寿司をつまみながら、ワインを飲む。まだまだ馴染みがないという方もいると思いますが、“SUSHI”の国際化とともに日本でもワインを常備する寿司屋が増えてきました。
どんなネタを食べた後でも口の中をリセットしてくれるビール、そして米由来のうま味をたっぷり含んだ日本酒は、もちろん相性が良いのですが、ワインは選び方一つで、また違ったおいしさが生み出されます。
そこで今回は、寿司に合うワインを選ぶ基本の法則からスタートして、寿司の代表的な5種のネタ別に合うワインを紹介。最後に、BYOまでできてしまう寿司店を厳選してご紹介します。
気軽に“寿司×ワイン”。パターンをちょっと知っておくだけで、ワインを持ち込みでおいしく楽しむことまでできるはず。では、基本の法則からまず始めましょう。
この記事の目次
【基本の法則】ポイントは3つ!
ペアリングのためにはいくつかの視点やポイントがありますが、それらを3つの基本法則でまとめてみました。
ポイント1:「色」で合わせる
まずは一番わかりやすい法則から。ネタとワインの色合わせです。白身魚や、イカやタコなどの白いネタには、白ワインを。対して、赤貝や甘海老などの少し赤みがかったネタにはロゼ、マグロなどの赤身には赤ワインが合うことが多いのです。例外はありますが、まずはこの“見た目ジャッジ”を基本として押さえておきましょう。
ポイント2:「調味料」で合わせる
塩をつけて食べる、さっぱりとした白身の握り。繊細な味わいを生かしてくれるのが、酸のあるすっきりした白ワインです。また、塩系でもネタの素材自体に甘みがある甘海老や、レモンや柚子が少し添えられることもあるホタテには、ほのかに甘みを感じる白やロゼがピッタリ合います。
一方、タレで煮たりツメを塗って仕上げたりする穴子やウナギは、しっかりとした甘い味があるので、果実味豊かな赤が合います(詳しくは後ほど)。
そして、寿司の調味料といえば醤油ですが、実はこの醤油が“寿司×ワイン”を難しくする要素の一つ。醤油そのものの風味に合うのは、ピノ・ノワールなどの赤ワインに限定されてしまいますが、さっぱりとした白身の握りに醤油をたっぷりつけてしまったら、そもそも台無しですよね。醤油はちょっぴり、アクセント程度につける。その辺の塩梅(あんばい)も大事なポイントとなってきます。
ポイント3:「酢飯」で合わせる&要注意ポイント
調味料の話をしましたが、酢飯に使われる酢も実は大事。白酢と呼ばれる一般的な米酢とは異なり、熟成させた酒粕を発酵させて造る赤酢を使う寿司店も最近は増えてきました。まろやかな酸味とコク豊かなうま味を持つ赤酢のシャリであれば、白身のネタでもロゼやタンニン(渋み)が僅少の赤ワインが合ったりします。
そして要注意なのが魚卵系。人気のイクラや数の子は、ワインと合わせるとどうしても生臭い印象になってしまうのです。強いて挙げるならば、キリッとした酸味と泡があるスパークリングを。「Dosage Zéroドザージュ・ゼロ)」や「Brut Nature(ブリュット・ナチュール)」と表記されたシャンパンなどがあります。
…と、ここまでが基本の法則です。
なんとなく“イメトレ”ができたなら、それでOK!細かいことは後からまた振り返ってみればよいので、今度は寿司の代表的な5種のネタのタイプ別に合うワインを具体的に探っていくことにしましょう。
【貝類】海のミネラル感や薬味のニュアンスを感じる白
さっぱりしているけれど、うま味を感じる貝類。赤貝、トリ貝、ミル貝、アワビ…なんとなく舌をじんわり締めてくるようなミネラル感も、おいしさの一つと言えるかもしれません。
そんな貝類には、塩っぽいニュアンスや海のミネラル感がある白を。ロワールのミュスカデやスペインのアルバリーニョなどがあります。また、シソや浅葱を添えるものなら、薬味のような青い香りがあるソーヴィニヨン・ブランなどもおすすめです。
同じ貝類でも、甘みがありねっとりとした食感があるホタテには、ミネラル感とともに甘やかな香りがあるドライなリースリングがよく合います。
【白身】樽香はNG!キリッとした酸をストレートに感じる白
タイ、ヒラメ、スズキ…やさしい弾力を感じる食感と繊細な風味がある白身は、フレッシュな魚介を食べる経験値、食文化の上に立っているからこそ楽しめるネタなのだそう。
炙りや胡麻醤油など、仕上げに“仕事”を施したものであれば、樽香がある白がいいのですが、シンプル&デリケートな白身の握りには、キリッとした酸味があり、樽香がついていない白を。シャブリに代表されるシャルドネが定番です。ステンレスタンク熟成でピュア&ストレートな味わいの白ワインは、値段もリーズナブルなものも多くて、好相性です。
【マグロ】赤身orトロ?脂のレベルに合った赤ワインを
マグロは鉄分を含んだ赤身なので、白ワインではなく、ロゼまたは赤ワインをチョイス。脂身がなく、さっぱりとした赤身には、日本のマスカット・ベーリーAもしくは、じんわりしたうま味とミネラル感、余韻が長いブルゴーニュのピノ・ノワールがおすすめです。
脂の甘さがあるトロには、鉄分のニュアンスだけでなく、果実味もありちょっとボディも効いたピノ・ノワールを。中トロや大トロなど、脂に見合ったボリューム感(果実味やアルコール)のあるピノなら調和をもたらします。
【サーモン】洋食でも定番の魚はその脂に負けないロゼ
本格的な江戸前寿司にはないネタですが、すっかり人気となったサーモン。西洋でもよく食べられる魚で、脂がしっかりのったものが多く、寿司の中では濃醇なもの。ハマチやブリなども同系のペアリングが成立します。
おすすめは、しっかりめの脂をリフレッシュしてくれる辛口のロゼワイン。やわらかな酸味とフルーティーな印象を兼ね備えたグルナッシュのロゼは特に好相性です。
【穴子】甘旨い“ツメ”で仕上げた寿司に、果実味のある赤
寿司職人の手仕事が活きる穴子。煮穴子のほか、白焼で甘旨いツメを塗って仕上げるものもありますが、いずれも、渋みはやや控えめながらも香ばしさと果実味がしっかりした赤ワインが調和します。
ピノ・ノワールやガメイ、グルナッシュもいいのですが、もう一段階しっかりしたもの、例えばスペインのモナストレルやボバルといった品種の赤ワインがマッチします。
以上、寿司の5種のネタ別でご紹介してきましたが、料理とワインのマリアージュやペアリングの基本を知っている方なら、そう特別に考える必要はありません。
■基本を知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介! をチェック!
また、「どんなネタでも1本通しで楽しみたい!」という方には、“要注意の魚卵系”で登場した、スパークリングワインがやはり万能です。ちょっと高級な寿司ならシャンパン、家での気軽な手巻き寿司ならカバやプロセッコを選ぶなど、価格のレベル感も合わせて楽しむのがツウかもしれません。
それでは、最後に“寿司×ワイン”のペアリングを実際に体験できる寿司店をご紹介しましょう。
緊急事態宣言等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
BYOもできる!おすすめの寿司店3軒
「色々と分かってきたから、自分で選んだワインを持ち込んで試してみたい!」という人にも、「とりあえず“寿司×ワイン”のペアリングを実際に体験してみたい!」という人にも楽しんでもらえる店を…。編集部ではそんな条件をもとに、3軒の寿司店を厳選しました。ぜひご活用ください。
■BYOの基本を知りたいという方は、以下の記事をチェック!
【飲食店へのワインの持ち込み】基本のキ
【飲食店へのワインの持ち込み】10の質問、徹底的に答えます!
手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法
青山16℃(表参道)
PH:店舗画像
「自然派ワインと鮨と鴨の店」を謳うここは、表参道駅から徒歩1分というアクセスも抜群の一軒。ひと手間加えた江戸前鮨と生産者の情熱が詰まった自然派ワインのペアリングが気軽に楽しめます。BYOの際には、シャンパングラス、ブルゴーニュグラス、ボルドーグラスの貸出が可能と、至れり尽くせりです。
すし秀 其ノ弐(四谷三丁目)
PH:店舗画像
もともと四ツ谷で23年間にわたって愛されてきた名店ですが、2018年11月にリニューアル。シャンパン、白、赤…と寿司に合う定番のワインも揃っていますが、BYOにも対応しています。職人の技を目の前で楽しめるカウンター席が基本ですが、お座敷個室(4名まで)も備えています。
幸鮨(六本木)
PH:店舗画像
魚屋が経営している寿司屋とのことで、毎日魚河岸に行っているので、ネタは新鮮そのもの。カウンターのみの小さな店でランチが人気ですが、夜はBYOにも対応していて、ワインクーラー貸出やグラスの複数利用も応相談で可能とのこと。ただし、持ち込みの際は必ず事前予約を。詳細も合わせて相談しましょう。
緊急事態宣言等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。