛口 - ライトボディ

プロセッコはロゼにも注目!

プロセッコの中でも、2020年秋に日本初登場となったのが、ロゼ。

プロセッコDOCロゼは、スプマンテのみ。フリッツァンテ(微発泡)やスティル(無発泡)はありません。品種は、グレーラ(85%以上)とピノ・ネーロ(10〜15%)から造られ、収穫年が同じブドウを85%以上使用する決まりがあるため、常に「ミレジマート(年号入り)」となります。

見た目にも華やかなので、これからきっと人気が高まっていくことでしょう。

(資料提供:イタリア大使館貿易促進部)

甘めが好きな人は【アスティ・スプマンテ】を試してみよう

「甘めのシュワシュワが好き!」という方におすすめなのは、アスティ・スプマンテ(Asti Spumante)アルコール6〜9.5度とあって、あまりワインを飲み慣れていない人にも人気なうえ、食前酒にもデザートワインにもなるというスパークリングワインです。

こちらも1本2,000円程度で買えるものが多く、お手頃感は十分!モスカート・ビアンコ種、つまり日本でもおなじみの「マスカット」を原料としたものが多く、「まさにマスカット!」という香りがしっかり。イタリア北部ピエモンテ州のアスティ周辺で造られていて、原産地呼称も最高格付のDOCGを取得しています。

アスティ・スプマンテの他に、微発泡タイプの「モスカート・ダスティ」、遅摘みブドウから造られる泡無しの「ヴェンデミア・タルディーヴァ」など、姉妹のようなワインもあり、2017年の規定改定によりやや辛口の「アスティ・セッコ」と呼ばれるものも登場しています。

イタリアの美食好きなら絶対にハズせない【ランブルスコ】

パルマの生ハム、イタリアチーズの王様“パルミジャーノ・レッジャーノ”、伝統的なバルサミコ…エミリア・ロマーニャ州は、まさにイタリアの美食の宝庫!そんな土地で造られているのが赤のスパークリングワインランブルスコ(Lambrusco)です。

幅はありますが、こちらも1本1,000〜2,000円のものが多く、アルコール度数も10%前後。伝統的な田舎方式(古代方式)で造られるものは、泡がやさしいフリッツァンテに分類され、現地では昔はワイングラスではなく、お椀のような器で飲まれていました。

ランブルスコには、白やロゼもありますが、基本は“赤スパークリング”。「ランブルスコ・〇〇〇」という名前のブドウ品種がたくさんあり、それらを原料に造られます。

ランブルスコにはDOCやIGTの原産地呼称がありますが、その多くは果実味がしっかりあって、渋みは少なめ。伝統的なランブルスコは辛口でしたが、アメリカで甘口のものが爆発的な人気となったこともあり、やや辛口のセッコ(secco)、やや甘口のアマービレ(amabile)、しっかり甘口のドルチェ(dolce)などのバリエーションがあります。

NV ランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェートロ・セッコ
産地
イタリア・エミリア ロマーニャ州
品種
ランブルスコ・グラスパロッサ
タイプ
ライトボディ辛口 スパークリング(赤)
NV ランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェートロ・アマービレ
産地
イタリア・エミリア ロマーニャ州
品種
ランブルスコ
タイプ
ライトボディやや甘口 スパークリング(赤)

カジュアルでおいしい泡を!イイトコどりの製法【シャルマ方式】

プロセッコ、アスティ・スプマンテ、ランブルスコ。カジュアルでお財布にもやさしいスプマンテに共通する製法が、シャルマ方式です。

“シャルマ”は発案者の名前から来ていますが、他にも「キューブ・クローズ製法」「密閉タンク方式」「マルティノッティ方式」などとも呼ばれる製法です。

一次発酵を終えたワインを大きなタンクに密閉し、その中で糖分と酵母を加えて二次発酵させて造るのが、このシャルマ方式。タンク内での二次発酵ということで密閉率が高いこともあり、モスカートなどのブドウのアロマをしっかりと残すことができるという特徴があります。

そして、出来あがったものを瓶詰めして出荷するので、シャンパンなどの瓶内二次発酵の製法(伝統方式)と比べると、手間暇も時間もコストも大幅に削減。コスパ抜群のスパークリングワインには持ってこい!というわけです。

※瓶内二次発酵の製法(伝統方式)について知りたい方は、以下の記事も併せてお楽しみください。

■何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

とは言え、泡のきめ細やかさや瓶内二次発酵ならではの風味、高級感あるイメージなどを求めて造られるプロセッコやアスティもあります。そんなスプマンテたちは、シャンパンと同じ瓶内二次発酵の製法で造られ、Metodo Classico(メトド・クラシコ)Metodo Tradizionale(メトド・トラディツィオナーレ)rifermentazione in bottiglia(リフェルメンタツィオーネ・イン・ボッティーリア)といった表示がラベルに記載されていることがあります。

余談になりますが、ドイツのスパークリングワイン「Sekt(ゼクト)」も同様。モスカートと同じく、アロマティックな品種であるリースリングを原料とするものが多いため、シャルマ方式が多く用いられています。

ただし、生産者が自家栽培したブドウを自家醸造もしくは専門業者に委託してゼクトに仕立てた「Winzersekt(ヴィンツァーゼクト)」は、瓶内二次発酵の伝統方式(シャンパン製法)と決まっています。

基本は3種!スパークリングワインの製法を整理しよう。

伝統方式(シャンパン製法)シャルマ方式(キューブ・クローズ製法)、そしてランブルスコにも用いられる田舎方式(古代方式)の3種が、スパークリングワインの主な製法になります。

EUの基準では3気圧以上のものを「スパークリングワイン」と定めていますが、ここでは「スパークリングワイン=発泡性のあるワイン」ということで進めていきたいと思います。泡の強さ(ガス圧)や製法、また国によってスパークリングワインは呼び名がたくさん!そこで、主だったものを上記の一覧にまとめてみました。

有名なスパークリングワインは知っておいていて損なし!ぜひ以下の記事も併せてチェックしてみてください。

■何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

■「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのスパークリング「cava」を極める

スパークリングワインの製法には、基本の3種以外にも2つの方式がある!

伝統方式(シャンパン製法)、シャルマ方式(キューブ・クローズ製法)田舎方式(古代方式)の3つ以外にも、スパークリングワインの製法はありますので、ここで紹介しておきましょう。

炭酸ガス注入方式

ソフトドリンクの炭酸飲料と同じように、加圧下のタンクに液体(ワイン)を入れ、炭酸ガスを直接吹き込む方式です。シャルマ方式以上に、手間も時間も削減できる手法で、安価なスパークリングワインを造ることができます。荒々しい泡のスパークリングになりますが、昨今の技術の発展により、きめ細かな泡のものも造れるようになってきています。

トランスファー方式

伝統方式と同様に瓶内二次発酵させたワインを、一度、加圧下のタンクに開け、冷却、濾過してから新しいボトルに詰め替えるという方式です。ルミュアージュ(動瓶)とデゴルジュマン(澱抜き)の作業が不要となるため、“伝統方式の簡略版”と言える製法です。

味よし、価格よし、バリエーションよし!三方よしのスプマンテたち

製法もスタイルも多様化しているスパークリングワインですが、今回は、日本でもますます注目を集めるイタリアのスプマンテをテーマにお伝えしました。

コスパ抜群なので家飲みにもピッタリ。おいしい料理があるとスプマンテの魅力は何倍にも膨らみます!ぜひワイン売場では「味よし、価格よし、バリエーションよし!」まさに“三方よし”というイタリア生まれのスプマンテもチェックしてみてください。

 

丑(うし)年は【牛肉&ワイン】でパワーUP!旅するように味わう世界のペアリング8選

未だ収束していない新型コロナウィルスに世界中が翻弄された2020年でしたが、2021年こそはウィルスに打ち克って、飲食の世界にとっても明るい年になることを、私たちWINE@MAGAZINE編集部一同も願ってやみません。

食べることは、生きること。栄養としてだけでなく、気持ちを明るくし、活力にあふれた暮らしの源になるのが“おいしい”という日々の体験だと思います。

2021年の干支は丑(うし)。そこでエネルギッシュな“丑=牛”にあやかって、私たちも元気に過ごせるよう、世界の牛肉料理とワインのペアリングについてご紹介したいと思います。

■ワインと料理の組み合わせの基本のキを知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介! も併せてお楽しみください。

また、皆さんの中には楽しみにしていた旅行を諦めたという人もたくさんいるはず。この記事を通じて、少しでも旅行気分を味わっていただけたらと思います。題して“旅するペアリング”、さぁ出発しましょう!

【スペイン】バルで気軽に、闘牛の国で串焼き!?

観光地としても常に人気上位に入る、スペイン。動物愛護団体からの強い批判にもさらされて衰退の道を辿っている闘牛ですが、中世からの歴史があり、かの有名なヘミングウェイの『日はまた昇る』や、スペインを代表する詩人、フェデリコ・ガルシーア・ロルカが生涯を通じて作品のモチーフにするなど、実は文化的な側面もある国技です。

そんな闘牛の歴史を持つスペインですが、実は食材としての肉という点からすると、豚・鶏・羊が優勢。マッチョな闘牛の硬い肉はさておき、食用の肉牛もちゃんといますが、料理のバリエーションからすると、牛肉はシンプルなソテーや串焼きなどで食べられることが多いようです。

“バル・ホッピング(数軒のバルをはしごして楽しむこと)”で出会う様々なピンチョス(おつまみの小皿料理)、そしてブロチェタ(フランス語の「ブロシェット」から)と呼ばれる串焼きなどで、牛を堪能。スペインの代表的な赤、テンプラニーリョ種のリオハのワインがあれば、安定感のあるペアリングとなります。

2011 ロダ・ウノ・レゼルヴァ
産地
スペイン
品種
テンプラニーリョ
タイプ
フルボディ辛口 赤

牛肉&スペインワインを日本で楽しむなら、飯田橋駅から徒歩3分というスペインバル「アサドール エルブエイ」へ。和牛赤身肉の炭火焼き&スペインワインを堪能できます。BYO(ワインの持ち込み)の対応もしてくれます!

アサドール エルブエイ
  • 住所:東京都新宿区神楽坂3-4 AYビル1F
  • TEL:03-3266-0229

【イタリア】ビステッカはもちろん、コトコト系の煮込みも


郷土料理の宝庫、イタリアには牛肉を使った料理が各種ありますが、一番有名なのは、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナでしょうか。いわゆる“Tボーンステーキ”の一種で、豪快に焼いた焦げもうま味となるイタリア・フィレンツェの名物です。これには、やはりご当地のキャンティ・クラシコがピッタリでしょう。

2008 キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・イル・タロッコ
産地
イタリア・トスカーナ州
品種
サンジョヴェーゼ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

また、“イタリア版ローストビーフ”とも言えるタリアータも、イタリアンの主菜としては定番で、キャンティ・クラシコにも合う一品です。

タリアータは、イタリア語で「薄く切った」という意味。大きな塊で焼き、中はレアに仕上げた牛肉をスライスして、削ったパルミジャーノ・レッジャーノやルッコラをトッピングし、バルサミコ酢を使ったソースで味わう一皿です。シンプルな牛肉料理なので、あまり果実味とアルコールが強くない赤をセレクトしましょう。

タリアータは、イタリア料理店でもよくメニューオンしています。例えば、自由が丘のこの一軒。「IL CAMPANELLO」なら、流行り廃りのないベーシックなイタリア料理であるタリアータ&ワインを、気軽に楽しめます。

IL CAMPANELLO
  • 住所:東京都世田谷区奥沢6-20-24 okusawa6+2F
  • TEL:03-6432-2971

またイタリアの牛肉料理は、“焼き”のほかに“煮込み”の料理も見逃せません。ミラノ風の仔牛すね肉の煮込み、オッソブーコです。

イタリア語でオッソ(osso)は「骨」、ブーコ(buco)は「穴」を意味しますが、骨付きのすね肉は調理すると中心に穴の開いたような形になるので、その名がついています。

ミラノおよびロンバルディア州を代表する郷土料理の一つなので、ワインはヴァルテッリーナ(キアヴェンナスカ種=ネッビオーロ種を主体とする郷土の赤ワイン)がベストマッチと言われますが、やさしい味わいのネッビオーロ種やバルベーラ種などの赤ワインであれば、よく合います。

ピオ・チェーザレ / バルベーラ・ダルバ 2015
産地
イタリア / ピエモンテ州 / アルバ
品種
バルベーラ100%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムライト

【フランス】ワイン好きなら絶対知っておきたいブッフ・ブルギニョン

ブルゴーニュ風牛肉の煮込み(ブッフ・ブルギニョン)は、その名の通り、フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理です。赤ワインをたっぷり使って牛肉を煮込んだ料理で、ビーフシチューの原型のようなもの。

ほんのりとした酸味や苦味もあり、うま味とコクが豊かなこの牛肉の煮込みには、同じような要素をもつ、熟成感ありのピノ・ノワールが最高のパートナーになります。

2006 ブルゴーニュ・ルージュ・ディアマン・ジュビレ
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

シンプルだけれど、ワインと一緒に心もお腹も満たされる煮込み料理は、フランスの地方料理には欠かせないもの。店の雰囲気からして、まるで現地に行ったような気分になれる「ル・プティ・トノー 虎ノ門店」なら、BYOもできて、ハチミツとクミン風味が効いた「とろける牛ほほ肉の赤ワイン煮」が味わえますので、おすすめです。

ル・プティ・トノー 虎ノ門店
  • 住所:東京都港区虎ノ門2-1-1 商船三井ビル1F
  • TEL:03-5545-4640

【アメリカ】“チェリーレッド”と表される赤身とサシの好バランス

「ステーキといえば、アメリカ!」というイメージを持つ日本人も多いと思いますが、アメリカン・ビーフの魅力や特徴は、まだまだ知らないことも多いようです。

その一つが、アメリカ政府(米国農務省:USDA)が世界に先駆けて導入した牛肉の格付けシステム。日本でもサシの量などに応じて「最高級A5ランク!」などの格付けシステムがありますが、それとはまた異なり、牛の種類、成熟度、サシ(霜降り)の入り具合、性別という4つの要素を主軸に、等級(グレード)が決められるのだとか。

本国アメリカでは全部で8等級に分かれていますが、現在日本に輸入されているものは、プライム、チョイス、セレクトという上から3番目までの等級になるのだそう。改めて、アメリカン・ビーフの等級を銘打ったステーキが食べてみたくなります。

ペアリングワインは、やはりカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンからまずは試してみましょう。

キャッスル・ロック / カベルネ・ソーヴィニヨン コロンビア・ヴァレー 2018
産地
アメリカ / ワシントン州 / コロンビア・ヴァレー
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル

アメリカから上陸したステーキハウスは何軒かありますが、上質な肉を徹底管理のもと熟成させたステーキが食べられる一軒として「Wolfgang’s Steakhouse Roppongi」をご紹介。この六本木店のほかに、丸の内にも支店があります。

Wolfgang's Steakhouse Roppongi
  • 住所:東京都港区六本木5丁目16-50 デュープレックスMs 1F
  • TEL:03-5572-6341

【アルゼンチン】ガウチョの国は、牛肉がパワーの源? 


数年前に流行した「ガウチョパンツ(ワイドシルエットのパンツ)」でその名を知ったという日本人も多いであろう、ガウチョ(gaucho)。よく「牧童」と訳されますが、18〜19世紀にかけて、アルゼンチンやウルグアイに広がるラ・パンパ(大草原地帯)で野生の牛を捕獲して、その革を売っていた“カウボーイ”のことを意味します。

独立心旺盛で、農牧業には長けていながらも安定した生活が嫌いだったというガウチョには、なんとなく日本の“サムライ”に通じるニュアンスもあり、現在では本来のガウチョはもう存在しませんが、農村に住む牛飼い(パイサーノ)がガウチョと呼ばれることもあります。

そんなガウチョの影響を受けた料理と言えば、アサード。アルゼンチン風のBBQステーキといった感じの豪快に焼き上げる肉料理です。日本ではなかなかアルゼンチン料理店には出会いませんが、シンプル&ワイルドな“焼肉”ですから、もし食べる機会があったら、ワインもアルゼンチンの代表格である赤を。濃醇で果実味豊かなマルベック種のワインは、ピッタリとハマるペアリングになることでしょう。

また、アルゼンチンのソウルフードとして有名なものに、チョリパンがあります。


牛肉で作られる極太のチョリソ(ソーセージ)と野菜をパンで挟んだシンプルな料理で、庶民の愛する下町料理といった風情のもの。軽食のためコーラやビールがお供の定番ですが、これもワインで合わせるなら、果実味豊かなマルベックのワインが良いでしょう。

2015 クロス・デ・ロス・シエテ
産地
アルゼンチン
品種
マルベック
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

【オーストラリア】キャンプの定番!オージー・ビーフのグリル

アウトドアやBBQでのステーキに最適な牛肉と言えば、日本でもオージー・ビーフは欠かせないものでしょう。

それもそのはず。オーストラリアは世界最大級の牛肉輸出国で、現在100カ国以上の国に牛肉を輸出していて、なかでも日本は最大の輸出相手国とのこと。食卓での登場回数が多いのも頷けます。

オージー・ビーフの特徴の一つが、賞味期限の長さ。優れた衛生管理と温度管理の徹底によるもので、アメリカ産の牛肉よりも2週間以上も長く、77日間もあるのだとか。また、オーストラリア産とアメリカ産は、肉質的にもよく比較されることがあります。例えば同じアンガス牛でも、食べ比べてみると、多くの人がその違いを感じるそう。

トウモロコシなどの穀物飼料を主に育てられるアメリカのアンガス牛は、やわらかで香りの少ない赤身肉が特徴。一方、牧草を食べて育ち、独特の香りがあると言われるのが、オーストラリア産。硬くて香りが強いと言われ、以前は敬遠されがちでしたが、グラスフェッドという言葉の広まりとともに、状況は色々と変化しているようです。

牛肉にはなかなか奥深い世界がありますが、オージー・ビーフをシンプルにグリルして味わうなら、やはりオーストラリアの赤を合わせて。代表品種であるシラーズのワインで、気の置けない仲間や家族と楽しみましょう。

2017 CR・バロッサ・シラーズ
産地
オーストラリア
品種
シラーズ
タイプ
フルボディ辛口 赤

【中国】チンジャオロースーやXO醬炒めにもワインを

国土も広く、ありとあらゆるものを食材としてしまう中国ではありますが、初めに紹介したスペイン同様、中国も料理食材となると豚や鶏は多いですが、意外と牛肉は少ない印象です。

日本人に人気の青椒肉絲(チンジャオロースー)も、中国においては豚肉を使用するのが一般的で、牛肉を使う場合、本当は「青椒牛肉絲(チンジャオニウロースー)」と表記されるのだとか。また、牛肉のXO醬炒めも日本の中国料理ではすっかり定着してきたように思います。

甘うま系の広東料理なら、熟成ボルドーがおすすめ。タンニンもこなれて果実味もいい感じに落ち着いたボルドーワインが、素晴らしいハーモニーを奏でます。

2007 シャトー・シトラン
産地
フランス・ボルドー地方
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

青椒肉絲も含め、広東を中心とした定番の中国料理をワインと一緒に堪能するなら、やはり横浜中華街へ!BYOもできるおいしいチャイニーズを1軒ご紹介しておきます。

獅門酒楼
  • 住所:神奈川県横浜市中区山下町145
  • TEL:045-662-7675

【韓国】タン、ハラミ、カルビ…みんな大好き焼肉ディナー


「今日は肉を食べよう!」そんな時、ほとんどの日本人が頭に思い浮かべるのは、やはり焼肉ではないでしょうか。

現在の日本の焼肉スタイルの成り立ちやルーツには諸説ありますが、朝鮮半島、韓国の牛肉の食文化に多大な影響を受けていることは間違いないでしょう。

タン、ホルモン、ハラミ、ロース、様々な希少部位のカルビ…一頭の牛を隅から隅まで味わい尽くすような焼肉には、コストパフォーマンスが良い赤ワイン1本で通して、肉の味に集中するのも一興!そんな時は、牛脂にも負けない力強さがあるチリのカベルネ・ソーヴィニヨンが、強い味方になってくれるはずです。

エラスリス / マックス・レゼルヴァ カベルネ・ソーヴィニヨン 2018
産地
チリ / アコンカグア地方 / アコンカグア・ヴァレー
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン85%、プティ・ヴェルド10%、カベルネ・フラン5%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - フルボディ

BYOで焼肉を楽しむなら、ワインの持ち込み料がリーズナブルなところを。おすすめは、新宿三丁目にある「waigaya」。持ち込み料は1本あたり1,100円で、ヘルシーロースター導入のため、においがつかない焼肉屋としても人気です。

和牛ホルモンwaigaya
  • 住所:東京都新宿区新宿3-13-5 クリハシビルB2F
  • TEL:03-6380-0301

持ち込み(BYO)も活用して、旅するように牛肉×ワインを味わおう!

牛肉料理とワインをテーマに、ざっと8カ国を巡り、“旅するペアリング”をお届けしました。健全なる“食欲”は、健全なる身体に宿る!? 皆さんもちょっとお腹が空いてきましたでしょうか。

BYO(ワインの持ち込み)も活用すれば、牛肉×ワインのペアリングの楽しみ方がもっと広がるということで、途中でも色々とご紹介しましたが、最後に“手ぶらでBYO”を簡単に楽しむ方法をまとめた記事もご紹介しておきます。

手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法
WINE@オンラインショップを活用すれば、手ぶらでBYOも可能! 

出来うる限りの感染予防対策に努めながら、コロナに打ち克って、マスクなしで気兼ねなくワイワイ楽しめる日を心待ちにしつつ、牛さんに願いを込めて。

2021年の丑年を明るく過ごしていきましょう!

 

グラスをくるくる・・・ワインの【スワリング】の意味とNG、すべて教えます!

ワインを飲む時、グラスをくるくると回す仕草をよく見ますよね。この動作をスワリングといいます。

「スワリングを上手にやってみたい」

「何度かやってみたけど、ちっともうまくできない」

「なんとなくかっこいいけど、あれは何のため?」

そんなワインビギナーのお悩みや疑問に、しっかりお答えしたいと思います。実は、スワリングはやればいいってもんじゃない動作。スワリングの意味を理解するところから、まずは始めましょう。

スワリングとは?その意味について

スワリング(swirling)=渦を巻くこと。英語のswirlという動詞から来ている言葉です。つまりスワリングとは、ワインの液体が渦を巻くようにグラスを回す動作で、ワインと空気を触れ合わせるために行います。

ワインを空気(酸素)に触れ合わせることに、どんな効果があるのか。それはワインの香りを引き出すことに他なりません。ソムリエがボトルから別の容器(デキャンタ)にワインを移し替えるのを見たことがありませんか?あれはデキャンタージュと呼ばれるものなのですが、空気(酸素)に触れさせることで、香りを引き出す(開かせる)という目的は同じなのです。

スワリングの効果と注意点の詳しい話は後にして、まずはワイン初心者のみなさんが一番気になっているであろうスワリングのマナー&やり方について学びましょう。

スワリングのマナー&グラスを上手に回す方法

まずは、ビギナー向けで簡単だけれど、むしろとてもエレガントで素敵に見えるという作法から始めましょう。

■STEP1

手をテーブルにそのまま置く感じで、テーブルに置かれたワイングラスのステム(脚)とプレート(土台)の繋ぎ目あたりを人差し指と中指で軽く挟みます。そのままグラスを持ち上げたりしないように。

■STEP2

手のひらでテーブルに円を描くようなイメージで、ゆっくり、そっとグラスを回します。回す方向は・・・

右利きの人→反時計回り
左利きの人→時計回り

勢い余って、万が一ワインが遠心力で飛び出てしまっても、この回転方向(内回り)であれば対面する人にかかってしまう確率が低くなるというのが、この回転方向の理由。相手にかけてしまうよりは、自分にかかる方がマシ。この配慮がスワリングの大事なマナーなのです。

■STEP3

ワインの液面が、グラスの内側を滑るようにそっと渦を巻く感じになればOK。跳ねたりさせないように、初めはゆっくりと円を手のひらで描くようにし、慣れてきたら、円の大きさや回すスピードを変えて調整します。

 

このテーブル置きスタイルを繰り返し、スワリングの感覚が掴めるようになったら、宙に浮かせた状態でのスワリングに挑戦しましょう。

持つ部分は、ワイングラスのステム(脚)。親指と人差し指でステムをつまむように持ち、中指や薬指も使ってグラスが安定するように持てたら、焦らずゆっくりと…。手首はリラックス!回転方向や回す感覚は“テーブル置きスタイル”と同じです。手首に力が入りやすく、初めはこぼしやすいので、ワインではなく水で練習するといいでしょう。

Practice makes prefect! 子どもの頃の自転車の練習と同じで、「あ、これか!」というコツを掴む瞬間があなたにも必ず訪れます。

スワリングは何回くらい回すもの?

スワリングができるようになると、なんだかクセになって延々とくるくる回してしまう人がいますが、これもワイン通なら避けたい行為。スワリングをする目的をここでおさらいしておきましょう。

スワリングは、ワインを空気(酸素)に触れ合わせることでワインの香りを引き出すために行うもの。なので、基本的には3回ほど回せば十分です。

一般的には、品種由来のフルーツなどの第1アロマが立ち上っている中、スワリングの効果で、醸造由来の第2アロマ(ヨーグルトやキャンディなど)や熟成由来の第3アロマ(土やきのこなど)がワインから感じられるようになります。

ただし、中にはスワリングしない方がいいワインもあれば、何度も回した方がいい場合もありますので、次にワインの特性に沿ったスワリングのポイントをお伝えしていきます。

スワリング注意その1【すでに香り豊かなワイン】

スワリングをすることでワインに閉じこもっていた香りが解き放たれ、ワインをさらにおいしく楽しめるようになるわけですが、グラスに注いだだけで十分に香り豊かであれば、わざわざスワリングをする必要はありません

むしろ、アロマティックなリースリングやソーヴィニヨン・ブランなどのワインは、空気に触れさせる(酸化させる)ことで失われてしまう香り成分があったり、キリッとした酸味がぼやけてしまうものもあります。

また、抜栓してからある程度時間が経っているワインは、すでに空気と触れ合っているので、スワリング不要。飲みかけの家飲みワインや飲食店で注文するグラスワインのほとんどは、グラスをくるくる回す必要はないはずです。

スワリング注意その2【スパークリングワイン】

シュワシュワとした泡が抜けてしまうので、スパークリングワインは基本的にスワリングNGというのは当然ですね。

ただし、熟成感のあるシャンパンなどは、グラスに注いですぐだと第3アロマが感じられず、本領発揮といかないこともあります。そんな時は、そのまま少し待つか、ワイングラスを斜めに少し傾けてそのままゆっくり回し、ワインをグラスの内側に滑らす程度にして香りを引き出すという方法も。

スパークリングワインに限らず、熟練のソムリエやワイン通の方は、くるくると回すスワリングをせずにこの“そっと滑らす手法”をよく使います。

スワリング注意その3【繊細な熟成ワイン】

酒質が強く長期熟成を経たワインは、スワリングすることでいろいろな香りが開いていくことが多く、ワイン通にとっても大きな楽しみの一つと言えるでしょう。ただし、例えばブルゴーニュの繊細なピノ・ノワールで何十年も熟成をしたものは、本当にデリケート。スワリング一つで、香りも味わいもかえって衰えてしまうことがあります

こうしたワインは見極めも難しいもの。飲み手によるスワリングではなく、プロのソムリエによるデキャンタージュにまずはお任せしましょう。

それでも、香りを自分でもう少し開いてみたいという時は、熟成シャンパンと同様に、“そっと滑らす手法”で様子を少しずつ伺いながら味わうのがおすすめです。

スワリング注意その4【還元臭のあるワイン】

「あれ、ちょっとゆで卵の黄身みたいな、硫黄系のにおいがするな」というワインに遭遇したことはありませんか? おそらく、その原因は還元臭。ワインのアルコール発酵中に生成されるもので、酸欠になったことで発生する硫化水素によるものです。

酸欠から生じる還元臭ですから、酸化とは反対の現象によるもの。つまり、スワリングで酸素と触れ合わせることで、硫黄っぽいにおいが薄まっていくことがよくあります。この場合は、2〜3回ではなく、においの状態を確認しながら何回もスワリング。10回くらいで還元臭が薄まることもあれば、100回くらい回してやっと…なんていうこともあります。

酸化防止剤を使わず、無農薬・有機栽培のブドウから造られた自然派(ビオ)ワインに、この還元臭がでることが多かったことから、「ビオ臭(ビオ香)」と呼ばれることも。還元臭があると、ワイン本来の香りや味わいが妨げられてしまうので、知っておいて損はないと思います。

グラスもポイント!上手にスワリングを活用しよう。

今回は、スワリングの基本から、ワインの特性に沿ったスワリングのポイントまで、しっかりと学びました。

エアレーション(液体に空気を含ませること)の効果で言えば、使うワイングラスも大きく影響してきます。ハンドメイドの繊細なワイングラスは、顕微鏡でその表面を見ると実は不規則な凸凹になっています。つまり、表面積が広く、スワリングをするとエアレーションの効果が高くなるということになります。

機械で大量に造られる分厚いワイングラスは、つるりとした表面なので、ハンドメイドのものと比べると香りは広がりにくいのですが、スワリングの基本&ポイントを理解していることがまずは大事。むしろ、洗ったり拭いたりする取り扱いも簡単ですし、家飲みのカジュアルなワインを楽しむには十分です。

ワインは人と同じで、一本一本に個性があります。その個性を最大限に引き出すには、スワリングをどうしたらよいか。ワインと向き合いつつ、グラスも併せてコントロールできるようになったら、かなりのワイン通と言えるでしょう。

 

「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのcavaを徹底解説


photo:©︎ D.O. CAVA

「1,000円台から買えて、しかもシュワシュワ感も心地良くて、最高!」

コストパフォーマンス(カリテ・プリ)の点からも、また最近ではスーパーやコンビニでも買えるとあって、日本でもすっかりおなじみとなったスペインのcava。まさに「コスパ最高!」ということもあり、家飲みの強い味方となっているワインと言えるでしょう。

でも「コスパが良いことは知っているけど、どんなワインなのかはよく分かっていない」という人も多いはず。そこでcavaの基本をおさらいしつつ、味わいや熟成による種別、さらに最新トピックスと、その魅力にグイグイ迫ってみましょう。安価ということ以外の価値を見つけられたら、次に飲む時はひと味もふた味も違ってくるはず!今回はcavaを極めてみましょう。

■スパークリングワインの基本については何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタを参照

スペイン語の発音に従えば「cava=カバ」が正解!

photo:©︎ D.O. CAVA

よく「カヴァ」と表記されることがありますが、スペイン語では“B”も“V”も同じ「バビブベボ」という発音になりますので、スペイン語の発音に従えば「カバ」が正解。このWebメディアでは「カバ」でいきたいと思います!でも、動物の“カバ”を想起させてしまうのが難点なので「カヴァ」と表記している人も多いのだと思います。

「cava」の語源は、洞窟。ワインを熟成させる場所を示す言葉であり、フランス語では「カーヴ」、英語の「ケイヴ」と呼ばれる言葉と同じです。

スペインの輸出ワインの60%以上がカバで、スペインのD.O.(原産地呼称)に認定されている生産地域別でみれば、伝統的な産地であるリオハを凌いで、第1位フランスのシャンパン、イタリアのプロセッコとともに、 “世界3大スパークリングワイン”の一つと呼ばれるのも納得です。

スペイン各地で造られていて、シャンパンとも深い関係あり!

photo:©︎ D.O. CAVA

時は、19世紀初頭。フランス軍がスペインに侵攻した際に、国境近くのカタルーニャ州にもシャンパンと同じ瓶内二次発酵で造るスパークリングワインの製法が伝来。その後、シャンパーニュ地方で学んだカタルーニャの“とある生産者(後で登場します!)”が、郷土の伝統品種を用いてスパークリングワインを生み出すことに成功し、1872年に初のカバが誕生したと言われています。

1880年代にはカタルーニャ州もフィロキセラ禍に見舞われ、赤ワイン用の黒ブドウ栽培は大ダメージ。これをきっかけに、カバ用のブドウが植えられるようになり、生産と輸出も大きな発展を遂げていくことになります。

カタルーニャ以外にも広まる一方で、製法や品質のばらつきが問題に。徐々に法整備が整い、1972年には「Consejo Regulador del Cava(カバ規制評議会)」が設立。その後、EUレベルでの原産地呼称制度にも則り、1986年の初めには、詳細に区切られた生産地域の指定も行われ、「D.O.カバ」が発足しました。

カバの約99%はカタルーニャ州(約95%がペネデス地域で、約75%がカバワイン発祥の地であるサン・サドゥルニ・ダノイア村)で生産されていますが、テロワール以上に製法の規制を定めていった経緯もあり、アラゴン州、エストレマドゥーラ州、ナバーラ州、ラ・リオハ州、バレンシア州と、スペインの広域にわたる一部の指定地域でも造られています。

「D.O.カバ」では、2020年に4つの主な生産地域やサブゾーンなどの規定なども行っており、今後の動向にも注目です。

■詳しくは D.O. Cava(英語)

シャンパンと、製法は基本的に同じ

photo:©︎ D.O. CAVA

伝来の歴史でもお伝えしたように、カバはシャンパンと同じ瓶内二次発酵(トラディショナル)製法で造られています。「5,000円以上も当たり前!」というシャンパンに対するカバのコスパの良さは、この同じ製法による品質も起因していると言えるでしょう。

醸造タンクの中でまとめて二次発酵させる方法(シャルマ方式)や炭酸を直接注入する方法であれば、手間もコストも省けるのですが、瓶詰めしてからゆっくりと二次発酵させることでしか生まれないきめ細やかな泡は、ワイン好きにはとても大事なものです。

シャンパーニュ地方よりも温暖なため、ブドウの熟度が高く、補糖を行わないorごくわずかだけ行うものが多いということも、シャンパンとカバの違いとして挙げておきましょう。

また、カバであろうと、シャンパンであろうと、中小規模の生産者は日々、瓶を少しずつ“手で回しながら”二次発酵を進めていきますが、ジャイロパレットと呼ばれる機械を使って、効率よく作業を進めていく大手カバメーカーもあります。

ジャイロパレットが動く様子は、映画「トランスフォーマー」さながら!私たち日本人を含む世界市場に向けて、コスパの良いカバを生産するには、これがなくては成立しません。瓶内二次発酵のトラディショナル製法と生産効率性を兼ね備えた設備は、見応えも十分です。

カバ特有の品種のほか、国際的にメジャーな品種もあり

photo:©︎ D.O. CAVA

マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…
マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…
マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ…

呪文のように唱えていると、カバの基本となるこの3品種の名前がいつの間にか脳に刻まれます(笑)いずれもカタルーニャの白ブドウの品種で、マカベオはワインに果実味を与え、チャレッロはワインの骨格を作り、パレリャーダは香りに華やかさを与えるとされています。

ほかには、国際品種としてもおなじみのシャルドネスビラ・パレン(マルヴァジア)、ブレンド用の補助やロゼのカバに使われる黒ブドウでは、ピノ・ノワールガルナッチャ・ネグラ(グルナッシュ)モナストレルトレパットの4品種があります。

photo:©︎ D.O. CAVA

シャンパンと共通の品種ではシャルドネとピノ・ノワールがありますが、ロゼのカバはシャンパンと違い、ベースワインをブレンドする製法が禁止されていて、赤ワインのようにブドウの果皮等を漬け込んでから抽出して造る「セニエ法」が多く、白ワインと同様の製法である「直接圧搾法」で造られるものもあります。

実は“ロゼカバ”には、いろいろなバリエーションがあるのです。

極辛口から甘口まで、7段階!

カバは残糖分量による区分があり、ラベルにもそれが表記されます。その区分は、全7段階。極辛口から順にご紹介しましょう。

■Brut Nature(ブリュット・ナチュレ)※糖分無添加
3g未満/リットル

■Extra Brut(エクストラ・ブリュット)
3〜6g未満/リットル

■Brut(ブリュット)
6〜12g未満/リットル

■Extra Seco(エクストラ・セコ)
12~17g未満/リットル

■Seco(セコ)
17~32g未満/リットル

■Semi Seco(セミ・セコ)
32~50g未満/リットル

■Dulce(ドゥルセ)
50g以上/リットル

最初の3段階までの、Brutが付く辛口のキリッとした味わいのものが人気で、日本でも多く販売されています。Brutは、もともとは「荒々しい、粗野な」という意味があり、転じて「極辛口の」という意味に。シャンパンでも使われる言葉ですね。Secoは「乾燥した」という意味から「ドライな、辛口の」。フランス語のSec(セック)と同じです。

熟成などによる種類

カバはその熟成期間によっても、分類が定められています。長熟に値する高い品質のものほど高価になるのは、他のワインと同様です。

2020年7月15日、カバ規制評議会は、D.O.カバの新しい規定を全会一致で承認。以下のように、9か月以上のカバはCava de Guarda(カバ・デ・グアルダ)、18か月以上のカバはCava de Guarda  Superior(カバ・デ・グアルダ・スペリオール)と呼ばれるようになりました。

Cava de Guarda(カバ・デ・グアルダ)

■Non Vintage(ノン・ヴィンテージ)
最低9ヶ月のスタンダード。

■Vintage(ヴィンテージ)
最低9ヶ月で、単一年のブドウで造られたもの。

Cava de Guarda  Superior(カバ・デ・グアルダ・スペリオール)

■Reserva(レセルバ)
最低18ヶ月。

■Gran Reserva(グラン・レセルバ)
最低30ヶ月。ブリュット以下の残糖分のもののみ。

■Cava de Paraje Calificado(カバ・デ・パラヘ・カリフィカード
最低36ヶ月で、グラン・クリュに相当する単一畑のもの。ブリュット以下の残糖分のもののみで、その他にも厳しい規定をクリアした、わずか12の畑が名乗ることを認められています。

プレミアムな造り手の動向にも注目!

photo:©︎ D.O. CAVA

2020年7月の新たな決定からも見え隠れしてきますが、D.O.カバは今、大きな転換期の最中にあると言えそうです。

広い世界で親しまれるスパークリングワインとしてさらに成長していこうとするカバ規制評議会(D.O.カバ)の取り組みの一方で、「大量生産をしているコスパワイン」というイメージを嫌い、高品質なワインとしてのブランドを高めていこうとする生産者の間で溝が生まれています。

カバ発祥の地、ペネデス地域を流れるアノイア川流域のテロワールを追究しながら、卓越したスパークリングワインを造っていこうと、2012年に「ラべントス・イ・ブラン」が、D.O.を脱退。この記事の初めの方で登場したシャンパーニュ地方で学び、初のカバを生産したカタルーニャの“とある生産者”というのが、現在の「ラべントス・イ・ブラン」の代表を務めるペペ・ラベントスの祖父にあたります。

また、ペネデス地域のテロワールとともに、伝統品種や自社畑のブドウなどの限定的な条件を設けて高品質なカバを造っていこうとする生産者が、新しい組織AVEC(Corpinnat コルピナット)を立ち上げ、2017年にカタルーニャ政府やEUで承認を受けました。

D.O.カバでは同年にグラン・クリュに相当するCava de Paraje Calificado(カバ・デ・パラヘ・カリフィカード)という規定を新たに制定しましたが、AVECの9軒の生産者たちは、2019年にD.O.カバを脱退し、Corpinnat(コルピナット)という表示のスパークリングワインを販売する道を選択。AVECの生産者たちがパラヘ・カリフィカード対象の単一畑の約半分を所有していたため、D.O.カバにとっても大きな出来事となりました。

クオリティ、イメージ、そして産業としての成長。伝統と革新のなかで、カバが今後どうなっていくのか…飲食店や販売店で今度カバを選ぶときには、そんな動向も是非少し思い出してみてください。

アグスティ・トレジョ・マタ / ブルット・ナトゥレ グラン・レセルバ 2014
産地
スペイン / カタルーニャ州 / サン・サドゥルニ・ダノイア
品種
マカベオ45%、パレリャーダ30%、チャレロ25%
タイプ
スパークリングワイン - 辛口 - ミディアムライト
アグスティ・トレジョ・マタ / ロサット トレパット 2018
産地
スペイン / カタルーニャ州 / サン・サドゥルニ・ダノイア
品種
トレパット100%
タイプ
ロゼスパークリングワイン - 辛口 - ミディアムライト
NV ジャズ・ナトゥーレ・レセルバ
産地
スペイン
品種
チャレロ、マカベオ、パレリャーダ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

シャンパンは、フランス・シャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインのこと。

これはもう周知の事実ですね。昔はシャンパン=発泡性のあるワインという認識でしたが、「シャンパーニュ地方以外で造られるスパークリングワインは“シャンパン”ではないんですよー」と様々なところで発信されたおかげで、だいぶ浸透していると思います。

ということで、シャンパン以外にもスパークリングワインはあります。シャンパン以外にフランスで造られる、そこそこ有名なスパークリングワイン「クレマン」、コスパが高くカジュアルに楽しめる「カバ」、名前は聞いたことあるけど実態がよくわからない「フランチャコルタ」

世界には様々なスパークリングワインがあって、正直何がどう違うのかわからない、違いがわからないからいつも知っているスパークリングワインを選んでしまう、という方のために、それぞれのワインの特徴をまとめて紹介します!

シーンや予算に合わせてスパークリングワインを飲み分けできるようになると、より充実したWine Lifeになりますよ。

「違い」その1:産地が違う!

「シャンパン」はシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワイン。ということは「ほかのワインは違う産地で造られるものでは?」と思ったアナタ、正解です!

シャンパン同様に、クレマンやカバ、フランチャコルタも限定的な地域で造られるスパークリングワインです。まずはそれぞれがどこで造られるのかをご紹介しましょう。

NV ブリュット・レゼルヴ
産地
フランス・シャンパーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)
NV スペシャル・キュヴェ/ボランジェ
産地
フランス・シャンパーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

8種類もある「クレマン」

フランスにはシャンパンの他にも、生産地域限定のスパークリングワインがあります。それが「クレマン」。「クレマン+産地名」で呼ばれるスパークリングワインです。全部で8つの「クレマン」があります。

フランス北東部のアルザス地方で造られる「クレマン・ダルザス」は、8つのクレマンの中で最大の生産量を誇り、フランス国内でのクレマンの消費量トップを誇ります。輸出にも積極的なので、日本でも、もしかしたらよく目にするクレマンかもしれません。

フランスのみならず世界的にも名高いワインの銘醸地であるボルドー、ブルゴーニュでも「クレマン・ド・ボルドー」「クレマン・ド・ブルゴーニュ」が造られ、フランスの庭と呼ばれるロワール川流域でも「クレマン・ド・ロワール」があります。

ほかには、フランス東部の「クレマン・ド・ジュラ」「クレマン・ド・サヴォワ」、そこから南西に行ったローヌ地方では「クレマン・ド・ディー」が造られます。このワインが造られるディー村は、北部ローヌと南部ローヌの間にある地域で、ローヌ地方全体で唯一スパークリングワインをメインで生産するエリアになります。

8つ目は南フランスのラングドック地方の「クレマン・ド・リムー」。夏は暑く乾燥した地中海性気候のラングドック地方ですが、このワインを造る地域は、海洋性気候の影響も受け、標高も高いので比較的冷涼。普通の、泡のないワインも造りますが、繊細で上品なワインを生み出し、特にクレマンは高い評価を受けています。

2014 クレマン・ド・ブルゴーニュ/アンドレ・ボノーム
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムフル辛口 スパークリング(白)
NV クレマン・ダルザス・ブリュット・キュヴェ・マネキネコ/クレマン・クリュール
産地
フランス・アルザス地方
品種
ピノ・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

特定地域だけど広範囲すぎる「カバ」

「クレマン」は、もしかしたらなじみが薄いかもしれませんが、シャンパンと同じくらい日本で有名なスパークリングワインに「カバ」があります。カバは、スペインの特定地域で造られるスパークリングワインです。

特定地域、つまりカバを造れる地域が決まっています。一応決まっていますが…めちゃめちゃ広い!スペインの北部とか南部とかどちらかに偏ることなくほぼ全土に「造れる地域」が点在しています。ただ、カバの全生産量の95%は、バルセロナのあるカタルーニャ州で造られます。

ちなみに原語で書くと「CAVA」。「カバ」じゃなくて「カヴァ」じゃないの?と思われそうですが、日本語同様スペイン語も「V」の発音は「バビブベボ」らしい。なので、動物と間違われそうですが「カバ」と表記します。

NV ジャズ・ナトゥーレ・レセルバ/カステル・サント・アントーニ
産地
スペイン
品種
チャレロ マカベオ パレリャーダ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)
NV カバ・カイルス・レセルバ・ブリュット・ナチューレ/カバ・カイルス
産地
スペイン
品種
マカベオ パレリャーダ チャレロ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

シャンパーニュにも負けないクオリティ「フランチャコルタ」

フランス、スペインときたので、ヨーロッパの伝統的なワイン生産国であるイタリアのスパークリングワインも紹介しましょう。イタリア半島の付け根部分、ミラノを要するロンバルディア州のフランチャコルタ地区で造られるスパークリングワインです。

もしかしたら「なんとなく聞いたことはある」というレベルの認知度かもしれません。それもそのはず、シャンパンの生産量の5%ほどの量しか生産されておらず、そのほとんどがイタリア国内で消費されるので、日本では比較的目にすることが少ないスパークリングワインと言えるでしょう(それでも、限られたお店でしか取り扱っていない、というレベルではないので、入手しにくいことはありません)。

イタリアは紀元前からワイン造りをおこなう伝統のあるワイン生産国ですが、「フランチャコルタ」の歴史は浅く、最初に造られたのは1961年。フランチャコルタという地域名がワイン名として謳うことが認められたのが1991年。シャンパンが生まれたのが1660年ごろと言いますので、実に300年のタイムラグがあるのです。

しかし、その300年の時間差を埋めるがごとく、高品質なワインを造りたいと望むこの地の貴族と、野心溢れる20代の青年がタッグを組んで生み出したのが「フランチャコルタ」。当時のイタリア国内の経済的背景と消費地である大都市が近くにあった幸運もあり、瞬く間に人気ワインになり、「フランチャコルタの奇跡」とも言われています。

NV フランチャコルタ・ブリュット/フェルゲッティーナ
産地
イタリア・ロンバルディア州
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

「違い」その2:品種が違う!

産地が違えば、当然、育てられるブドウ品種も異なります。

シャンパンは、シャルドネピノ・ノワールムニエの3品種で造られるワインです(※)。この3種をすべて使ったシャンパンもあれば、1種類だけで造られるものもあります。

クレマンは8つの地域すべて異なる品種が使われ、その地域で造られる通常のスティルワインとほぼ同じ品種で造られます。スパークリングワインではあまり見かけないカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを使ったものもある「クレマン・ド・ボルドー」や、スティルワインは単一品種のワインがメインなのに、スパークリングワインはブレンドしたものも見かける「クレマン・ド・ブルゴーニュ」など、地域の特徴が表れたクレマンが造られています。

カバを飲んだことがある人は多いかと思いますが、使用しているブドウ品種を知っている人は少ないのではないかと思います。伝統的にはマカベオチャレッロパレリャーダという、舌を噛みそうな名前の3品種をブレンドして造られるものがほとんどです。最近では、シャルドネやピノ・ノワールの使用も認められ、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールのカバの生産も認められるようになりました。

フランチャコルタを造るブドウはシャルドネピノ・ネーロピノ・ビアンコ。シャルドネ以外初めて聞いた品種名かもしれませんが、「ピノ・ネーロ」はピノ・ノワールのこと。「ピノ・ビアンコ」は、アルザス地方でよく造られているピノ・ブランのこと。いずれもイタリアでの呼び方になります。

(※)厳密にはシャンパンを造るのに認められた品種は、他に4種類の白ブドウがあります。その4種のブドウの栽培面積はシャンパーニュ地方の全栽培面積の1%に満たない程度なので、あまり見かけることはないかと思います。

発泡の造り方はすべて同じ!

産地も違うし使用する品種も違うそれぞれのスパークリングワインですが、一つだけすべてに共通するものがあります。

それは「泡の造り方」。

スパークリングワインの造り方は、初めにベースとなる通常のワイン(スティルワイン)を造ってから発泡を造ります。その造り方は大きく分けて5種類ありますが、シャンパンもクレマンも、カバもフランチャコルタも、「瓶内二次発酵」という造り方をしています。

カタカナでいうとトラディッショナル方式。「伝統的な」という意味ですが、そんな意味よりも「瓶内二次発酵」の方が造り方をイメージしやすいかなと思います。漢字の通り、瓶内で二次発酵させる造り方です。一次発酵は通常のワイン(スティルワイン)を造る発酵、二次発酵で泡を造る、瓶内で、ということです。

この造り方によるスパークリングワインの特徴は、比較的きめ細かい泡ができ、空気に触れた後でも長い時間発泡性が保たれる、ということです。グラスに注がれたコカ・コーラと比較すると一目瞭然。泡の細かさや炭酸の持続性を比べてみてください。ちなみにコカ・コーラの炭酸は、液体に二酸化炭素を吹き込んでつくられています。

瓶内二次発酵は、一番面倒な、手間のかかる造り方。それでもあえてこの製法をするスパークリングワインは、スパークリングワインの醍醐味である「泡」にこだわったワイン、ということができるでしょう。

「違い」と「同じ」を理解して、飲み比べや使い分けを!

シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ。これら4つのスパークリングワインの違いは「産地」と「品種」。同じ品種でも産地が違えば味や香りの雰囲気は異なります。

造り手によっても雰囲気は変わるので一概に「シャンパンはこんな味、フランチャコルタはこんな味」と言い切れないのですが、少しでもそのキャラクターを知って興味を持てれば一歩前進です。まったく知らないものには手を伸ばせないけれど、少しでも知っていたら近づきやすいかな、と思います。

そしてもう一つの違いは「価格」。1000円代前半から購入できるカバやクレマン。安くても3000円代(それでもなかなか見かけない)、一般的には5000円前後はするシャンパン。シャンパンよりは少しだけリーズナブルだけど4000円前後はするフランチャコルタ。この価格の差は、生産量の違いや「完成品」となる期間の違い、ブランド価値の違いなど様々あります。

同じなのは「製法」。どのスパークリングワインも、1本1本丁寧に瓶内二次発酵で造られた、泡の質にこだわっているワインたちです。繊細な泡は、のど越しもスムーズ。

これらを飲み比べるのも面白いかもしれません。その際はぜひ、同じ熟成期間のもので比べてみてください。ワインは、熟成期間によっても味が変わります。

瓶内二次発酵のスパークリングワインは、瓶内の「澱」に一定期間触れています。澱は仕事を終えた酵母たち。彼らはその後自己分解してアミノ酸などの成分に変わります。アミノ酸の旨味成分が、ワインに溶け込んで複雑な味わいを生み出しています。

普段は、価格的にも味わい的にも親しみやすい「カバ」や「クレマン」を、お祝い事やちょっと背伸びしたいときは「シャンパン」や「フランチャコルタ」を、といった感じで、シーンによってスパークリングワインを選べたら、ますます楽しいWine Lifeになるはずです!

コスパ、コストパフォーマンス、カリテ・プリ…あなたはちゃんと説明できる?

ワイン通がよく使うキーワード。なかには「ワインは好きだし、興味はあるんだけど…」という初心者のみなさんのハードルを少し上げてしまう言葉もあります。

そこで、なんとなく分かっているけれど自分で説明しようと思うとイマイチ…そんなキーワードを改めて解説したいと思います。

今回のキーワードはコスパ。コスパの良いワインとは?さて、あなたはちゃんと説明できますか?

「コスパ」は和製英語!?

日常会話でもすっかり定着したコスパという言葉。省略せずに言えばコストパフォーマンスであるということは、ほとんどの方がご存じかと思います。

コスト(cost)+パフォーマンス(performance)

つまり、その価格に見合う性能や効果、価値があるということ。日本語では費用対効果と訳されることもあります。

英語にも確かにcost performanceという表現は実在しますが、あまり日常的には使われていないようです。「コスパが良い(good cost performance)」という意味の表現としては

reasonable
good value for money

という表現の方がより自然に伝わるようです。

単純に「安いこと」とは限らない。

「コスパが良い(good cost performance)」という意味の表現として、reasonable(リーズナブル)という言葉を紹介しました。リーズナブルも日本語では「安いこと」を意味する言葉として使われていますが、これも本来は違います。

もう一つの表現、good value for moneyと同様の意味があり、価格(金額)に対して正当な価値が見出せるというのが、リーズナブルの本当の意味。コスパ(コストパフォーマンス)と同じく、間違った認識が一般的になっている例です。

ワイン通の人にはフランス好きの方も多いですが、フランス語にはカリテ・プリ(qualité prix)という表現があります。

qualité=クオリティprix=プライス

プライス(価格)に見合うクオリティ(品質)があるということ。「コスパが良い=安い」と勘違いされることを避けて、このカリテ・プリという表現を使うワイン通もいます。

“コスパの良いワイン”は、必ずしも安いワインとは限らない。では、どんなポイントでコストパフォーマンスを見出したらよいのかを、次に整理していきましょう。

3つの経験則とは?コスパを見出すポイントを整理! 

価格に見合う性能や効果、価値があるかどうかが、コスパのポイントなので、実はそのワインを飲む人によって、コスパの良いワインというのは変わってきます。

■その1:味覚の経験則

ソムリエやワインエキスパートの資格をお持ちの方は、少なからず経験があると思いますが、テイスティングの訓練を重ねると感じられる要素がどんどんと増えていきます。好みが変わったりするのは、積み重ねられた経験によるものが大きいものです。もちろん、先天的な味覚の鋭敏さも影響しますが、いずれにせよ個人差があり、それによっておいしさを感じる内容や程度にも差が出ることは、至極当然のことと言えるでしょう。

■その2:ストーリーの経験則

過去にそのワインを飲んだ時のシチュエーションや思い出、またそのワインが造られた背景や造り手の人生…そうした“ストーリー”も価値を持ち、おいしいと感じるかどうかに大きく影響します。これも納得いただけるのではないでしょうか。

■その3:価格の経験則

ワインを買うまたは注文する経験が積まれると「どんなワインがどれくらいの価格なのか」ということが記憶に蓄積されていくものです。それによって「あのワインがこの値段!?」といった視点から、いわゆる“お得感”を判断し、コスパを感じるということもあるでしょう。

1,000円でも1万円でも、その人にとって「コスパ最高!」というワインがある。

味覚、ストーリー、価格の3つの経験則によって決まるコスパの良いワイン。安さという視点だけに捉われていては、たどりつけません。

ワインショップなどで価格の経験則を積むのも楽しいものですし、このWebメディアの記事を読んだり、ワイナリー訪問をしたりすることでストーリーの経験則を深めるもよし。また、ご自身の今の味覚の経験則をもとに、味わいのマトリックスからワインを探すのも効果的です。

味わいのマトリックスから自分の“コスパワイン”を探す!

白・赤・ロゼ・スパークリングとワインのタイプ別のマトリックスがあり、酸味フルーティ感(果実味)、渋みや苦味などのポイントから、より具体的なワインを探せるようになっています。

■ワインのマトリックスは こちら

ぜひ、あなたにとっての“コスパワイン”をたくさん見つけていきましょう!