photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)
ワイン選びに迷った時は、ロゼ!ワイン通の中にも実はそう言う人が多いのを知っていますか?
白ワインのような酸味や軽やかさ、赤ワインのような果実味。その両方の要素を持つロゼワインは、いろいろな食事に合わせやすいワインです。
ロゼは世界各地で造られていますが、一大生産地として有名なのは、フランスで生産量 No.1を誇る南仏、プロヴァンス。一昔前までは「プロヴァンスのロゼ=安いロゼ、お土産用のワイン」というイメージがありましたが、今は有名な造り手も参画し、どんどんと高品質なものが生まれているうえ、全般的にお手頃価格のものも多いのが魅力です。
知っておくべき“プロヴァンス・ロゼの今”を、今回はご紹介します。
この記事の目次
ワイナリーを持つというステイタス
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ワイナリーを所有するということは、世界のセレブたちにとって一つのステイタスになっているということをご存じでしょうか?ビジネスとしての側面ももちろんありますが、ワインが持つ華やかさやロマンが人を魅了してやまないのは、万国共通のようです。
“世紀のカップル”として話題になったブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーもプロヴァンス地方にワイナリーを購入し、2012 年ヴィンテージから「ミラヴァル・ロゼ」という銘柄のワインを販売しています。
ハリウッドスターと南仏5つ星生産者がタッグを組んでつくり出したハイクオリティなロゼは、ワイン業界だけでなく、世界的な大ニュースとなりました。そうした流れとともに、プロヴァンスでは年間約 150 万ボトルのロゼワインを産出。そして、フランス国内での消費量は 2008 年は 670 万 hl でしたが、2013 年には急増して 810 万 hl、そ して 2018 年は 870 万 hl と右肩上がりで伸び続けています。
また、プロヴァンスワインの輸出量は生産量に対して決して大きなものではありませんが、2016年の 輸出量は対2001年比で約4倍もの伸びを示し、ロゼに限ると5倍近く伸びていています。中でも、アメリカは一大消費産地で、プロヴァンス・ロゼ輸出の約半分を占めています。
ハリウッドセレブもプロヴァンス・ロゼに夢中!
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アメリカにおいてそのロゼ人気をさらに牽引したのは、これまた、誰もが憧れるセレブたち。バカンスで訪れた南仏でプロヴァンス・ロゼを飲み、その魅力に開眼したセレブたちは、帰国後もニューヨークの避暑地ハンプトンなどで、華やかなパーティを開催。その時、いつも隣にはお気に入りのロゼワインがありました。
その様子がインスタグラムなどの SNS にアップされると、ロゼは瞬く間に一般の人々にも認知されていきます。2018 年のアメリカにおけるロゼの消費量は、2011 年と比較すると10 倍と、まさに飛躍的な伸びを見せているのです。
プロヴァンスのロゼは、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー以外のセレブたちの心を惹きつけていて、映画『スターウォーズ』の監督、ジョージ・ルーカスは 2017 年、約 10 億でワイナリーの「シャトー・マルギ」を購入。さらに歌姫カイリー・ミノーグも、プロヴァンス・ロゼをプロデュースしています。
なぜ、プロヴァンス?その魅力とは?
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澄み切った青空、降り注ぐ陽光、一面に広がる美しいラベンダー畑…。プロヴァンスはフランス人にとっても、世界中の人々にとっても、憧れの地。紺碧の地中海沿岸のカンヌやニースといったコート・ダジュールなどの高級避暑地でも、みんなロゼの入ったグラスを傾けています。実はプロヴァンス地方のワインは、生産量の89%がロゼという一大産地なのです。
ロゼワインの魅力はなんといっても、そのフレッシュでエレガントな味わい。たとえワインに詳しくなくても、難しいウンチクなんか全部抜きにして、楽しく陽気に明るく、そしておいしく飲むことができます。
プロヴァンスが高品質のロゼを生み出せるのには、以下のような理由が挙げられます。
・ブドウ栽培に向く痩せた水はけのよい土壌であること
・年間 2,700〜2,900 時間と日照量が多く、乾燥した地中海性気候であること
・ミストラルという強い風が吹くので畑に湿気がこもらず、ブドウのオーガニック栽培がしやすいこと(ブドウ畑の24%が認証済みの有機農法栽培で、フランス国内で最多)
このような恵まれた地の利を生かして、プロヴァンスではワインの品質をあげる努力がおこなわれてきました。プロヴァンスにある「ロゼ・センター」では、土壌、栽培法、醸造法などについて研究を重ね、生産者にアドバイスをして味わいの向上に貢献。そうした改革により、1994 年にはフランス国内でのロゼの消費量が白ワインを超えたのです。
プロヴァンス・ロゼの製法と味わいの特徴
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日本でロゼワインと言うと、これまで日本の市場に流通してきた産地や銘柄の特徴から、「フルーティーでやや甘口」と思っている方が未だにいますが、プロヴァンス・ロゼのほぼすべては、スッキリとしたドライなタイプ。日本におけるイメージは非常に偏ったものです。
ブドウ品種はいろいろありますが、主な品種は、サンソー、グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー。外観の特徴としては、少しオレンジがかったピンク色で、「Pétale de rose(ペタル・ド・ローズ:淡いバラの花びら)」を思わせるデリケートな色調をしているものが多く、その大きな要因は直接圧搾法という製法にあります。
直接圧搾法は、黒ブドウを原料にしつつも“白ワイン的に造る方法”。収穫したブドウをすぐに圧搾し、果皮などの漬け込みはしないので、渋み成分が少なく、フレッシュで繊細な味わいが生まれます。
■ロゼワインの製法の基本を知りたい方は、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編 をチェック!
それに加え、近年プロヴァンス・ロゼの品質が向上した要因の一つとして挙げられるのは、機械化による精緻な低温管理。高性能で精緻な温度調節機能のある醸造タンクの使用により、繊細でありながら、単にスッキリと飲みやすいのではなく、奥深くエレガントで品格ある味わいのワインが増えたと言われています。
フランスワインの起源は、プロヴァンスにあり!?
歴史的なウンチクも、豆知識として少しご紹介しておきましょう。
プロヴァンスは地中海に面しているため、紀元前から重要な交流拠点でもありました。プロヴァンス(Provence)という地名は、プロヴィンキア・ロマーナ(Provincia Romana:ローマの属州)に由来。紀元前6 世紀頃から、ギリシアやローマの植民地として様々な影響を受け、中世においてはプロヴァンス伯の領地として独立性を保ち、15 世紀末にフランス王国に吸収されるまでは、独自の歴史を歩み、言葉や文化を培っていました。
プロヴァンスには8つものユネスコ世界遺産に登録されている史跡があり、ワインについては、紀元前600年頃、古代ギリシアの一民族であるフォカイア人が、マッサリア(現マルセイユ)に1本のブドウの木を植えたのが始まりであるとの説も。フランスワインの起源がプロヴァンスにあり!という人がいるのも頷けます。
和洋中…いろいろな料理を日常で楽しむのにピッタリ
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刺身、焼鳥、ハンバーグ、シチュー、麻婆豆腐…多種多様なおかずが、私たちの日常の食卓には並びます。初めにお伝えしたように、白ワインと赤ワインの“いいとこ取り”でもあるロゼワイン、甘ったるさはなく、スッキリしつつも奥行きのある味わいのプロヴァンス・ロゼは、“家飲み”でも強い見方になってくれるワインです。
値段もあまり高いものはないので、“カリテ・プリ(コストパフォーマンス)”も最高!世界各地の料理を楽しめる飲食店でワインを楽しむ時も、また同様でしょう。
味わいに加えて、“ペタル・ド・ローズ(淡いバラの花びら)”と表される、デリケートで美しい色も、私たち日本人の感性に非常に良くマッチします。気の置けない家族や仲間との食事、そして一人飲みの時に、一本。あまり気張らずに、楽しくておいしいワイン時間を上質なロゼで過ごしてみませんか?