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伝統があるから革新できる!ボルドーワインの新世代

伝統的なワイン産地の代表格、フランス・ボルドー。長い歴史に育まれたこのワイン産地では今、世界を見据えた若い世代が活躍しています。

自分が生まれた場所で育まれるものに価値を見出し、そこに新たな技術や考え方をプラスしながら、より豊かな食文化を生み出して未来につなぐ・・・。大量生産による標準化と均質性の追求ではなく、個性と共生、そして多様性を追求するこうした“ヒップ”なムーブメントが、ボルドーワインの世界でも広がっています。 

ムーブメントに拍車をかける生産者たち

photo: ©️CIVB

ボルドーは、まさにこうしたヒップな考え方を持つ世代が活躍する場所として、この上ないワイン生産地。長い歴史と確かな伝統を持ち、フランス国立農業研究所をはじめ20以上の公的な研究機関があるボルドーでは、ニューワールドと呼ばれる他国のワイン産地にも赴き、経験と新たな視点を持った30代の若手生産者が中心となって、新たな波を起こしています。

ダイナミックに、活き活きとコミュニケーション。環境問題や世界事情にもまなざしを向け、高品質でバラエティ豊かなワインをつくる。そんな新たなムーブメントに拍車をかける、代表的な4名の生産者を紹介します。

マーケティングにも長けた、スパークリングの新星


photo:Célène Bordeaux  ©️CIVB

Céline Lannoye(セリーヌ・ラノイ)

KEDEGボルドー大学でグローバル・マネジメントの修士取得後、5年にわたってワインのマーケティング・広報の経験を積み、2015年にCélène Bordeauxのジェネラル・ディレクターに就任。

一念発起し、彼女が小学生の時にワイン生産者としてのキャリアをスタートしたという母の影響を受け、彼女もワイン造りをスタート。セリーヌさんのワイナリーでは、AOCクレマン・ド・ボルドーを中心に、スパークリングワインを生産しています。

マーケティングと広報の経験を生かし、SNSを使ったプロモーションや、クッキングクラス付きのワインツーリズムなど、新しい取り組みにも挑戦しています。

Célène Bordeaux
AOC:Crémant de Bordeaux

ワインのアロマと共に育った経験を糧に


photo: ©️CIVB

Paul-Arthur BARDET (ポール=アルチュール・バルデ)

家業であるシャトーを父、弟と経営。環境に配慮したワイン生産を心がけ、テロワールからの自然な味わいを表現することを大切にしています。

ワインの香りと共に育ったポール=アルチュールさんは、確かな伝統がなければ、多様性を生み出すことができないと考え、ボルドーの権威・伝統を壊すことなく、新しいボルドーを見出していきたいと挑戦を続けています。

60 haのぶどう畑を所有し、栽培、営業、ネゴシアン会社の立ち上げなど、忙しい日々を送りながら、「Arômes de jeunesse 若いアロマの会」に参加し、ボルドーの更なる成長を目指して積極的に活動しています。

Vignoble Bardet
AOC:Saint-Emilion Grand Cru / Castillon Côtes de Bordeaux

ボルドーにおける女性進出を牽引


photo:Château de la Rivière  ©️CIVB

Manon Deville (マノン・ドゥヴィル)

29歳にして栽培&醸造責任者で、ボルドーのぶどう畑で最も若いテクニカルディレクターのひとり。導入すべき新たな農業技術や投資計画なども日々チェックし、畑の管理から醸造、アッサンブラージュ、瓶詰めまですべての工程に細心の注意を払ってワインを造っています。

常に畑の状態を区画単位で把握し、残す芽の数まで正確に頭に入っているというのですから、驚きです。

栽培責任者と醸造責任者の兼任体制をとっているワイナリーはいくつかありますが、女性がこの役職につくことはまだ多くなく、ボルドーにおける女性進出を牽引している存在です。

Château de la Rivière
AOC:Fronsac

世界を飛び回る、ボルドーの若き伝道者


photo: ©️CIVB

Jean-Jaques Dubourdieu(ジャン=ジャック・デュブルデュー)

135haのぶどう畑を所有し、幅広い種類のワインを生産。流通・販売促進責任者として、アジア、アメリカなど世界を飛び回り、視察や顧客開拓に取り組むジャン=ジャックさん。

ボルドーは種類豊富なワインを造る力があるので、インドやアフリカ、中国のような新興市場で充分な可能性があると、意欲的にボルドーの市場拡大を目指しています。

ボルドーワインの品質は確かなもの、後はどのようにプロモーションしていくのが重要だと「Bordeaux Oxygène 活力のあるボルドーの会」の一員として、ボルドーワインを更に盛り上げる活動をしています。

Denis Dubourdieu Domaine
AOC:Sauternes / Barsac / Bordeaux / Graves / Cadillac- Côtes de Bordeaux / Cadillac

新潮流を発信する、2つのグループ

上記で紹介したポール=アルチュール・バルデさんが参加している「若いアロマの会」、そしてジャン-ジャック・デュブルデューさんが一員となっている「活力あるボルドーの会」。この2つの団体は、まさにボルドーの新潮流を発信する注目のグループです。

若いアロマの会
Arômes de jeunesse Saint-Emilion


photo: ©️CIVB

2011年に設立されたこの会は、20代後半から30代の10名の会員で構成。サン・テミリオンの同じ学校の仲間が、ワインへの情熱から自然に集まるようになり、結成されたグループです。

彼らが造るワインを気取らずに飲み、ワインの印象について語り合い、実践的なアドバイスももらえるよう「ボルドーを楽しむ夕べ」というイベントを開催。形式ばらず、和気あいあいとした雰囲気で、サン・テミリオンを拠点としながら様々な販促活動を実施しています。

「信条は、ボルドーワインをより身近なものとすること。これはボルドーワインを世俗化するという意味ではありません」とメンバーであるポール=アルチュール・バルデさんは語っています。

活力あるボルドーの会
Bordeaux Oxygène


photo: ©️CIVB

「深刻になりすぎずに真面目に働こう」という考えのもと、この「活力あるボルドーの会」は 2005年に設立。フランスはもとより、アメリカ、オーストラリア、日本、イギリスなどでもイベントやディナーを重ねながら、国内外での知名度がアップしてきたグループです。

「私たちの切り札は、若さとそれぞれの企業の中で自由に行動できること」という20名の会員で構成され、ボルドーのAOC の多様性を示すことにつながっています。

「大切なことは、ボルドーワインを飲みたいという気持ちにさせること!」と語る彼らのエネルギーに新たなボルドーワインのパワーを感じます。

新たなマイルストーンになる、これからのボルドー。

photo: ©️CIVB

ボルドーワイン業界全体で広がっている、心地よい革新。そこには、クオリティとストーリーを兼ね備えたワインを日常の中で提供したいという思いがあります。

長年培われてきたノウハウを尊重し、伝統と現代性をうまく調和させ、ネットワークを組織して働き、新たな技術を活用し、事例をシェアしながら進めていく・・・そんな彼らが繰り出す、いわば“進化系”のボルドーワインの文化は、日常の中で確かなものを丁寧に味わっていきたいという消費者の心に響き、世界各国でも愛されていくワインの指標(マイルストーン)になっていくことでしょう。

情報提供:
ボルドーワイン委員会

ボルドーワイン委員会日本公式サイト
現地からの情報やレシピなどの情報が掲載されています。

 

【マスター・オブ・ワイン】に学ぶ!カリフォルニアワインが主役のフードペアリング

「マスター・オブ・ワイン」という称号を知っていますか?日本にも「J.S.A.ソムリエ」や「J.S.A.ソムリエ・エクセレンス」といった資格がありますが、こちらは世界最高峰かつ最難関とも言われるワインの資格です。

「マスター・オブ・ワイン」については、また後ほど詳しくご説明しますが、この世界最高峰の資格を持つ一人、ニコラス・パリスが、カリフォルニアワインと料理のペアリングをレクチャー!ワインの個性に合わせて作られた料理とともに紹介されたペアリングの極意をレポートします。

ワインの基礎知識はあり、普段からよく飲む人から「カリフォルニアワインはとにかくアルコールも果実味も濃いから…」という言葉を時折耳にしますが、それは基本を知っているがゆえに、ちょっと思考が凝り固まっているのかも…。ニコラスは「ボディしっかりのカリフォルニアワインも、合わせる料理でその印象は七変化しますからね」と語ります。

カリフォルニアワインが主役のフードペアリング。さて、どんな組み合わせが登場するのでしょうか。

「マスター・オブ・ワイン」って、どんな資格?

略称は「MW」。マスター・オブ・ワイン(MW)は、イギリスに拠点を置く「マスター・オブ・ワイン協会(IMF:Institute of Masters of Wine)」が認定する資格で、ワイン業界において最も名声のある称号とも言われています。

マスター・オブ・ワイン協会は60年以上の歴史を誇り、ワイン生産者、流通関係者、ソムリエ、ジャーナリストなど多岐にわたるワインのプロたちがこれまでにもMWに挑戦しており、現在その称号を持つ人は、世界でも340名のみ。この最難関資格に合格した日本人はたった2名で、“日本在住の日本人としては初”となる大橋健一さんが2015年にMWを取得した時は、日本のワイン業界でも大きなニュースとなりました。

100以上の銘柄を持つ大手で、MWとして手腕を揮うニコラス・パリス

ニコラス・パリスMWは、アメリカ在住。カリフォルニアを拠点として、100以上の幅広い銘柄のラインナップを有している家族経営ワイナリー「E.&J.ガロ ワイナリー」に現在、所属しています。

「E. & J. ガロ・ワイナリー」が所有する銘柄の多くは、日常的に親しまれるテーブルワインですが、この日用意されたのは、プレミアムな3ブランド。「William Hill Estate Winery(ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリー)」「Orin Swift(オリン・スウィフト)」「MacMurray Estate Vinyards(マクマレー・エステート・ヴィンヤーズ)」のワインでした。

写真にあるワインを、左から順にご紹介すると…

・Napa Valley Chardonnay 2016(ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリー)
・mannequin 2016(オリン・スウィフト )
・Russian River Pinot 2016(マクマレー・エステート・ヴィンヤーズ )
・Abstract 2017(オリン・スウィフト)
・Napa Valley Cabernet Sauvignon 2014(ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリー)
・Papillon 2016(オリン・スウィフト)

というラインナップ。これら1本ずつの香りと味わいを吟味し、特別に作られた料理と合わせていくフードペアリング。ニコラス・パリスMWとともに、その妙味を体験した中で、特に印象的だった3つの組み合わせを紹介します。

パワフルなRAP歌手のようなシャルドネと、磯の香味!?

ワインは、オリン・スウィフトのシャルドネ「mannequin 2016」。オリン・スウィフトは、その革新的アプローチと芸術的なラベルデザインが特徴的で、“ナパの新たな伝説”とも呼ばれる造り手です。

音楽好きの方なら知っているかもしれませんが、アメリカのラップシンガー、ニッキー・ミナージュの歌詞に「服は時代ともにどんどんと変化していっても、“マネキン(mannequin)”はそれをしっかりと受け止め、支えている存在…」といった意味の一節があり、普遍的な個性や魅力がこのワインの名の由来なのだそう。

ワイン単体でまず飲んでみると、熟した白桃やパイナップルなどの南国フルーツのアロマがガツンとくる。「果実味とともに、ナツメグやクローヴなどのスパイス、樽由来のバタースコッチなども感じると思います」と、ニコラスMW。アルコール15%で、まさにニッキー・ミナージュのようなパワフルなシャルドネですが、これが料理と合わせると表情を変えます。

料理は「アサリ・ムール貝・アワビのタブレ仕立て フロマージュブランとタラゴンの香り」。

アワビの肝を使ったソースがポイントで、しっかりとした磯の香味があります。「こんなにしっかりとした海のフレーバーに、フルボディのシャルドネが合うの?」と思いましたが、口に含むと不思議!ワインがまるでソースのような役割となって、“口内調味”が展開します。

クリーミーな口当たりのフロマージュブランとタラゴンのハーブ香も、アクセントに。重層的な山海の幸が渾然一体となって、厚みのあるおいしさが生まれていました。

“カリ・ピノ”が持つ香り、最後はソースで決める! 

次にご紹介したいのは、“カリ・ピノ(カリフォルニアのピノ・ノワール)”。マクマレー・エステート・ヴィンヤーズ「Russian River Pinot 2016」とのペアリングです。

マクマレー・エステート・ヴィンヤーズは、ピノ・ノワールに特化したソノマのプレミアムブランドの一つ。ロシアン・リヴァー・ヴァレーは、ソノマでも特に優れたピノの産地として有名ですが、このワインはロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワールが持つ涼しげなニュアンスより、ちょっとボリューム感あり。アルコール度数も14.5%でした。

このワインとのマリアージュを狙った料理は「鴨の冷製スモーク ドライフルーツ添え」。

「ピノ・ノワールといえば鴨」というのがフランスでも定番ですが、このボディ豊かな“カリ・ピノ”のために施された工夫には、「なるほど!」と思わず唸ってしまう面白いものがありました。

鴨はスモークすることで、このワインが持つアメリカンオーク樽由来の香ばしいアロマにまずは寄せていく。そして、ドライフルーツのマンゴーやイチジクを添えることで、果実感の濃さを合わせつつ、最後はソースで決める!というスゴ技。

鴨料理にはよくオレンジが使われますが、このソースにはオレンジのリキュール、コアントローを使用。赤ワインビネガーと合わせて煮詰めたソースは、この“カリ・ピノ”が持つ甘苦感と酸のニュアンスがバッチリ!このソースがまさに決め手となって、ワインとのマリアージュが生まれていました。

ほうじ茶のようなフレーバーが、口の中で作られた!?

3つめにご紹介したいのは、カリフォルニアの赤としては代表的な、カベルネ・ソーヴィニヨンとのペアリング。ワインは、ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリーの「Napa Valley Cabernet Sauvignon 2014」です。

ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリーは、典型的なナパのスタイルを保ちながら、個々の細分化されたテロワールを最大限に生かし、クラシックとモダンを持ち合わせたワイン造りが特長とのこと。

「Napa Valley Cabernet Sauvignon 2014」は、熟したカシス、シナモンやナツメグなどのスパイスの香りに、チョコレートなどの香ばしさがしっかりと感じられる一方で、ナパのカベルネにしては酸味があり、渋みはまろやかで比較的やさしい印象のワインでした。

ペアリングとして登場した料理は、「黒毛和牛 上クリ肉のロースト 黒トリュフ香るマディラのソース」。

カベルネのワイン&牛肉。これも“ピノ・ノワール&鴨”と同じく、定番の組み合わせではありますが、アロマ&フレーバーにしっかりと注目して作り出されたペアリングでした。

「クリ肉」というのは、牛の肩から前脚上部にかけての部位で、運動量が多いため脂肪が少なく、しっかりとした赤身で味が濃い。この肉のローストに、黒トリュフとマディラ酒のソース、そこにこのカベルネのワインが合わさると、うま味が倍増!どんどんとおいしさが膨らんでいく感じがしました。

さらに、ほうじ茶のような香りがフワーッと口の中で広がったのが、なんとも心地よく、不思議。「なんで焙煎したお茶のような香りを感じたのだろう?」と疑問に思い、ニコラス・パリスMWに尋ねると「マディラのソースが、焙煎した茶葉のニュアンスを持っていますからね。エレガントなこのカベルネがそれをさらに引き立てたのでしょう」との回答。

なるほど。もっと骨格のしっかりした“パワー系カベルネ”なら、この心地よさは味わえなかったのかと思うと、この香味もワインと料理のペアリングの為せる業だったのだと感動しました。

ワインと料理、それぞれのバランスを整える。

ニコラス・パリスMWによれば、最近はカリフォルニアワインにも、酸がキリッと効いていて、アルコール度数も低めで、じんわりとしたうま味を感じるワインが増えてきていますが、旧来のイメージ通りのパワフルなワインが、やはり現地ではメインとのこと。健康志向による食のライト化などのトレンドに敏感な一部の人を除き、人気なのはやはり、果実味やアルコールがしっかりとしたワインなのだそうです。

ボディのしっかりしたワインと一口に言っても、アロマ&フレーバーに注目すれば、実は多彩。それらの要素を紐解き、一つひとつの要素を再構築するような料理と合わせると、今回のように驚くようなマリアージュが生まれることがあります。

その要素が強くても弱くても、まず大事なのは、バランスを整えること。今回のような特別な料理でなくても、家飲みでもそれは生かせるはず!この視点さえあれば、ワインを主役とした食の楽しみは広がると思います。

ワインと料理のマリアージュの基本を知りたいという方は、【基本のキ】みんなが言う「マリアージュ」って何? ペアリングとどう違う? 3原則&定番も一挙紹介!もぜひお読みください。

 

あの世界的セレブも魅了!フランスで生産量 No.1【プロヴァンス・ロゼ】の今

photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

ワイン選びに迷った時は、ロゼ!ワイン通の中にも実はそう言う人が多いのを知っていますか?

白ワインのような酸味や軽やかさ、赤ワインのような果実味。その両方の要素を持つロゼワインは、いろいろな食事に合わせやすいワインです。

ロゼは世界各地で造られていますが、一大生産地として有名なのは、フランスで生産量 No.1を誇る南仏、プロヴァンス。一昔前までは「プロヴァンスのロゼ=安いロゼ、お土産用のワイン」というイメージがありましたが、今は有名な造り手も参画し、どんどんと高品質なものが生まれているうえ、全般的にお手頃価格のものも多いのが魅力です。

知っておくべき“プロヴァンス・ロゼの今”を、今回はご紹介します。

ワイナリーを持つというステイタス

photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

ワイナリーを所有するということは、世界のセレブたちにとって一つのステイタスになっているということをご存じでしょうか?ビジネスとしての側面ももちろんありますが、ワインが持つ華やかさやロマンが人を魅了してやまないのは、万国共通のようです。

“世紀のカップル”として話題になったブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーもプロヴァンス地方にワイナリーを購入し、2012 年ヴィンテージから「ミラヴァル・ロゼ」という銘柄のワインを販売しています。

ハリウッドスターと南仏5つ星生産者がタッグを組んでつくり出したハイクオリティなロゼは、ワイン業界だけでなく、世界的な大ニュースとなりました。そうした流れとともに、プロヴァンスでは年間約 150 万ボトルのロゼワインを産出。そして、フランス国内での消費量は 2008 年は 670 万 hl でしたが、2013 年には急増して 810 万 hl、そ して 2018 年は 870 万 hl と右肩上がりで伸び続けています。

また、プロヴァンスワインの輸出量は生産量に対して決して大きなものではありませんが、2016年の 輸出量は対2001年比で約4倍もの伸びを示し、ロゼに限ると5倍近く伸びていています。中でも、アメリカは一大消費産地で、プロヴァンス・ロゼ輸出の約半分を占めています。

ハリウッドセレブもプロヴァンス・ロゼに夢中!


photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

アメリカにおいてそのロゼ人気をさらに牽引したのは、これまた、誰もが憧れるセレブたち。バカンスで訪れた南仏でプロヴァンス・ロゼを飲み、その魅力に開眼したセレブたちは、帰国後もニューヨークの避暑地ハンプトンなどで、華やかなパーティを開催。その時、いつも隣にはお気に入りのロゼワインがありました。

その様子がインスタグラムなどの SNS にアップされると、ロゼは瞬く間に一般の人々にも認知されていきます。2018 年のアメリカにおけるロゼの消費量は、2011 年と比較すると10 倍と、まさに飛躍的な伸びを見せているのです。

プロヴァンスのロゼは、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー以外のセレブたちの心を惹きつけていて、映画『スターウォーズ』の監督、ジョージ・ルーカスは 2017 年、約 10 億でワイナリーの「シャトー・マルギ」を購入。さらに歌姫カイリー・ミノーグも、プロヴァンス・ロゼをプロデュースしています。

なぜ、プロヴァンス?その魅力とは?

photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

澄み切った青空、降り注ぐ陽光、一面に広がる美しいラベンダー畑…。プロヴァンスはフランス人にとっても、世界中の人々にとっても、憧れの地。紺碧の地中海沿岸のカンヌやニースといったコート・ダジュールなどの高級避暑地でも、みんなロゼの入ったグラスを傾けています。実はプロヴァンス地方のワインは、生産量の89%がロゼという一大産地なのです。

ロゼワインの魅力はなんといっても、そのフレッシュでエレガントな味わい。たとえワインに詳しくなくても、難しいウンチクなんか全部抜きにして、楽しく陽気に明るく、そしておいしく飲むことができます。

プロヴァンスが高品質のロゼを生み出せるのには、以下のような理由が挙げられます。

ブドウ栽培に向く痩せた水はけのよい土壌であること

年間 2,700〜2,900 時間と日照量が多く、乾燥した地中海性気候であること

・ミストラルという強い風が吹くので畑に湿気がこもらず、ブドウのオーガニック栽培がしやすいこと(ブドウ畑の24%が認証済みの有機農法栽培で、フランス国内で最多)

このような恵まれた地の利を生かして、プロヴァンスではワインの品質をあげる努力がおこなわれてきました。プロヴァンスにある「ロゼ・センター」では、土壌、栽培法、醸造法などについて研究を重ね、生産者にアドバイスをして味わいの向上に貢献。そうした改革により、1994 年にはフランス国内でのロゼの消費量が白ワインを超えたのです。

プロヴァンス・ロゼの製法と味わいの特徴

photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

日本でロゼワインと言うと、これまで日本の市場に流通してきた産地や銘柄の特徴から、「フルーティーでやや甘口」と思っている方が未だにいますが、プロヴァンス・ロゼのほぼすべては、スッキリとしたドライなタイプ。日本におけるイメージは非常に偏ったものです。

ブドウ品種はいろいろありますが、主な品種は、サンソー、グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー。外観の特徴としては、少しオレンジがかったピンク色で、「Pétale de rose(ペタル・ド・ローズ:淡いバラの花びら)」を思わせるデリケートな色調をしているものが多く、その大きな要因は直接圧搾法という製法にあります。

直接圧搾法は、黒ブドウを原料にしつつも“白ワイン的に造る方法”。収穫したブドウをすぐに圧搾し、果皮などの漬け込みはしないので、渋み成分が少なく、フレッシュで繊細な味わいが生まれます。

■ロゼワインの製法の基本を知りたい方は、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編 をチェック!

それに加え、近年プロヴァンス・ロゼの品質が向上した要因の一つとして挙げられるのは、機械化による精緻な低温管理。高性能で精緻な温度調節機能のある醸造タンクの使用により、繊細でありながら、単にスッキリと飲みやすいのではなく、奥深くエレガントで品格ある味わいのワインが増えたと言われています。

フランスワインの起源は、プロヴァンスにあり!?

歴史的なウンチクも、豆知識として少しご紹介しておきましょう。

プロヴァンスは地中海に面しているため、紀元前から重要な交流拠点でもありました。プロヴァンス(Provence)という地名は、プロヴィンキア・ロマーナ(Provincia Romana:ローマの属州)に由来。紀元前6 世紀頃から、ギリシアやローマの植民地として様々な影響を受け、中世においてはプロヴァンス伯の領地として独立性を保ち、15 世紀末にフランス王国に吸収されるまでは、独自の歴史を歩み、言葉や文化を培っていました。

プロヴァンスには8つものユネスコ世界遺産に登録されている史跡があり、ワインについては、紀元前600年頃、古代ギリシアの一民族であるフォカイア人が、マッサリア(現マルセイユ)に1本のブドウの木を植えたのが始まりであるとの説も。フランスワインの起源がプロヴァンスにあり!という人がいるのも頷けます。

和洋中…いろいろな料理を日常で楽しむのにピッタリ

photo: プロヴァンスワイン委員会(CIVP)

刺身、焼鳥、ハンバーグ、シチュー、麻婆豆腐…多種多様なおかずが、私たちの日常の食卓には並びます。初めにお伝えしたように、白ワインと赤ワインの“いいとこ取り”でもあるロゼワイン、甘ったるさはなく、スッキリしつつも奥行きのある味わいのプロヴァンス・ロゼは、“家飲み”でも強い見方になってくれるワインです。

値段もあまり高いものはないので、“カリテ・プリ(コストパフォーマンス)”も最高!世界各地の料理を楽しめる飲食店でワインを楽しむ時も、また同様でしょう。

味わいに加えて、“ペタル・ド・ローズ(淡いバラの花びら)”と表される、デリケートで美しい色も、私たち日本人の感性に非常に良くマッチします。気の置けない家族や仲間との食事、そして一人飲みの時に、一本。あまり気張らずに、楽しくておいしいワイン時間を上質なロゼで過ごしてみませんか?

■情報協力
プロヴァンスワイン委員会(CIVP)
株式会社ロゼレガンス

2018 コトー・デクス・アン・プロヴァンス・ロゼ/エシュ&バニエ
産地
フランス・プロヴァンス地方
品種
グルナッシュ
タイプ
ミディアムライト辛口 ロゼ

【リースリング】は複雑だから面白い!NYのソムリエも語るその魅力とは?

ワインの基本を学ぶと、いろいろなことが分かってワインをよりおいしく楽しめるようになりますが、一方で「う〜ん、さらに分からなくなった…」という壁にぶつかることも。

ブドウ品種で言えば、リースリングがその代表格かもしれません。

キリッとしたスパークリング(ゼクト)、ミネラル感溢れるものからコク豊かなものまである辛口、爽やかな甘口、そして、アイスワイン、貴腐ワイン…と多彩なワインを生み出してくれるがゆえに、難解なイメージも。

■リースリングの基本を知りたい方は【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには をチェック!

そんなリースリングを徹底的に楽しもう!という“伝説のイベント”が、以前日本でも開催されていたことをご存じですか? 今回はそのイベントで来日した“リースリングの伝道師”と呼ばれるニューヨークの型破りなソムリエの話もお届けします。

まずは、リースリングの基本のおさらいをしつつ、ワイン通なら知っておきたいリースリングの話から始めることにしましょう。

【基本のおさらい】キリッとドライ〜極甘口まで!産地も世界中にあり。

甘口から辛口まで、味わいのバラエティがとても豊富なリースリングのワイン。酸が豊かなブドウゆえ、辛口タイプはキリッとした酸味が最大の特徴で、甘口タイプもただ甘ったるいだけのリキュールのようなお酒にならないよう、程よく味わいを引き締めてくれる酸味があります。

リースリングに不可欠な酸は、冷涼な気候や標高の高さ、昼夜の寒暖差といった生産地の特徴(テロワール)が大きく関係して生まれます。産地としては、ドイツとフランス・アルザス地方の二大生産地を筆頭に、オーストラリアのクレア・ヴァレー、カナダやアメリカ北部など世界各国で栽培されています。

■リースリングの基本を知りたい方は【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには をチェック!

「リースリング=ペトロール香」と思っている人、古いですよ!

ワインのテイスティングを学んだ人で「リースリング=石油のようなオイル香(ペトロール香)やセルロイドのようなにおいがある」という固定概念に縛られている人はいませんか?

この“ペトロール香”、確かにリースリングのワインに出やすい香りではあるのですが、絶対ではありません。むしろ、近年では強いペトロール香はオフフレーバー(異臭)だと捉える生産者も多くいます。

“ペトロール香”の正体は、TDN(トリメチル ジヒドロナフタレン)というもの。主にワインの醸造や熟成の過程で生成される化合物で、ブドウの果皮に含まれるカロテノイド(β-カロチンなどを含む天然色素の一群)がTDNの元となる物質です。

水不足の暑い環境下で生育したブドウを原料としたり、特定の酵母を使って発酵させたり、長い熟成を経たり、比較的高い温度環境下で保管されたりするとTDNの生成は増える傾向に。どんなワインにもTDNが含まれる可能性があるので、リースリング特有とは限らないということも、ワイン通なら覚えておきましょう。

伝説のイベント「リースリングリング」って知ってる?

2009年から行われていたリースリングリング(Riesling Ring)というイベントをご存じでしょうか?

コンセプトは「ドイツを母国とする偉大なリースリング(種)の多種多様な魅力を、世界各地で発掘・賛美・賞味されるワインを、愛好家たちが集まって、共に友情を育み、知識共有し、共感の輪を広げていきましょう」というもの。

残念ながら、2018年を最後に現在は行われていませんが、世界各国のリースリングワインの試飲や講演を主としたイベント、レストランでのメニュープロモーションなどが行われていました。

この「リースリングリング」発足のきっかけとなったのは、実はドイツではなく、アメリカのニューヨークで2008年に行われたサマー・オブ・リースリング(Summer of Riesling)というプロモーション。

期間中、加盟店で提供するワインをリースリングのみとして、当時のニューヨーカーたちの「リースリングは甘口」という固定概念を覆し、多種多様なリースリングワインを広めるという、かなり挑戦的なプロモーションでした。以降、これに賛同するレストランやワイナリーが増え、日本の「リースリングリング」のみならず、世界各国でも開催されるようになっていきました。

すべての発端となった「サマー・オブ・リースリング」の創設者の名は、ポール・グレコ。 “リースリングの伝道師”とも呼ばれるポールのインタビューを、次にご紹介しましょう。
(注:インタビュー取材は、2014年4月に行われたものです)

“リースリングの伝道師”、ポール・グレコ

ポール・グレコは、カナダ・オンタリオ出身。NYの名店「Gramacy Tavern」でアシスタント・ゼネラルマネージャーを務め、料理界のアカデミー賞と言われるジェームス・ビアード賞の「最優秀サービス賞」と「最優秀ワイン・サービス賞」を受賞。

その後独立し、「Hearth」、ワインバー「Terroir」の共同オーナー兼ソムリエとなり、2008 年にリースリングの祭典「サマー・オブ・リースリング」を仕掛け、2012年には「最優秀ワイン、ビール、スピリッツ専門家」のタイトルが授与されています。

こうして経歴を並べるとスーツをビシッと着た人物をイメージしてしまいますが、さにあらず!パンクなTシャツ&ジーンズが基本で、とてもエネルギッシュ。世界各国のさまざまな文化が入り交じるNYのレストランシーンで活躍してきただけあって、人を惹きつける魅力に溢れています。

挨拶もそこそこに「お客さんにワインリストを見ることをいかに諦めさせるか。それが僕の勝負なんだよ」と語り始めたポール。

「とにかく会話なんだ!好きな味わい、その日の気分、いろんな思い出、あと、もちろん予算ね(笑)より多くの会話を僕自身も楽しみながら、そのお客さんにとって最高のワインを味わってもらう。会話こそが僕のホスピタリティなんだよ。」

聞いているだけでこちらも自然と笑顔になりましたが、話を聞くうちに、素朴な疑問が頭に浮かびました。

「なぜ、リースリング?」
「ポールにとって、リースリングの魅力って何?」
「リースリングの何が、ポールを突き動かしているんだろう?」

ポールはこう語ります。

「それは、Complexity(複雑性)さ!複雑ということは、分かりづらいということ。分かりづらいということは、なかなか浸透しないということ。人はまずシンプルで明快なものから受け入れるからね。」

なるほど。

「でも、複雑ってことは、見方を変えれば、バラエティ豊富で、魅力に溢れていて、エキサイティングってことだと思わないかい?リースリングは、芳醇な貴腐ワインからキリっと爽やかな辛口まで、いろんな顔をもっている。僕は昔から人があまりやらないこと、やりがいがあってエキサイティングなことを選んできた。だから、シャルドネじゃなくて、リースリングなんだよ。」

固定概念にとらわれず、個性を楽しめ! 

「リースリングリング」のセミナーでは、哲学者ニーチェの言葉をポールは引用していました。

Convictions are more dangerous foes of truth than lies.
信念は、真実にとって嘘よりも危険な敵である。

ちょっと難解な哲学者の言葉ですが、“信念”を“思い込み・固定概念”と置き換えて解釈すると、ポールの伝えたいことがスッと理解できます。

固定概念にとらわれていては、本当の姿は見えてこない。
いろいろな個性をまずはありのままに受け入れ、それぞれの良さや魅力を見出しながら、次にみんなと分かち合う。
分かりづらいことを、楽しみに変えればいいんだ。

ポールの話を聞くと、“人種のるつぼ、サラダボウル”と表現されてきたニューヨークのスタイルでもあるなと気づかされます。複雑性、多面性、個性を受け入れ、それぞれの魅力を深掘りしていくことで、文化を育んでいく…リースリングのワインを通じて、生き方や哲学の世界まで話は広がりました。

NYで始まった「サマー・オブ・リースリング」を皮切りに、世界中で楽しまれているリースリングの多彩なワインたちは、複雑だからこそ面白い!

あなたも、ポールの言葉を胸に、もっとリースリングのワインを堪能してみませんか?

2018 ホワイト・ノイズ/リキッド・ロックンロール
産地
オーストラリア
品種
リースリング
タイプ
ミディアムライト辛口 白
2014 リースリング・トロッケン/フリッツ・ハーク
産地
ドイツ
品種
リースリング
タイプ
ミディアムライト辛口 白

父の背中から学び未来の糧に!伝統を継承しながらも、革新するボルドーワイン

6月第3日曜日は「父の日」。父親への尊敬の念とともに祝う日は、5月の母の日と同様、アメリカが起源と言われ、男手ひとつで育ててくれた父を讃えて、ドッド夫人という女性が父親の誕生月である6月に礼拝をしてもらい、白いバラを贈ったことがきっかけなのだとか。

父の日にワインを酌み交わしながら、お父さんとこれまでのこと、これからのことを話してみるのもいいものです。

そんな晩酌にぜひおすすめしたいのが、クラッシックを超え、モダンで型破りな姿へと邁進するボルドーの赤ワイン。言うなれば「温故知新」が感じられるワインの話を、今回はお届けしたいと思います。

歴史と伝統を重んじつつ、価値ある新たな未来を創造するために。今、ボルドーで起きているワインのトピックスをぜひ、親子で共有してみませんか?そこには、普遍的な学びが存在しているはずです。

まずは、色眼鏡を外そう!

まず初めにあなたは「ボルドーワインってこういうものだ」という固定観念やイメージを持っていませんか?ここはひとつ、古い先入観を一度取り払ってみましょう。

熟成した重厚なものだけでなく、若いうちから楽しめ、果実味たっぷりのモダンなボルドー赤へ。生産方法が進化し、テロワールと造り手の個性がさらにワインに表現されるようになってきたようで、ボルドーでは今、型破りで斬新なスタイルの赤ワインが続々と誕生しています。

従来からのブドウ品種を驚くような形でブレンドしたり、あるいは単一で仕込んだりしたもの、また、アンフォラや大樽など古くて新しい容器で熟成させたもの、そして、ヴィーガンワインやSO2無添加ワインなども登場しています。

ボルドー赤が切り拓く新たな地平とは?

現在、ボルドー地方の畑の89% が黒ブドウ品種の栽培にあてられています。

メルロ66%、カベルネ・ソーヴィニヨン22%、カベルネ・フラン9%、その他品種(マルベック/コット、プティ・ヴェルド、カルメネール)が3%という内訳。さらに【ボルドーの新たな認証ブドウ6品種】を徹底解説!膨大な研究からサステナブルな未来へ でも紹介したようなニューフェイスもあります。

品種の話はまた後でするとして、先にボルドー赤全体のトレンドをお伝えしましょう。

ボルドーでは今、時代に流されない古典的なワインだけでなく、モダンなスタイルを持ち、型破りで斬新な赤ワインが注目を集めています。思えば、いつの時代もボルドーという産地を支えてきたのは、革新と変化を恐れず、新しいあり方を悦びとともに創出する造り手たちでした。

生産者自らがおいしいと感じるワインであることは当然ですが、マーケットの動きも常に注視しなければなりません。昨今は、若いうちから楽しめて果実味が鮮やかしなやかで風味豊かなワインが人気ですから、ボルドーの赤のスタイルも変貌を遂げてきているというわけです。

ブドウ畑とセラーにおける進化の根は、サステナブル(持続可能)な栽培・醸造への力強い志向にもあります。加えて言うなら、気候変動がそのワイン造りを変え、新しい方向性を探るきっかけにもなりました。

新たな息吹をもたらす注目の3品種とは?

大きな取り組みとしては、【ボルドーの新たな認証ブドウ6品種】を徹底解説!膨大な研究からサステナブルな未来へ でも紹介した新品種もありますが、ボルドーのワイン用ブドウの栽培家たちが大きな関心を寄せているのが、生産の一線から一時的に退いていた、いわゆる昔ながらの品種です。

特に脚光を浴びているのが、プティ・ヴェルド、カルメネール、マルベック。 近年、こうした品種に関する理解が深まったことに加え、気候変動への対策と、新たなスタイルの赤を創出する必要から、ブレンド比率が増しているのです。

ただし、いずれの品種も長梢が折れやすいうえ、剪定が難しい収量が安定しないといった、栽培管理の面では難しいところがあります。しかしながら、造り手たちはこうした挑戦を受けて立ち、ワインの進化だけをまっすぐに見つめて畑仕事に取り組んでいるのです。

気候変動に対しては、 特にプティ・ヴェルドがよく適合していて、かつてより安定して果実が完熟するようになりました。プティ・ヴェルド、カルメネール、マルベックの3品種の栽培面積は、過去20年で1,564ヘクタールから3,192ヘクタールへと倍増しています。

品種の選択肢が増えたことで、新しいブレンドの提案が可能になり、飲み手をさらに刺激できるようになってきました。こうした補助品種がブレンドに占める比率は決して高くはないものの、ワインの新たな個性を形作るには十分で、最近では赤ワインのスタイル決定における鍵になっています。こうした品種をホールマークとして使ったブレンドのほか、単一で用いた限定生産キュヴェも造られているのです。

変貌と進化を遂げた生産方法

果実味にあふれ、若いときから楽しめるのに、熟成能力も十分にある赤ワインを実現するため、新しい手法がブドウ畑とセラーの両方で採用されています。

・すべての始まりは収穫から。摘みたて果実のアロマを損なわないよう、適熟のタイミングで収穫を実施。

・テロワールの特徴を最大限に生かすため、細分化した区画ごとに仕込みを実施。収穫から醸造完了またはブレンドまで、ワインはロットごとに育まれる。 

醸造中の人的介入は最小限に抑え、テロワール本来の魅力を光らせることに努めます。

・タンニンの抽出量を抑えるべく、マセラシオン(浸漬)を短縮。

・穏やかな抽出のために、ルモンタージュ(液循環)は状況を見ながら調整し、丁寧な作業を実施。

・土着(自生)酵母を優先的に使用。

・醸造過程のワイン移動は、強い負荷がかからないように重力を利用。

しなやかで果実味にあふれ、ほのかな樽香が彩りを添える風味豊かなワインづくりのために、熟成工程でも入念な仕上げを加えます。樽の魅力を巧みに加減しながら引き出し、バランスに秀でた味わいになるよう、 以下の手法が実践されているのです。

・小樽(バリック)の影響を抑え、樽内熟成の期間を短縮する。

・熟成に用いる新樽の割合を低減。樽の新調頻度を減らし、古樽を重用。

・熟成に伝統的なバリック小樽(225リットル)より容量の大きな樽を利用(500リットル樽やフードルなど)。

また、熟成のための容器に、木に代わる素材を採用するケースも増えています。

・コンクリートタンクまたはステンレスタンクといったニュートラルな容器。

・300〜1,000リットル容量の素焼きまたは炻器のアンフォラ(壺):木の香りをつけずに微酸化効果が得られる。

・卵型タンク : シュール・リー熟成の実験が可能。

SO2無添加ワイン&ヴィーガンワインの増加

ボルドーにおいても、SO2 (亜硫酸塩/酸化防止剤)無添加ワインや、ヴィーガンワインを提案するワイナリーが著しく増加しています。

SO2無添加ワインとは、硫黄由来の化学物質としての二酸化硫黄(SO2)を、人為的に添加していないワインのことを指します。ただし、二酸化硫黄はアルコール発酵時に微量が自然に生成されるため、もともとワインにそなわっている 物質なのです。

一方、ヴィーガンワインとは、100%植物性原料を用いたワインを指します。ワインに動物性原料が使われるのかと、不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。ここで問題となるのは、ろ過に使用する清澄剤です。清澄剤の多くは、動物性たんぱく質由来のもの(卵白、アイシングラス、カゼインなど)。ヴィーガンワインの生産には、植物由来(大豆、小麦、ジャガイモなど)の清澄剤を使用するか、清澄剤自体を使わないことが求められます。

ボトルデザインもモダンスタイルに

型破りの新たなボルドー赤は、中身だけでなくパッケージにもこだわりが見えます。ラベルは以前のようなデザインから大きく様変わりし、クリエイティブ、カラフル、モダンなスタイルに。シャトーの建物が描かれていたり、シャトー名を連想させるキュヴェ名が記されていたりすることがなくなり、類い希な個性の発現を見いだせるデザインになりました。

ワインボトルにも変化が見られます。ボルドーワインのボトルは、今日私たちになじみのあるあの形だけではないのです。古いブドウ品種に立ち返ろうとする造り手たちの中には、なで肩をした昔風のボトルを、あえて用いるものがいます。

ボルドーの進化。それは、ボトルの内側だけでなく外側にも表れているようです。

リスペクトから見えてくるものを大切に

時代とともに変革をすることは、伝統を蔑ろにするということではありません。歴史の中で育まれた本質があるからこそ、新たなチャレンジができるということが、ボルドーワインの”今”からも見えてきます。

英語の表現に「The apple doesn’t fall far from the tree.(リンゴは木から遠くの場所には落ちていない)」というものがあります。ネガティブなニュアンスでも使われることがありますが、子供は親に似た行動をとり、色々な面で親に似るという意味になります。

親から子へ、子から孫へ。時代の息吹を取り込みながら、生きる上で大事なことは継承されいく。英語のこの表現では、リンゴが例として使われていますが、ブドウとワインでも同じことが言えるでしょう。

感謝の気持ちとともにボルドーワインで、父の日に乾杯!

シャトー・クラリス 2012
産地
フランス / ボルドー地方 / サン・テミリオン / ピュイスガン・サン・テミリオン
品種
メルロー90%、カベルネ・フラン10%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル
シャトー・プジョー 2004
産地
フランス / ボルドー地方 / メドック / ムーリス
品種
メルロー55%、カベルネ・ソーヴィニヨン40%、プティ・ヴェルド3%、カベルネ・フラン2%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル

情報協力
ボルドーワイン委員会(CIVB)

 

ワイン選びで頼りになる【分析の達人】WINE@トップソムリエ野坂昭彦の魅力に迫る

誰だって“おいしいワイン”を飲みたい。でも、“おいしいワイン”って何?

ワインの様々な要素を紐解き、微細にわたるマトリクスから最適なワインをチョイスしてくれるのは、WINE@の人気コンテンツ【WINE SELECTORS(ワインセレクターズ)】のトップソムリエの一人、野坂昭彦さん。

まさに「分析の達人」と呼びたくなる野坂さんは、香港の高級レストラン「K.O. Dining Hong Kong」のチーフ・ソムリエ、「トゥール・ダルジャン東京」などを経て、現在は、5つ星のラグジュアリーホテルでシェフソムリエを務めています。その仕事やワインへの想い、その人柄に迫るべく、じっくりお話を伺いました。

好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」

ワインの知識に長けている有名ソムリエやシェフ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインを紹介。ソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。
■詳しくは こちら

ホテルのソムリエは柔軟であれ。培われた感覚が物を言う

編集部

ホテルのソムリエというのは、レストランのソムリエと違いがあるものですか?

野坂昭彦さん(以下、敬称略)

ホテルのソムリエは、マルチタスクをこなせる柔軟さがなければならないと思います。また、歩く距離そのものが違うと思います。ホテル内の様々なレストランを巡回するので、歩数計のカウントは2万歩に及ぶこともあります。それから、各レストランやホテルのスタッフとのコミュニケーションが大切ですし、様々なタスクをこなせなければなりません。

編集部

忙しくなる時間というのは、それぞれのレストランで決まっているものなのですか?

野坂

忙しくなるタイミングは、その日、その日の予約状況や“匂い”のようなもので分かるんです。同じように、お客様を目の前にすると、そのお客様の求めているものが伝わってくる…これは、ソムリエという仕事の醍醐味なのかもしれません。

編集部

野坂さんと言えば、分析力の高さで知られたソムリエという印象がありますが、その「匂い」というのは、「勘」に近いものなのでしょうか?

野坂

「勘」というより、経験を積み重ねることで体得した感覚的なものでしょうか。その感覚と分析によって動いているものだと思います。

10の項目でワインを分析し、シーンやストーリーも加味する

編集部

ワインを評価する方法は、それぞれのソムリエのスタイルがあって、千差万別。自分の感覚、造り手のフィロソフィー、産地の特徴など、そこにそれぞれの個性が光りますね。野坂さんの場合は、分析能力の高さに定評がありますが、その手法を少し具体的に教えていただけますか?

野坂

私はワインを10の項目で評価します。まずは、①酸味、②渋味、③テクスチャー(質感)、④フレーバーの4項目。

次に、⑤ティピシティ(典型性)、⑥バランス、⑦余韻、⑧複雑性、⑨ポテンシャル(熟成などの可能性)、⑩バリューを分析します。

そして、お客様におすすめする際には、10の項目に加えて、「ワインのストーリー」「シチュエーション」「その人の嗜好」を加味する。これらを自分の中で分析し、きちんと数値化することで、自信を持っておすすめできるのです。

編集部

頭の中に「マトリクス」があり、その場、その人に合わせて、最適なワインをチョイスする、ということですね。整理された頭脳を持っていないと難しい…すごいですね!

野坂

いえ、実は私は、基本的には猪突猛進型の人間なんですよ。ただ、走り出す前に、さまざまなパターンを想定して、あらゆる状況に対応できるようにはしておきたい。その上で、逆算して物事を考えるクセがついているようです。これも職業病ですかね。

逆算から生み出される至福の時間

編集部

到着点がお客様の口に入るところとして、どのくらいの時点まで逆算するものなんですか?

野坂

そうですね…。料理が出来あがるタイミングもありますし、お客様の前に運ばれるタイミングもある。また、そのお客様が召し上がるタイミングに合わせて、ワインも最適の温度にしたり…と、いくつもの要因がありますので、それぞれを遡って考えています。

編集部

まるで棋士のように全体像を俯瞰するのですね。

野坂

お客様には自由にワインを楽しんでほしい。そのために、私たちソムリエがさまざまな状況を想定していますので。

編集部

料理とワインのペアリングについては、どうお考えですか?

野坂

基本となる法則のようなものはありますので、そのベースは押さえたうえで「遊びがあって、楽しめる」ということも大事だと思っています。意外性があったり、お客様にちょっと考えさせるようなものもいいですよね。

また、ペアリングに加えて、小さなデカンターで1杯分だけデキャンタージュして提供するとか、お客様が自分でワインをブレンドするなんていう体験も、ワインを楽しんでもらうための演出としてはありかなと思っています。

編集部

プロフェッショナルならではのサービスに身を委ね、“ワイン”という船に乗って旅するように時間を過ごす…それはお客様にとって至福の時になりますね。

「分析の達人」の日常と休日

編集部

プライベートで飲むワインも色々分析して考えられるのですか?

野坂

そんなことありませんよ(笑)。例えば、普段よく飲むのはライトな白ワインで、瑞々しくて、ミネラル感があり、身体に沁み込んでいくような癒し系の白ワイン。

フッと肩の力が抜けるようなロゼワインもいいですね。香港に住んでいた頃、飲茶とロゼワインの組み合わせを休日によく楽しんでいました。

編集部

お休みの日はどのように過ごされているのですか?

野坂

最近はクラフトビールとコーヒーが趣味で、近場の色々な店に足を運んでゆったりした時間の流れを楽しんでいます。

編集部

オンとオフの切り替えですね。

野坂 昭彦(のさか・あきひこ)
数々のラグジュアリーホテル、グランメゾンでシェフソムリエとして活躍。東京、パリ、サンフランシスコ、香港など海外のレストランも含め20年以上経験を積み、現在は5つ星ラグジュアリーホテル内の様々なレストランを取り仕切るシェフソムリエ。数々のソムリエコンクールで輝かしい受賞歴を持つ。

■Myワイン評価基準
酸味
渋味
テクスチャー(質感)
フレーバー
ティピシティ(典型性)
バランス
余韻
複雑性
ポテンシャル(熟成などの可能性)
バリュー

■野坂昭彦さんがセレクトするおすすめワイン&詳しいプロフィールは こちら

 

BYOをお得にたのしむ!【WINE@】ならではの5つのポイントを徹底紹介

飲食店にワインを“持ち込んで”食事を楽しむ「BYO」。英語の“Bring Your Own”の略で、オーストラリアで始まった飲食店のサービスと言われています。日本でも最近、飲食店にワインを持ち込んで食事を楽しむことに注目が集まっています。

BYOは、お得なことがいっぱい。利用者側はもちろん、飲食店側にも実はメリットがあります。さらに、この【WINE@】では、BYOをお得に楽しんでもらうためのサービスが満載。そこで、BYOの仕組みとともに、【WINE@】ならではの5つのお得ポイントをご紹介します。

なぜお得になるの?BYO(ワイン持ち込み)の仕組み

まずは、BYOがお得になる仕組みについて、具体例をもとに説明していきましょう。

例えば、参考小売価格 5,000円のワインがあり、あなたが何かしらの理由でそのワインを食事と一緒に楽しみたいとします。

飲食店では、料理の食材や人件費などのコストが大きくかかっていますので、ワインなどの飲み物の値段は、参考小売価格の2〜3倍に設定していることが通常です。仕入れ価格は参考小売価格の70〜80%位になりますが、「参考小売価格5,000円」のワインであれば、大体10,000円ほどの値段でメニューに載っていることが多いものです。

そこで、BYOで同じワインを楽しむとします。ワインの実際の販売価格を仮に4,070円として、その店のワイン持ち込み料1本2,000円だった場合、4,070円+2,000円=6,070円。レストランで10,000円するものが6,070円で楽しめ、3,090円もお得になるというわけです。

ここで「お得でも、お店に悪いのでは?嫌がられない?」と心配する方もいるかもしれませんが、実は次のような考えを持っている飲食店も多いのです。

「持ち込みOKにすることによって、多くのお客様に食事を楽しんでいただけるのならうれしい」

「お客様から珍しいワインや貴重なワインを教えてもらえることがある」

「自分では考えていなかった新たなマリアージュの発見やヒントがある」

【WINE@】では、そんな「BYO歓迎!」という飲食店のみを掲載していますので、心配ご無用!次に、【WINE@】を活用する5つのお得ポイントを順にご紹介していきますので、掲載店についてはその中でまた詳しくご説明します。 

「BYOの仕組みについてさらに知りたい」という方は、こちらの記事も参考にしてください。

【飲食店へのワインの持ち込み】基本のキ 

【飲食店へのワインの持ち込み】10の質問、徹底的に答えます!

【WINE@】ポイント(1) 手ぶらで簡単!2ステップ

1つめの【WINE@】を活用するお得ポイントは《手ぶらで簡単!2ステップ》です。

BYO、つまりワインを持ち込みで楽しむ時に、ちょっと大変なのが、重たいワインボトルを自分で持っていかなければいけないということです。熟成が進んだ繊細なワインや、シャンパンなどのスパークリングワインであれば、なおのこと。丁重に扱わないといけないので、さらに大変です。

【WINE@】を活用すれば、店を選んで予約をして、ワインはオンラインショップで事前購入。ワインは店に直送できますので、当日は手ぶらでOK!となるわけです。

【WINE@】ポイント(2) 選べるワインは700種!

お得ポイントその2は《選べるワインは700種!》です。

もちろん日々在庫は変動しますし、さらに多くのラインナップになっていることもありますが、【WINE@】のオンラインショップでは、リーズナブルなものだけでなく、ヴィンテージワインやレアワインがあり、一般的なお店のワインリストと比べるとかなり充実した品揃えになっています。

BYOで楽しむ場合、高級なワインであればあるほどお得度もアップするもの。また、料理とのペアリングを自分なりに考えて選ぶもよし、旅行などの思い出やエピソードに重ねたワインを選ぶもよし…。あなたの希望に叶うワインが何か発見できるはずです。

「料理とワインのペアリングのコツなど、ワインのことをもっと楽しく知りたい!」という方は【WINE@マガジン】のペアリング関連記事もぜひお楽しみください。

【WINE@】ポイント(3) プロお墨付きのワインで外さない!

「自分でワイン選びをするのは難しい…」という方におすすめなのが、第3のポイント《プロお墨付きのワインで外さない!》になります。

【WINE@】では、ワインの知識に長けている有名ソムリエ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインをオンラインショップで紹介しています。

好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」では、そんなソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。

トップソムリエがセレクトする、外さないワイン!

「WINE SELECTORS」については こちら

【WINE@】ポイント(4) 持ち込み料2,000円以下の店が200店!

お得ポイントその4は《持ち込み料2,000円以下の店、200店!》という点です。

【WINE@】では、「BYO歓迎!」という飲食店のみを掲載していることは、先ほどお伝えしましたが、持ち込み料が1本2,000円以下というかなりリーズナブルな店が、約200店も掲載されています。

持ち込み料は、「抜栓料」と呼ばれることもあります。栓を抜くということは、グラスにワインを注いで飲むということ。グラスを使用するということは、それを用意する人もいれば、使用後に洗浄する人もいます。さらに店側は、客の不注意でグラスが破損してしまうリスクも抱えています。

抜栓は、場合によっては客自身でやることもありますが、飲食店のソムリエやスタッフがしてくれることがほとんどで、これも一つのサービスです。これらを総じて「持ち込み料(抜栓料)」として店側が設定しているのです。

【WINE@】では「持ち込み料」と表記し、その料金は「1本あたりの料金」に統一しています。

【WINE@】ポイント(5) 持ち込み可能店舗の掲載数、日本最大級! 

《持ち込み可能店舗の掲載数、日本最大級!》という話で、【WINE@】を活用するお得ポイントの解説を締めくくりましょう。

持ち込み料2,000円以下の店が200店ほどあるだけでなく、全体の掲載店も随時増えていて、人気の恵比寿エリアだけでも150店!BYOができる店探しをするにはもってこいの検索サイトになっています。

そして、「持ち込み料」だけでなく、「最寄駅」「料理ジャンル」、女子会や接待などの「利用シーン」さらに「フリーワード」など、様々な切り口から店を検索することができるので、その便利さも日本最大級と言えるのではないでしょうか。

 

【WINE@】ならではの5つのお得なポイント、お分かりいただけましたでしょうか。

お財布にもやさしく、手軽さや便利さもあるBYOのサービスをフル活用!家飲みでは体験できない雰囲気の中で、プロの料理とともに楽しい“ワイン時間”をぜひお過ごしください。

「【WINE@】で実際にお得にBYOを楽しみたい!」という方は、その手順などを詳しく解説したこちらの記事もどうぞ!

手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法

 

3Wの国、チリのワインはコスパだけじゃない!【パイス種】の“エシカル”なワインとは?

チリワインというと、あなたはどんなワインをイメージしますか?コンビニやスーパーでも定番となった、果実味も飲み応えもしっかりとしたリーズナブルなワインといったところでしょうか?

2007年に日本とチリとの間で締結された経済連携協定のおかげで、関税率が段階的に下がり、2019年4月には関税ゼロに!この12年の間に、チリワインが国別輸入量で第1位となり、すっかりおなじみとなった背景には、そんな経済的背景もありました。

でも「すべてのチリワイン=安ウマワイン」というのは大きな誤解。ワイン好きなら、世界的に注目を集めているチリワインのことを、もっと知っておきましょう!

3Wの国とは?チリってどんな産地? 

photo: © Catad’Or Wine Awards

Weather(天候)に恵まれ、コロンビアやコスタリカと並び“南米3C”と称されるきれいなWomen(女性)がいて、おいしいWineが造られる国。3つのキーワードの頭文字から、チリは「3Wの国」と称されています。

チリは南米大陸の西海岸にあり、南北に4,274kmもある細長い国。日本の本州の長さ(約1,300km)のなんと3倍以上!東側にアンデス山脈が走り、起伏に富んだ地形ですが、ブドウ栽培地域は、国土のちょうど中間部分、南緯27度から40度までのおよそ1,400kmに広がっています。その主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

・寒暖差のある地中海性気候

・雨が少ないため灌概用水が重要(アンデスの雪解け水も活用)

・乾燥状態が続くためポトリティスやベト病などの病害に罹らない

・フィロキセラ被害がこれまでのところないため、北米品種の台木に接木する必要なし

ブドウ栽培にぴったりのテロワールを備えたチリでは、フランスやスペインからの資本や技術とともに、多種多様な品種のワインが造られるようになりました。そこで、お隣のアルゼンチンやブラジルなどを巻き込み「世界に通じるワインを発信していこう!」ということから、南米最大級のワインコンクール、カタドール(Catad’Or)が開催されています。

カタドール(Catad’Or)とは?

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

直訳すると“金のテイスティング”という意味がある「カタドール(Catad’Or)」。正式名称は「カタドール・インターナショナル・ワイン・アワード」で、1995年にスタートした南米最古で最大級のワインコンクールです。

OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)と国際エノロジスト協会の後援を受け、ラテンアメリカで、唯一VINOFEDのメンバーとしても認められている存在で、50名の国内外のテイスターを束ねる審査員長は、英国のマスター・オブ・ワイン(MW)、アリスター・クーパー。2019年のコンクールでは、13か国から出品された計670アイテムが審査されました。

カタドールでは、赤、白、ロゼ、スパークリングといったカテゴリーのほか、蒸留酒のピスコなどを審査するスピリッツ部門などもあり、カテゴリーは多岐にわたっていますが、特に近年注目を集めているのは、アンセストラル・ワイン(Ancestral wines)という部門です。

アンセストラル・ワイン部門とは?

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

アンセストラル(Ancestral)は、“先祖代々の、伝統的な”という意味ですが、カタドールでいうところのアンセストラル・ワインにはあまり細かな規定はなく、伝統的な品種(パイス、カリニャン、サンソー、トロンテル)を用い、昔ながらの方法で栽培と醸造を行うワインを対象としています。

アンセストラル部門のコンクールは、2018年にスタート。チリの農業省とチリ政府機関である農牧開発局(INDAP)が主催しており、審査本部は、チリ・ニュブレ州の州都チランにあります。国内外の審査員が招集され、伝統的な品種と先祖代々の製法をもとに小規模な生産者が丹精込めて造った、チリとアメリカ大陸の先祖伝来のワイン、少量生産のワインが審査対象となっています。

そのなかでも、注目してほしいのは、パイス種のブドウから造られる赤ワイン。チリ特有のこの品種のことを、ここで少し説明しておきましょう。

パイス(País)種の特徴と歴史

チリワインの代表的な黒ブドウ品種というと、カベルネ・ソーヴィニヨンが今や圧倒的。その他となると、メルロと混同されていたというカルメネールくらいまでは知っている方がいるかもしれませんが、1997年までチリで最も多く栽培されているブドウ品種は、パイス(País)。この品種は、チリワインの“はじめて物語”と直結しているのです。

チリでワインが造られるようになったのは16世紀のこと。当時チリはスペインの植民地で、カトリック伝道者がミサ用のワインを造るためパイス種を植えたことに始まります。

パイスは、カナリア諸島でリスタン・ネグロ(Listán Negro)リスタン・プリエト(Listán Prieto)と呼ばれているブドウと同じ。大航海時代を経て、キリスト教の普及活動とともに南北アメリカ大陸に広まったため、シノニム(同義語)がたくさんあります。

ミッション(伝道師団)が伝えたということから、カリフォルニアではミッション(Mission)、メキシコではミシオン(Misión)と呼ばれており、アルゼンチンではクリオージャ・チカ(Criolla Chica)という全く別の呼び名になっています。

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

ちなみに、チリで呼ばれているパイス(País)は「国」という意味。19世紀末のフィロキセラの大打撃を受けたヨーロッパへの輸出需要もあり、次々と国際品種へと植え替えられていくまでは、まさに“国”を代表するブドウ品種でした。

そうした大きなうねりにあまり巻き込まれなかったのが、チリ南部のビオビオ・ヴァレーやイタタ・ヴァレーといった地域でした。パイスは、乾燥に強く灌漑がなくても育ち、ブドウ特有の病気に耐性がある品種だったため、樹齢100年以上の古木が未だにたくさん。古いものでは樹齢400年にもなるものもあり、現在も伝統的な株仕立て(ゴブレ)で残っているのです。

高い収穫量のあるパイスは、淡い色調で、チェリーなどのアロマがあり、渋みが穏やかで素朴な赤ワインになります。

国際品種による濃醇なワイン造りのトレンドのなかでは、紙パックや大瓶に入ったデイリーワインになっていましたが、伝統を重んじ、テロワールを表すワインに注目が集まる今、カタドールでもアンセストラル・ワインとして、別の価値を持つようになってきたというわけです。

そこで、日本未入荷(2020年10月現在)のワインではありますが、カタドールのアンセストラル部門で高く評価された3本のパイス種のワインに、今回は注目。今後、日本のワイン通の間で人気が出るかもしれませんので、ここでご紹介しておきましょう。

わずか1,000本のみ!プルーン香る「BAGUAL」のパイスワイン

ほんのりした酸味と渋みが、ネクタリンやプルーンの果皮をイメージさせるナチュラルなワイン。熟成時に古樽を使用していますが、いわゆる樽香はなく、アルコール度数は12.5%。

家族経営で「イタタ・ヴァレーで伝統的なパイスのワインを後世に伝えていきたい」と、すべて手作業で造り続けているため、生産量はわずか1,000本。裏ラベルには、ナンバリングもされています。

うま味じんわり。サンソーもブレンドした「FURTIVO」のワイン

パイス80%、サンソー20%というブレンド比率で、アルコール度数は12.5%。イタタ・ヴァレーよりもさらに南のビオビオ・ヴァレーで育てられるパイスとサンソーは、樹齢200年を超えるとのことです。

アメリカンチェリーの酸味と果実味に始まり、焼き栗やナッツのような香ばしさも口中に広がる味わい。ボージョレ・ヌーヴォーでもおなじみのマセラシオン・カルボニック(ブドウを破砕せずにタンクの中で放置し、二酸化炭素を充満させて酸素との接触を抑制することでフルーティーに仕上げる製法)を行いますが、樽は不使用。じんわりじっくり、うま味が広がるワインです。

金賞受賞!樹齢90年以上のパイスだけで造られる「TRANCOYÁN」

まさに、フレッシュ&フルーティー。まるでクランベリージュースを飲んでいるかのような、クリーンな味わいのワインで、アルコール度数は12.3%。

イタタ・ヴァレーで樹齢90年を超えるパイス100%で醸されるこのワインは、カタドールのアンセストラル部門で金賞を受賞。スクリューキャップ使用で、年間生産5,000本。ご紹介した3本の中では、日本で飲めるようになる可能性が一番高いワインかもしれません。

フェアトレードで持続可能に。エシカルなワインの時代へ!

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

カタドールのアンセストラル部門に出品されるワインは、原料ブドウのフェアトレード認証を取得しているものもあります。チョコレートやコーヒーの世界では浸透している「フェアトレード認証」ですが、ワインでは現在、チリ、アルゼンチン、南アフリカの3か国のみで行われているとのこと。認証の取得にはコストもかかるため、それがワインの販売価格に反映されると、現在の販売流通ではまだまだ難しいこともあるのだそうです。

チリには「“おらが村”の素朴なワインを後世に残していきたい」という想いとともに、設備投資もままならないため、結果的に割高になってしまう小規模生産のワインもあるというトピックスを、今回お伝えしました。

自然な方法で、耕作に馬などの動物を活用し、除草剤や殺虫剤などの化学薬品は使わず、醸造も天然酵母を用いて造られるワイン。そんな“自然派ワイン”は、他の国でも注目を集めるものとなっていますが、ここでは決してブームだから行われているのではありません。

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

一方、チリワインのシェア90%をも占めるというチリワイン大手メーカー4社も、アメリカ、日本、イギリスなどのワイン市場で受け入れられるリーズナブルなワインだけでなく、徹底的な品質にこだわったプレミアムワインや、自然環境に配慮したワインを生産しています。

おいしさとともに、文化や産業として守り、未来につなげていくこと。フェアトレード、サスティナブル、SDGsといった、エシカル(倫理的)なワインのムーブメントは、これからの時代に求められるものだと思います。おいしく、健やかに、私たちもワインを深く長く、楽しんでいきましょう! 

■情報協力

Catad’Or Wine Awards

ProChile Japan(チリ貿易振興局 日本オフィス)

 

2016 レセルバ・パイス・モスカテル
産地
チリ
品種
パイス、モスカテル
タイプ
ライトボディ辛口 赤

ワインに求めるのは、人生の楽しさ!WINE@トップソムリエ矢野航の魅力に迫る

誰だって“おいしいワイン”を飲みたい。でも、“おいしいワイン”って何?

「ワインに求めるのは、人生の楽しさ!」と語るのは、WINE@の人気コンテンツ【WINE SELECTORS(ワインセレクターズ)】のトップソムリエの一人、矢野航さん。

横浜馬車道「トラットリア ダ ケンゾー」のソムリエにして、第10回JETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクールでの優勝経験を持ち、現在は、駐日イタリア大使館公認イタリアワイン大使などとしても活躍する矢野さん。イタリアワインの第一人者の仕事やワインへの想い、その人柄に迫るべく、じっくりお話を伺いました。

好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」

ワインの知識に長けている有名ソムリエやシェフ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインを紹介。ソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。
■詳しくは こちら

ワインを通じて、幸せになってほしい

編集部

矢野さんのサービスは「楽しい」と定評がありますね。

矢野航さん(以下、敬称略)

とにかくワインを楽しんでもらいたい。私がイタリアワインに惹かれる理由も、それに尽きると思います。イタリア人は陽気で、人生を楽しむことが大好きですから。

編集部

確かに、イタリアの人たちは楽しそうにワインを飲みますよね。

矢野

こんなに多くの方がワインを楽しむ時代になっても、まだ「ワインは難しい」とおっしゃる方がいます。何人かで飲んでいると、詳しい方と、あまり詳しくない方がいて、ワインの会話についていけない方が出たりする。置いていかれてしまった方は、ワインを敬遠してしまいますよね。

私はお客様の中に“脱落者”を出したくないんです。ワインに詳しい方も、そうでない方も、どんなお客様にも、ワインを通じて幸せになってほしいと思っています。

「育まれた土地の情景が想像できるワイン」に癒される

編集部

ワインを選ぶ際、矢野さんが基準にしているポイントは何ですか?

矢野

土地のキャラクターを大切にしている造り手のワインかどうか、ですね。

「これだけ綺麗な酸が感じられるのは、夜になると冷え込む土地柄なのだろうな」とか、「豊かな果実味は、燦々と降り注ぐ太陽を思わせるな」といった具合に、テロワールを大切に考えてワイン造りに取り組んでいる生産者のワインを飲むと、その土地の情景が浮かんできます。大きい、小さいという規模ではなく、生産者の“想い”がにじみ出たワインには、魅力がありますから。

編集部

ワインを飲むと、そのワインが育まれた環境が見えてくるというわけですね。

矢野

私はサーフィンが趣味なんですが、なかなか海に行くことができない昨今の状況の中、最近は家でニュージーランドのソーヴィニョン・ブランを飲むことが多いんです。

特にマールボロ近郊のワインには、どこか潮風を感じるものがあるので、そんなワインを飲むことで、気持ちのささくれを癒しているのかもしれません。ワインには旅の代替になるような、そんな力もあります。

編集部

サーフィンの他に、ボクシングも趣味だとか。

矢野

身体を鍛えることや健康には気を遣っています。以前はよくジムにも通っていました。

落語から学ぶソムリエの至芸

編集部

矢野さんは、他にも最近ハマっていることがありそうですね。

矢野

実は「落語」にハマっていて…。YouTubeで志ん朝(三代目古今亭志ん朝1938~2001)の落語を聞いたのがきっかけで、すっかりやみつきになりました。落語を聞いているうちに、「これはサービスの勉強にもなる!」と気づきました。噺家さんはたった一人で、話術だけで、大勢のお客さんを噺の世界に引きずり込んでしまう。

考えてみればソムリエの仕事も、お客様を、遠いヨーロッパの田舎で造られているワイン世界にご案内しているようなもの。召し上がる方に、少しでも現地の様子を想像していただけるよう、より心がけてワインをおすすめするようになりました。

編集部

趣味の落語が、サービスにも影響を与えたということですか。

矢野

もともと、ピュアで、テロワールに素直なワインが好きでしたが、それは、お客様にも造られた環境や造った人を感じていただけるからだったんだと思います。私は映画も好きなんですが、その理由も同じかな。観るだけで世界のどこかに行った気分になる。『ゴッドファーザー』とか、大好きです。

編集部

時間や空間を飛び越える楽しさがありますね。

矢野

ワインも料理も、季節、時間、シチュエーションが大切です。ともすれば、それを飛び越える楽しさもワインにはある。ヴィンテージを見ると「ああこの頃、こんなことをしていたなあ」なんて思い出すことがあるでしょう?

「哲学」というと難しそうですが、情景や人を思いながらワインを飲むことは、この上なく楽しい。そういうお手伝いができるソムリエという職業は、幸せな仕事だと思っています。

矢野航(やの・わたる)
横浜馬車道のイタリアン「トラットリア ダ ケンゾー」ソムリエ。駐日イタリア大使館公認のイタリアワイン大使も務めるイタリアワインの第一人者。2016年、第10回JETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクールで優勝。イタリア人のような陽気な人生に憧れ、楽しませることが大好き。

■Myワイン評価基準
綺麗な酸
コスパの良さ
生産者の想い

■矢野航さんがセレクトするおすすめワイン&詳しいプロフィールは こちら

 

「ウンチクよりも感覚を大切に」WINE@トップソムリエ櫻井一都の魅力に迫る

誰だって“おいしいワイン”を飲みたい。でも、“おいしいワイン”って何?

「スペインワインは多様で、ストライクゾーンも広い」と語るのは、WINE@の人気コンテンツ【WINE SELECTORS(ワインセレクターズ)】のトップソムリエの一人、櫻井一都さん。

「ウンチクはあまり好きじゃない」という櫻井さん。感覚を大切にするスペインワインの第一人者の仕事やワインへの想い、その人柄に迫るべく、じっくりお話を伺いました。

好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」

ワインの知識に長けている有名ソムリエやシェフ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインを紹介。ソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。
■詳しくは こちら

「人と同じことはしない」から始まったスペインワインへの道

編集部

今でこそ日本ではスペインワインが広く親しまれていますが、昔はそんなことありませんでした。なぜスペインワインの世界を志したのですか?

櫻井一都さん(以下、敬称略)

よく訊かれます。実は、元々はバーテンダーでハードリカーが専門でした。その頃ずっと、「ワインと日本酒はやりたくないなぁ」と思っていました。ウンチクを語ったりすることが、あまり好きではないので(笑)

編集部

それがどうして、ワインの世界に?

櫻井

バーテンダーとして働く中で壁にぶつかりました。「ずっと自分はバーテンダーとしてやっていくべきなのか…」どうしても、その自問から抜け出せなかった。その壁を乗り越えるために、それまで敬遠していたワインを勉強してみようと思ったわけです。

編集部

スペインワインとの出合いは?

櫻井

多くの方と同じように、初めはフランスワインから入り、ブルゴーニュやボルドーを追いかけるわけです。でもふと周りを見渡すと、みんな同じことをやっている。「つまらないな」と思いました。そもそも、他人と同じことをするのが好きじゃないんです。そんな時に、スペインワインとめぐり合いました。

編集部

みんながフランスを志向するから、あえてスペインをということですか?(笑)

櫻井

今でもモットーは、「仕事にも遊びを取り入れる」「人と同じことはしない」ということなんですが、学生時代からそうだった気がします。

私は茨城の出身で、中学、高校とサッカーをやっていました。茨城選抜まで行ったんですが、全然練習しない選手だった(笑)。もちろん、全くしないわけではありませんが、ありきたりの練習を押しつけられるのが大嫌いで、遊びを加えたような独自の練習を、勝手にやっていました。

「当たって砕けろ」で開拓したスペインワインの魅力

編集部

仕事としてスペインワインの世界に入ったきっかけは?

櫻井

スペインレストランから、声がかかったのです。そこで色々と知るようになり、「スペインワインの多様性が面白いなぁ」と思いました。

品種も、産地も、造りも、なんだか皆、好きなことをやっている。それでいて、品種を知り、深く探求していくと、それが結局テロワールに繋がっていたりする。とても興味を惹かれました。

編集部

まだインターネットやSNSも普及していない頃、ましてや当時の日本ではメジャーな存在ではなかったスペインワインのことをどのように学ばれたのですか?

櫻井

フランスワインと違って、教本や参考書などもありませんでしたからね。仕方がないので、現地のソムリエや生産者に直談判して、直に教えを受けに行ったりしました。「当たって砕けろ」というやつです(笑)

感性が瞬時に導きだすバランス感覚

編集部

ワインを選ぶ時に、櫻井さんが大切にしていることは何ですか?

櫻井

「感覚」です。瞬間の、パッとした閃きも大切にしています。

あと、野球の“ストライクゾーン”みたいな感覚もありますね。ストライクの枠内には、ど真ん中もあれば、外角高め、低めなど、様々なものがある。ワインも似ていて、ストライクの枠内で、その時々の、自分の感性を大切にして選べばいいじゃないかと思うんです。

編集部

その日の気分に合わせて、というような感覚でしょうか?

櫻井

それもありますし、ワインと料理を合わせる時にも“ストライクゾーン”みたいな感覚は大事かなと思います。その中で、最も意識するのは「トータルでのバランス」ですね。

例えば「料理の甘味に、ワインの酸で補うように合わせる」とか「ワインと料理の色を合わせる」などと言いますが、自分は、料理1品にワイン1本を合わせるのではなく、メニューのトータルに、雰囲気の合うワインを合わせるスタイルです。そういう合わせ方をする際に、スペインワインは最適だと思うんです。

スペインワインにも色々なものがありますが、全般的には、酸が穏やかで、果実味があり、味わいはまろやか。料理に縛られないワインであるということも、スペインワインの醍醐味かな、と。

編集部

なるほど。感性の芯には、多様性の中から紡がれたバランス感覚がある。だから、櫻井さんの選ぶワインを飲むと、心がホッと落ち着くのかもしれませんね。

櫻井

そういう気持ちでワインを楽しんでいただけたら、最高ですね。

「感覚の天才」の休日は、パフェ、ヘヴィメタル、アイドル!?

編集部

家では普段どんなワインを飲まれますか?

櫻井

スパークリングワインが好きなので、よく飲みますね。あと、家飲みワインは、妻が近所のワインショップで選んで買ってくるものを飲むのが、櫻井家のルール(笑)。それが絶妙なチョイスで、なかなか面白いんですよ。

編集部

いいですね。ちなみに、お休みの日はどのように過ごされているのですか?

櫻井

休みの日はチョコレートパフェ…

編集部

えっ?パフェですか?

櫻井

休日には必ず食べる「週に一度のお楽しみ」ですよ。フルーツパフェよりチョコレートパフェ派で、モダンなものよりはクラシックなタイプが好きです。

編集部

なるほど。クラシックタイプ、わかります。パフェの他に、何か趣味はあるのでしょうか?

櫻井

緊急事態宣言下で家を出られなかった時期は、筋トレとトランペットの練習ばかりしていました。そもそも音楽はヘヴィメタルが好きで、学生時代にコピーバンドをやっていて、ベースとギターを担当していました。

今でも80年代のヘヴィメタルが特に好きで、2019年に解散してしまったアメリカの「SLAYER(スレイヤー)」の大ファン。コロナ禍以前は、“メタル好き”を集めて、プロジェクターを使い、カウンターで上映会を開催したり…。あと、紅白にも出場した「BABY METAL」も好きで、2019年は4回もライブに行きました。

編集部

コロナ禍の影響で、ライブやコンサートはまだまだ以前と同じようには行かれないですよね。

櫻井

そんな中でも楽しみはあるものです。去年は朝の情報番組で特集していた「NiziU」にすっかりハマり、家族全員でファンになりました。ファンクラブも立ち上げ時から入会。ちなみに、私はリマちゃん推しです(笑)

櫻井一都(さくらい・かずと)
東京都品川区大井町にあるワインバー「ロスビノス」のオーナーソムリエ。2007年、スペインワインコンテスト2007にての優勝経験を持ち、スペインワインを中心とした、ワインセミナー、ワイン選定、ワインリストの作成などのコンサルティングでも活躍。

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