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【ボージョレ】とは?魅力はヌーヴォーだけじゃない!今さら聞けない基本の話

11月になるとニュースなどでも話題になる、ボージョレ・ヌーヴォー。毎年のように「今年の出来は過去最高」などの言葉が躍りますが、そもそもボージョレとは何か?ヌーヴォーとは何か?実はよく分かっていないというワイン初心者もいるはず。

そこで、今回は「なんとなく知っているけれど、詳しくは知らない」という方のために、ボージョレ・ヌーヴォーの基本をレクチャー。最後にボージョレのワインと一緒に楽しんでもらいたいペアリングチーズもご紹介します。

【ボージョレ】って、そもそも何?

「ボージョレ(Beaujolais)」は、ブルゴーニュ地方最南端にある地区。北緯約46度、マコンの南からリヨンの北まで約55kmにわたる産地で、夏は比較的暑く、冬は寒い半大陸性気候のエリアになります。

古代ローマの時代からの歴史がある産地で、主にガメイ種という黒ブドウから赤ワインが造られています。このボージョレ地区で造られる赤ワインが、ボージョレ・ワインであり、単に「ボージョレ」と呼ばれることもあります。

【ヌーヴォー】って、そもそも何?

「ヌーヴォー(nouveau)」はフランス語で「新しい」という意味。つまり、ワインでは穫れたばかりのブドウで造った新酒のことを指します。

新酒を通じてその年のブドウの出来はどうだったかを確認し、自然への感謝とともに、収穫を祝い、互いを労う…。新酒(ヌーヴォー)には、ブドウ栽培やワイン造りに携わるすべての人の想いがこめられてきました。

この収穫のお祝いは、世界的な風物詩へと発展。現在では、11月の第3木曜日がボージョレ・ヌーヴォーの解禁日と決められているため、日付変更線に近い日本では、欧米諸国よりも早くボージョレ・ヌーヴォーが飲める(本国フランスよりも8時間早く楽しむことができる!)ということもあり、一大ブームになりました。

このボージョレ・ヌーヴォー(ボージョレの新酒)が世界的に最も有名な新酒ですが、他の国にも同様に新酒の風習があり、以下の3つは特に有名なものなのでぜひ覚えておきましょう。

イタリア:ノヴェッロ(Novello)

ヴィーノ・ノヴェッロ(新酒)は10月30日が解禁日。ボージョレのような地区指定ではなく、イタリア全土で多種多様な新酒が造られています。

日本:山梨ヌーヴォー

山梨で造られる日本ワイン、甲州とマスカット・ベーリーAの新酒。販促とブランディングのためのキャンペーン施策として、11月3日を解禁日として展開されています。

オーストリア:ホイリゲ(Heuriger)

小さめのビールジョッキのようなグラスでワイワイと新酒を楽しむホイリゲ。旅行番組などでもおなじみの行事で、11月11日が解禁日とされています。ホイリゲは「今年の」という意味があります。

また、日本とは季節が逆転する南半球のチリやオーストラリアでも、解禁日や決まりはありませんが新酒は造られていて、最近では夏になると日本のワインショップでも“ヌーヴォー”を謳うチリやオーストラリアのワインを見かけるようになってきました。

【ガメイ】品種の特徴は?どんな香りと味わい? 

ボージョレ・ヌーヴォーの話に戻りましょう。ボージョレでは主にガメイ種という黒ブドウから赤ワインが造られています。

ガメイは、フランスのその他の地方やスイスなどでも栽培されていますが、世界的にもボージョレが有名産地。大きめの実が多く成る黒ブドウで、早熟な品種であるため、ヌーヴォー(新酒)を造るのにも適しているというわけです。

ほどよい酸味があり、あまり渋みがないのでワイン初心者でも飲みやすく、イチゴキャンディーやバナナのような香り、そして赤いベリーを思わせる果実味が特徴的。ボージョレ・ヌーヴォーのこのフルーティーで甘やかな風味は、独特の醸造方法が大きく寄与しています。

それはマセラシオン・カルボニック(MC、二酸化炭素浸漬法)というもので、収穫したブドウを破砕せずにそのままタンクの中で放置し、タンク内に二酸化炭素を充満させて発酵させるという手法です。

酸素との接触を極力なくすことで酸化が抑制され、発酵の過程であのイチゴキャンディーやバナナのような風味が生成。また果皮から溶け出した色素も酸化で褪色せず、あの鮮やかな色合いになるというわけです。

ボージョレはヌーヴォーだけ?熟成は楽しめないの?

ボージョレはフレッシュ&フルーティーな新酒(ヌーヴォー)が有名ですが、地区の生産量で言えば約1/3。実は熟成で奥深い味わいになる上質なワインも造られていて、「熟成させたガメイの良さを知ってこそ、ボージョレの真髄が分かるんだよ」なんていうワイン愛好家も少なくありません。

ボージョレ地区には原産地呼称のA.O.C.があり、赤以外にも白やロゼを造ることができますが、格上の「クリュ・デュ・ポージョレ」と呼ばれる10の指定畑(または区画)では、ガメイの赤ワインのみが造られています。

10のクリュ・デュ・ボージョレ(※北から順に)

サン・タムール(Saint-Amour)
ジュリエナス(Juliénas)
シェナス(Chénas)
ムラン・ア・ヴァン(Moulin-à-Vent)
フルーリー(Fleurie)
シルーブル(Chiroubles)
モルゴン(Morgon)
レニエ(Régnié)
ブルイイ(Brouilly)
コート・ド・ブルイイ(Côte de Brouilly)

ムーラン・ア・ヴァンモルゴン、コート・ド・ブルイイでは、特にポテンシャルのあるガメイのワインが造られていて、熟成とともに複雑な味わいが現れるものが多くあります。

2019 コート・ド・ブルイィ・レ・セット・ヴィーニュ/シャトー・ティヴァン
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ガメイ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2014 ムーラン・ア・ヴァン・レ・ヴィエイユ・ヴィーニュ/ティボー・リジェ・べレール
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ガメイ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

ワインの熟成について詳しく知りたい方は、そもそも「熟成」って何?熟成に向くワインとは?をチェック!

季節限定チーズ【モン・ドール】で、ボージョレと至福のペアリング

熟成したボージョレでもヌーヴォーでも、赤いベリーの果実味があって渋みが抑えられた赤ワインには、マイルドでクリーミーなチーズがおすすめ。なかでも、解禁シーズンが重なる「モン・ドール」なら秋冬の季節感も伴って、至福のペアリングが楽しめます。

モン・ドールの製造は8月15日から翌年3月15日に限定され、販売期間は9月10日から翌年の5月10日までとされています。チーズ専門店だけでなく、10月くらいになると、チーズの品揃えの良いスーパーやワインショップでも販売されます。

産地はフランス東部のアルプスエリア、フランシュ・コンテ地方のジュラ山脈一帯で、エピセア(モミの木の一種)の樹皮で巻き、エピセアの棚の上で熟成させます。無殺菌乳製で、熟成とともに表皮は淡いロゼ色になり、中身はカスタードクリームのようにとろりとやわらかく、スプーンですくって食べられるようになります。

スライスしたバゲットの上にのせて食べるのが定番ですが、半分くらい食べたらフォン・ドール(焼きモン・ドール)で楽しむのがおすすめ。

作り方はいたって簡単!

STEP1 食べかけのモン・ドールの中に、ニンニクのみじん切り少々(チューブのニンニクでもOK)と白ワインをちょっとだけ入れて軽く混ぜる。

STEP2 パン粉を振りかけ、木箱が焦げないように周りをアルミホイルでくるんで、オーブントースターで約10〜15分加熱して完成!

食べるときにお好みで黒胡椒を少しふってもOK。バゲットやクラッカーですくって食べながら、ボージョレ・ヌーヴォーを一口!といきましょう。

11月の第3木曜のヌーヴォー解禁日はもちろん、クリスマスシーズンにもおすすめのペアリング。モン・ドールとともに、ボージョレのワインをさらにおいしく楽しみましょう!

 

初心者必読!5種のチーズから探るおいしいワイン

「ワインもチーズも好きだけれど、どちらも種類はよくわからない…」というあなたのために、今回は基本中の基本をレクチャー!

飲食店でも販売店でもよく見かける5種の基本のチーズ、そしてそんなチーズと一緒に味わってほしいワインを探っていきます。「え?チーズといえば赤ワインでしょ?」と思っている人がいたら、それは大間違い!おいしい組み合わせは、そう単純ではありません。でも、大丈夫。チーズの基本と相性の良いワインを知っておけば、一人飲みやデート、接待でも大いに役立つはずです。

食べやすい?食べにくい?実はいろいろある【カマンベール】

カマンベールチーズのオリジナルは、18世紀末にフランス北部ノルマンディー地方のカマンベール村で誕生。1855年にパリ-リジュー-カーン間の鉄道が開通するとパリで人気に火がつき、世界で最もよく知られるチーズの一つとなりました。 

現在「カマンベール」とよばれているものには、大きく分けると3つのタイプがあります。

1.  無殺菌乳製の「カマンベール・ド・ノルマンディー」

2. 殺菌乳製のややマイルドな風味のもの

3. 容器に入れてから特別な加熱処理で保存性を高めたロングライフ製法のもの

日本のスーパーでよく見かけるものは、3.のものがほとんどで、日本人向けにさっぱりとした味わいに開発されています。白・赤・ロゼ、どれでもよいのですが、酸味はやや穏やかで豊かなフルーツ感のあるフレッシュなワインがよく合います。

一方、1.や2.のタイプは、時間とともに熟成が進み、個性的で複雑な風味を伴っていくのが特徴。相性の良いワインも、その熟成度に合わせるのがポイントになります。しっかりと熟成した本家本元の「カマンベール・ド・ノルマンディー」には、樽由来のバニラ、バター、ナッツの香りがする熟成したシャルドネや、熟成で渋味がまろやかになったメルロなどがおすすめです。

ブラック・スミス / シャルドネ リザーヴ ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2018
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / ノース・コースト / ソノマ
品種
シャルドネ
タイプ
白ワイン - 辛口 - フルボディ
シャトー・ファルファ / コート・ド・ブール 2013
産地
フランス / ボルドー地方 / コート・ド・ブール
品種
メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、マルベック
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル

粉チーズとは似て非!イタリアチーズの王様【パルミジャーノ・レッジャーノ】

“イタリアチーズの王様”と称されるのが、この「パルミジャーノ・レッジャーノ」。世界各地で造られている“パルメザンチーズ”は、実はこのパルミジャーノ・レッジャーノの製法や風味を真似て造られたものなのです。

粉チーズになって売られている“パルメザン”がスーパーやコンビニではおなじみですが、本物のパルミジャーノ・レッジャーノのおいしさは、ケタ違い!イタリアンの店はもちろん、ワインバーなどでもチーズの盛り合わせを頼むと、かち割り氷のようなゴロッとしたカットで出てくることがよくあります。

長期熟成のハードチーズなので、うま味がたっぷり。シャンパーニュはもちろん、熟成感のあるスパークリングか赤ワインが定番のペアリングです。比較的しっとりとした若めのパルミジャーノであれば、辛口のランブルスコ(微発泡の軽やかな赤ワイン)を合わせるのが現地スタイルです。

NV シャンパーニュ・プルミエクリュ・トゥール・エッフェル
産地
フランス・シャンパーニュ地方
品種
ピノ・ムニエ
タイプ
ミディアムフル辛口 スパークリング(白)
NV ランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェートロ・セッコ
産地
イタリア・エミリア ロマーニャ州
品種
ランブルスコ・グラスパロッサ
タイプ
ライトボディ辛口 スパークリング(赤)

イギリス生まれの世界的スター【チェダー】

発祥はイングランド南西部。16世紀ごろ、農家の人たちが夏に造ったチーズをチェダー渓谷にある洞窟で保存していたところからこの名前になったと言われています。その後、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、イギリスの移民先の土地でも造られるようになり、今や世界中で様々なバリエーションのチェダーチーズが造られています。

酸味があって、手で割ってみるとモロっと崩れやすいのがチェダーの特徴。工場製のチェダーチーズはクセのないシンプルな味わいなので、合わせるワインもオールマイティに楽しめます。

伝統的な製法で造られたチェダーは、熟成が進むとナッツのような風味とコクが出てくるチーズなので、樽由来のナッツやバターの香りが漂う白ワインをぜひ。また、デートや接待の場なら、最近人気急上昇中のイギリスのスパークリングワインを合わせて、チェダーのストーリーもサラッと紹介すれば、あなたの株がグッと上がるかもしれません!

カレラ / セントラル・コースト シャルドネ 2018
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / セントラル・コースト
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムライト
NV フォーク&スプーン・スパークリング・ブリュット
産地
オーストラリア
品種
ピノ・ノワール、シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

そのままでも料理でも大活躍の【ゴルゴンゾーラ】

日本では“世界三大ブルーチーズ”として、フランスの「ロックフォール」やイギリスの「スティルトン」とともに紹介されるのが、イタリア北部のゴルゴンゾーラ村で誕生したとされる「ゴルゴンゾーラ」です。

ゴルゴンゾーラには、青カビの量も塩味もしっかりとしたピッカンテ(辛口)と、クリーミーでマイルドなドルチェ(甘口)の2タイプがあります。“クアトロ・フォルマッジョ” のピッツァなど、料理の材料でよく使われるのがドルチェですが、チーズの盛り合わせでよく出てくるのはピッカンテでしょう。

しっかりとした塩味があるブルーチーズには、甘口のワインを合わせるのがテッパン!クアトロ・フォルマッジョのピッツァにハチミツをかけて食べるのと同じ原理です。イタリアンならヴィン・サントという定番の甘口ワインがありますが、各国の貴腐ワインなどのデザートワインももちろん最高のパートナーになってくれます。

アルティミーノ / ヴィン・サント・デル・キアンティ 375ml 2011
産地
イタリア / トスカーナ州
品種
トレッビアーノ50%、マルヴァジア・ビアンカ・ルンガ50%
タイプ
白ワイン - 甘口 - フルボディ
カルム・ド・リューセック 2018
産地
フランス / ボルドー地方 / ソーテルヌ
品種
セミヨン89%、ミュスカデル6%、ソーヴィニヨン・ブラン5%
タイプ
白ワイン - 甘口 - フルボディ

ワイン通の心をくすぐる季節限定の【モン・ドール】

毎年8月15日から翌年3月15日までの限定製造。実際に私たちが購入できるのは9月10日から翌年の5月10日までとされていることから、“季節限定”と称されてワイン通にも愛されているのが、この「モン・ドール」です。

フランスのジュラ山脈(アルプスエリア)にある山がその名の由来。タイプとしてはウォッシュチーズに分類されるものの、とてもマイルドな味わいで、熟成とともに中身はカスタードクリームのようにとろりと軟らかくなり、スプーンですくって食べるのが楽しいチーズです。

こだわり派の方は同郷で造られるジュラの白ワインを合わせますが、ミルキー&クリーミーな味わいなので、ガメイのようなフルーティーで軽やかな赤ワインも合います。11月第3木曜解禁のボージョレ・ヌーボーを楽しむときのお供のチーズとしてもぴったりですね。

シャトー・ティヴァン / コート・ド・ブルイィ レ・セット・ヴィーニュ 2019
産地
フランス / ボージョレー地方 / コート・ド・ブルイィ
品種
ガメイ100%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムライト

ワインのマトリックスも参考に

5種の基本のチーズの由来や特徴とともに、どんなワインを合わせたらよいかをお伝えしましたが、自分や一緒に食事をする相手の好みがハッキリしている場合は、もちろんそれも大事なポイントとなります。

酸味フルーティ感(果実味)、渋味や苦味などのポイントから、より具体的なワインを探せるように、白・赤・ロゼ・スパークリングとワインのタイプ別のマトリックスも、最後にご紹介しておきます。

■ワインマトリックスは こちら

時間をかけて生まれる熟成感や、独特のブドウやワイン醸造法から生まれる甘味も、ペアリングには重要なポイントでしたね。まずは基本の組み合わせを試してみて、慣れてきたら、ぜひあなた好みの“チーズ×ワイン”を探求してみてください。 

 

【賞味期限】はワインにもある?未開封と開封後での保存方法の違いや飲み頃の目安も。

「そう言えば、ワインに賞味期限ってあるのかな?」

ワイン初心者なら、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。ワインも飲料なので、おいしく安全に口にすることはとても大事なこと。当然の疑問と言えるでしょう。

そこで今回は、今さら聞けない“基本のキ”の一つとして、ワインの賞味期限をテーマにお伝えします。そもそも賞味期限とは何か、保存方法も未開封と開封後では何が違うのかなどを、できるだけわかりやすく説明していきます。

そもそも賞味期限とは?消費期限との違い

ワインの話に入る前に、そもそも「賞味期限」とは何なのでしょうか。また賞味期限と似た言葉で「消費期限」という用語がありますが、その違いも併せて説明するところから始めましょう。

いずれも「袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合」ということが前提条件となり、農林水産省のWebサイトでは、以下のように説明しています。

■賞味期限
品質が変わらずにおいしく食べられる(飲める)期限のことで、スナック菓子、カップめん、チーズ、缶詰、ペットボトル飲料などに適用されています。

■消費期限
安全に食べられる(飲める)期限のことで、お弁当、サンドイッチ、生めん、ケーキなど、賞味期限の対象よりもいたみやすい食品に表示されています。

本来のおいしさを味わうための目安を意味する「賞味期限」と、衛生・安全性を保証する「消費期限」。この2つで考えれば、ワインは「賞味期限」の対象になりそうな気がするかもしれませんが、さにあらず!次にワインの特性に注目しながら、説明していくことにしましょう。

ワインに記載されるのは賞味期限ではない

実際に、ワインボトルを見てみましょう。高級ワインであろうと、カジュアルなワインであろうと、正面や裏面のラベルに記載されているもので日付らしき数字は、ヴィンテージ(原料ブドウの収穫年)だけかと思います。ましてや、複数年のものをブレンドするシャンパーニュなどは、ヴィンテージすら書かれていません。

ワインには色々なものがあり、フレッシュなおいしさが魅力のワインもあれば、何十年もの熟成を経て“飲み頃”を迎えるワインもあります。それは、ワインビギナーでも知っていますよね。

そう、ワインは“品質が変わらずにおいしく飲める期限”なんて設定できません。基本的にワインには腐るという概念がないから「賞味期限」の対象にはならないのです。

でも、腐ることはなくても、ずっと同じ香りや味わいで飲めるということではなく、劣化はしてしまいます。賞味期限や消費期限の前提条件にあった「袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合」と似たような条件が、劣化させずにワインを楽しむ場合においても重要なポイントとなります。

そこで、未開封の場合と開封(抜栓)後の場合に分けて、保存方法のポイントや飲み頃の目安を整理していきましょう。

【未開封】はいつまでおいしく飲める?

未開封のワインをおいしく飲める期間をできるだけ長く保つためには、その保存環境が大きく左右します。まずはワインを劣化させてしまう原因とそれを防ぐ理想的な保存条件を挙げてみましょう。

■光 →直射日光も蛍光灯の光も当たらない暗い場所
■温度 →13~15℃が一般的なワインの理想的な温度
■乾燥 →70~80%の理想的な湿度(コルク栓のワインは乾燥防止のため寝かせて置く)
■振動 →ボトル内で化学変化が起こるため静かな場所

近日中に飲むワインならOKなのですが、長く保存しておきたいワインの場合、頻繁に開け閉めする冷蔵庫は、光、温度、乾燥、振動と全ての面で不向きです。

それよりは、ワインボトルをラップと新聞紙で包み、寝かせた状態で段ボール箱に詰めて、玄関の靴箱の下や床下収納、クローゼットなどに入れておく方がいいかもしれませんね。(夏は厳しいですが…)

理想の条件をすべてクリアするために「ワインセラー」があります。ワイン愛好家には欠かせないものですが、初心者にはちょっとハードルが高い…。パーフェクトは無理でも、できるだけ条件に見合った場所を見つけて保存しましょう。

飲み頃についても、ワインの数だけその個性や特性がありますので、そう簡単にはいきませんが、ワイン初心者にとっては、せめて“目安”が知りたいところ。以下、カジュアルで一般的なワインの場合として参考にしてみてください。

■スパークリングワイン →なるべく早めに
■白ワイン・ロゼワイン →1~2年以内
■赤ワイン →2~3年以内

もちろん、熟成に向いた高級ワインは飲み頃が10年、20年、30年以上先というものが多くあります。そういうワインは、ぜひ「ワインセラー」の中で保存したいものです。

【開封(抜栓)後】はいつまでおいしく飲める?

未開封のワインの場合、光、温度、乾燥、振動が避けたいものとしてありましたが、開封(抜栓)後は、酸素(空気)も保存の大敵となります。

ワインは、酸素に触れることで酸化していきます。飲む時に空気(酸素)と触れ合わせて香りを引き立てるスワリングは効果的ですが、保存状態においては劣化の大きな原因となります。

「スワリング」について知りたい方は、グラスをくるくる・・・ワインの【スワリング】の意味とNG、すべて教えます!をチェックしてみましょう。

開封(抜栓)後の保存方法としてはまず、酸化を防ぐために栓をすること。コルクを戻し入れるとコルクのにおいがワインに移ることもあるので、ボトルキャップを使うのがおすすめです。

手動ポンプでボトル内を真空に近づけるキャップも、1,000円前後で買えるものが多いので、常備したいアイテム。スパークリングワインには炭酸ができるだけ抜けないように密閉タイプのボトルストッパーを使いましょう。

また「ワインって、開けたらどれくらい持ちますか?」というのは、ワイン初心者からよく聞かれる質問ですが、未開封のワイン以上に千差万別。ワインの“質”に寄るところが大きいため、回答は一概には言えませんが、開封したワインは「できるだけ早めに飲み切る」というのが大前提です。

保存場所については、常温NG。早めに飲み切るなら、雑菌の繁殖を避けるためにも、冷蔵庫保存が基本です。

その他のポイントや飲み頃の目安、「酸化防止剤無添加ワイン」や「スクリューキャップ」のワインの場合などについては、ボトル1本飲みきれない!残ったワインの保存と活用 で詳しく説明していますので、そちらもぜひお読みください。

飲み残しワインの第2の人生は、煮込み料理やサングリアで! 

「うっかり放置して、飲めないわけじゃないけれどおいしくなくなってしまった」なんていう場合は、捨てずにワインを有効活用。おいしい“第2の人生”を歩ませてあげましょう。

白やロゼなら、魚の蒸し料理や鶏肉のソテーに、赤ならビーフシチューやカレーなどの煮込み料理に活用するのが定番です。家飲みをさらにおいしい時間にしてくれるので、新たな料理に挑戦するのも一興です。

また、飲み残しワインのアレンジとして定番なのは、スペイン生まれのフルーツワイン「サングリア」。

こちらは、本場仕込みのレシピや色々な簡単アレンジも紹介した記事、カンタン&癒される “おウチでサングリア”!飲み残しワインのおいしいアレンジ術 がありますので、ぜひ一度試してみてください。

「抜栓したら、完全にブショネだった」という場合は、飲むのを諦めた方がいいですが、「少しブショネのような気もするけれど、飲めないほどではないんだよな…」なんていう場合なら、料理やサングリアへの活用は有効です。

■ブショネとは
劣化したワインを表す用語の一つで、ブション(コルク)に起因する品質劣化のこと。「コルク臭」とも言われ、「濡れてかびたダンボール」や「蒸れた雑巾」などに例えられる不快臭がする。コルクの原材料であるコルク樫に元々存在していたか、成形の過程で発生した化合物TCA(トリクロロアニゾール)が原因。

ワインは賞味期限の対象品ではありませんが、他の食品と同様、未開封であっても日々熟成変化があるもの。1本1本のワインと向き合い、その経験を積むと、おいしく飲むための見極めやコツが自然と身についていきます。

 

【超初心者限定】自分にぴったりのワイン選び!すぐに役立つ基本を総まとめ

「ワイン=難しい」「自分で選べない」「失敗したくない」と思っている超初心者のために、 “すぐに役立つ”基本情報をお届けします。

ワインには、産地や造り手のストーリーなど面白い観点がたくさんあるのですが、まずは自分好みの味わいのものを選べるかどうかが、一番のポイントですよね。そこで、ワインの味わいの特徴を軸としたQ&A形式で、ワイン選びの重要なポイントをブドウ品種に注目しながら紹介していきます。

だから、自分の好みに合うところだけ読めばOK!失敗しないワイン選びのために、役立ててください。

Q:さわやかでキリッとした白ワインが飲みたいんですが…

暑い日はもちろん、生やグリルした野菜や魚介の料理を食べるなら季節を問わず、さわやかでキリッとした白ワインが飲みたくなりますね。

「さわやかでキリッとした」というのは、言い換えれば「酸(味)が効いた」ということ。実際は造り方によっても違ってくるのですが、酸が強めなブドウ品種から造られる辛口の白ワインを選ぶのが一つのポイントです。

世界的にも有名なソーヴィニヨン・ブランやリースリング、日本の甲州などの基本、さらに編集部おすすめのワインの情報はこちら!

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】
シャープな酸の白ワインを選ぶには

Q:酸っぱいのが苦手で、マイルドな白ワインが好きなんですが…

「ワインは酸っぱいから苦手」という声を時々聞きます。白ワインは酸がキーポイントとなりますが、穏やかな酸味で心地よい飲み口の白ワインもたくさんあります。

甘口というわけではなく、マイルドで心地よい辛口の白ワイン。これも醸造方法によって様々な味わいがつくれるのですが、まずは酸味の少ないブドウ品種に注目して、ワインを選んでみると失敗は格段に減ります。

カリフォルニアなどのシャルドネや、南仏のヴィオニエ、バラやライチのような香りが特徴的なゲヴェルツトラミネールなどから造られるワインは、魅力満載。ぜひチェックを!

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】
まろやかな酸の白ワインを選ぶには

Q:渋みが苦手で、やさしい赤ワインを飲みたいんですが… 

白ワインのキーポイントは酸味でしたが、赤ワインの場合は“渋み”。そしてその正体は、原料となるブドウに含まれるタンニンという物質です。つまり、比較的タンニン含有量が少ないブドウ品種から造られるワインを選ぶことが、“渋いの苦手さん”の好みへの近道ということになります。

代表的なものは、国際的にも有名なピノ・ノワール。渋みが穏やかな分、イチゴのような繊細な香りが個性となってきます。フランスのブルゴーニュやアメリカのオレゴンといったちょっと涼しいエリアで造られるものは、アルコール度数も低めになる傾向。

そのほか、南フランスやスペインで人気のグルナッシュという品種にも注目。おすすめワインの情報も合わせて、ご紹介しています。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】
渋み少なめの赤ワインを選ぶには

Q:しっかり飲みごたえがある赤ワインを買いたいんですが…

飲みごたえがある赤ワインは、言い換えると、渋み・果実味・アルコール度数がしっかりバランスよくあるワインとなります。肉料理を食べるなら、ぜひ合わせたいタイプのワインですね。

赤ワインの“渋み”の正体であるタンニンは、実はポリフェノールの一種。そして、主に果皮に多く含まれているアントシアニンという物質とともに、抗酸化作用があります。それゆえ、色も味も濃醇な赤ワインは美容と健康の効果も期待できると言われています…もちろん飲み過ぎには注意ですが(笑)

代表的な品種は、世界一栽培されている品種のカベルネ・ソーヴィニヨン、そしてそれと双璧をなすシラー(シラーズ)。また、果皮は薄く繊細なれど「ワインの王、王のワイン」と呼ばれるイタリアの銘酒バローロの品種、ネッビオーロもタンニンでは負けていません。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】
渋みが効いた赤ワインを選ぶには

Q:料理に合うワインの選び方の基本を知りたいんですが… 

ワインと料理の相性は大事ですね。マリアージュとかペアリングという言葉も、一度は聞いたことがあるかと思います。

白ワインと赤ワインの両方の要素を持つロゼワインや、シュワシュワっとした泡の効果で口の中をリセットしてくれるスパークリングワインは、料理の相性において万能選手的なワインですが、料理とワインのおいしい組み合わせの基本方程式のようなものを少し知っておくと、白ワインと赤ワインの楽しみ方も豊かになり、失敗しないワイン選びにグッと近づきます。

酸味や渋みのことが、分かったなら準備はOK。パターン別に具体的なワインも紹介していますので、この記事もきっと役に立つはずです。

みんなが言う【マリアージュ】って何?ペアリングとどう違う?
3原則&定番も一挙紹介!

プロのワイン選びを活用して家飲みを楽しむという手段も

自分好みのワインがどんな品種から造られたものに多いのか、また、料理との合わせ方の基本が分かってくると、「ワイン=難しい」と悩んでしまう超初心者レベルからワンランクUPできると思います。

そうなると、ワインは俄然面白くなってくる!そして、自分にもっとフィットしたワインを選びたくなってくるはずです。

そんな方は家飲みでも、ワインのプロであるソムリエが厳選したワインを飲んでみるのがおすすめ。このWINE@でワインをおすすめしてくれているソムリエは、飲食の現場で活躍している屈指のメンバーばかりです。

ぜひおすすめ情報を活用して、失敗しないワイン選び、そして自分好みのワイン選びを楽しんでみてください。

好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」

ワインの知識に長けている有名ソムリエやシェフ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインを紹介。ソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。
■詳しくは こちら

 

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】重い?軽い?ワインのボディと品種の関係

過去4回、ワインの味わいの特徴から品種のハナシをしてきました。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶには

赤ワインは“渋み”の強弱、白ワインは“酸味”の強弱が、品種によって異なることをお話ししてきましたが、この“渋み”や“酸味”の違いが「ボディ」にも影響します。

ワインを選ぶ際「ボディ」というワードをよく耳にするかと思いますが、今回はその「ボディ」について、品種のハナシを中心に説明したいと思います。

「ボディ」とは?

ボディとは、ワインの味わいの幅や厚みを表現したものです。「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」と3段階で表現されることが多く、一般的には赤ワインの味わいの表現で使われます。

味噌汁と吸い物の違い、と考えるとわかりやすいでしょうか。どちらも味わいの深さはありますが、口の中に入れた時の味わいの感じ方は異なります。味噌汁は、口に入れた途端から味噌の味が口の中を支配し、徐々に出汁や味噌の発酵の香りなどが広がってきます。お吸い物は、最初のインパクトは薄いかもしれませんがじわりとうま味が広がっていく感じです。

味噌汁がフルボディにあたり、吸い物がライトボディとなります。どちらがおいしいとか、どちらが上質とか、どちらが高価とかはありません。ワインも同じです。単に味わいの“質”の違いを表現しているだけにすぎません。

ワインのボディを決める要素は、主に3つあり、「タンニン」「甘味」「アルコール度数」。この3つがどれも強いと、味噌汁のように、口の中に入れた途端にワインの味わいでいっぱいになります。どれか一つでも突出していると、その味覚が口の中で支配的になります。

逆にこの3要素が弱いと、吸い物のような感じで、最初のインパクトは強くないワイン、ということになります。

ただ、このボディには明確な基準があるわけではないので、同じワインでも飲む人によって感じ方が変わります。また、同じ品種でも、産地や造り手、ヴィンテージによっても異なりますので、あくまでも参考程度にご覧ください。

どっしり重い赤ワインを造る品種の代表①【カベルネ・ソーヴィニヨン】

フルボディのワインを造る代表品種がカベルネ・ソーヴィニヨン。逆三角形の水泳選手のような品種、ですね。この例えがわからない方は【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください(笑)

この品種は「タンニン」「甘味」「アルコール度数」ともにずば抜けて強いわけではありませんが、三者とも程よくしっかりあるので、フルボディのワインになることが多いです。特に温暖な地域で作られるものは、しっかり熟して糖度も上がるので、アルコール度数も高くなりがちで、かつ残糖感もあり、日照量の少ない地域のブドウに比べると、よりフルボディ感が強くなります。

トレフェッセン / エステート ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / ノース・コースト / ナパ
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン87%、メルロー4%、カベルネ・フラン4%、マルベック3%、プティ・ヴェルド2%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - フルボディ

どっしり重い赤ワインを造る品種の代表②【シラー(シラーズ)】

フルボディのワインを造る代表品種の2つ目がシラー(シラーズ)。野性味あふれる肉食男子のような品種、ですね。「肉食男子!?」と不思議に思った方はぜひ【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください!

この品種は、産地によってそのワインの特徴が大きく変わる品種です。フランスのローヌ地方北部のシラー主体のワインの中には、ミディアムボディに属するような味わいのものもありますが、フランスのラングドック地方のシラーやオーストラリアのシラーズは、「タンニン」「甘味」「アルコール度数」が高いものが多く、どっしり重めの赤ワインになります。

2013 シラー/ホッフキルシュ
産地
オーストラリア
品種
シラー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2012 バスケット・プレス・シラーズ/ロックフォード
産地
オーストラリア
品種
シラーズ
タイプ
フルボディ辛口 赤

どっしり重い赤ワインを造る品種の代表③【ネッビオーロ】

ワインの色は淡く、外観からはフルボディとは思えない品種がネッビオーロ。ちょい悪ダンディのような品種、ですね。またもや不思議な例えで、頭に「?」が浮かんだ方は、ぜひ自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください。

この品種は、「甘味」「アルコール度数」はそれほど高いわけではありませんが、「タンニン」だけが突出して高いので、フルボディのワインと言われています。

ネッビオーロのメイン産地はイタリア北部のピエモンテ州。比較的冷涼な地域のためブドウの糖度はさほど上がりません。ですので、含む糖分は全てアルコールに変わっているのではないかと思うくらい残糖感はなく、アルコール度数も一般的なワインの13~13.5度と言った感じです。

2014 バローロ/ピオ・チェーザレ
産地
イタリア・ピエモンテ州
品種
ネッビオーロ
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

さらりと軽い赤ワインを造る品種の代表①【ピノ・ノワール】

ライトボディの赤ワインの、一番代表的な品種がピノ・ノワール。箱入り娘の色白美人のような品種、ですね。………【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはをお読みいただくと「色白美人」の謎が解けます。

この品種は、「タンニン」「甘味」「アルコール度数」のいずれも比較的控えめ~標準的。もちろん産地にもよりますが、特にフランスのブルゴーニュ地方のピノ・ノワールは典型的です。もしかしたら、アメリカのカリフォルニア州のピノ・ノワールのワインだとミディアムボディに分類されるようなものもあるかもしれませんが、それでもミディアムボディの中でもライト寄りのワインでしょう。

ルモワスネ / ブルゴーニュ ルージュ キュヴェ・スペシャル 2016
産地
フランス / ブルゴーニュ地方
品種
ピノ・ノワール100%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムライト

カレラ / マウント・ハーラン ライアン ピノ・ノワール 2012
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / セントラル・コースト / マウント・ハーラン
品種
ピノ・ノワール100%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル

さらりと軽い赤ワインを造る品種の代表②【ガメイ】

ここまでご紹介してお気づきかと思いますが、「渋みが効いた赤ワイン」はフルボディ、「渋み少なめの赤ワイン」はライトボディであることが多いです。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはではご紹介しませんでしたが、このカテゴリに入る、多くの日本人になじみ深い品種をもう一つご紹介します。

11月の第三木曜日に解禁になり、早い人では木曜日の0時から口にするワインが「ボージョレ・ヌーヴォー」ですね。このボージョレ・ヌーヴォーが造られる品種がガメイです。

飲んだことがある人が多いと思いますので、味わいの想像はつくかと思いますが、軽やかで渋みは少なく、スルスル飲めてしまうワインです。これはできたてホヤホヤの若いワインだからではなく、ガメイがそういう品種だからです。

ガメイから造られるワインがすべてボージョレ・ヌーヴォーではなく、他の品種と同じく、数か月かけて造られ、熟成させたガメイのワインもあります。そんなワインは、ヌーヴォー(新酒)に比べるとしっかりと深みのある味わいですが、“ライトボディ”に該当するワインです。

2017 モルゴン・トラディション/マルセル・ラピエール
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ガメイ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

程よい重さの赤ワインを造る品種の代表は?

マイナーな品種を除くと、前述のカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー(シラーズ)、ネッビオーロ、ピノ・ノワール、ガメイ以外から造られるワインは“ミディアムボディ”が多いです。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはでもご紹介したグルナッシュや、イタリアの代表品種であるサンジョベーゼ、スペインの代表品種のテンプラニーリョなどは、程よい飲みごたえのある重さを感じながらも、飲み疲れるほど重すぎないワインになります。

これらの品種から造られるワインの多くは、比較的日常的に飲まれるワイン。重くもなく軽くもない、ちょうどいい塩梅が、カジュアルに飲むにはちょうどいいのかもしれませんね。もちろん、これらの品種から高級ワインが造られることもあります。そういったワインだと、フルボディに近い「タンニン」「甘味」「アルコール度数」を備えるワインもあります。

2018 ラ・ヴィエイユ・フェルム・ルージュ/ラ・ヴィエイユ・フェルム
産地
フランス・コート デュ ローヌ地方
品種
グルナッシュ カリニャン サンソー シラー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2018 セルメーニョ・ティント/ボデガス・コビトロ
産地
スペイン・トロ地区
品種
テンプラニーリョ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

白ワインのフルボディってどんなもの?

「ボディ」は主に、赤ワインに使われる言葉ですが、白ワインに対して使うこともあります。白ワインに「タンニン」はほとんどないので、「甘味」「アルコール度数」によって判断されます。

フルボディの白ワインには、温暖な地域で作られたシャルドネのワインで、樽熟成をしたものが該当します。口に含むと味わいの厚みを感じますが、気候の影響でブドウの糖度が上がりやすいのは、白ブドウでも一緒。甘味が果実味となって味わいの厚みを作り、木樽から抽出されるタンニンもそれに加わります。

また、【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介したゲヴュルツトラミネールヴィオニエなど「酸の目立たないワインを造る品種」も、フルボディのワインになります。アルコール度数もそこそこ高くなりがちで、何より甘味を感じる果実の凝縮感を楽しめるワインです。

2015 カレラ・マウント・ハーラン・ヴィオニエ
産地
アメリカ・カリフォルニア州
品種
ヴィオニエ
タイプ
フルボディ辛口 白

ライトボディの白ワインには、ソーヴィニヨン・ブランやミュスカデなど、軽やかで爽やかなものが該当します。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介した品種の中でも、ドライな味わいのワインがライトボディになります。やや果実味はありますが、辛口のリースリングもライトボディになるものが多い印象です。

クロティルド・ダヴェンヌ / サン・ブリ 2018
産地
フランス / ブルゴーニュ地方 / グラン・オーセロワ / サン・ブリ
品種
ソーヴィニヨン・ブラン100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムライト

ミディアムボディの白ワインは、冷涼地域、例えばブルゴーニュの北部のシャルドネが最も当てはまります。比較的温暖な地域のソーヴィニヨン・ブランも、果実味とアルコール度数が高くなりがちなので、ライトと言うよりミディアムかもしれません。

見た目と味わいは、だいたい比例する

実際にグラスに注がれたワインを見て味わいを想像する場合は、赤でも白でも、色が濃いワインはフルボディだと思っていいでしょう。色の濃さと味わいの濃さはほぼ比例します。たまにネッビオーロのように、淡い色合いなのにフルボディということもありますが例外的。

ただ多くは、ボトルを見て選ぶかメニューに載っている文字から選ぶ場合がほとんどです。ボトルの多くは黒や緑の色のついた瓶なので、中のワインの色まではわかりません。そんなときは、今回ご紹介した“品種”を参考に、好みの味わいや今日の気分や食べる料理に合わせて選んでみてくださいね。

 

【自然派ワイン】って何?今さら聞けないナチュラルワインの基本とおすすめ店5選

自然派、ナチュラル、オーガニック、ビオ、有機、無農薬、無添加…なんとなく体に良さそうな言葉が、食品はもちろん、化粧品やアパレルの商品にも添えられています。

大量生産・大量消費の時代から、サステナブル(持続可能)で安心安全なものを求める時代へと移った今、ワインの世界でもこうした言葉が不可欠となっていて、販促の“キメ言葉”としても多用されるようになりました。

でも、似たような言葉がいろいろあって混乱しがち。すべての違いを細かく理解して、本質を見極めるは大変なので、まずは“ざっくり”と違いを把握し、全体像を掴むこと。今回はそこを目指しましょう。

そして、そんな“ナチュラル系”のワインを楽しみながら、より深く理解していくためにぴったりの5軒を併せて紹介します。まずはこの記事で基本のキを学び、お店へ!それぞれの店のソムリエや店主からは、リアルでより深い学びが得られるはずです。

自然派ワインとは?まずは全体像をつかもう!

「自然派ワイン(ヴァン・ナチュール、ナチュラルワイン)」と言っても、そもそも、何が自然で何が自然ではないのか、どこまでが自然なのかという考えは人それぞれで、とても曖昧。明確な定義をすることは難しいということを、まずは理解しておきましょう。

その上で、多くの「自然派ワイン」にみられる具体的なポイントを挙げると、以下のようなものがあります。

ブドウは手摘みで収穫
天然酵母を使用
・茎なども入れた全房発酵や白ブドウでも果皮ごとの醸し
酸化防止剤などは無添加
・仕上げの清澄や濾過はしない(ノン・コラージュ、ノン・フィルター)

とは言え、こうした“自然派・ナチュラルさ”のある製法も、絶対的なものではありません

■ワインの醸造方法については、「ワインの造り方から見る、色合いと味わい~番外編・醸造工程を“もうちょっと詳しく”学ぼう!」を参照

また、“自然派・ナチュラルさ”の主なポイントが原料となるブドウの栽培にあるのが、オーガニック、有機、ビオ(BIO)、無農薬といったワイン。オーガニック、有機、ビオは基本的には同じで、殺虫剤、害菌防止剤、除草剤などの農薬や化学肥料を使用しない農法で栽培されたブドウで造られたワインに用いられ、EUやその他の国などには、それぞれ専門の認証機関があり、規定も設けられています。

※Agriculture Biologiqueの認証マーク:フランス政府の厳しい基準をクリアした食品にのみ記載が許される

そのほかに、無農薬ではなく、減農薬(リュット・レゾネ)というものもあり、また、オーガニック(有機、ビオ)でさらに月の満ち欠けなどの天体の動きに影響されるといった思想を取り入れた農法、ビオディナミ(バイオダイナミクス)も、ナチュラルなワインの重要なキーワードです。

フランスでは、ヴァン・ナチュールに新たな動き!

定義が曖昧な自然派ワインですが、フランスでは2020年3月に「Vin Methode Nature」という認証制度が誕生。自然派ワイン(ヴァン・ナチュール)の生産者組合「Syndicat de défense des vin naturel」の取り組みによって、フランスにある国立原産地名称研究所(INAO)と競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF)が新しい規定とロゴを認定しました。

ただし、認定された生産者は、50軒程度(2020年4月時点)。ビオディナミの認定取得者で、酸化防止剤の亜硫酸(瓶詰め時に30mgまで)の使用以外はいかなる添加物もNGなど、厳しい規定があります。とは言え、そもそも“我が道をゆくアウトロー”が多い、ヴァン・ナチュールの世界…今後どれだけ浸透していくか要注目です。

自然派ワインはクサい!?

自然の力に極力委ねながら良質なワインを安定的に造ることは、簡単なことではありません。人為的なものを排除することに注力するあまり、醸造所の環境が汚染されたり、醸造上の欠陥が生じたりすることも。その結果、ワインに馬小屋臭やネズミ臭と表現される不快臭が出ることがあります。

そうした不快臭を自然派ワインの特徴と勘違いして「これこそ自然派!このクサいのがいいんだよ」なんて言うマニアが稀にいますが、これは明らかに間違っています。

化学肥料や添加物をすべて絶対悪と考えるのも極端な話で、テロワールや造り手の考えによって執るべき最善策が変わってきて当然です。また、あえて“ナチュラル感”のある言葉を謳っていなくても、自然な造りのワインは世の中にたくさんあります。むしろ、自然な造りじゃないワインの方が、イマドキは少数派と言えるかもしれません。

自然派ワインを理解するためには、適切なアドバイスをくれる店で飲むことも大事。おいしく学んで楽しめる、おすすめの5軒を次に紹介しましょう。

【apéro wine bar aoyama】気軽に楽しむ、フランスのヴァン・ナチュール

photo:店舗写真

「apéro wine bar aoyama」は、外苑前駅から歩いて6分ほど。フランスのアペリティフスタイルがテーマで、料理は、スタッフが目利きをした国内外の食材を使い、フランスの家庭料理をベースに仕上げたものばかり。随所にセンスが光る一軒です。

店内にはガラス張りのワインセラーもあり、「私たちが厳選したフランス産のナチュラルワイン、ビオディナミワイン、オーガニックワインを、ぜひともご堪能ください」との言葉通り、多種多様な自然派ワインが楽しめます。

“ビッグボス”こと、店主のギヨーム・デュペリエさんがいれば、ぜひカウンター席へ。日本語も得意なので、ヴァン・ナチュール初心者にも、やさしく丁寧に教えてくれるはずです。

apero. wine bar aoyama
  • 住所:〒107-0062 東京都港区南青山3-4-6 Aoyama346 3F
  • TEL:03-6325-3893

【pipal】自然派ワイン好きが集う、大人の遊び場ビストロ

photo:店舗写真

自家製パン&ワインが楽しめる店5選でも登場するこの奥渋谷の店で提供するワインは、すべてヴァン・ナチュール(自然派ワイン)。ワインを農作物だと捉え、テロワールを大切に考え、体にやさしくおいしいワインを普段使いで気軽に楽しめるようにと、ソムリエが探し続けてセレクトしています。

グラスワインも豊富で、利きワインセットの用意もあるそう。そんな自然派にこだわりがあるここは、パン以外にも自家製に注力していて、料理のソースに使うフォン(出汁)、ベーコン、ソーセージ、パイ生地にいたるまでが自家製です。

安心できる有機野菜を使った手づくりの料理は、家庭的なフレンチをベースに、和の技法も織り交ぜたもの。「おいしいフレンチとワインで楽しむ、大人の遊び場ビストロ」を謳う、宇田川町の一軒です。

pipal
  • 住所:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町42-11 1F
  • TEL:03-3464-3857

【SOYA】BIOにとことんこだわってみたい方は必訪!

photo:店舗写真

こちらも自家製パン&ワインが楽しめる店5選で登場する一軒。昭和レトロな雰囲気の建物を改装したというこの店は、東銀座からも新富町からも近い場所にありながら、表通りから少し外れていることもあって、とても落ち着いた雰囲気。銀座コリドー街から移転してきたという、ナチュラルイタリアンです。

「科学的なアプローチをせず、自然な造りのワインと産地と季節を感じる食材を使用した、カジュアルなイタリア料理屋」と謳うここは、自然派ラヴァーにはたまらない店と言えるでしょう。

ワインは世界中の自然派の生産者のワインが豊富に揃っていますが、ワインリストはなし。好みを伝えるとベストなものを選んで提案してくれます。グラスで楽しめるものも多数あり!生産者やインポーターとのコラボイベントも時々開催しているので、ワインの造り手のことも尋ねてみると、いろいろ教えてくれるに違いありません。

SOYA
  • 住所:〒104-0061 東京都中央区銀座1-22-12
  • TEL:03-6263-2335

【CANTERA】全粒粉ピッツァ&ナチュラルワインを堪能

photo:店舗写真

原宿の神宮前交差点から渋谷に向かう途中にある「Q plaza HARAJUKU」の9Fにあるこのピッツェリアは、エリア随一の眺望を誇る「空中テラス席」もある快適な空間。

店内フロアには、活気漂う厨房とナポリから直輸入された大きな薪釜もあり、北海道産小麦「春よ恋」を使用した全粒粉ピッツァと自然派ワインが堪能できます。

ワインは、ソムリエ厳選のナチュラルワイン。酸化防止剤や化学肥料を抑え、ブドウの生命力に問いかけながら醸されたワインが並びます。栄養価が高い「窯焼きオーガニックピッツァ」を食べながら、じんわりと体に滲み入るようなワインを…ボトルはもちろん、グラスワインも多く取り揃えています。

CANTERA
  • 住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-28-6 Q plaza HARAJUKU9F
  • TEL:03-6433-5537

【代官山食堂 Q’z】圧巻のラインナップとともに、ソムリエに学ぶ

photo:店舗写真

代官山駅から徒歩5分。専用階段で2階に上がると広がる、ちょっとおしゃれな大人の食堂です。店名に“食堂”とついていますが、特に力を入れているのが「ジビエ」。鹿、猪、カンガルー、熊など、季節に関係なくその時々で最適なものを仕入れ、グリルやハンバーグ、またイタリアンベースの料理で楽しむことができます。

そんなジビエ料理に合う自然派ワインは、常時グラス10種、ボトル100種以上。難しく考えることなくシンプルに「おいしい!」と感じるワインを世界各国から集めているとのこと。また、ワインは窒素を入れる特殊な機械も活用して管理しているので、お客様になるべく良い状態のワインを提供することにも注力しています。

店の奥にはゆったりとした個室があり、そこではシェフがこだわり抜いたジビエをメインとしたコース料理と自然派ワインを楽しめるそうで、1日2組限定。予約制の特別な空間で自然派ワインを堪能することもできます。

代官山食堂 Q'z
  • 住所:〒150-0034 東京都渋谷区代官山11-12 日進ヒルズ代官山2F
  • TEL:03-5422-3654

 

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶには

オース

「ワインは酸っぱいから苦手」という声を時々聞きます。ワインは、酒石酸・リンゴ酸・クエン酸という3つの酸を含むブドウが原料なので、酸のないワインはありません。が、穏やかな酸味で心地よい飲み口のワインはたくさんあります。

酸味を敏感に感じる方は、前回【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介した品種は避けるとして(笑)、今回ご紹介する、酸味の少ないブドウ品種・ワインを選んでみてはいかがでしょうか。

程よい酸のあるワインを造る品種の代表①【シャルドネ】

クラスの中で、派手めなグループの中でも楽しそうに振る舞うし、地味で真面目そうなグループに入ってもなじんでいる。自然に誰とでも仲良くなれる協調性の高い女の子で、当然クラスの人気者。…そんなイメージを抱かせる品種がシャルドネです。

言わずと知れた白ブドウの代表品種。ワインを知らない人でも大概知っている超有名品種。

ブドウ栽培可能地域であれば、ほぼどこでも作れるという環境適応能力抜群な品種。なので、世界中で栽培されているブドウです。ただ、生産地域の土壌や気候によって、キャラクターを変える変幻自在ぶり。

例えば、ブドウ栽培可能地域の北限に近いフランス・ブルゴーニュ地方のシャブリ地区では、その土壌の影響もあって、比較的キリリとしたワインになります。逆に日照時間が長く、雨も少ないアメリカ・カリフォルニア州では、洋梨やパイナップルを思わせるフルーツ感たっぷりのふくよかなワインになります。

原産地は、ブルゴーニュのマコネ地区と言われていたり、はたまたレバノンと言われていたり、未だに定まっておらず研究中ですが、世界のトップ生産量にして全生産量の25%を占めるのがフランス、主にブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方になります。

実はこのシャルドネ、本当は酸度の高いブドウなんです。ブドウの酸は、熟す直前が最も高く、そこをピークに熟度が増すにしたがって酸度が下がっていくもの。シャルドネももちろん、その例に洩れませんが、その酸度が下がりにくい品種なんです。

ですが、ワインを醸造する過程で、シャープな酸をまろやかにする工程が入ることが多々あります。この工程は、主に赤ワインの醸造の際に行われる“マロラクティック発酵(MLF)”というもの。白ワインで意図的にMLFを行うのはシャルドネだけ、と言っても過言ではありません。

MLFは、乳酸菌の働きにより、ブドウに多く含まれるリンゴ酸を、よりまろやかな酸である乳酸に化学変化させる醸造工程。もちろんシャルドネでもMLFをしないワインもありますが、ごくわずか。そんなワインはシャープな酸が楽しめ、すっきりとした味わいです。

ですが、多くのシャルドネのワインは、MLFしています。“シャルドネ王国”のブルゴーニュ地方では、していないワインを見つけるのが難しいくらい。ですので、ブドウとしては酸度が高めな品種ですが、ワインになるとまろやかな酸になるので「程よい酸のあるワインを造る品種の代表」としてご紹介しています。

ちなみに、マロラクティック発酵については、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~番外編・醸造工程を“もうちょっと詳しく”学ぼう!でも書いていますのでご覧ください。

ドミニク・ラフォン / ブルゴーニュ シャルドネ 2013
産地
フランス / ブルゴーニュ地方
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムライト
フィリップ・ブズロー / ムルソー レ・グラン・シャロン 2018
産地
フランス / ブルゴーニュ地方 / コート・ド・ボーヌ / ムルソー
品種
シャルドネ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

程よい酸のあるワインを造る品種の代表②【セミヨン】

はちみつがたっぷりかかった、大好きなパンケーキを目の前にして嬉しそうににんまり。好きな色はピンクやクリーム色など明るいパステルカラー。ゆるフワな印象のかわいらしい女の子。…そんなイメージを抱かせる品種がセミヨンです。

マイナー品種かもしれませんが、この品種をメインに造られるワインには、世界三大貴腐ワインの筆頭になるワインがあります。

貴腐ワインとは、極甘口のデザートワインです。貴腐菌がブドウに付いて果皮に穴が開き、そこから水分だけが抜けて凝縮した糖分が残った果肉を搾ってワインにします。フランス・ボルドーのソーテルヌが最も有名な貴腐ワインの産地。貴腐ブドウとなったセミヨンを主体に、ソーヴィニヨン・ブランやミュスカデルというブドウをブレンドして造られます。

ソーテルヌ以外のボルドーでは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランをブレンドした辛口ワインが造られます。辛口のワインでも、はちみつ、もしくは花の蜜のような香りに、洋梨や蜜の入った赤いリンゴ、熟成したワインだとドライフルーツのような香りが漂います。香りは甘やかですが、味わいは甘くなく、まろやかな酸が最後引き締めます。

ボルドー以外で有名な産地は、オーストラリアのシドニーにほど近い、ニューサウスウェールズ州のハンター地区。「ハンター・セミヨン」と呼ばれるほど、ボルドーとはまた違った造り方で、現地で親しまれているワインです。

ボルドーでは、酸度の低いセミヨンの味わいのバランスをとるために、酸度の高いソーヴィニヨン・ブランなどとブレンドします。一方ハンター地区では、セミヨン100%で造るのが伝統的。そのためブドウは、酸度が下がる前に収穫し、適度な酸があるので長期熟成も可能になり、10年前後熟成させたワインもあります。

産地によって異なる表情を見せるセミヨンですが、品種の特徴はどちらもしっかり現れています。蜜っぽい香りに穏やかな酸。親しみやすい味わいです。

2015 エール・ド・リューセック
産地
フランス・ボルドー地方
品種
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

2017 ソーヴィニヨン・ブラン・セミヨン/ヴァス・フェリックス
産地
オーストラリア
品種
セミヨン、ソーヴィニョン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

程よい酸のあるワインを造る品種の代表③【トロンテス】

本当はどこぞの令嬢なのに、人を楽しませることが得意で大好き。外見からはお嬢様風情は全く感じず、いつも陽気で、大きな声で笑っている。…そんなイメージを抱かせる品種がトロンテスです。

2010年前後、アルゼンチンからの輸入量が増えて、日本でも話題になったブドウ品種。アルゼンチンといえば、黒ブドウの“マルベック”が有名ですが、「白ワインも“アルゼンチンならでは”のワインがあるんだよー、おいしいよー」と世界に向けてPRしたのが、このトロンテスです。

アルゼンチンが原産で、アルゼンチン以外ではほとんど生産されていない品種。とにかく華やかで豊かな香りが特徴的で、白桃や白バラ、ジャスミン、パイナップルにオレンジの皮といった、複雑な香りが楽しめます。

味わいも、ジューシーでフルーティ。産地は比較的標高がある所なので、酸はそこそこありますが、果実の凝縮感が前面に出ているので、シャープさは感じないでしょう。食用のマスカットを思わせる風味もあるので、親しみやすいワインです。

酸が目立たないワインを造る品種の代表①【ゲヴェルツトラミネール】

朗らかに微笑み、人当たりも柔らかく、特に同性から慕われる人柄。一度出会ったら忘れがたい印象を与え、そのたたずまいからも高貴さがしっかり漂う。…そんなイメージを抱かせる品種がゲヴェルツトラミネールです。

カタカナで書かれても、なかなか発音が難しいこの品種名は、「スパーシーなトラミナー」という意味の品種名。Gewürz(ゲヴェルツ)がドイツ語で「スパイシー」とか「香辛料」という意味で、Traminer(トラミネール)がイタリア北部原産のトラミナーという品種名からきています。

「スパイシー」というその名の通り、白コショウのような香りがほんのりありますが、ゲヴュルツトラミネールといえば、その特徴は何といっても“ライチの香り”。ワインの香りの表現は、慣れていない人には若干わかりにくいものですが、ゲヴュルツトラミネールの“ライチ”はおそらく誰もがわかる香りでしょう。はっきりと“ライチ”なんです。

ライチの他に、白バラやユリ、マスカットやパッションフルーツの香りが混ざり、その香りの量は圧倒的。…そう、前段でご紹介した「トロンテス」に近しい特徴を持つ、アロマティックな品種です。

トロンテスよりも豊かな香りのワインが多く、香りに輪郭を感じます。ジューシーな味わいはトロンテスと同程度ですが、酸はよりまろやか。口当たりはやさしく、そして香りに癒されるので、女性からの人気が高い品種です。

ルーツはイタリア北部の「トラミナー」と言われていますが、ゲヴュルツトラミネールの生産地域としてはフランスのアルザス地方が圧倒的に有名で生産量も多い。栽培が難しく、気候を厳密に選ぶため、限られた地域でしか栽培されていません。

そんな品種ですが、実は日本の北海道でも栽培されているんです。冷涼で雨が少ない地域が向いていると言われるゲヴュルツトラミネール。個性的で強い香りは、料理とのペアリングは「どうなんだろう?」と思われがちですが、中華やエスニックなどの香辛料の香りが立つ料理との相性は抜群です。

2014 ゲヴェルツトラミネール・エステート/ファミーユ・ヒューゲル
産地
フランス・アルザス地方
品種
ゲヴェルツトラミネール
タイプ
ミディアムフル辛口 白

酸の目立たないワインを造る品種の代表②【ヴィオニエ】

華やかなドレスを着て舞台に立ち、劇場の隅々まで澄んだ歌声を響き渡らせるオペラ歌手。しなやかな肉体は、その歌声を響かせるための装置。ちょっとでもどこかの調子が悪いと、思った通りの歌にならなくなってしまうので、常に厳密に厳格に管理されている。…そんなイメージを抱かせる品種がヴィオニエです。

出身は、フランスのローヌ地方の北部。程よく温暖な地域で作られる品種らしく、厚みのある味わいと穏やかな酸が特徴。しかしそれよりも何よりも、このヴィオニエも、白桃やアプリコット、ブラッドオレンジやキンモクセイなどの豊かで華やかな香りが特徴です。

比較的酸が穏やかな品種は「アロマティック品種」と呼ばれるものが多い印象。ただ、前段のゲヴュルツトラミネールに比べると、豊かな香りではあるけれど繊細。醸造途中で酸素に触れる量が多いと香りが飛んでしまい想定していたワインにならなかったりと、ブドウ栽培だけではなく醸造工程も非常に難しい品種なんです。

メイン産地は原産地のローヌ地方の北部。ヴィオニエ100%のワインを造りますが、実は、この地で造られる、シラー主体の赤ワインにブレンドされることもあるんです。ヴィオニエを20%程度ブレンドすることによって、どっしりとしたシラーの赤ワインを、エレガントで上品なワインに仕上げます。シラーに関しては【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください。

他にも、フランスでは、さらに南部のラングドック地方でも栽培され、オーストラリアやアメリカなど、割と温暖な地域に広がっている品種です。

フランソワ・ヴィラール / レ・コントゥール・ド・ドポンサン ヴィオニエ ヴァン・ド・ペイ デ・コリンヌ・ローダニエンヌ 2017
産地
フランス / ローヌ地方 / 北ローヌ / デ・コリンヌ・ローダニエンヌ
品種
ヴィオニエ100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

産地や気候、造り方や飲む人の体調によっても変わる“酸”や“酸味”

2回にわたって、白ワインの酸の強弱のハナシをしてきました。品種ごとに比較的“高めの酸”“低めの酸”というのは、あることはありますが、赤ワインの“タンニン”と違って“酸”は、産地や気候、造り方に依存することが大きい成分です。

広く栽培されている品種では、同じ品種でも、冷涼な地域の方が温暖な地域よりも酸が高くなります。その最たる例が「シャルドネ」です。シャルドネは、北緯48度にあるシャブリ地区から、北緯32度にある日本の熊本県でも作られています。緯度だけで冷涼か温暖かは図れませんが、これだけ異なる地域で作られるわけですから、ワインの味わいが異なるのも不思議ではありません。

気候が酸度に影響する理由は、ブドウに豊富に含まれるリンゴ酸は、高温により分解されるため。温度と酸度が関係するということは、年によっても変わるということ。ブドウが育成する夏の時期が、猛暑の年と冷夏の年でも酸度が変わるのです。

造り方というのは、シャルドネの項でもお話しした「マロラクティック発酵(MLF)」が代表的な例です。意図的にMLFを行うのはシャルドネぐらい、とお話ししましたが、乳酸菌は自然界に存在しますので、意図していなくてもわずかなMLFが行われることは度々あります。

そして酸味は、飲む側の体調によっても感じ方が変わります。肉体的に疲れている時、人は酸味を感じにくいようです。ですので、疲れている時に「おいしい!」と思って飲んだシャープな酸を持つ白ワインが、疲れていないときには「酸っぱすぎる!」と感じることもあるかもしれません。

そんなことも参考にしながら、おいしいワイン選びをしてみてくださいね。

 

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには

前回までは、赤ワインを造る黒ブドウの品種のハナシをしてきました。

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みの効いた赤ワインを選ぶには

今回は白ワインを造る白ブドウのハナシです。

赤ワインを選ぶときに一番ポイントになるのは「渋み」だと思いますが、白ワインには渋みはほとんどありません。代わりに一番大きな特徴が「酸」です。

「酸」は「酸味」と置き換えて解釈できます。渋みとはまた違った、口の中がキューっと引き締まるような味覚です。レモンを想像しただけで唾液がたまる、あの感覚。

日本人は酸味が苦手だとよく言われます。ある人は、「苦手」というより「酸を感じる感覚が鋭い」と言っていました。この感覚の鋭さは人によっても異なるところなので、酸の強弱でワイン選びができるような、品種のハナシをしたいと思います。

今回は、酸の強めな品種をご紹介。有名どころから、なじみは薄いかもしれないけど、この機会にぜひ覚えてほしい品種まで、7種類ご紹介します。

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表①【ソーヴィニヨン・ブラン】

爽やかな初夏の青空のもと、視界一面の草原の中を元気に走る少女。新緑のフレッシュな香りと白いドレスが、彼女のピュアな心を表している。…そんなイメージを抱かせる品種がソーヴィニヨン・ブランです。

“夏に飲みたいワイン選手権”があったなら、間違いなく1位2位を争うワイン。レモンやライム、グレープフルーツと言った柑橘系の香りに、草原の草やハーブと言った青っぽい香りが混ざった、爽やかな芳香。飲み口はすっきりしていて、溌溂とした酸が心地良いワインです。

フレッシュで爽やかさが持ち味のワインを造る品種なので、熟成はさせない早飲みタイプのワインが多いですが、カリフォルニアなどでは樽熟成のお化粧を施した、リッチなワインもあります。

ソーヴィニヨン・ブランの原産地はフランスのボルドー。黒ブドウの世界的な代表品種とも言えるカベルネ・ソーヴィニヨンの“親”と言われています。

そんなボルドーでは、セミヨンという品種とブレンドしたワインが造られることが多く、草原を元気に走り回る少女と言うより、草原の中にある大木の木陰で、シロツメクサの花冠を作る少女、と言った印象のワイン。丸みのある爽やかさが楽しめます。

(シュヴェルニー城)

フランスのもう一つの有名産地は、フランスの内陸からボルドーの北部にある河口へと流れるロワール川流域の一帯。“フランスの庭”と呼ばれるくらい、森が広がり古城が立ち並ぶ、風光明媚な地域です。

ここでは他品種とはブレンドせずに、単一でワインが造られることが多いです。ボルドーよりも冷涼な地域になるので、グレープフルーツと言うよりはレモンやライムの香りが印象的で、酸もよりピチピチしています。

一方、ヨーロッパ以外でソーヴィニヨン・ブランの世界的名産地として名を馳せているのが、ニュージーランド。特に、マールボロ地区のワインは有名です。その香りは、気候の影響から、柑橘系と言うよりはパッションフルーツや洋梨のようで、ハーブのような青っぽい香りもより強く出ています。

ボルドーに強い影響を受け、ボルドー品種の栽培が盛んなチリも有名産地。チリ国内で栽培される白ブドウ品種のNo.1の生産量を誇ります。果実よりもハーブの香りの方が前面に出ているワインが多い印象です。

草やハーブと言った香りのあるソーヴィニヨン・ブラン。生野菜のサラダを始め、鮮魚との相性もバッチリです。

2018 サンセール・ラ・ムシエール/アルフォンス・メロ
産地
フランス・ロワール地方
品種
ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白
キムラ・セラーズ / マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン 2021
産地
ニュージーランド / マールボロ地方 / アワテレ・ヴァレー
品種
ソーヴィニヨン・ブラン100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表②【リースリング】

ツンと澄ました高嶺の花。そつなく仕事をこなす“バリキャリ女子”。サバサバした性格で、時々辛辣な言葉も吐くけれど、意外と繊細な一面も。気を許した人の前では、デレっと甘えることもある。…そんなイメージを抱かせる品種がリースリングです。

リースリングから造られるワインは、甘口から辛口まで、味わいのバラエティがとても豊富

辛口タイプは、切ったばかりのリンゴや洋梨、グアバの香りを持ち、レモンのような鋭い酸味が最大の特徴。

甘口タイプは、アップルパイや桃のコンポートといった、品よく甘さを凝縮させた香りがあり、口当たりは、爽やかな甘さに癒され、程よく味わいを引き締める酸の余韻が続きます。酸がなければただ甘ったるいだけのリキュールのようなお酒になってしまいます。酸がしっかりあるからこそ、甘口ワインを造ることができる、とも言えます。

また、「やや辛口」や「やや甘口」といったワインも造られますが、これは、甘さを残すことでリースリングが持つ酸を引き立てています。

(mosel)

世界のリースリングの約半数を造る産地がドイツ。フランスとの国境にもなっているライン川の上流が原産地とされていて、対岸のフランス・アルザス地方においても、ドイツ、特にモーゼルとラインガウにおいても、リースリングは高貴で重要な品種とされています。

ドイツとフランスのアルザス地方がリースリングの二大産地として有名ですが、近年メキメキと評価を上げている産地が、オーストラリアのクレア・ヴァレー。それほど冷涼な気候でもない地域ですが、標高の高さと昼夜の寒暖差のおかげで、世界トップクラスの品質のワインを生み出しています。

産地によっては、石油のようなオイル香やミネラルなど鉱物を連想させるタイプのものもあります。独特な芳香ですがこれもまたリースリングの一つの特徴でもあります。

ポール・ブランク / リースリング シュロスベルグ グラン・クリュ 2016
産地
フランス / アルザス地方
品種
リースリング100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムフル
2018 トラディッショナル・リースリング/パイクス・ワインズ
産地
オーストラリア
品種
リースリング
タイプ
ミディアムライト辛口 白

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表③【グリューナーヴェルトリーナー】

(hallstatt)

近年、日本でも人気が高まりつつある品種ですが、まだ「聞きなれない品種名だな」と思う方が多いかもしれません。オーストリアを代表するブドウ品種で、世界の生産量の7割近くをオーストリアで栽培しています。

日本でも人気になりつつある理由は、繊細な味わいの和食との相性が抜群だから。寿司屋などで度々見かけるようになりました。お塩でいただく天ぷらともベストマッチなワインです。

グリューナーヴェルトリーナーのワインの特徴は、何といっても酸の強さ。リースリングに匹敵する酸を感じますが、香りはより繊細で、小さな白い花やリンゴを思わせる香りに、白コショウを感じさせるスパイス感もあります。

自己主張は控えめだけど、すっと1本筋の通った芯があり、素材の風味を活かした繊細なお料理に寄り添ってくれる。リースリングや甲州が好きな人は、きっとグリューナーヴェルトリーナーも気に入るでしょう。もしどこかで見かけたら、試す価値アリなワインです。

2014 バイオダイナミック・グリューナー・フェルトリーナー/ステファノ・ルビアナ
産地
オーストラリア
品種
グリューナー・フェルトリーナー
タイプ
ミディアムライト辛口 白

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表④【アルバリーニョ】

こちらも近年、日本でじわじわ人気になりつつある品種です。スペインの北西部原産の品種で、主な産地もスペイン北西部のガリシア州やポルトガルの北部。いずれも大西洋に面した地域で主に栽培されています。

海風の影響を受けているからか、シャープな酸に加えて、なんとなく塩味を感じるワイン。ドライな印象を与える味わいですが、それに反して香りはジューシーな桃を連想させます。この華やかで芯のある風味から、スペインでは高貴な品種として扱われています。

日本で人気になりつつある理由は、グリューナーヴェルトリーナー同様、和食との相性の良さです。原産地スペインやポルトガルでもそうですが、魚介料理とともに食される、まさに「海のワイン」。

そして、実は日本でも栽培されている品種です。産地はやはり海のそば。新潟県の日本海に面した砂地エリアが、とくに有名な産地です。

2019 ソアリェイロ・アルヴァリーニョ/ソアリェイロ
産地
ポルトガル
品種
アルヴァリーニョ
タイプ
ミディアムライト辛口 白

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表⑤【ミュスカデ】

ミュスカデも、もしかしたらなじみのない品種かもしれません。しかし、知っていて欲しい理由が2つあります。その1つが、日本でもよく食される“生カキ”との相性の良さ

「とあるグルメ漫画のおかげ」と言われていますが、日本では「カキにはシャブリ」が定番ですね。でもフランスでは、シャブリよりもミュスカデの方がメジャーな組み合わせ。なぜならミュスカデは、カキの産地にほど近い、大西洋近くで造られているワインだからです。ソーヴィニヨン・ブランの項でもご紹介した、古城が立ち並ぶロワール川の河口付近がメイン産地です。

そして、シャブリに比べてリーズナブル!フランス人もカキは大好きで、牡蠣小屋のようなアウトドアで、飽きるまで食べ続けるには、気取った高価なワインは似合いません。そして、そんな風にカキを食べるのが一般的。

ミュスカデも酸味の強い品種です。柑橘系の香りとシンプルでニュートラルな味わいは、唸るぐらいに、レモンを搾った生カキと抜群の相性です。

知っていてほしい理由の2つ目は、次に紹介する日本固有品種「甲州」に近しい品種だからです。

ランドロン / ミュスカデ セーブル・エ・メーヌ シュール・リー レ・ウー 2018
産地
フランス / ロワール地方 / ペイ・ナンテ地区
品種
ムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)100%
タイプ
白ワイン - 辛口 - ミディアムライト

シャープな酸のあるワインを造る品種の代表⑥【甲州】

我らが日本代表の甲州。実はミュスカデと甲州は特徴のよく似た品種で、ソムリエ試験のテイスティング問題では、間違えやすい品種なんです。

甲州もまたニュートラルでシンプル、そして際立った酸があります。普通に造るとあまりにもシンプルなワインになるので(それはそれで、すっきりと飲めてお料理を選ばないワインとして優秀なんですが)、“シュール・リー”と言う製法で造られることが多々あります。

シュール・リーは、ミュスカデのワインを造るロワール地方の伝統的な製法です。アルコール発酵後すぐに澱引きせず、澱から、アミノ酸などの旨味成分を引き出す製法で、ミュスカデと、この甲州以外ではほとんど使われない。品種の特徴が似ているミュスカデと甲州だからこそ、の製法とも言えますね。

カキつながりで言うと、日本の生カキにはミュスカデもいいですが甲州が断然おすすめ!もちろん生カキ以外にも、和食との相性は言わずもがな、です。

ワインの酸は、必要不可欠の大事な要素

ブドウに含まれる酸(有機酸)は主に酒石酸、リンゴ酸、クエン酸。赤ワインを造る黒ブドウにもこれら3種の有機酸は含まれますが、白ブドウの方が含有量は多いです。

赤ワインはタンニンが、酒質の安定に大きく寄与することを【自分好みのワインを知るための品種のハナシ Vol.2】渋みの効いた赤ワインを選ぶにはでご紹介しましたが、白ワインにはタンニンがほとんどありません。白ワインの酒質を安定化させるのが有機酸になります。

一般的に有機酸は抗菌作用が高いと言われますが、ワインでも一緒です。その理由は、多くの細菌は低pH(高酸度)の中では生存できないからです。白ワインは赤ワインほど長期熟成には向きませんが、それでも10年ぐらい熟成できるものもあるのは、有機酸が豊富に含まれているからです。

いやいや、それより何より、透き通ったきれいな酸が効いているワインは、味わいとしてすっきりしていておいしい!飲み疲れない!フレッシュな野菜や魚介、シンプルにグリルした野菜や魚介など、素材の味を活かした料理と合わせやすい!夏には最高!

ワインは食中酒。ワインだけを味わうと「酸がきつくて苦手だな」と思っても、料理と合わせると、思わぬおいしさに出会うこともあります。そんな未知なる味わいを求めて、いろんなワインを試してみてください!

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには

2010年時点でのデータによると、世界で造られるワインの99%が、約1,500種類のブドウ品種から造られているとのこと。その中で主要なものだけピックアップしても300種類ほどあると言われています。中には特徴が類似した品種もありますが、基本的にはそれぞれちゃんと個性を持っています。

前回は、渋い赤ワインが苦手な方必読の【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはで、渋みが少ない赤ワインを造るブドウ品種をご紹介しました。今回は逆に、「渋みがなくちゃ、赤ワインじゃない!」という方必読の、タンニン含有量が多めのブドウ品種をご紹介します。

タンニン含有量”やや高め”品種の代表①【カベルネ・ソーヴィニヨン】

“ムキムキ”と言うより、筋肉質でありながら逆三角形のシュッとした上半身を持つ水泳選手(できれば男子)。力強さだけではなくしなやかさを併せもち、水を自在に操ります。金メダルを目指してストイックに鍛え上げ、そんな時はツンツンしているように見受けられるけれど、引退する頃には人間味も出てきて、柔らかさも感じられる…そんなイメージを抱かせる品種がカベルネ・ソーヴィニヨンです。

世界一栽培されている品種。それゆえ世界一有名とも言える品種。

その理由は、味わいのバランスがとれたワインになることと、土壌への適応力が高く病害に対する耐性も強い、という比較的栽培のしやすさかと思います。

カベルネ・ソーヴィニヨンは、小粒で果皮が厚く、種も大きいブドウ。食べるブドウだったら間違いなく不人気No.1になりそうな特徴です(苦笑)。しかし、ワインを造るブドウとしては最適な特徴です。

【カベルネ・ソーヴィニヨン】香りや味わいの特徴

ブルーベリーやカシスのような濃厚な果実の香りに加えて、杉やミント、ピーマンと言った清涼感のある香りが溶け込んだワインを生み出します。

世界中で栽培される品種なので、産地によって若干香りや味わいも異なります。温暖な地域だと、ブルーベリーではなくブラックチェリーの方が近く、ミントよりもクローブのようなスパイス感が出ることもあります。

ワインの色も濃く、味わいは、果実味もありますがタンニンがしっかりと骨格を作っています。若いうちはギシギシした収斂を感じますが、それも熟成を重ねるとワインに滑らかに溶け込み、奥深い味わいに変わっていきます。

赤ワインの味わいは、渋み酸味果実味の3つの要素のバランス次第と言っても大げさではないでしょう。カベルネ・ソーヴィニヨンはまさに、この3要素がバランスよく感じられるワインになる代表品種です。

【カベルネ・ソーヴィニヨン】代表的な産地

8,000年の歴史のあるワイン造りのなかで、カベルネ・ソーヴィニヨンは古くから多くの人に親しまれてきた品種かと思いきや、実は、この歴史の長さから見たら比較的新しく登場した品種なんです。

17世紀、カベルネ・フラン(黒ブドウ)とソーヴィニヨン・ブラン(白ブドウ)の自然交配から生まれました。両親の名前を一字ずつ取って付けられた子どもの名前のようですね(笑)。生まれた場所はボルドー。今でもカベルネ・ソーヴィニヨンの主要産地です。

栽培面積の広さで言うと、フランス、チリ、アメリカがほぼ僅差で上位3ヶ国。次いでオーストラリア、スペイン、中国の3か国が続きます。この6か国で、世界のカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培面積の7割近くを占めます。

「ボルドー・ブレンド」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?この言葉通り、ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインはあまりありません。カベルネ・ソーヴィニヨンのほか2~3種類の品種をブレンドしたワインになります。

一方、アメリカやチリなどのニューワールドでは、ブレンドしたワインも造られますが、カベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインも多く造られます。

このように、産地によって造り方も異なるので、当然、味わいも産地によってまちまち。ですが、単一でもブレンドしても素晴らしいワインになるのがカベルネ・ソーヴィニヨンの良さでもあります。

シャトー・メイネイ 2001
産地
フランス / ボルドー地方 / メドック / サン・テステフ
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド
タイプ
赤ワイン - 辛口 - ミディアムフル
トレフェッセン / エステート ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2017
産地
アメリカ / カリフォルニア州 / ノース・コースト / ナパ
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン87%、メルロー4%、カベルネ・フラン4%、マルベック3%、プティ・ヴェルド2%
タイプ
赤ワイン - 辛口 - フルボディ

タンニン含有量”やや高め”品種の代表②【シラー(シラーズ)】

野性味あふれる濃いキャラの肉食系男子。肉食だけどチャラチャラはしていません。ガッチリした図体はジーパンに白シャツが似合うけど、スマートにタキシードも着こなせて、知性を感じる硬派な印象。…そんなイメージを抱かせる品種がシラー(シラーズ)です。

カベルネ・ソーヴィニヨンと双璧をなす人気品種。ブドウの見た目も似ていて、小粒で果皮が厚く、色は若干青みがかっていますが濃厚な色合い。

栽培もしやすく病害にも強いところも、カベルネ・ソーヴィニヨンと近しい。さらに、単一でもブレンドでもどちらでもワインが造られるところも似ています。

若いうちから飲んでも熟成させても、異なる魅力を見せてくれる万能さがあって、2000年以降、主要産地のフランスとオーストラリア以外でも、イタリアやチリ、南アフリカなどの国でも栽培面積を増やしています。

【シラー】香りや味わいの特徴と代表的な産地

この品種は、「シラー(シラーズ)」と表記していますが、2大生産国であるフランスとオーストラリアで呼び方が異なります。

フランスでは「シラー」と呼ばれ、オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれますが、同一品種です。ブドウの品種では、国や地域によって呼び名が違うということが度々ありますが、前回【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはでご紹介したピノ・ノワールも、ドイツでは「シュペート・ブルグンダー」と呼ばれるし、グルナッシュは、スペインでは「ガルナッチャ」と呼ばれるのと同様です。

ただ、フランスの“シラー”とオーストラリアの“シラーズ”は、別品種かと思いたくなるほどワインの特徴が異なるので、「近親者だけど別品種?」と思いたくなりますね。これは、産地の違いというのもありますが、造り手の志向によるところが大きいと言われています。

フランスのメイン産地はコート・デュ・ローヌ地方の北部。このエリアで造られるシラーのワインは、黒コショウのようなスパイス感ある香りが特徴的。その後にブラックチェリーやプラムのような黒っぽい果実の香りを感じます。

一方、オーストラリアのシラーズは、凝縮した果実の香りが主体的で、ローヌのシラーに比べると、同じブラックチェリーやプラムでも、より熟した果実を思わせます。スパイス感は弱く、代わりにユーカリのような清涼感ある香りも感じられます。

どちらの産地のシラー(シラーズ)でも、酸もタンニンもしっかりあります。ですがオーストラリアのシラーズの方は、果実味の方がより強く感じられるでしょう。アルコール度数の高さも相まって、シラーズ(オーストラリア)の方はパワフルと表現したくなりますが、シラー(フランス・ローヌ)の方は、エレガントと表現したくなるほど、印象が異なります。

さらにフランスのラングドック地方やプロヴァンス地方でも栽培されていますが、こちらのシラーは、生肉の血液を彷彿させるような野性味も感じられ、グルナッシュやカリニャンとブレンドされることが多いこともあって、やや果実味感のあるワインになります。オーストラリアのとフランス・ローヌのワインの中間ぐらいの凝縮感あるワインでしょう。

2006 サン・ジョセフ・ルージュ・レ・ピエール/ピエール・ガイヤール
産地
フランス・コート デュ ローヌ地方
品種
シラー
タイプ
ミディアムフル辛口 赤
2012 バスケット・プレス・シラーズ/ロックフォード
産地
オーストラリア
品種
シラーズ
タイプ
フルボディ辛口 赤

タンニン含有量”高め”品種の代表【ネッビオーロ】

ロマンスグレーの短髪と整えられた髭をもち、細身のジーパンを履きながらも、その足元はきちんと磨かれた紐の革靴。さっと首にかけたマフラーをたなびかせながら颯爽と歩く姿は若々しい。気難しい一面もあり、口を開けば若干とげのある言葉が飛び出すけれど、まったく悪びれない、チョイ悪ダンディ。…そんなイメージを抱かせる品種がネッビオーロです。

「ワインの王、王のワイン」と呼ばれる、バローロのブドウ品種。栽培環境を厳密に選び、条件が悪いと、ブドウの着色不足や病禍にかかりやすい。その栽培の難しさやテロワールを反映しやすいという意味から、ピノ・ノワールと比較されがちな品種です。

果皮の厚さも薄く、ワインになった時の色も淡め。そんなところもピノ・ノワールに似ています。なので、ピノ・ノワールかと思って口に含むと…その渋みの強さに飛び上がるほど驚くでしょう。ネッビオーロの種のタンニン含有量は、他の品種に比べてずば抜けて高いのです。

【ネッビオーロ】香りや味わいの特徴と代表的な産地

ワインの香りは果実で表現されることが多いですが、ネッビオーロに関しては植物のニュアンスの方を強く感じることが多いように思います。バラやスミレ、リコリス、トリュフ、干し草。果実で言うとチェリーの香りがあります。

ワインの色合いは淡く、若干オレンジがかった紫色をしており、一見涼やかな線の細い味わいを想像しますが、酸とタンニンの強さは群を抜いています。

ネッビオーロから造られる一番有名なワイン、「バローロ」は聞いたことがある人も少なからずいるかと思いますが、どこの国のワインか知らないという人が意外に多い印象。答えはイタリアです。イタリア半島の付け根、アルプス山脈の麓に近いピエモンテ州がメイン産地です。

近年、オーストラリアやアメリカなどでも栽培されつつありますが、世界の栽培面積の9割以上がイタリア北部。緯度はそれほど高いエリアではありませんが、冷涼地域。ピエモンテ州の州都が、冬季オリンピックを開催したトリノ、と聞けばその冷涼具合は想像しやすいかと思います。

2014 バローロ/ピオ・チェーザレ
産地
イタリア・ピエモンテ州
品種
ネッビオーロ
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

タンニン含有量”高め”品種は、健康にいい?

赤ワインの“渋み”の原因は、主に種子に含まれるタンニン。赤ワインは果皮や種子を漬け込んでアルコール発酵するので、この最中にタンニンがワインに溶け出し、ワインの風味を作ります。ポリフェノールの抗酸化作用が美容や健康にいいと言われて久しいですが、タンニンは、このポリフェノールの一種です。

ただ、タンニンよりも抗酸化作用があるのがアントシアニン。アントシアニンもポリフェノールの一種で、赤ワインの色調(赤い色)をつくる成分です。主に果皮に多く含まれますが、その理由は、ブドウが成長する過程で多くの紫外線を浴びるため、これにより発生する活性酸素を消去しブドウの実の守るため。そう、もともと自分の身(実)を守るために身に着けたスキル、なんですね。

ただアントシアニンは、単体で存在するよりもタンニンと結びつくことによって、より自分の使命を自覚するらしく、抗酸化作用を発揮して、ワインの色が褪せるのを防ぎます。いつも誰かに寄り添っていないといられないアントシアニンちゃん。タンニンがいないと、他の成分に寄って行ってしまい、本来の働き(抗酸化作用)を忘れてしまうこともあるようです。

つまり、アントシアニンだけが豊富なブドウよりも、タンニンも豊富なワインの方が抗酸化作用も高い、ということ。美容と健康のためにワインを飲むのであれば、タンニン含有量の多めの、色の濃い赤ワインがおすすめです。

程よく熟成させたものであれば、収斂性(口の中がギシギシするような感覚)は穏やかになっているので、10年前くらいのヴィンテージのもので3000円前後のワインを見つけたら“買い”です。

しかし!ワインは“薬”ではなく“嗜好品”。ぜひ、自分の好みの味わいのワインで楽しんでください。「品種のハナシ」は、まだまだこれからも続きます!

みんなが言う【マリアージュ】って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介!

ワインと料理のマリアージュ。ワイン通でなくても、一度は聞いたことがある言葉だと思います。

マリアージュ(mariage)は、フランス語で結婚の意味。ワインと料理、それぞれのおいしさが掛け合わさり、2倍にも3倍にもなった“おいしさ”が「マリアージュ」という言葉で表現されています。

一方、ペアリングという言葉も最近よく耳にするようになりました。ペアリング(pairing)は文字通り「ペアにすること、組み合わせること」。マリアージュという“化学反応”が起きるかどうかはさておき、相性の良さ全般を意味するキーワードとして、よく使われます。

え?フランスでは「マリアージュ」ってあまり言わない!?

ワインと料理の相性の良さから生まれる感動をドラマチックに表現する…食が大好きな日本人に、この「マリアージュ」という言葉はうまくフィットしました。

でも、フランスではむしろ「一致・合意」を意味するアコー(ル)(accord)をよく使うという人もいます。結婚という形態よりも個性を尊重するフランス人の思考も影響しているように思えて、なかなか興味深いものがあります。

ちなみに、イタリアでは、組み合わせを意味するアッビナメント(abbinamento)という言葉を使うことが多く、スペインでは、マリアージュと同じ語源のマリダヘ(maridaje)という言葉をよく耳にします。国や文化によって、ニュアンスも少しずつ違い、時代とともに変化していくのかもしれません。

話が少し逸れましたが、ワインと料理の「マリアージュ」が生まれるには、「ペアリング」の法則を知っておくことが第一歩。もちろん「おいしい」という感動は主観や経験値から生まれるものなので個人差があり、無限の可能性があるわけですが、いきなり自分なりの“ルール”を見出すのは難しいものです。

基本的な3つの法則を学ぶことから、まず始めてみましょう。

法則その1:産地同士の相性

日本でも、郷土料理を地酒と一緒に楽しむ習慣がありますが、それと全く同じことです。テロワールと呼ばれるその土地の気候風土から生まれるものは、相性がいい。それは誰しもが納得のことだと思います。

ヨーロッパの各国でも、然り。その料理と同じ郷土で育まれたワインを合わせると、失敗はあまりないものです。地方料理を銘打ったレストランが、その地方のワインを多く取り揃えているのは、この法則を知っているからなのです。

法則その2: “格”や濃淡のレベル感による相性

意外な組み合わせが「マリアージュ」を生むこともありますが、基本としてまずおすすめしたいのは、“格”や濃淡のレベル感を合わせるという法則です。

クラシックなレストランで品格のある伝統料理を食べるなら、造りも伝統的で上質なワインを合わせる。カジュアルなビストロで庶民的なメニューを食べるなら、リーズナブルだけれど味わい深く、造り手の顔が見えるようなワインを飲む…そんなイメージです。

また、味付けが濃い料理には、果実味やボディがしっかりしたワインを合わせ、反対に軽やかな味わいの料理には、爽やかなワインを合わせる…という濃淡のレベル感を合わせるのも効果的。熟成度合いも含め、いろいろなポイントで「レベル感を合わせる」ことを覚えておきましょう。

法則その3:風味成分による相性

「産地同士」「“格”や濃淡のレベル感」という2つの原則とともに、テイスティングスキルが高まってくると、第3の「風味成分」の法則が一番重要になってきます。

基本五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)に加え、刺激からくる辛味や、舌をきゅっと締めつける(収斂させる)渋味やミネラル感。さらに、星の数ほど例えがある香り(アロマ)もこの法則の要素です。たくさんの要素があるのでなかなか難しいのですが、香りや風味成分の組み合わせにも、基本的なものがあります。

そこで、ここではマリアージュの定番として有名な5つのペアリングとともに、風味成分の法則の具体的なパターンを探ってみましょう。「産地同士」「“格”や濃淡のレベル感」という2つの原則も併せた定番がほとんどです。

ブルゴーニュ風牛肉の煮込み×熟成したピノ・ノワール

「ブルゴーニュ風牛肉の煮込み(ブッフ・ブルギニョン)」は、その名の通り、フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理です。赤ワインをたっぷり使って牛肉を煮込んだ料理で、ビーフシチューの原型のようなもの。

ほんのりとした酸味や苦味もあり、うま味とコクが豊かなこの牛肉の煮込みには、同じような要素をもつ熟成感ありのピノ・ノワールが最高のパートナーです。

2006 ブルゴーニュ・ルージュ・ディアマン・ジュビレ
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

ブイヤベース×果実味あふれるドライなロゼ

肉の煮込みの次は、魚の煮込みを紹介しましょう。「ブイヤベース」は、魚貝類を香味野菜で煮込む料理です。南フランスのマルセイユの名物で、プロヴァンス地方をはじめ、地中海沿岸地域には似たような料理があります。

うま味はしっかりありますが、油分は少なく、香味野菜から引出される香りが豊か。軽やかで、フルーティ感もあるドライなロゼワインを冷やしてペアリング。見た目の華やかさも手伝って、気分もアガる!きっと、マリアージュの化学反応も体験できることでしょう。

2018 コトー・デクス・アン・プロヴァンス・ロゼ
産地
フランス・プロヴァンス地方
品種
グルナッシュ
タイプ
ミディアムライト辛口 ロゼ

がっつり系ステーキ×渋味もある濃厚な赤ワイン

「肉を喰らうぞ!」というテンションで食べる“がっつり系ステーキ”には、濃厚な赤ワインがよく合います。豪快に焼いた焦げもうま味となるイタリア・フィレンツェ名物の「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」には、やはりご当地のキャンティ・クラシコを。

2008 キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・イル・タロッコ
産地
イタリア・トスカーナ州
品種
サンジョヴェーゼ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

また、脂肪の甘みとコクが豊かな“サシ多めのステーキ”なら、ボルドーやカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤がおすすめ。タンニン(渋みの成分)が、肉の脂分を切るような効果を発揮するので、最高の組み合わせとなります。

アルザス名物!フォアグラのテリーヌ×極甘口の白ワイン

サシが多めのステーキにはタンニンのしっかりとした赤ワインでしたが、同じ脂肪濃厚系でも「フォアグラのテリーヌ」は冷製の料理でクリーミーな味わい。パートナーは異なってきます。

絶品のマリアージュを繰り出すものとして有名なのは、貴腐ワインのソーテルヌ。産地はちょっとズレてしまいますが、フランスでも定番の組み合わせです。アルザスにこだわるなら、ゲヴュツトラミネールなどの遅摘みの甘口ワインがあります。

カルム・ド・リューセック 2018
産地
フランス / ボルドー地方 / ソーテルヌ
品種
セミヨン89%、ミュスカデル6%、ソーヴィニヨン・ブラン5%
タイプ
白ワイン - 甘口 - フルボディ

そして、貴腐ワインのマリアージュ・パートナーとしてもう一つ有名なのは、ロックフォールチーズ。

青カビチーズの強い塩味と対極にある極甘口の化学反応。強いレベル感で上手に合わさるというのは、難しいパターンではありますが、“甘じょっぱい”組み合わせが大好きな日本人にも大人気のマリアージュ例です。

スパイシーコンビ!中華料理×ボルドーの赤

八角(スターアニス)や山椒などの東洋系スパイスに、黒胡椒や唐辛子の刺激…エスニック感もある中華料理には、同じようなアロマを持つ赤ワインを合わせるが定番です。例えば四川の「麻婆豆腐」に、実はメルローがぴったり。花椒の爽やかな刺激味や豆板醤のコクが、メルローの清涼感ある香りと果実の凝縮感がマッチします。

2015 梅楽(メルロー)
産地
中国・寧夏回族自治区
品種
メルロー
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

甘うま系の広東料理なら、熟成ボルドーがおすすめ。タンニンもこなれて果実味もいい感じに落ち着いたボルドーワインが、オイスターソースのコクと素晴らしいハーモニーを奏でます。

2007 シャトー・シトラン
産地
フランス・ボルドー地方
品種
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

風味成分から合うワインを探るなら…

3つの基本法則のなかでも、奥が深くて難しいのは風味成分の法則だと思います。経験を重ねていくことが必要なので一歩一歩にはなりますが、少しでもそのステップを早められるよう、最後にワインのタイプ別のマトリックスを紹介します。

白・赤・ロゼ・スパークリングとワインのタイプ別のマトリックスがあり、酸味フルーティ感(果実味)、渋味や苦味などのポイントから、より具体的なワインを探せるようになっています。

■ワインマトリックスは こちら

時間をかけて生まれる熟成感や、独特のブドウやワイン醸造法から生まれる甘味も、ペアリングやマリアージュには重要なポイント。まずは基本の3つの法則を頭に入れつつ、いろいろな組み合わせを試してみてください。