まずは、カットされたきれいな肉を目で堪能。次に、ジューっと焼ける音を耳で味わう…。口に頬張る前から“ごちそう感”が始まっている焼肉は、食事の中でも特にエンターテイメント色が強く、人気メニューであることは間違いないでしょう。
現在の日本の焼肉スタイルのルーツには諸説ありますが、朝鮮半島、韓国の牛肉の食文化に多大な影響を受けています。タン、ホルモン、ハラミ、ロース、カルビ、様々な希少部位…ビールやハイボールもいいのですが、“肉とワイン”の相性の良さも忘れてはいけません。
そこで今回は、焼肉に合うワインを選ぶための3つのキーワードとおすすめの万能ワインからスタートして、焼肉の代表的な5種の部位(メニュー)別に合うワインも紹介。最後に、BYOまでできてしまう焼肉店を厳選してご紹介します。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
気軽に“焼肉×ワイン”。パターンをちょっと知っておくだけで、ワインを持ち込みでおいしく楽しむことまでできるはず。では、基本ポイントからまず始めましょう。
この記事の目次
失敗しないための3つのキーワード
焼肉に合うワインを選ぶ時に大事な3つのキーワードを先にご紹介しましょう。それは、タンニン(渋み)・酸味・果実味です。
焼肉は全般的に、赤身部分と脂の旨みがおいしさのポイントとなっていますが、それをさらにおいしく、飽きずに食べていくには、口の中に広がる脂を切ったり包み込んだりしてくれる赤ワインのタンニン(渋み)が効果的。
そして塩の焼肉なら、タンニンではなく酸味が脂をさっぱりさせてくれますし、甘辛いタレのものなら、それに同調する果実味が必要、というわけです。料理とワインのマリアージュやペアリングの基本を知っている方なら、そう特別に考える必要はありません。
■基本を知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介! をチェック!
3タイプのおすすめ万能ワイン
焼肉と一口に言っても部位(メニュー)別に特徴は異なるので、それぞれに合うワインの話は後ほどしますが、まずは「ボトル1本で通せる、使い勝手の良いワインを選びたい」という人のために、3タイプのおすすめ万能ワインをご紹介しましょう。
タニックだけど果実味豊かなニューワールドの赤
焼肉メニューの多くは、タレで味付けされた肉。それなら、キーワードはタンニン(渋み)と果実味になります。アメリカや南米、オーストラリアなどのニューワールドと呼ばれる産地で造られる赤ワインには、この2つの要素を持ったワインがたくさんあります。重厚な果実感と上品なタンニンがあるカリフォルニアのこんなジンファンデルは、ど真ん中の万能ワインかもしれません。
クラインは、カリフォルニアのサステナブルワインの造り手の代表格。ローダイエリアで造られる古木のジンファンデルのワインは、こだわりとリーズナブルさの両方を兼ね備えているワインです。
オールマイティーな濃醇ロゼ
赤ワインと白ワインの“いいとこどり”であるロゼは、食中酒として万能であることは、他の記事でもお伝えしてきました。もちろん焼肉でもそのオールマイティーさは健在で、塩系の焼肉にも合います。ただし、果実味がしっかりしたものを選ぶこと。やさしいタンニンと酸味があるうえ、八角やシナモンなどのスパイス感もあるグルナッシュなどのロゼは、まさに打ってつけです。
赤のスパークリングワイン最強説
シュワっとした炭酸の泡は脂や濃い味をさっぱりさせてくれる効果があるので、ビールやハイボール同様、スパークリングワインももちろん有効です。そこに、ポイントとなる果実味とやわらかなタンニンがあれば尚よし!カバのロゼ・セコ(seco:やや甘みあり)のほか、赤のスパークリングを。果実味のある泡がタレと合うので、ぜひ一度お試しください。
では、さらにこだわってみたい方、グラスワインで色々試してみたい方のために、今度は焼肉の代表的な5種の部位(メニュー)別に合うワインを具体的に探っていくことにしましょう。
【タン塩】炭火の香ばしさも活かすグリューナー
塩で堪能する焼肉の代表格と言えば、タン塩。実はタンはかなり脂分が多いので、塩胡椒とネギでさっぱり焼き上げるのが最適というわけです。
しっかりめの脂、塩味、ネギの風味と同調しながらも、よりふくよかに味を広げてくれるのが、世界的評価を受けるオーストラリア・タスマニアのオーガニックな白ワイン。品種は、ヨーロッパのオーストリアで有名なグリューナー・ヴェルトリーナーです。
引き締まった酸味がある一方で、果実味が凝縮してボディもあり。絶妙な焼き加減のタンを味わいながらワインを口に含むと、柑橘や白胡椒の香りがタンの旨みや味付けの胡椒とも重なります。
【豚トロ】辛口のロゼでさっぱり。南仏のロゼ
塩系の焼肉メニューから、もう一つ。牛肉メニューの中でも埋もれることなく、人気を誇る豚トロです。これも脂分が多い部位ですが、牛の脂とはまた風味が異なり、口溶けがよく、やわらかな甘みが特徴です。
そのほんわりした甘みとシンプルな塩味に寄り添ってくれるワインは、ドライなロゼ。万能ワインでも登場しましたが、しっかりめの果実味を伴ったロゼはよく合いますし、産地の南仏やスペインは豚肉をよく食べるエリアでもあるので、“豚トロ×ロゼ”は理にかなっているのかもしれません。
【ハラミ・肩ロース・ランプ】赤身系はタンニンよりも清涼感がある赤で
昨今そのヘルシーさからも注目を集めるのが、脂少なめの赤身肉。肉本来のうま味も感じられるとあって、肩ロースやランプ、希少部位ではイチボやミスジなどの人気が高まっています。ハラミは横隔膜の部位なので、本来はホルモンの一つなのですが、やわらかでさっぱりめの赤い肉質なので、ここで一緒にご紹介することにします。
脂少なめの赤身肉には、強いタンニンは不要。むしろ肉本来のうま味を感じづらくさせてしまうので、それよりも酸味もある赤がおすすめです。フランス・ロワールの冷涼感あるカベルネ・フランは、赤身肉との相性が良好です。
【カルビ】しっかりした脂のうま味には、渋みも果実味も強めの赤
カルビは韓国語で「あばら」を意味する言葉から来ていて、日本では“(あばら周辺の)バラ肉全般”をそう呼んでいます。脂がしっかりついたお腹周りの肉で、焼くと食欲をそそる牛脂特有の香りが広がり、とろけるような食感も魅力です。
これには、しっかりしたタンニン(渋み)と果実味が必要。万能ワインで最初に紹介したタニックだけど果実味豊かなニューワールドの赤がベストセレクトとなるでしょう。とは言え、「渋いワインは苦手で…」という方は無理せず、タンニンが穏やかなものをセレクトしましょう。
【ホルモン・レバー】トリッパ文化あるイタリアの赤が意外とマッチ
内臓肉全般を指す、ホルモン。関西弁で「捨てるもの=ほおるもん」が転じて…という説をよく耳にしますが、英語の「ホルモン(体内の組織や器官を調節する物質の総称)」にあやかり、元気の源をイメージさせるということでそう呼ばれるようになったというのが有力説なのだとか。いずれにせよ、焼肉には欠かせないメニュー(部位)です。
シマチョウorテッチャン(大腸)、ヒモ(小腸)、レバー(肝臓)、ハツ(心臓)、ミノ (第1胃)、ハチノス(第2胃)などがあり、それぞれに食感や味わいは異なりますが、タンニンも果実味も突出せずにバランスの取れた赤ワインが、まとめて面倒を見てくれます。おすすめは、同じく内臓(トリッパ)の料理を食す文化があるイタリア内陸部の赤。トスカーナ州のサンジョヴェーゼ種のワインを1本ご紹介します。
以上、焼肉の5種の部位別でご紹介してきました。3つのキーワードと3タイプの万能ワインを基本に、お好みで色々と楽しんでいただければと思います。
それでは、最後に“焼肉×ワイン”のペアリングを実際に体験できる焼肉店をご紹介しましょう。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
BYOもできる!おすすめの焼肉店3軒
「色々と分かってきたから、自分で選んだワインを持ち込んで試してみたい!」という人にも、「とりあえず“焼肉×ワイン”のペアリングを実際に体験してみたい!」という人にも楽しんでもらえる店を…。編集部ではそんな条件をもとに、3軒の焼肉店を厳選しました。ぜひご活用ください。
■BYOの基本を知りたいという方は、以下の記事をチェック!
【飲食店へのワインの持ち込み】基本のキ
【飲食店へのワインの持ち込み】10の質問、徹底的に答えます!
手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
焼肉稲田(目黒)
あの有名な精肉卸「ヤザワミート」が手がける目黒の焼肉店。肉汁溢れるハンバーグが代名詞の世界中にもファンがいる五反田「ミート矢澤」に、グルメバーガーファン垂涎の恵比寿「BLACOWS」、そして食通にはおなじみの白金「今福」…焼肉×ワインを楽しむなら、黒毛和牛の名手が手がけるこの店はマストでしょう。
焼肉の名門 天壇店 銀座
実は、京都は焼肉の名店激戦区。この店は1965年に京都で誕生した「焼肉の名門 天壇」の銀座店です。真心こもった伝統店ならではのサービスとともに、焼肉&ワインを堪能できます。泡、白、赤それぞれに合ったグラスを常備しているのでBYOも安心。また、お店のワインも上質な肉に合うようセレクトされています。
あかつき(吉祥寺)
吉祥寺の地元民に愛されている焼肉店で、「おいしい赤身肉とは何なのか」を追求する店主が選び抜いた赤身肉は約15種類も揃っているそう。ほんの少しサシが入ることで、よりおいしく味わえる赤身肉が色々あるので、店のワインでもBYOでも、肉&赤ワインの世界をしっかり堪能できるはずです。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。