おいしいワインが飲める店に、おいしい料理あり。その店独自の料理のほかに、ビストロやワインバーには「定番料理」があります。
一人飲みのときでも、仲間と一緒のときでも、はたまたデートや接待で恥をかかないためにも、今さら聞けない「定番料理」のことを知っておくことは大事!さらに、このシリーズでは、その定番料理とワインがおいしいおすすめ店も併せてご紹介しています。
第1弾の「パテカン」に続き、今回のテーマは、「リエット」や「レバーパテ」「レバームース」などのペースト状の一品たち。似ているけれど、その違いがわかるとワインもより一層楽しめるはずです。
この記事の目次
パテと違って、“煮る&練る” のが「リエット」
まずは「リエット(Rillettes)」について。古いフランス語で「豚肉のかたまり」という意味があります。その名の通り、主に豚肉が使われますが、ほかにも鴨やガチョウ、鶏肉などのリエットもあります。さらに最近では、サーモンやサバなどの変わり種のリエットもありますが、まずは基本を押さえましょう。
「リエット」のポイントは、煮る&練るという工程。
豚肉に塩を振り、ラード(豚の脂)でやわらかく煮込んで肉の繊維をほぐし、ペースト状に練る。それをココット型やガラスの容器に入れ、冷やすと脂肪分が固まり、保存性が高まります。
ビストロやワインバーでは、スライスしたバゲットと一緒に提供されるのが定番。リエットをたっぷり塗って、果実味豊かな赤ワインと一緒に食べるのがおすすめです。
「レバーパテ」は、パテだけどパテじゃない!?
「レバー独特の食感や味は苦手なんだけど、パテは好き!」という人も多い人気のメニューです。
「レバーパテ」の基本の作り方は、きれいに下処理した鶏や豚などのレバーを、タマネギやニンニクと一緒に炒め、調味料や香辛料などと混ぜて煮て、ペースト状に仕上げるというもの。
シリーズ第1弾の「パテカン」でお伝えしたように、 “パテ(Pâté)”というのは本来、パイ生地で包んで焼いたものなのですが、「レバーパテ」は焼きません(ああ、ややこしい!)。今では、パテはペースト状になったもの全般も意味するようになってきていて、「レバーパテ」をレバーペーストと呼ぶこともあります。
「レバームース」のまろやかさは、ミルク由来
「レバームース」のポイントは、牛乳や生クリームなどの乳製品。原材料となるレバーも、鶏レバーが基本です。(レバーパテやレバーペーストを、レバームースと呼ぶ店もありますが…)
いろいろな作り方がありますが、下処理した鶏レバーを牛乳に浸けて臭みをとり、蒸すか焼くかした後に裏ごしし、調味料や生クリームなどを加えてムース状に仕立てたものが一般的です。
口どけもやさしく、まろやかな味わい。レバーNGの人から「本当にこれ、レバーなの!?」と驚かれることも多い一品で、やはりスライスしたバゲットは欠かせません。
ちょっとややこしいけれど、ワインのお供には欠かせない「リエット」や「レバーパテ」に「レバームース」。次に、おいしいワインとともに、絶品の“ペースト状のつまみ”が食べられる5軒を紹介しましょう。
隠れ家的ワインバーで、基本のリエットを味わう【ヴァン・ド・レーヴ】銀座
photo:店舗写真
レストランでもなく、ビストロでもない、フレンチのワインバー。銀座一丁目駅から徒歩5分。宝町駅からも同じくらいで着く、大人の隠れ家的な店です。
ワインは、フランス産を中心に100種以上。シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ボルドーなど、ワイン好きなら誰も知っている銘醸地のワインがリストにも多数書かれています。
リエットは、秋田県の指定農家の豚肉にこだわって仕込んだもので、メルバトーストが添えられたオーソドックスなスタイル。メルバトーストとは、極薄くスライスしてしっかりとカリカリに焼き上げられたトーストのこと。チーズやパテをのせて食べるものとして、こういう大人のワインバーでは定番です。クラッカーではなく、メルバトースト…ここにもちょっぴりこだわりを感じます。
自然派ワインビストロのパイオニアで食べる、定番リエット&ムース【ル シェーヌ】南青山
photo:店舗写真
昔からのワイン通なら知っている「ビストロ アンクゥー」の系譜を持つ、南青山のフレンチワインバル。外苑前駅より徒歩約2分のところにあるこの店の名「ル シェーヌ」は、フランス語で「樫の木」を意味し、そのように大きく成長したいというオーナーの想いが込められています。
ナチュラルワインや有機野菜などの食材を使った料理を提供する店が増えましたが、ここは言わば、パイオニア。約50種類のフランス産のヴァン・ナチュールがあり、グラスワインも常時10~15種類ほど用意されています。
リエットは、いも類中心の飼料で育てた旨みとコクが堪らない豚肉「いも豚」で作られたもので、ほかに「白レバーのムース」も人気。カウンターやスタンディングスペースもあるので、一人で気軽に楽しむのもよし、2軒目の利用で立ち寄るのもよしという、素敵な店です。
米沢豚のリエットに、クリーミーレバーのパテも気になる!【Chaseco】渋谷・神泉
photo:店舗写真
「一口目から美味しい」がコンセプトという、気取らず通えるイタリアンダイニングで、神泉駅から徒歩5分という場所に。渋谷駅前の雑踏から抜け出したこのエリアは、こぢんまりした良店が点在しています。
銘柄豚の「米沢豚」を使ったメニューが人気で、グリル、ソテー、煮込みなどのメイン料理はもちろん、リエットも米沢豚で作られた味わい深いもの。「その日の前菜おすすめ盛り合わせ」には、「クリーミーレバーのパテ ピクルス添え」なる一品が入ることもあるので、ワイン好きならやはり定番の前菜はオーダーマストでしょう。
ワインは、店主が厳選する世界各国のワインで、料理との相性はもちろん、値段や味わいもしっかり吟味。黒板に書かれた「本日のワイン」にも注目です。
カレー風味のレバーペーストとリエットがおすすめ【Y’s Diner】自由が丘
photo:店舗写真
東急目黒線の奥沢駅から徒歩30秒!自由が丘駅からも徒歩7分ほどで到着するここは、落ち着いた時間が過ごせる店です。料理はスペインとイタリアがベースとなったミックススタイルで、肉のグリルが特に人気ですが、500円のタパスからいろいろとワインに合う料理が揃っています。
その日の一番おいしいものを5種類盛り合わせてくれる前菜もおすすめですが、単品メニューの「レバーペースト&リエット バゲット添え」があれば、ぜひ注文を。カレー風味のレバーペーストで、リエットと共に、ワインが進むこと請け合いです。
面白いのは、約80種類のワインをセラーから自由に選べるシステム。もちろん、店のスタッフにお願いしてもいいのですが、ワインを少し勉強した人なら、宝探し感覚でワイン選びを。貴重な日本ワインもあったりして、食事前のちょっとしたエンタメになるでしょう。
トリコになる!? 鶏白レバーペーストのスペシャリテ【IL CAMPANELLO】自由が丘
photo:店舗写真
自由が丘からもう一軒。2020年6月にオープンしたイタリアンで、流行り廃りのない、現地の家庭料理をベースにした手作りの料理を提供しています。大きな窓と高い天井で、開放感も抜群。天気の良い日はテラス席での食事も楽しめます。
手打ちのタリアテッレを使ったボロネーゼなど、いくつかスペシャリテがありますが、「鶏白レバーペースト 白トリュフの香り」もその一つ。なめらかなレバーペーストを、カリッと香ばしいキャラメリゼで仕上げたこのメニューは、香り高い白ワインやちょっと甘口のワインとマリアージュします。
グラスワインは480円からで、種類も赤白ワインは4種類ずつ。ボトルワインは3,300円からとお手頃で用意されています。ソムリエもいますので、気軽に相談できますし、もしかしたら、思わぬ裏メニューが出てくるかもしれません。