photo:Osmani TAVARES BARBOSA – Collection CIVC
修道士、王侯貴族、革命家、アーティスト…長い歴史の中で世界中の著名人との逸話も絶えないシャンパンは、まさに“時空を超えて愛されているワイン”と言えるでしょう。今や「シャンパンが好き!」というワインラバーは世界中にいますが、「年に1回みんなで同じ日に楽しもうよ!」というシャンパーニュデイをご存じでしょうか。
WINE@マガジンではこの「シャンパーニュデイ」を記念して、2回にわたって今さら聞けないシャンパンの基本をご紹介しつつ、WINE@厳選のシャンパンを紹介するという企画をお届けしています。
第1弾では「魅惑のロゼ」をテーマにシャンパンの魅力をご紹介しましたが、第2弾となる今回は、シャンパン好きなら押さえておきたい言葉などを解説しつつ、一度は飲んでおきたい有名シャンパン5本を厳選してご紹介します。
シャンパンのツウになろう!魅惑のロゼ編 はこちら
この記事の目次
【甘辛度】が味わいの一つの決め手!
シャンパンの味わいを大きく左右するのが甘辛度です。瓶内二次発酵を経て、デゴルジュマン(澱抜き)をした後に、ドザージュ(糖分添加)を行い、最後に味わいが調整されます。
ドザージュに使われるのは「門出のリキュール」と呼ばれる液体。多くの場合、サトウキビ糖をワインに溶かしたもので、造り手がワイン本来の特性を極力活かしたければ、リキュールはできる限りプレーンなものを使用します。
逆に、造り手が自分のワインのスタイルを補うためやアロマを加えるために、ドザージュを最後の手段として利用することもあります。
その場合には、長期間樽やマグナムボトルに貯蔵しておいた上質のリザーブワインを用いてリキュールを準備しておきます。様々なアロマをあらかじめ準備しておき、シャンパンに最後に加えるタッチを選べるようにしておくのです。
仕上げの“お化粧”を施したシャンパンの甘辛度は、その残糖度別に規定の表示があり、ラベルにも明記されています。最も甘味があるものから順に紹介すると、以下のようになります。
ドゥー(Doux):50g /リットル 以上
ドゥミ・セック(Demi-Sec):32~50g/ リットル
セック(Sec):17〜32g/リットル
エクストラ・ドライ(Extra Dry):12〜17g/リットル
プリュット(Brut):12g/リットル 未満
エクストラ・ブリュット(Extra Brut):0〜6g/リットル※ブリュット・ナチュール(Brut Nature)/パ・ドゼ (Pas Dose)/ドザージュ・ゼロ(Dosage Zero)
残糖3g/リットル以下またはまったく糖分添加をしていないものには、上記の表示も認められている。
昨今はブリュット(Brut)が付くもの、また糖分添加をしないドザージュ・ゼロ(Dosage Zero)など、辛口のキリッとした味わいのものが人気で、日本でも多く販売されています。
Brutは、もともとは「荒々しい、粗野な」という意味があり、転じて「極辛口の」という意味になります。Secは「乾燥した、ドライな」という意味なのですが、シャンパンとしては甘味のあるものになりますので、ご注意ください。
シャンパンの用語を覚えると、グッと便利に!
甘辛度の表示名のほかにも、シャンパン好きなら押さえておきたい言葉があります。自分好みのシャンパンをちゃんと選ぶためには、こうした用語を知っておくと便利です。
ノンヴィンテージ/ノンミレジメ
厳しい気候のシャンパーニュ地方では、毎年一定の品質のブドウを収穫し、安定した味わいのシャンパンを造ることは難しいものです。そこで「リザーヴワイン/ヴァン・ド・レゼルヴ」と呼ばれる過去に醸造したワインを、その年のワインとブレンドして品質の安定化を計ります。
シャンパンメゾンの主力アイテムは、この“ノンヴィン”。複数の収穫年のワインをブレンドするため「NV」などと書かれ、収穫年は表記されません。
NVの規定としては、二次発酵のための瓶詰めから最低15カ月間は出荷できず、また瓶詰めからでゴルジュマン(澱抜き)まで最低12カ月間の瓶内熟成期間が義務付けられています。
一方、優良なブドウの収穫年や特徴的な年には、単一収穫年のものだけで造られるシャンパンがあります。それらはヴィンテージ/ミレジメと呼ばれ、ラベルには収穫年も明記。規定では、二次発酵のための瓶詰めから最低36カ月間の熟成を経て出荷されます。
photo:GUILLARD Michel – Collection CIVC
ブレステージキュヴェ/キュヴェ・プレスティージュ
各メゾンのフラッグシップ(看板)となるシャンパンになります。その多くはヴィンテージで、特に秀逸な収穫年が選ばれます。
グラン・クリュやプルミエ・クリュなど、高品質のベースワインを厳選してブレンド、あるいは特定の小さな区画のブドウのみを用いて造られます。特に法的な規定はありませんが、熟成期間は通常のヴィンテージよりも長く、10年以上の熟成を経たものも少なくありません。
grappe de raisins cepage Petit Meslier dans la Marne / photo:Jean-Charles GUTNER – Collection CIVC
NM、RM・・・
ノンヴィンテージを「NV」と表記することがあるとお伝えしましたが、シャンパンの略号には、生産者の登録業態を意味するものがいくつかあり、それがラベルに記載されていることもあります。いずれも、CIVC(シャンパーニュ委員会)に登録されていますが、特に重要な2つをご紹介しておきましょう。
NM(ネゴシアン・マニピュラン)
原料となるブドウを他から購入し、シャンパンを醸造する生産者。いわゆる「メゾン」のこと。メゾンもブドウ畑を所有するが、それでは賄いきれず、他から購入するのが通例。RM(レコルタン・マニピュラン)
自社畑で収穫されたブドウのみを用い、自らシャンパンの醸造も行う栽培農家。一部のブドウをメゾンや、協同組合に売ることもある。
上記のほかに、加盟する栽培農家が持ち込んだブドウを原料として、醸造から販売まで行う生産者協同組合のCM(コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン)や、完成したシャンパンを購入し、自社ブランドのラベルを貼って販売する流通業者のND(ネゴシアン・ディストリビュトゥル)などがありますが、まずはNMとRMの2つの違いをしっかり覚えておきましょう。
(出典:2021ソムリエ協会 教本)
WINE@編集部が厳選!一度は飲んでおきたい有名シャンパン5本
grappe de raisins cepage Arbane a Avize dans la Marne / photo:Jean-Charles GUTNER – Collection CIVC
甘辛度やヴィンテージ、ミレジメなどの用語を理解できれば準備OK。シャンパン愛好家でなくとも一度は聞いたことがあるという、有名なシャンパンの真価を心ゆくまで味わうことができるはずです。そこで、WINE@編集部が厳選した垂涎のシャンパン5本をご紹介しましょう。
創始者への敬意を表したシャンパーニュ
アンリ・ジローの創始者であるフランソワ・エマール氏への敬意(オマージュ)が、このシャンパーニュの名前の由来です。
焼きリンゴやグレープフルーツなど柑橘のニュアンス、酵母の香り、ビスケットなど、香りに厚みがあるスタイルで、瓶内熟成に由来するクリーミーな泡やジンジャーブレッドのニュアンスは、料理との相性も抜群。
フレンチやイタリアンはもちろん、煮魚などの和食まで幅広く合います。(WINE@ソムリエ:太田賢一)
『007』で最多出場率を誇る“ザ・男シャンパン”
主人公・ボンド役の俳優は変われど、24作も続く人気映画シリーズ『007』。その中で長きにわたって登場するシャンパンが、ボランジェです。
1829年創業の老舗メゾンですが、今回おすすめするのは、優良年にのみ造られるヴィンテージ・キュヴェ。グラン・クリュのピノ・ノワールを主体にシャルドネをブレンドし、9年間もの長期にわたる熟成期間を経てリリースされたシャンパンです。
凝縮感のある果実味と程よい酸が、力強い骨格を生み出す…まさに“デキる男”を想像させるシャンパンと言えるでしょう。(WINE@マガジン編集部)
挑み続ける生産者の潔さにハッとする!アヴァンギャルドな1本
アヴァンギャルドな手法で、唯一無二の味わいを実現する造り手「エグリ・ウーリエ」。醸造においては異色の「新樽発酵」を取り入れており、スパイシーさ、ビターさ、さらに豊かなミネラル感がワインから感じられます。
味わいのスケール感は「素晴らしい」の一言!単に異端なだけでなく、絶大な支持を得ているという点に惚れ惚れしてしまいます。
個性と信念が前面に現れた1本に、心奪われること間違いなしです!(WINE@ソムリエ:太田賢一)
ブラン・ド・ブラン好きにはたまらない!プレステージ・キュヴェ
「コント・ド・シャンパーニュ」とは「シャンパーニュ伯爵」を意味し、シャルドネの祖となる苗木を持ち帰ったとされるティボー4世に敬意を表して名付けられました。
テタンジェ社の象徴とも言えるヴィンテージ・シャンパンで、天候に恵まれた特別な収穫年にしか生産されず、約10年もの年月をかけて造られるシャンパンです。
シャルドネのみを使用し、さらに一番搾りの果汁だけで醸されるがゆえに非常に生産量が限られている希少なもの。ブラン・ド・ブランならではの豊かなミネラル感、伸びやかな酸味と果実味には極上のエレガンスを感じます。(WINE@マガジン編集部)
年々価格が高騰!超長期熟成型の名門シャンパン
名門ルイ・ロデレールがロシア皇帝に献上するために造った最高キュヴェが、この「クリスタル」。
ポテンシャルが桁違いの超長期熟成型シャンパンで、この2006年ヴィンテージは、収穫年から15年経ってもまだフレッシュ感が残っています。今飲むにはちょっと早いくらいの印象かもしれませんが、今後のさらなる価格高騰を考えると入手しておく方が賢明かもしれません。
ブドウは、ピノ・ノワール60%とシャルドネ40%。2006年は特にピノ・ノワールが成功した年と言われますが、シャルドネのエレガンスが効いた名門シャンパンです。(WINE@マガジン編集部)
「グラス交わせばもっとおいしいシャンパーニュ! 」
「シャンパーニュデイ特集」ということで、第2弾はシャンパン好きなら押さえておきたい言葉などをご説明しつつ、一度は飲んでおきたい有名シャンパン5本を厳選してご紹介しました。
「シャンパーニュデイ #ChampagneDay」は毎年10月の第4金曜日。2021年は10月22日がその日に当たります。
第1弾でもご説明しましたが、シャンパーニュデイは、アメリカ・カリフォルニア在住のブロガーでワインセミナー講師をしているクリス・オゲンフュスの発案によるものです。世界中で年々参加者が増加し、シャンパーニュデイはシャンパン愛好者のための世界共通イベントとなりました。
ぜひあなたも自分好みのシャンパンを用意して、気の置けない仲間や家族と乾杯!といきましょう。
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CHAMPAGNE DAY 2021公式Webサイト
シャンパーニュ産スパークリングワインだけがシャンパーニュ毎日の生活のちょっとしたイベントを祝うきっかけにもなるシャンパーニュデイ。10月22日の当日はシャンパンを楽しんで、SNSでその写真やビデオをシェアするだけで、あなたも「シャンパーニュデイ」に参加できます。投稿にはハッシュタグ #ChampagneDay をお忘れなく!
■詳しくは こちら